kis (with背後) 2025-01-28 00:50:34 |
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【Prolog】
\ピコンッ/
SMSに新たなメッセージが入ったことを知らせる通知音。相手は粗方予想がつく。こんな時間に連絡を寄越すのは大抵ネスくらいだ。慣れた手つきでスマホを手に取り、画面に目を向ける。
『明日からドイツに住む』
知らない番号。そして、…日本語。この程度なら翻訳にかけずとも読める。
結局とある日本人への想いを捨てきれなかった俺は使う予定は一切ない日本語をそれなりに勉強した。他国の言語を覚えるにはその言語を話す恋人を作れ、といった話はよく聞くものだ。まぁ、俺の場合は恋人ではないが。
あぁ、今はそんな話をしてる場合ではないな。
ロック画面に映るたった10個の文字の羅列から目が離せない。
このメッセージの送り主であろう人物と最後に会ったのはU20ワールドカップだ。ドイツは日本に惜敗。優勝トロフィーはアイツらの手に渡り、あのイカれエゴイストは見事に有言実行を果たしたわけだ。
フィールド上では俺もアイツもサッカーに関係のないことは一切持ち込まない。
だが、フィールド外では…?俺はあからさまにアイツを避けていた。決して目を合わせないように。しかし人間の視野は意外と広い。視界の端に映ったアイツは何か言いたげだったが、気付かないふりをする。誰かに言われたか、はたまたサッカー以外では鈍感なアイツも流石に察したのか…最終的には諦めたようだった。
それなのに何故今更???
ドイツに住むとはどういう意味だ???
青い監獄の最終日。俺がミュンヘンに帰国する日。あの出来事があった日。
アイツから確かスマホは没収されていることは聞いていた。それなら俺が帰国してからすぐには連絡がないことは頷ける。だがU20W杯が終わってから3年は経っている。アイツはとうの昔にあの監獄を脱獄し、自身のスマホを返却されているはず。返却されたその場で連絡を寄越すことだって出来たはずだ。
…何故しなかった?あの日の″アレ″はただの挨拶だと思われたのか?
……いや、そうならむしろ好都合か。結局置いていけなかった、捨てられなかったこの想いは墓場まで持っていく。そう決心しただろう。
アイツが″アレ″をどう汲み取ったであれ、やるべき事は一つだ。アイツの望むライバル──糸師凛のような喰いがいがあり、アイツの成長に追いつく奴を、ピエロを演じていればいい。
だからアイツ……、世一も、俺の望む何も知らない、サッカーしか眼中にないクソエゴイストを、ピエロを演じてくれ。
何を期待して買ったのか、購入後一切使われていなかった通訳イヤホンを引き出しから取り出し、装着する。かつては試供品だったこのイヤホンも当時ほぼ完成系に近かったためか、ほとんど変わらない形状で商品化されている。そのせいか、付けた瞬間、懐かしい感覚がした。自然と目が閉じられる。青い監獄での様々な出来事が頭を過る。
中でも一層色濃く残った人物がこちらを向く。
あぁ、俺はやはり世一のことが━━━━
「 」
ごく小さな声で呟いた、誰に聞かせる訳でもない日本語が、通訳されドイツ語で自身の耳に返ってくる。数秒黙り込み、自身の情けなさに乾いた笑みを零す。始まりはたった10文字のメッセージ。たかがそれだけによくここまで振り回されるものだ。自分でも呆れてくる。
イヤホンがきちんと機能を果たしている事が分かればイヤホンをケースにしまい、鞄に投げ込む。日本語を勉強したと言ってもリーディングが多少出来るようになっただけだ。勉強法もほとんどが読書だった。リスニングとスピーキングが出来るまでには遠く及ばない。日本人と話すとなればイヤホンは必須レベルだった。
再びスマホを手に取り、ロック画面の通知欄に映る日本語を指でなぞる。慣れた手付きでロックを解除し、メッセージの送信時間と日本発ミュンヘン着の飛行機の時間を照らし合わせる。
ドイツでは早朝になる時間に着くようだ。
誰も、当事者さえもその時間の飛行機に乗るなんてことは言っていない。ただ、なんとなく。本当になんとなく、世一は飛行機に乗る直前にこのメッセージを送った気がした。
━━俺に迎えに来て欲しくてか?
いや、違うな。
内心否定しつつも迎えはもちろん自分が行くつもりだ。他の誰かに行かせる気は1ミリもない。
こんな自分は今日限りだ。明日からは世一の望む宿敵を振る舞わねばならない。互いに鎬を削り合うだけの、そんな関係。
明日のためにベッドに潜る。全く眠れる気がしない。脳が、身体が、目が、自身の全てが寝ることを拒んでいる気さえしている。寝たら明日が来ちまうからな。それとも明日が楽しみか?
「チッ、…クソガキか、俺は。」
無理やり寝ようと試行錯誤するも、眠れるわけがなく、朝の訪れを太陽の光が、鳥の鳴き声が、知らせに来てしまった。
あー、これは後から聞いた話だが、世一がバスタード・ミュンヘンに入団することは大分前から決まっていたそうだ。チームメイトにも周知されていて、唯一俺だけが入団当日に知らされた。
…しかも本人からな。
どうりで俺以外の誰も迎えに来ない訳だな。最初から俺が行くと全員分かっていやがった。クソ腹立つ。
それと、ここだけの話、語学勉強に使った日本の絵本というものはホームシックで眠れない世一くんに″ヨミキカセ″とやらをしてやろうと思う。俺のスピーキングの練習にもなるしな。
【絡み文】
何処にいるんだ世一…!!!
( 明朝、寝ていないため当たり前だが寝坊をする事もなくミュンヘン空港に着く。昨日の夜届いたメッセージに「今どこだ」と、相手が翻訳しなくても読めるよう日本語で返信をする。自分の見当違いで、この時間の飛行機ではなかったのだろうか。流石はドイツの三大都市と言うべきか、この時間でも人でごった返している空港の中、辺りを見回してもそれらしき人物は見当たらないようで )
(/プロローグが思ったより長くなってしまい、こんなの誰が読むんだ!?と焦っております。キャラでも背後様からでも、どちらで話し掛けていただいても構いません。
kiis好きのお優しい方の目に留まりますように…良縁を願って!)
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