鬼神 2010-07-02 19:20:33 |
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唐辛子」を口に入れたのは誰か ~倉敷男児窒息死~
顔と顔をよせあう母と息子。幼稚園の入園式の日の写真です。この9ヵ月後、わずか4才の幼い命が失われました。死因は、大量の七味唐辛子を飲み込んだ、窒息死。
罪に問われたのは、母親でした。虐待だったのか。それとも事故なのか。
・近所の人
「なにしよんなー、こらー。窓閉めてても、向こうの部屋から聞こえるんですよ。ここまで」。
・被告人の弁護士
「やっぱ、お母さんがしたということを、もっと明確に分る証拠がないと、有罪にはできないんじゃないですか?、と」
関係者が語る、被告の別の顔。そして拘置所からとどいた手紙。
・光中(みつなか)被告の手紙
「翔(かける)の口の中をどうにかしてやらなきゃって、わたしなりにがんばって翔を助けたかった。
岡山県倉敷市。2007年1月3日、午後1時41分、消防局に1件の119番通報がありました。
・通報記録
「子供が七味の唐辛子、半分以上飲んで、あの、真っ黒なんですよ、口が…。それで、どうしたらいいか。意識は…」。
通報は母親からでした。救急隊員がかけつけた際、台所に上半身裸の男の子がずぶ濡れで横たわっていました。当時4才9ヵ月の光中翔ちゃん。
午後3時11分、搬送先の病院で死亡しました。死因は窒息死でした。
司法解剖の結果、器官からおよそ2.9グラムの七味唐辛子が検出されました。
翌1月4日未明、警察は翔ちゃんの母親、光中美幸容疑者を逮捕しました。逮捕容疑は3週間前、午前4時ごろに翔ちゃんを着ぐるみ姿で屋外に放置した疑い。さらに別の日に、翔ちゃんの首を絞めた疑いでも再逮捕しました。
・山下洋平さん
「まず確実な暴行の疑いで逮捕し、母親が翔ちゃんの死に関与しているかどうか調べる。警察は、取材に対し、明言こそしませんでしたが、殺人の疑いで捜査を始めていました」。
当日、警察への取材内容をメモしたものです。「あやまって唐辛子を飲み込んだ」という容疑者の供述。そして「虐待も視野に…」という警察の捜査方針を書き取っています。
(岡山県の会見、2007年1月4日) 母親が逮捕された日、岡山県庁でも緊急の記者会見か開かれました。
・岡山県子育て支援課 吉松裕子課長(当時)
「倉敷警察署のほうから、えー、倉敷児童相談所に、虐待の疑われるケースで、死亡事故、事例があったと、いう報告をうけております」。
「えー、この子供について、えー、病院、あるいは警察等から平成16年の2月から最後が18年の12月の合計6回、えー、通告がございました」。
県の児童相談所は、以前から母親による虐待の通報を受けていたのです。裸で外に出されている。顔に傷がある。通報は3年間で6回に渡っていました。
・近所の人(1人目)
「子供をしかるというよりはあ、大人相手にケンカしているような口調です」。
・山下洋平さん
「例えば?」
・近所の人(1人目)
「なにしよんな、こらーとか」
・近所の人(2人目)
「泣き声のほうが大きかったですよね。うーん」
・近所の人(3人目)
「どこらへんのレベルでね?こう、通報したらいいのかねえとか。あの、1回ゆったら『教育だから』っていうふうに言われた人もいるみたいで」。
光中容疑者は、8歳の長男と次男の翔ちゃん3人家族。通報を受けた児童相談所は、2004年から長男だけを児童養護施設に入所させていました。
・倉敷児童相談所 水島真寿美所長
「結果的にこういう事態になったという事は…、問題があったということも含めた中で考えていかないといけないという風に思っております」。
事件翌日の新聞各紙です。「心配が現実」に。「多くの予兆」。「虐待」の文字が大きくおどりました。私たちのニュースやワイドショーで、当初の「虐待も視野に」という報道から、いつしか虐待死という既成事実を作り上げていました。
・山下洋平さん
「目撃者も物証も無い密室の出来事に、捜査は難航しました。岡山地検は、翔ちゃんの死から半年たって、ようやく起訴に踏み切りました」。
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