常連さん 2024-10-29 22:26:54 |
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(/全然ありでございます……!寧ろ派手にやっていきたいですね!
頭文字Dみたいにそれっぽい理屈さえつけてしまえばなんでもできます…!!たぶん!)
(/ひとまず現状かけている世界観設定を投下致しますので、疑問点などあればお気軽にどうぞ。
車種につきましては頭文字D基準でも構いませんが、続編のMFGみたいに現代車もそこそこ出していく所存ですが問題ありませんでしょうか…?)
(/オッケーです、それが聞けて安心しました!思う存分節度を守って暴れます!
MFGも一応履修済みなので問題無しです!いわゆるスーパーカーとの熱いバトルが期待できそうですね)
(/モンスターマシンとのバトルもあるかも…いや、あります。設定下記になります!)
【世界観】
全国血脈交通化法案……自動制御によるモビリティが各所に張り巡らされ、EVやリニアなどゼロエッション発電と連携した超巨大交通網。
すべての地域や地点が綿密に繋がり合い、血管のように詰まることなく行き来するシステムからその名がつけられた。
従来の高速道路などは再利用されるものの、一部山道などは別ルートが整備され、公道レース場として扱われる基盤を作ることとなった。
交通免許制度も大きく変更され、自動車免許の概念は消失した。その代わりにレーシングドライバーライセンスが普及し、教習を受けることで小学生はカート、中学生は660cc車、高校生からは普通車が解禁されるシステムとなった。
歩道含め全ての地域が整備され、キックボード状の小型モビリティによる移動なども採用されており、通学路ではそれらで通学する子供たちを見ることができるだろう。
ただそうした変革は技術改革というよりも金と勢いにものを言わせたそれであり、生活水準や日常生活は2025年からそう大きな変革は起きていないのが現状である。
公道レース
上記の経過を経て、廃道をサーキットとしたレースが正式に開催、初等部からプロまで幅広く、レベルが上がるほど実際のレーシングサーキットで行うレースに近いものとなっていく。
高等部では全国高等学校公道レース選手権大会として、ダウンヒルとヒルクライムに分けた試合形式で日本一を決定する大会が開催されている。
愛浜県……都道府県再編計画によって、豊田から浜松までを独立させた工業特化地域が愛浜県と命名された。その地にあった企業の他にも全国からあらゆる企業が招集され、全国血脈交通における機械産業を始めとした中心地となっている。
加えて完全なモータースポーツとなった日本車産業の部門も集結しており、関連した施設やイベントが盛んな地域である。
県庁は激しい議論の後に折衷案の豊橋に決定し、一躍周辺地域は活発な都市の一つとなった。豊田、豊橋、浜松、どの都市も近未来的な様相を呈し、東京にも劣らぬ巨大都市となっている。
愛浜県立 静春高等学校……旧静岡県立高校で、浜松市に開かれた公立高校、読みは”せいしゅん”、通称シズハル。
偏差値は高くもなく低くもない普通極まりない高校であり、部活動も活発なもののストイックさはなく、成績で言えばまったくもって冴えない高校である。
裕福な街全体と比べると校舎が古いせいかどうにも見栄えは芋臭く、昔ながらのセーラー服と相まってか印象は地味かもしれない。
反面おおらかな校風が特徴的で、比較的治安は良いとされる。学費も公立だけあって格安であり、それに助けられる家庭の生徒も多い。
公道最速部……シズハルに存在するモータースポーツ部、主に普通内燃機関車部門でエントリーするものの、現在3年生部長1名、1年副部長1名の廃部寸前状況である。
顧問は一人のおじいちゃん先生が担当しているが、整備のコネがあるのかシズハルの車両はこの顧問によって維持されている。
現在所有している車両は
・日産 32GT-R(BNR32):部長車
・ホンダ シビック タイプR(FK8):副部長車
・TOYOTA マークX GRMN :顧問車
・お相手様キャラ
・トピ主キャラ
私立淑明大学附属高等学校……通称シュクメイ、県内では言わずと知れたお嬢様女子大学でありその附属もまた同じである。生徒は高偏差値かつ裕福な層が集まりそのほとんどがモビリティメーカーやその傘下企業の令嬢であるが、中には経済バブルに乗った成り上がりも存在している。
そのおかげかモータースポーツにおいても活発な姿勢を見せ、部員数も車両も整備も大規模であり、全国大会優勝校でもある。車両のほとんどが金にものを言わせた車ばかりで、国産車フラッグシップや中には欧州車などを揃え優勝に拘った絶対王者と言える。
所有車両は未知数だが、ロータス エミーラやLEXUS LC500、ランボルギーニ アヴェンタドールなどが確認されているらしい。
(/現状ここまでしかかけていません……><
ミケネコ様はこちらのメインキャラと同じく愛浜の新入生として作っていただこうかとも思っています。
もちろん、後々登場するバトル相手も随時作ってくださっても問題ございませんので、そこは追々相談になります!)
(/いやいや現状でも十分過ぎるぐらいに作り込まれた世界観に心底感心しておりました。
新入生作成の件了解です!特に募集キャラについて細かな指定はないとの事でしたが、ある程度自由に作成させていただいて確認いただく形で良いですか?もし、何か指定などあれば先にお聞かせください)
(/こちらが例となるキャラシートを作れていなくて申し訳ないです……!
作っていただいたものをこちらで一度確認させていただきますね!
参考までに必要情報といたしましては
・名前(ヨミ)
・年齢(15or16)
・容姿(ある程度書いて、画像アップローダなどでイメージ画像!なんてのもおっけいです)
・性格
・車種(なんでも可能ですがスポーツモデルのほうが映えるかも…!あと軽自動車級はご遠慮願います…!特殊な条件でしか勝てない…!)
・備考(過去や得意とするテクニック、また好きなものなどなんでも。)
になります!
当方夜しか時間がとれず返信は若干スローペースになります…申し訳ありません><)
(/明日以降、こちらも部長キャラから作成して出していきますね…!
ちなみに、こちらのキャラとの出会いは頭文字Dリスペクトで、夜の突発公道バトルからにしようと思ってます…!)
(/承知しました!ではこちらも今日、明日中にPF提出しますね。
出会い方についても把握です、拓海と啓介的なアレですねわかります←元ネタとは違って互いに見せ場をしっかり作って楽しみたいところですね?)
・名前 邑崎 春風(むらさき はるか)
・年齢 15
・容姿 黒いストレートロング、前髪は桜の花を模した飾りのついたヘアピンで止めていて右分け。長い髪は作業をする時や車への搭乗時はヘアゴムで頭の後ろ高めの位置で一つに纏める。赤紫色の瞳はパッチリ二重でタレ目気味。身長161cm。やや痩せ型だが出るとこは出た女性らしい身体つき。私服は紺のノースリーブのトップスに、薄水色のショートパンツ、白いスニーカー。
・性格 穏やか且つ物腰丁寧で、責任感の強い性格。決して成績は悪くなく頭も悪くないのだが天然でどこか抜けているのが玉に瑕。
・車種 ニューフォーミュラレッドのS2000(スーパーチャージャー仕様、GTウイング装着)
・備考 手先が器用で機械いじりなどの細かい作業が好きで、一度夢中になると周りが見えなくなるぐらい没頭してしまうことも。集中力の高さと精密さは運転にもあらわれており、走り慣れたコースであればブレーキングポイントとリリースポイント、アクセルワークが常に一定で余分なスライドを発生させない。また、未知のコースであってもプラクティスによる試行回数さえ稼げれば修正し、自分のスタイルに落とし込んでしまう。ひたすら実践を繰り返し練度を高める一方で、理屈で理解するのはやや苦手な感覚派。愛車は常に自らが整備や手入れをしており愛着が強い。レースそのものには実はあまり興味がなく、楽しく愛車を走らせるのが好きなだけであったりする。車の好調、不調のステータスの判断基準として毎日深夜から明け方にかけて決まって同じ場所を走らせタイムをとるという、実は中学時代からこっそりと無自覚に繰り返している日課が特殊な練習環境となり結果的に上記のような技術を身につけさせている。
(/PF完成しました。ご確認お願いします。いくら戦う相手が基本的にマシンスペック的に格上だからといって、少し盛りすぎた感あるのと、作っていくうちにどんどん派手とは程遠いめちゃくちゃ堅実で面白味ないキャラになってしまったので問題あれば作り直します)
(/確認いたしました!大変良い感じです!車両についてもジャイアントキリングができるくらいの良い塩梅ですね…!
こちらも今夜までにはメインキャラを作って、サブキャラ等は後回しにしようと考えています。まずは一話を始めてしまう所存です)
(/や、やっと帰宅……!!今から設定書きます!!春風ちゃんはダウンヒルエースになってもらえそうなので、こっちはヒルクライム特化にしますね!)
名前:新島 陽菜乃(ニイジマ ヒナノ)
年齢:16
容姿:
身長154cm 体重は非公開。身長のわりに発育は良く、平均よりグラマラスな体型と言える。
活発な印象の茶髪は生まれ持ったもので、サイドはミディアムに切りそろえ、前髪はナチュラルバングと言った様子。ただし襟足は伸ばしたウルフカットとなっている。
幼さを感じさせる丸い目元に、アクセントとしてツリ目が加えられればその勝気な性格を物語る。全体的に童顔であり、性格も相まってか実年齢よりも幾分か幼くみられる雰囲気を纏う。
性格:上記の通り勝気で、勢い任せな部分が多い。ハイテンションであればあるほど集中力が研ぎ澄まされる代わりに、比例して危うさも増す典型的なキレやすいドライバーとも言える。ただ根本的に善人かつ社交的であり、何かに思い悩むよりも突き進むタイプ。
地頭は良いが如何せん考えなしに行動することが多いため、興味関心の向いていない勉学はかなり危うい。ただ逆に言えば、本能が出した答えにノータイムで体がついてくるため、脊髄反射のような行動力と決断力は他に類を見ないと言える。
車種:シボレー カマロLT(RSパッケージ) 所謂五代目カマロ前期型。カラーはシャドーグレーメタリック。改造はまったく施されておらず、ホイール等はノーマルのままである。
日本車企業がモビリティや自動運転技術などに特化した結果、海外メーカー車の方が安く手に入る珍現象がしばらく起こり、その際に購入したもの。アメリカンマッスルな印象を受けるが前期型に積まれるのは、3.6リッターV6で、後発のV8などに比べると非力にも見える。それでも300超えのPSと強大なトルクは大きな武器となり、重そうで重くない1700kgボディが、本人の性格と相まって非常にアグレッシブな車に変貌している。(ちなみに中等の部の愛車はスズキ アルトラパンSS)
備考: とにかくバトルとレースをこよなく愛するバトルジャンキーで、トリガーハッピーならぬアクセルハッピー。ガツンと背後から蹴とばされる加速の感覚とアドレナリンの中毒者であり、ベタ踏みが流儀である。ただ、その実本能と思考の奥底までもアクセルをいかに踏むかを考え続けており、結果的に全開区間を相手よりもコンマ数秒踏みこむにはどうすれば良いかを神経で実行しているため、アグレッシブながらも繊細なアクセルワークをやってのける。走行スタイルはドリフトとグリップ両方が各コーナーで入り混じるのがよく見られ、これはグリップもドリフトも本人にとってはアクセルを踏めるだけ踏めるようにした結果でしかなく、自分だけにしかないラインをなぞるという。ある意味で、春風とは似て非なる感覚派である。
車に対して愛着はあるものの整備などについては素人で、小さな町工場を経営する父に頼り切りであった。カマロはその父が乗っていたものであり、父が手放したそれを再び買い戻すといった経緯でハンドルを握る。
馬鹿で喧嘩っ早いが人望はあるらしく、困っている人なんかは放っておけない質で、他人に対してもアクセルオンの姿勢で距離をつめていく。
(/トピ主キャラ完成いたしました! ご確認くださいませ。
他に質問等なければこのまま書き出そうと思うのですが、よろしいでしょうか。)
(愛浜県中央に位置する旧道、通称”滝澤峠”は私のホームコースだ。辺境に位置するうえに整備もされおらず荒れ放題であるが、それ故に決して邪魔は入らない。仮に入ったとしても、こんな場所を好んで選ぶものも居ないし、そいつと偶発的なバトルを申し込めると思えば一石二鳥だ。ちょうどヒルクライムを終えて頂上にたどり着けば、随分長い間放置されている展望台が休憩スペースになる。まぁ展望台といっても山の上に立てられた東屋にベンチがあるだけだが、これはこれで雰囲気があって良い。一度3台分しかない荒れた駐車場に車を停めれば外に出て、ぐっと伸びをしながらに景色へと目を移す。自動運転交通が張り巡らされた街はまさに蜘蛛の巣の様で、少し前の近未来が実現していることがよくわかる。)
「はぁーぁ……相変わらずイカす、私のカマロ…」
(そして、振り返れば乗り換えて半年ほどの愛車がある。切れかけの街灯に照らされていても、何度見ようとため息が出るほど魅力的に見えて、惚れ惚れといった具合でまだ温かいボンネットを撫でた。どうせここには誰もいない、目一杯眺めてやろうと、レザーのタイトスカートであることを忘れてしゃがみ込み、じっと車体を見つめる。そういえば明日は入学式だったが、まぁ入学式くらい遅刻したって問題はないだろう。)
(/ロルのタイプは主観で書いちゃいましたが、お好きなスタイルで構いません。
あと追加で設定ですが、中等3年の夏の大会が終わると、3年生は普通自動車に乗れる感じです。なので半年ほど今の車両に馴染みがある形になります))
概ねイメージ通りですね……トラクションも問題無く良好、いい感じです
(中学入学と同時に出会った愛車、持ち前の器用さとメカニックの知識を活かして地道に手を加えながら周囲には内緒で乗り回していて。車の好調と不調を知るには実際に走らせてみるのが一番、そのため一般には使用されていない旧道を人気の少ないと思われる深夜から明け方にかけての時間帯を利用し、上りと下りを各一本ずつ走らせるて感触を確かめるのが日課となっていた。現在はキチンとライセンスを取得しているため、時間帯をそれほど気にする必要はなくなったものの、やはりマシンの調子を見るには自分にとって走り慣れたコースを使用するのがベストで、今日も今日とて滝澤峠の麓からのヒルクライムでブレーキの制動距離やトラクションのかかり具合をコーナー毎に確かめる。違和感なく概ね普段通りの走りが出来ている、どうやら今日も問題は無さそうだと満足げにそう考えながら上りコースを走り切ると、次はダウンヒルによるマシンのチェックをするべく頂上の駐車場にてUターンをしようとしたところで、ふと見慣れない車両が一台停まっていることに気がついて「シャドーグレーメタリックのシボレー……こんな旧道にレーサーが……?」今日はたまたま普段とは違う少しばかり早い時間帯とはいえ、まさかこんな旧道を走るレーサーが自分の他にいるなんてと少しばかり驚きつつ、シボレーの持ち主であろう自身と同い年ぐらいに見える少女をウインドウ越しに横目に見ながらも、競争などにあまり関心のない性分のためそれもすぐに気にならなくなり視線を外すと駐車場を出てダウンヒルへと向かおうとして)
(/初回ありがとうございます。こちらのキャラのタイプ的に積極的に外部のコースに遠征したりする感じではないので、同じコースをホーム(?)としつつも活動する時間帯が違うという感じに解釈してみました。問題あれば考え直します。
ここから後追い強制バトルなり、近づいてきて絡むなり、その他何らかのアクション起こすなり、どんな形でもいいのでよろしくお願いします。
設定について委細承知です!ただ、こちらのキャラは中学一年から無免←なので現在の車両との付き合いに関しては相応の長さということになります)
「んぇ……S2000……って無視!?」
そうしてしばらくあまり触れない夜風に当たって居ると、ここでは久しぶりに聞く他人のエンジン音が聞こえてきた。ここを使うのはいつも夕方からで、深夜帯にかけてはそう使うこともなく、まさか他にもここを使いに来る者が居たとは予想外だ。
さてそれならどんな相手が来るのだろうかと待っていれば、比較的小さなシルエットが心地良い音とともに現れた。赤い車体に鋭いノーズ、ホンダS2000とわかればこっちの排気量のほうが上だ、と鼻を鳴らしたい気分で、そろそろ帰ろうと思っていたがようやくバトルができるらしい。
と期待をしていたのだが声をかけられることもなく、目が合っただけでさっさとダウンヒルへと向かってしまって、まるで眼中にないと言われた気分だ。そんな態度をとられて、というか向こうがその気かは知る由もないが、孤独のホームコースで久方ぶりに出会った相手に対する興奮は冷めやらぬもので、すぐに愛車へ乗り込んでエンジンをかけた。ここのダウンヒルは序盤が低勾配高速コーナーの連続で、車両のパワーがモロに出てくる、こっちが出るまでのビハインドなんてすぐに帳消しにできるはずだ。勝負は追いついてからの中盤、ろくなストレートもなく低速コーナーが連続するストレス極まりない区間で、そこさえ抜ければ終盤のストレートになる。
「…っし、追いついた…!!」
あの赤い車体を捉えるまではそこそこ時間が必要だったが、中盤前のストレートでのアクセル全開が効いたのか、ようやく相手のリアをヘッドライトで照らしてやることができた。
……!さっきのシボレー……もう追いついて……!?
(普段と変わらぬ調子でのダウンヒル、好調とも言える走りを続けながらコースも中盤間近に差し掛かる頃には既に先程駐車場に居たシボレーとそのオーナーらしき少女のことは記憶の片隅からも消えており、改めてマシンとの対話に全神経を向けようとしたその時だった。高速の右コーナーを抜けた先の短いストレートで後背を照らすまばゆいヘッドライト、何事かとバックミラーにハッと目を向けるとそこにいたのは先程駐車場で見かけたシボレーで、いくら自身がここまで全開走行ではなく勾配も緩やかでパワー差がモロに出る区間だからといってあそこから追いついてくるというのは並大抵ではない、しかもわざとすぐ抜きに来ようとせず背中にピッタリ張り付くように執拗に煽ってきている。どうやらかなり厄介な相手に目をつけられてしまったらしい、目が合ったのに無視をしたのが良くなかったのかもしれない、挨拶ぐらいはしておくべきだったかなど思考を瞬時に巡らせ「……最初に礼を失したのは私……それがお望みなら私たちレーサーとしての礼儀でお応えしましょう」絡まれてバトルみたいな流れになるのが気乗りせず無視を決め込んだが、礼儀としてはなってないことをしたという自覚はあり、自らの非を認めた上で走りによる対話を望むというならここは一つ自身も全力でそれに応じようとハンドルを強く握り直し、アクセルを踏み込む。スーパーチャージャー特有のレスポンスの良さによる自然な加速力で次のコーナーのブレーキングポイントへ。久しぶりの対人で限界近くを引き出す走行、まずは感触を確かめるように普段よりもほんのワンテンポ早いブレーキングで低速コーナーへ、リアが若干滑るような感覚、破綻こそしないが若干外側へ膨らむのを感じ、まだスピードが乗りすぎていると次コーナーでの修正のイメージを思い描いて)
「なぁんだ、乗ってくれるんじゃん…!」
さっき一瞥だけで去っていった雰囲気から、もしかしたらハザードでも焚かれて譲られるのかとも思えたが、流石にそこまで冷たい奴ではないらしい。気になるご尊顔はちぎった後に拝むことにして、流れるテールが加速するのに合わせてアクセルを踏み込んだ。
「ぇっ?速くないっ…?」
S2000ならば立ち上がりで一気にお尻を叩けるくらいの相手であると思っていたが、甲高い高回転エンジンの音が響くとともに、こちらからテールが逃げていった。S2000がどんな車で何を積んでいるかなんて知らないとはいえ、あんな加速ができるような車な印象はない。さっき振ったリアもドッカンターボという訳でもないし、思わずきょとんとしながらも、馬力で対等という焦りがやってくる。
「面白いじゃんっ……!」
ただ、自分にとって焦りとは闘争心と表裏であって、闘争心は一気にこちらをハイテンションへと引き上げてくれる。負けじとアクセルを踏み続け中盤から伸びとなればこっちが上で、若干距離が狭まった。次は油断しまいと相手のブレーキポイントが何処だろうとアクセルを限界まで抜かずに、今度は右のコーナーへと入る。オーバースピードかつぶつからないギリギリでノーズを回せば、自然と車体は斜めにスライドする。ハンドリングで押さえつけてしまえば勝手に出口へ頭は向いていて、後は気持ち良くV6をふかし、赤い車体追いかけた。
車自体もそうですがこれは……!
(多少のミスがあったとはいえ、対人向けにアグレッシブに攻めにいったにも関わらずそれほど突き放すことが出来ず、むしろ背後より感じるプレッシャーが大きくなっている。車自体はエンジンに手を加えたこのS2000と比べても少し上程度という見立て、しかしそんな事だけでは到底説明のつかない乗り手の巧さを強く感じて。中学入学したての頃から相当走り込んだコース、誰よりも上手いとまでは言わずともここで車を気持ちよく走らせるコツはしっかり熟知しているという自負はあって。幸いにも先程のコーナーでの攻防で全開走行におけるコーナリングの感覚は取り戻せつつあり、先程の失敗も踏まえ微調整をかけ再びブレーキング競争へ……。大きな差ではないとはいえパワー負けしている以上自分に勝ち筋を見出せるのはこの低速セクションのみ……そこまで考えたところで自分がいつになく熱くなり、余裕がなくなっているのを感じる。この勝負は譲りたくない、らしくもなくそんな想いが自身を突き動かす。それは相手が同年代ぐらいであると知ってしまったからか、慣れ親しんだコースでの自身の走りへの自信からくる矜持からか、兎に角負けたくなかった。先程より僅かに浅いポイントで調整したブレーキング、しかしリアを流さず高回転エンジンのパワーを路面にロスなく伝えられるようタイヤが滑るか滑らないかギリギリのところでグリップを最大限に活かし、今度は概ねイメージ通りのコーナリングを決めて「つけ入る隙があるとすればあそこですね……」運動性はフロントミッドシップによる理想的な前後バランスを実現したS2000の方が上、やはりつけ入る隙があるとするならテクニカルなコーナーセクションになってくるだろう、それにおあつらえ向きのコーナーがこの先にある、急勾配の短めの高速区間から続く大きくU字に切り込み出口にかけて狭くなる右コーナーからの緩やかな左から右へ続く滝澤峠名物(と勝手に思っている)『滝落としのスネークヘアピン(命名は春風)』勝負のポイントをラストの高速セクション直前の滝壺に潜む蛇に定めるとビッグアクションは起こさず堅実にバトルを進めて)
「っ……鼻につく感じ…!」
ドライバーとしての性格が如実に表れているのか、前を行く車に大きなブレはない。対してこちらはコーナーのたびに白煙をあげさせ、あくまでアグレッシブに相手を追い立てた。トップスピードならばこちらが上なのかぴったりと張り付く時間が長いはずなのに、オーバーテイクとなるとその余裕を相手は与えてくれない。
堅実、という言葉が似合う走りだが、同時にそれは自分に最も似合わないもので、ぐぬぬと文字通りの声を漏らしながらに後を追う。
「来るならこの先のヘアピン……っ、」
相手がコチラと同じでここをホームコースにしているのはコーナーへの切り込みでわかる。であるならばこの先のヘアピンが難易度が最も高く、それでいて最も勝負のつきやすいポイントであることも共通認識のはずだ。
なぜだか知らないが前の車の加速は序盤こそ速いが中盤以降はゆっくりと一般的なレベルに落ちてくる、それがスーパーチャージャーが起因しているとは気づかずではあるが、その弱点は見抜いた。であるならば、ここからヘアピンまでの高速区間で一気に並びかけるのがこちらの狙いだ。
高速区間一歩手前の左コーナーでアウトから仕掛け、ここで鼻っ面を無理矢理に差し込もうとアタック。半ばパワースライドで横を向いた車体ならば相手のラインを無理矢理に狭め、オーバーテイクはできずとも必ず相手とサイドバイサイドへと持ち込めるはずだ。後はオーバースピードだろうと相手がつくりたいラインに入り込んでしまえばこちらのもので、次の名物ヘアピンは横並びで突っ込んでやるつもりでオーバースピード覚悟にアクセルを踏み込んだ。
「ならその前に鼻頭へし折ってあげるっ…!!」
……!?
(外側から並びかけてきた相手の自身より更に深い位置でのブレーキング、しかしそれは誰の目から見ても明らかなオーバースピードで、あれで追い抜きなどというのは到底現実的ではないだろう。しかし無策でこんな無茶なコーナリングを仕掛けてくる程稚拙な相手では無いはず……そこで初めて自分の走行ラインが既に相手の車体により限りなく限定されてしまっていることに気づく、この高速区間で完全に頭を抑えたまま仕掛けのポイントへと向かい圧倒的優位のイン側から勝負をかけるプランは完全に崩壊した。やはり相手は巧い、何より自分とは違いバトルにおいて踏んできた場数が違うのだろう、運転技術に関してはそこまで大差はなくともそこに明確な差があるように思う「完全にやられましたね……ですが」勝ち目はだいぶ薄くなってしまったものの、しかしながら闘志は潰えなかった、元より経験不足は承知していることであり今更驚くような事でも絶望するようなことでもない、自分はそれでもこれまでに積み重ねてきた愛車とコースとの対話、それに心血を注ぐことしかない、やるべき事は変わらないのだ。人事を尽くして結果的に負けるのならばそれは致し方のないことだが、ここで投げ出してしまえばこれまで自分のしてきた事全てを否定することになってしまう、それだけはダメだと針の穴を通すようなコントロールで限りなく狭められた走行ラインをロスなく抜ける。辛うじて前はキープしているがパワーで勝る相手にここでこちらがやれる事は何もない、唯一にして幸いなのはこの高速区間は決して長くは続かないということ、これがもう少し長ければパワー差を覆せずここで勝負は決まってしまっていただろう。急流を降るような急勾配はここまで、いよいよ勝敗を分けるこのコース最大の難所がやってくる……予想通り鼻面をインに差し込んでくる相手、しかしもはやそんなことは関係ない。横並びでのブレーキング勝負、相手の方は見ない……この状況自分に通せるラインは既に一本しかないからだ、心を乱さずマシンのコントロールにのみ執心し深く切り込む右を目測と寸分狂わぬライン上を滑らかに走らせる、勝負を捨てていないことを示すかのような接触スレスレの豪胆なラインどり、ここまでの走りで相手の技術を信頼しているからこそ出来ることであった)
「っうそ…!っ来るの!?ここで……!?」
体が前へと吹っ飛んで行きそうな程のブレーキの後、今度はシートへ縛り付けられるような加速が続き、相手に鼻を明かすことはできているみたいだ。無理やりなラインで失速した分は次のヘアピンでオーバースピードになろうとベタ踏みで解決したが、こんなサイドバイサイドのアウトから仕掛けるような奴は見たことがない。
だが、見たことはないだけでこんなにも身近に存在するものとは思うはずもなく、悠々自適なブレーキングの一瞬の隙を突かれてしまった。加速の分を受け止めていたブレーキの熱のせいか向こうよりもこちらは制動を長くとってしまい、赤い車体はコンマ数秒分前に出ている。その一瞬が大きな差になることは直感で理解していて、限界ギリギリのアタックには流石に目を見開かざるを得ない。
「っ゛……く…踏めないっ……!!」
ラインを塞ぐ側が今度は塞がれてしまえば、踏んだ結果最適な姿勢となるドライビングが発動をしない。ただでさえ踏むような場所じゃないキツいコーナーのインを外から押さえつけられればアクセルを抜かざるを得ず、一瞬にしてとてつもないフラストレーションが溜まってくる。
大きく凹んだ白いガードレールがここを抜けきる難しさを物語っていて、なんとか踏みたい気持ちを抑えて曲がりきる事だけに神経を集中させた。あと少し、あと少しでこのコーナーも終わって、立ち上がりで思い切り踏むことができる。相手だってラインを絞られているのは同じはずで、ここから立ち上がりならこっちにアドバンテージがあるのだ。それまでの一瞬が無限のように感じられて、息を自然と止めながらに相手との立ち上がり勝負へと入っていく。
(途轍もない集中状態で最初の攻防を優位な体勢で切り抜ける、この状況で相手の車体が半身でも前方に居ないのが何よりの証拠、細い細い勝ち筋の糸はどうやらまだ切れてはいないらしい。次の左は自身がイン側で若干こちらが有利、ここで勝利を手繰り寄せるためには立ち上がりの勝負で少なくとも互角以上のパフォーマンスが求められる「っ……しまった……!」このバトル勝てるかもしれない、そんな思いが芽生えたことでアクセルを少しでも踏もうという普段なら決して考えないような思考がよぎり、立ち上がりで一気にアクセルを踏み込む。応答よくリアタイヤへパワーが伝えられ路面を蹴っ飛ばし切れ味鋭い加速……しかし、勝負に逸ったアクセルワークの結果、らしくもないホイールスピンを起こしリアが大きく流れ軽くバランスを崩してしまう、スピンギリギリのところをなんとか押さえつけるもその一瞬のロスはこの限界ギリギリのバトルにおいては致命的だ、ここにきてつけ入る隙を与えたことで再び相手は先程のようにこちらの走行ラインを潰しにかかってくることだろう、しかも今回はこちらの方が明確に不利な状況にある、さっきのように無理矢理な攻めをせずとも悠々と相手のしたい事を通せるような状況に自分がしてしまった、悔しさを滲ませながら再び前を見据える。もうミスを挽回するチャンスは無いかもしれないがそれでも前を向き相手の全力にはこちらも最後まで向き合うのだと横に並びかける相手の車体一瞥し左コーナーへ)
(/尺稼ぎ描写失礼いたします、お互いのスタイルの対比みたいなのはここまでで上手く出せたかなと思っているのですが、このバトルの決着についてどんな形を考えているか確認しておく必要があるかなぁと思いまして、お考えをお聞かせいただければと)
「やった……!勝った!!」
突発的に始まったにしては限界ギリギリの勝負が立ち上がりで起きて、FR同士どちらがどれだけ恐れずに踏んだかで勝敗が決まる。隣の様子なんて気づかないまま両者ともにアクセルを踏み込んだが、2人仲良くホイールスピンを起こした。彼女はおそらくS2000特有の高回転のツケが回ってきて、こちらは横Gが抜けきる前に我慢ができずに踏み込んで、そんな互いに違う理由で同じような挙動を起こし、低速ながらも接触ギリギリのコーナーが終わった。
だがここからのトラクション勝負なら僅かにこちらに分がある。コーナリングマシンの短いホイールベースと違って、こちらの長い車体と重さが限界を引き上げてくれている。この勝負はこっちがもらった。
「――――ぇっ…?」
だが、そんなニヤついた顔を突然背後からライトに照らされる。さっきのS2000がそんなに早く後ろに行くわけがない。なら今後ろについた車は何だ。バックミラーで確認しようにも暗い峠ではそこにもう一台何かがいる、ということしかわからない。さっきまで二人分のスキール音しかしていなかったはずなのに、気づけばドロドロとした歪なエンジン音が後ろから迫ってきている。
只者ではない、そんなプレッシャーに普段のアクセル狂いも鳴りを潜めて、後ろから首元を噛みちぎられそうな圧倒的な威圧に冷や汗を浮かばせる。
車種はまだわからない、だがワイドなボディからして化け物地味た雰囲気を感じさせる。だからといってこんなところで譲るわけがなく、そのまま三つ巴のバトルが始まった。ここからは中盤の終わり際で、狭い道幅のせいで2台並んだ今、後ろの謎の車に抜かれる理由はない。だがここを越えて終盤のコースに入れば道幅は突然広くなり、高速道路整備用の二車線道路が現れる。そのうえ低速と高速コーナーが交互にやってくるここではライン取り次第で如何様にも配置が変わる場所で、車とテクニックの両方が求められる。
ならば尚更引く気にはなれず、少し癪だがアクセルを抜いてまたS2000の背後につけば、自分、そして後ろの車の一列となった。こっちはもうハイテンションゾーンには入っているのだ、何処の誰とも知らない2台にホームコースで負けてなるものか、とS2000のリアへ鼻先を接触寸前まで近づけた。
(/はい!まぁ見ての通りちょっと別のイベントを起こしました。ここからは三つ巴バトルになりますが……ひなのはすぐに離脱して、謎の車とのタイマンになります!)
一体何が……?
(スピン寸前の車体のコントロールを戻すのに集中していたことで背後で起きている異変に気づけなかった、ここで必ずこちらの頭を押さえつけるようにような形であのシボレーは仕掛けてくる事だろうと踏んでいたその目算は大きく外れ、後方に引いていったことに戸惑ってしまう。もしや、ここは敢えて譲って高速セクションでぶち抜くシナリオなのだろうか……いや、それはないだろう、ここまでの走りで他人をおちょくったり侮ったり、そんな事をするようなドライバーには見えなかった、むしろ気持ちの良い走りっぷりに他人との競争に然程興味のなかった自分が珍しく熱くなれる、そんな相手だった。だとすればマシントラブルか、それとも想定外の何かが起きたかの二択だ「……もう一台、いる……?」冷静に気を取り直し改めてバックミラーへと視線を向ける、そこでようやく後方にもう一台いることに気づく、いつの間にそこに?という疑念を抱くと同時に、このハイペースのバトルに軽々割って入れるその尋常ならざる気配に息を呑む「無粋な真似をしてくれますね……」只ならぬ強敵の登場への驚き、しかし同時に自分たちのバトルに水を差す存在への怒りがふつふつ込み上げてくる、礼儀を重んじる性格故に礼をあまりにも欠いた乱入は許せなかったのだ。一度深く深呼吸、先頭は譲らない……そう決意を固めると不思議と頭の中がクリアになっていく気がする。車体がフラッと揺れる、そんな挙動すら掌握し完全にコントロール仕切っているかのように走行ラインを遮るものがないS2000は水を得た魚のように甲高いスキール音響かせながら左コーナーをこれまで以上の切れ味でクリアしていく)
(/了解しました!ちなみにですが、後からキャラの設定を付け足していくのってアリですか?当方、話しを進めていく中でライブ感で設定を盛っていくのが好きなたちでして、現状追加予定なのはもう一人の別人格に近いものなのですが……一応その片鱗だけ覗かせつつ、ただの極限集中状態のどちらともとれる描写でお返事書かせていただきました)
「……離れないっ、全然乗れてるはずなのに…!」
三つ巴のバトルは3台が縦に並んで続く地味な絵面になるが、ドライバーとしては最高のテンションで乗れている。前のS2000もやはり良い腕なもので、こっちが全力で飛ばしていても追いつき離されを繰り返してくれるくらいには実力がある。おそらく突出している能力が違うのかある一部分で勝ってもある一部分の技量ではしっかりと負けていて、悔しいが手放しに称賛もできる相手だ。
だが後ろからかけてくる圧はどこか違う。バトルで煽られるようなそれというより、道行く先の障害物としてカウントされているような走りが背中越しですら伝わってくる。バックミラーを見れば相手のヘッドライトが見えることはなく、リアの真後ろから照らされているらしい。ということは接触ギリギリまで詰められているということであり、その上何度ミラーを見てもずっとそれを維持している。コーナーだろうとストレートだろうと関係なく、延々と同じ間隔で追い詰めてきているのだ。そんなポテンシャルが車にあるのかドライバーにあるのか、どちらにせよこちらのハイテンションに焦りを一滴垂らして、歯車を狂わせるには十分すぎる威圧だ。
ここからは中盤も終わり道幅が広くなる。代わりにキツイ左と緩い右が交互に繰り返されるテクニカル区間で、前も後ろの車も一筋縄で勝負が決まるところじゃない。寧ろラインが自由になれば強いのはこっちのマッスルエンジンで、中盤最後のコーナーは後ろの車を引き剥がそうと思い切り踏み込んでコーナー出口へと向かう。
「へっ……消えた? っな゛っ…!?」
こちらのタイヤの限界ギリギリのグリップをしっかりと路面に伝えながらアクセルを踏み込めば、心地良いスキール音とともにトラクションがかかる。我ながら良いコーナリングで、道幅がゆっくりと広くなるここならある程度のスライドも許される。
そんな思いでバックミラーを見たが、さっきまで後ろに張り付いていた影は少しも見えず、代わりに右からヘッドライトが切り込まれた。ここは車3台も並べないコーナーの出口、いつインを差されたか知らないが、コーナーの途中で無理やりラインを変えてきたとしか思えない。なのにこっちよりも遥かに安定した様子で曲がっていくし、今気づかされたが隣の車はさっきからほんの少しもスキール音をあげていない。つまり、加速とタイヤから出るロスが0に近いのだ。
隣の車体を見る余裕もないが、ここで踏まなければ次のコーナーでカウンターをもらい負ける。何処の誰とも知らない相手に煽られたあげく負けてたまるか、と闘争心からアクセルをさらに踏み込んだが、これは明らかに悪癖だった。
当然さっきまでスライドをしていた車体は横Gと絡み合って必要以上に回頭し、気づけば車体がスピンをしていた。ブレーキとクラッチで姿勢を立て直すまでに2周くらいはしていたはずで、もうこの差は埋められない。だが、せめてあの車がどんなドライビングをしてどんなヤツなのかを見届けようと再び加速し、その背中を追った。
とてつもなく速いそれはまたs2000の後ろにぴったりと張り付いていて、かなり距離が空いてもその勝負の行く末だけはなんとか見ることができる。背後からみたあの車はブレーキランプが真横にまっすぐと伸びて、どこか丸いシルエットの下からリアタイヤがほんの少しも見えている。巨大なウイングに大きな車体、コーナーで減速したその姿を見れば、また圧倒的な格の違いに息を詰まらせた。
「ポルシェ……911 ”GT……3”!!」
(/全然大丈夫でございますよ!ここから負けイベントみたいにはなってしまいますが、是非やっちゃってください
ちなみにこのポルシェが現れた時のBGMはSpirit of the nightのイメージです()
……っ
(背後から感じるプレッシャー……などと生優しいものではない、これはもっと異質なもの、根本的に何かが自分たちとは違う。シボレーのドライバーも文句のつけようの無いぐらいの強敵だったが、その印象すらも霞んでしまうほどの存在感を放ち続けている。後ろなんて見なくてもピッタリ張り付いてきているのはシボレーではないのは明白であった、たったの1コーナーの攻防で背後で何が起こったのかはわからないがあれほどの実力を持ち合わせているシボレーのドライバーがオーバーテイクを許したのだということだけは事実で。しかし、不思議な事に背後の車からは攻撃性、闘争心が全く感じられない、ただその場に在るというだけでこの場にいる両者を呑まんとする迫力があるのだ「!?しまっ……」全くの未知との遭遇への動揺、途切れる集中力、そこでようやく明らかに自分が車両の限界を明らかに超えたような領域に踏み込みかけていることに気がつく。普段の自分なら決してしないような無茶苦茶でアグレッシブな走りが齎す未体験のゾーン、視覚的に狭まっていく道路に本能が警鐘を鳴らし、そこから更に踏み込む胆力は無かった。意識的にアクセルを緩め減速するがそれでも普段の自分からすれば明らかなオーバーペース、ヘアピン最後の右コーナーでインにつかなければいけないところが車体はアウト側へと膨らんでいき、そこを突くようにインへとノーズをやすやすと差し込まれてしまって)
(/了承いただきありがとうございます!とりあえず負けイベントということで魔物の目覚めは先送りで(流石に一度目は勝てるレースで出したいので)もう1ステージ上の可能性を匂わせる程度でここはフィニッシュとさせてください。それとももう少し引っ張った方が良かったですかね?)
「なんでこんな所に……こんな車…!」
ポルシェ911といえば言わずと知れたモンスターマシンで、車に詳しくないこっちだって知っているものだ。それでいてあの独特なワイドボディとウイング、それに加えてわざとらしいGT3だなんてエンブレムがあれば、今目の前にいる車がまったく別次元の相手だと言うのがわかる。このままプロドライバーのサーキットに持っていったて良いような車がどうしてこんな辺境の峠にいるのかはわからないが、あの車からは心底つまらなそうなオーラがにじみ出ている。
私達がつまらないというよりも、レースそのものに対する情熱やテンションというのがまったく感じられず、寧ろどこか悲しげなようにも見えてくる。なのにその車は異常な程に速い、S2000がこっちの付いていくのがやっとの領域に入ったというのにまだぴったりと張り付いていて、そこに限界の雰囲気は微塵もない。世界一の車メーカーが作った最強の車両、そのダウンフォースとサスペンションにかかればこの程度のコーナーはスキール音も鳴らさずにぬるりと、不気味なほどよく曲がっていくらしい。
エンジン音だけを響かせながら、物理法則を無視して走っていく銀色の車体は、哀愁漂う背中も相まってまるで幽霊を見ている気分だ。そんな姿もコーナー一つ抜けた先ではもう消えてしまっていて、どうやらオーバーテイクされたS2000のテールランプだけが見えていた。
「……ふぅ、まんまと幽霊にやられたね、私達。」
そうして一幕の勝負が終わり、すっかりスローダウンした二台でこの峠を走りきった。ここのゴールラインは廃小学校を過ぎたところで、ちょうどよくここには広いグラウンドに車を停めておける。S2000もお誂え向きのここに駐車しているはずで、お互いを讃えるとともにあの化け物の話をすぐにでも共感したい思いで車を降りた。
降りるなり小さく息をつき、車に張り付いた夜桜の花びらをつまみながら、バツの悪そうな顔でS2000の方へと声をかけた。
(/いえいえ!ちょうどいい感じでございます。覚醒イベントは楽しみですねぇ。
この後は自己紹介でお互いを認知してもらいましょうっ)
お化けではなくポルシェでしたよ?911 GT3……改めて初めましてですね、私は邑崎春風と申します。はるかぜと書いて春風です
(結局バトルは完全に水を差された形となり有耶無耶な決着に終わる、あの銀色のモンスターマシンを駆るドライバーは自分たちのことなど歯牙にもかけていなかった、戦う土俵にすら上がれていなかった自分たちが勝敗を語ることすらおこがましいことだろう。悔しさよりも一気に脱力感が押し寄せてくれば、あのシボレーのドライバーと示し合わせたわけではないが廃小学校のグラウンド内に愛車を停めて降りては側にある桜の木の下に立ち、少し遅れて入ってくるその車体を視線で追い。やがて停車した車内から降りてきたのはやはり遠目に見た印象どおり自分と同年代ぐらいの少女で、開口一番あのポルシェについて触れてくる彼女へ向けてそれが比喩表現とはなんとなく頭で理解しつつもゴーストや魔物の類ではなくれっきとした実在する車種であると、キチンと車名を口にして訂正をしてしまったのは元来の真面目さ故か、そんな風になんとなくズレたやり取りをしながら、無粋な乱入者が現れるまで共に熱いドッグファイトを演じた彼女へと改めて感謝と敬意を示し恭しくお辞儀をして名乗って)
「んぐ……あぁんなのお化けみたいなものでしょ」
降りてきた彼女は如何にも大和撫子といった様子で、堅実な走りをしていた姿から想像していた通りの見た目だ。ただうちに秘めるスピリットはさっきのバトルでしっかり感じさせてもらって、最後に見せたアグレッシブなドライビングの片鱗からして、気は合いそうではある。まぁちょっと冗談が通じないタイプらしいのでお堅い話にはついてけそうにないけれど。
「私はひなの、昼間はここで走り込んでるの。」
と彼女の姿をじっと見るのもほどほどにして、こちらも向き直ればしっかりと名前を伝えておくことにした。周りじゃ同じホームコースでのバチバチのライバルで険悪な子達も多いけれど、こんなド田舎の廃道で出会える人に対して突き放すようなことはできない。寧ろこの難しいコースを知る仲として、そして珍しい同年代のドライバーとして、快活な笑みとともに挨拶を交わした。
「あっ、そーだ、そのS2000……速いよね…どこか弄ってるの?」
そうですね……確かにあの物理法則を無視したような挙動は超常現象と言ってもいいぐらいではありましたが……
(一度は否定してみたが実際に目の当たりにしたあのポルシェの走りを改めて思い返して見ればあまりにも規格外、まるで空想上の伝説の生き物を実際に目の当たりにしたかのようなインパクトがあり、お化けという表現も強ち全くの出鱈目という訳でもないかもしれないと思い直しながら、彼女の言葉に耳を傾ける。話を聞けばやはりこのコースをかなり走り込んでいるらしい、そうであればスタイルは違えど走っていて思考がところどころでリンクするような、抑えるべきポイントは抑えたあの走りにも合点がいくというもの。そしてあの気持ちのいい走りっぷりから感じた印象そのままの快活で裏表のない気のいい少女といった雰囲気で個人的に人間として好感を持て「機械式過給機……一般的にはスーパーチャージャーと呼ばれるものを搭載し、応答性と中低速域での出力を高めてあります。コーナリングマシンとしての側面を持つこれ(S2000)には最適なチューニングであるかと。最高出力を高めても限度はありますし何よりターボエンジンは少々音が……」自身にとって関心の強いメカニック分野への質問、饒舌になってエンジンのチューニングについて話しはじめ、利点を話すが単純に他者より速く走らせるための拘りというよりは最後に付け加えた一言が本音であるようで)
「ぉ?お、おぉ、う、うん。音……」
彼女の車について尋ねればぱっと彼女の顔色が変わった気がして、次の瞬間には熱く改造を語られていた。スーパーチャージャーくらい私でもわかるし、たしかターボと違って低速域でも安定した出力が得られるものだった気がする。たしかにこのS2000はこんなスリムな格好をしながらもドカンと加速をしていったし、あの異常な加速はそういうことらしい。
まぁそれよりも私は彼女のギャップに気圧されていて、あんなに凛とした様子で物腰柔らかって雰囲気だったのが一気にこんな早口になるのは想像がついていなかった。この世界にいるのだから車に対する情熱は人一倍あっても不思議ではないが、こういう見た目でこんなタイプなのは初めて見た。
「音?音なんてあってなんぼじゃない?」
と彼女の印象の話はさておいて、彼女のいう音が……というのはどういう意味でかとまた尋ねた。私はエンジンが吹き上がる音やタービンが空気を飲み込んでいく音なんかは大きければ大きい程テンションがあがるタイプだ。減速時にアフターファイアが鳴る時だって高揚するもので、彼女はそういう所は見た目に違わずおしとやかなんだろうか。
いいえ、確かにエンジンサウンドは運転を楽しむ上で気分を高揚させてくれる良きスパイスになりますが、過ぎれば車との対話を阻害する劇毒となってしまいます
(表面上だけではわからない深い部分での仲間意識のようなものを感じたものの、どうも価値観に関しては彼女とは一致とはいかないらしい、むしろ真逆であるとすら言える意見の対立に彼女が初対面の相手だということも忘れていつになくムキになって自分が愛車に求めるのがあくまでも自然なフィーリングであることなのだということなど持論を熱く語ってしまい「……コホン、失礼いたしました。っと、もう、こんな時間……明日は入学式だというのに少し羽目を外し過ぎてしまいました……明日に支障が出ますので私はこれにて失礼いたしますね」熱く語り終えてから、ふと相手は友人でもなんでもないのにこんなにも自分の意見を押し付けるように語って何をしているのかと、自らの行いを恥じるよう気まずそうに小さく咳払い。それからチラリとスマホで現在時刻を確認すると結構ないい時間で、流石に入学式前日ぐらいは控えるべきだったかとも思うがどうしても日課をこなさずにはいられず、ポツリと入学式について独り言のように呟くと改めて相手に向き直り一つお辞儀をして踵を返そうとして)
「た、対話?ど、毒……?」
こっちがきょとんとした様子で何気なく尋ねたことは彼女にとって深い拘りがある部分らしく、さらに勢いを増して返事が返ってきた。なんだか難しい表現をするもので、こんな綺麗な見た目をしているのにもしかして相応の変人なんじゃないかと早くも気づいてしまった気がする。いやだいたいS2000にスーパーチャージャーなんて見たことないし、静かで落ち着いた雰囲気から繰り出される高回転はまさしく車の印象とぴったりだ。
「て、ぉわ、こんな時間…!う、うん、じゃあまた!」
と彼女が時計に目を落とせばこちらも携帯の画面に映る時間を確認して、気づけば日を跨いで随分経ってしまった。こっちは明日入学式というのになんの準備もしていなくて、彼女が踵を返したのと同時にこっちも慌ててドアを開けた。窓越しに手を降ってまたの再会を願って、そのまま走りだした瞬間にさっきの彼女の発言を独り思い出した。
「ん……?入学式…??」
(この辺で場面転換しますね。
翌日、入学式も終わってホームルームも終わり、下校の時間になります。ただ大部分の生徒は部活動見学にいくので、2人はそこで出会う流れになります。
第二話みたいな形になりますので、こちらが後ほど書き出します!)
「ぇ゛っ、昨日の……」
なんとか間に合った入学式を終えて新しい学校生活がはじまれば、初めての刺激にワクワクが止まらない。身長に合わせたら少し胸のキツイ以外はセーラーもなかなか悪くないもので、新しい友達もできそうでのあり、これなら必死に勉強してここに入った甲斐があるものだ。
ただもっとこちらが楽しみににしているのはもちろん部活動で、この田舎の区で数少ない自動車部のために入学をしたのだ。ホームルームが終わって各々好きな部活動の見学に知り合った子は行くみたいだが、残念ながら私はテニスもダンスも興味はない。一目散に向かうは自動車部で、さっき運動場の隅にあったガレージっぽい建屋を目指して歩みを進めた。
ただ大きなガレージの前に人はおらず、古びたシャッターが閉まっているだけだ。どうにも人気がないのが気になるけれど、もっと気にするべきは見覚えのある顔が同じくシャッターの前にいる事だ。文字通り昨日の今日で忘れる顔でもなく、制服で雰囲気が変わっているがあのS2000のハンドルを握っていた彼女だろう。
……あら、ひなのさん。昨日の今日で会うとは奇遇ですね、もしかしてひなのさんがこちらの部員ですか?
(自動車部の部室であるガレージの前、部員らしき人影が全く見えず静まりかえっている様子に疑問符浮かべつつも、とりあえずもう少し待ってみる事にして。そうしてしばらくして耳に届くのは何処かで聞いたような声、振り返ると昨晩のシボレーのドライバーが立っていて、何となくまた会うような気もしていたがよもやこんなにも早くその機会がやってくるとは思ってもみず、しかも同じ学校の生徒だという事実にも軽く驚いていて。しかし、同時にこのタイミングでここに現れたということは彼女こそがこの自動車部の部員、もしくは部長であったりするのだろうかと思い、実際あそこまでのパフォーマンスを発揮するだけの実力があるのだから正式なメンバーであったとしても何ら不思議なことではないと思い、同じ新入生である可能性を考慮に入れずそう問いかけて)
「んぇ…?うぅん、入部希望。」
S2000の彼女はたしか入学式と言っていたし同じ学年であるはずなのだが、どうやらこっちは2年生として見られているらしい。すぐに首を振って否定すれば、まだ部活にも入っていない同級生だと伝えることにした。
どういう偶然かわからないけれど既になによりも密接なコミュニケーションをした相手が同学年にいると思うとなかなか心強く、そのうえきっと同じチームで走るとなれば良いライバルにもなってくれそうだ。
「ただなんか……人気が全然ないんだよね…」
というのが理想なのだが、現状このシャッターの奥に人気もなく、自動車部があるのかもわからない。たしかに案内には書いてあったしネットでは一応出場記録くらいでてくるもので、入った途端に廃部なんてことはないだろう。
「何か知ってたりする?」
なるほど、私と同じ新入生だったのですね……私は本当は自動車メカニック部へ入りたかったのですが実は去年を最後に廃部となってしまったそうで……なのでそれに近い活動ができそうなここを選んだのですが……どうなっているのでしょうか?
(どうやら彼女も自分と同じ新入生で自動車部への入部希望者であると知れば納得して頷き、とはいえ自分の方は昨日こそ珍しく追いかけっこに夢中になったりもしたが本来は車の走りを競い合わせるようなレースの世界には殆ど関心がなく、この学校を選んだ理由も当初はこことは違う自動車のメカニックを中心に行う部への入部を希望してのものだったが部員不足によって廃部になってしまったと聞き、この自動車部にもその代替案としてやってきたに過ぎないことを正直に語り。しかし、この感じではこの部すらもマトモに活動できているか怪しいのではないかと、あくまでも妥協してここに来ている身である己にはこの部の事情など詳しく知る由もなく何がどうなっているか分からないものの、この先の展望に少しばかり暗雲が立ちこめていくような気がして「一応案内にはここで活動しているとありましたよね?」新入生向けの体験入部の案内にはキチンと名前があり、活動の拠点がここである事も確認だけはしてきている、一応それが見間違いなどではないことを再度ここに来ている相手にも確認するよう問いかけ)
「へぇ、整備の方に興味あるんだ。」
彼女も同じくここに入部志望らしいのだが、聞く感じバトル好きというわけではないらしい。寧ろ彼女が興味をもっていたのはメカニックの方面らしく、たしかに昨日の熱弁ぶりからすればそれも納得できる。
とはいえ案内に乗っておいて部活動の紹介もなく、なんなら部員1人歓迎に来ないだなんて不思議な話で、いよいよ廃部が疑惑にあがってきた。
「うーん……ボロボロのガレージだし廃部なのかなぁ…」
――ボロボロでも廃部はしてないよぉ……
と一応使ってはいるみたいだがちょっと年季の入ったシャッターを見て、今日のところは帰ろうと呟いた時、背後から声がした。間の抜けたようなゆっくりとした声色なので特別驚きはしなかったのだが、話を聞かれていたのかと振り返る。
そこには春風より少し身長の高い影があって、セーラーのリボンの色からして少なくとも私達より上級生なのだろうというのがわかる。髪色は世にも珍しいアッシュグレーといった具合で、後ろにふわっとまとめられていて、なんだか静かな大人らしさを感じた。
――もしかしてさぁ…入部きぼう…?
振り返った私達の姿を見てもどこかマイペースに話を続けられて、相変わらず間の抜けた感じだ。まぁ丸眼鏡の奥の垂れ目に怖い印象も受けないし、声色も優しくはある。なによりその口ぶりからしてこの部活の関係者らしいのははっきりしていて、うんうんと頷いた。
自動車部の先輩ですね。私は一年の邑崎春風と申します。入部するかはまだ検討中なのですが、まずは体験入部という形にはなりますがお願い致します
(この学校で自分のしたかったこと、頼みの綱の自動車部すらも廃部となれば実現は限りなく困難となり、いよいよこの学校を選んだ意味もなくなってきてしまうが、事情はなんであれ廃部であればそれも致し方無し、それならそれでこれまで通り一人でやってきた事を継続して個人的に行うまで、本当は同好者との意見交換などを通じてスキルアップなどを図りたかったところだが仕方がないからこれからも自力で地道に、そこまで考えその場を去ろうとしたところで背後より声をかけてきたのはアッシュグレーの髪を後方でまとめた丸メガネの大人びた雰囲気の女性、どうやらその口ぶりからして自動車部の部員であろうことが伝わってくれば素早く姿勢を正し、自己紹介。自分の本当にしたい活動とは多少の乖離があるため本当に正式な部員になるかは保留としておきたいところ、なんとなく先輩は優しそうな人で悪い人にも見えず入部に対して最初から前のめりな同級生の少女は自分とはベクトルが違うが、潔く気持ちいいぐらいの車好きであり年も同じとくればそんな人たちと一緒に活動するのなら自分の青春を託してもいいのかもしれないと、若干正式入部の方向に心を動かしながらもひとまず現状の自身の考えを礼儀正しく、真っ直ぐに伝えて)
「入部希望です!!」
――おぉ~……珍しいねぇ…じゃ、まぁ見学だけでもっと…
春風は少し遠慮気味に体験入部なんて事を言うが、私は他の部活なんて興味はない。廃部になっていないという事実だけでも十分で、規模も設備も関係なく二つ返事で頷いた。眼鏡の彼女はふにゃっとした笑みを浮かべて頷いて、こちらを通り過ぎればガレージのシャッターに手をかけた。
21世紀も後半に入ろうとしている今にして思うとかなり旧式のシャッターが開けられれば、中は想像よりもずっと綺麗な状態で保たれており、工具に設備にと町工場レベルのそれは揃っている。
そんな中で目を引くのはガンメタリックのR32とレーシングブルーのシビックFK8、そして奥でカバーをかけられている一台だ。こうして輝くボディがあると自然とここの自動車部がまだ生きているのだという実感が湧いてくるもので、バトル前のワクワクが刺激されてくる。
――ぁ、私は楓。ここの副部長やってるんだぁ
こちらがキラキラとした目で周りを見渡していると改めて声がかけられて、彼女は水色のシビックに手を当てながら振り返った。どうやら彼女も春風と同じホンダユーザーらしい。それと同時に問われたのはおそらくマイカーがあるかどうかで、私達二人みたいに経験者が来るって訳でもないらしい
――もう相棒は見つかってる?
名前:鈴木 楓(スズキ カエデ)
年齢:17
容姿:身長164cm。パーマをかけたようなカールのかかる髪を後ろでまとめ、自分の車と同じカラーのクリップで止めている。髪色はアッシュグレーに近いがどちらかと言えばくすんだ黒髪といった具合で、カールも近くで見ればキューティクルの傷みによってできている天然のものである。体系はいかにも平均的といった具合だが、どちらかと言えばスリムな方に入る。アクセントに細い縁のオーバルメガネをかけており、その奥の垂れ目も相まってたぬきっぽい抜けた印象を与えている。
性格:常にマイペースな雰囲気で、人当たり柔らかな代わりにつかみどころがない。良いふうに言えば誰に対しても分け隔てなく、悪く言えばだれに対しても一定の距離がある様子で接している。ただそのゆるふわな笑みの裏に腹黒い何かがあるというワケでもなく、ただ単純にぼーっとしがちな性質なだけである。
車種:ホンダ シビック タイプR FK8型
カラーはレーシングブルー。無限の手がけるエアロパーツをふんだんにあしらったエクステリアは鋭い印象を与えるとともに理想的な空力を生み、自ら手掛けた軽量化によって見た目と性能の両立を計っている。マフラーはトライデントを装備し、そっから繋がる吸排気系には徹底的にチューニングがほどこされる。FF特有の性質をなんとか抑える様に足回りも調整され、何度も繰り返された試行錯誤がなされている。
備考:シズハル公道最速部の副部長にしてNo.2(全二人)。ホンダの下請け先となる町工場の社長令嬢であり、根っからのホンダ狂かつメカニック狂。現状シズハルの車両整備を担当しており、パーツや知識などは顧問のよしみで仕入れている。ドライビングセンスに関しては人並程のものしかないが、自らの性質に合わせたチューニングを施したシビックの戦闘力は高い水準にまとまっており、このままニュルブルクリンクにもっていっても恥はしないレベルである。シビックを愛車に選んだ理由はホンダ好きということもあるが、そんなホンダが作り出した完成品であるタイプRを自らの手でさらに強く速くしてみせるという対抗心の表れでもある。
(/副部長さんのPFになります!)
はい、よろしくお願いします楓先輩……っ──!
(ここの副部長、つまり実質的なNo.2ということになるだろうか、何にせよこれからお世話になるかもしれない部の先輩ということに変わりはなく重ね重ね丁寧に挨拶をするが、彼女が手を触れた愛車であろうシビックを見た途端に目の色を変えてそばへと駆け寄っていって。勿論自分と同じホンダユーザーというだけで一目置くところだが、注目すべきはその車の完成度で。まずぱっと見外観からでもわかる無限製のエアロ、メーカーの純正品ではないが創始者の縁からホンダ車との親和性が高く準純正品といって差し支えない仕上がり、更には排気効率を考えてのものだろうトライデントマフラー、他にも目の見えないところにも多くの手が加えられているのは明白、チューニングやメカニックをあくまでも個人の趣味の範疇で嗜んでいるような自分からすれば憧れすら抱く程で、恐らくこのままサーキットに持っていっても十分通用するだろうことは想像に難くなく、いつかは自分でもここまで拘りを持ったチューニングを施した車のステアリングを握ってみたいと思える垂涎の品で「このシビックは楓先輩のものですか!?素晴らしいです!もっとじっくり見させていただいても……あっ、す、すみません……あまりに素敵な仕上がりだったもので、つい熱く……」所有者の先輩とシビック交互に見やり挨拶の時の礼儀正しさが嘘のようにぐいぐい押していってしまうが、新入部希望者である陽菜乃が完全に引いているのを見て、またやってしまったと赤面しつつクールダウンして)
「そっか、同じホンダ同士だもんね」
――お、わかってるねぇ
先輩のシビックをみるやいなや春風はそちらに釘付けになっていて、興奮を抑えられない様子で一旦冷静になって顔を赤くしつつも、目線がチラチラと向くのを押さえられていない。昨日の口ぶりからして随分メカ系統にはお熱な雰囲気であったし、加えてホンダにも強い拘りがあるのだろう。まぁたしかにあの音が変わる高回転領域は見ていても聞いていても心地が良いし、品のある高音が彼女ら2人には似合っている気がする。
――そ、私の相棒。君は?シビック?インテグラ…?それとも…アコードとか?
そんな春風と同じく先輩も同じ穴の狢らしく、ゆったりとしたペースは変わらなくてもどこか目が輝いた気がする。それから色々とホンダ車をあげたがS2000の名前はなくて、彼女はタイプRに拘りがあるようにも思える。
そんなホンダ好きの会話にアメリカンマッスルカーの私はあまりついていけないけれど、浜松生まれ浜松育ちとしてはホンダの魅力はよくわかっているつもりだ。
私の愛車はS2000になります、楓先輩のものには遠く及びませんが私も独自にエンジンなどに手を加えてまして……
(楓の挙げた中には自身の愛車の名前はなかったため、こちらから車名を告げて。同じホンダユーザー、そしてこだわりのチューニングを追求するその姿勢、こんなにも話しの合いそうな人物はこれまでに出会ったことがなく、自分が変わり者という自覚があっただけに同世代の友人達の前ではずっと本心を隠し抑圧してきた反動からか一度は我に返って気持ちを落ち着けたものの、やはりすぐに気持ちは再燃してしまい再び、車に対する向き合い方のタイプの違い等から蚊帳の外になり気味の陽菜乃をそっちのけで楓へと自身のS2000に積んだスーパーチャージャーのこと、自身が重視するコーナリングに対する美学とそれに係る足回りのチューニングに対する自分なりの考えなんかを、まさに立板に水のごとく夢中になって語ってしまって、こうなるともう止まらず)
「話の回転率も高いんだ……」
やはり愛車の話となると一気に声色が変わって、それでいてマシンガントークを繰り広げられるとまさしくVTECの様だ。途中までは聞けていたけれどだんだんとマニアックな整備の話になってくるといよいよわからなくなってきて、ぽかんと双方を眺めることになった。
ただ先輩の方はそんなVTECトークにしっかりとついて行っていて、うんうんと頷きながら内部の話を聞いている。お互いホンダ車ということもあってか会話は弾んでいるみたいで、散々語り合った後に先輩が口を開いた。
――よし、じゃあ入部決定でいいんじゃない……?運んできなよ、S2000と………えっと
「5代目カマロです。」
――カマロなんて乗ってるんだ…意外……
どうやらもうこれだけ熱意があるならさっさと入ってしまえという訳らしく、スペースも十分なガレージに持ってきてから話がしたいとのことだ。私の車種を知らない先輩はちょっと言葉に詰まったが、こっちから述べれば少々驚いた顔を浮かべた。
最初から入るつもり満々だったこちらはすぐに最寄りの貨物ステーションまで車を運んでもらうことにして、携帯で遠隔呼び出しをした。学校に隣接する一般道がない代わりに一般大型貨物運搬用のリニアが敷かれていて、妙な話だが車が電車に乗ってやってくるのだ。ロマンのかけらもない話だが、便利といえばとてつもなく便利な世の中なので文句は言えまい。
と学校付近のステーションで下ろしてもらえば、おそらく唯一この学校に通じている大きな歩道を遠慮がちに走らせ、向けられる珍しげな視線にそこのけとガレージまで運んで来た。
は、はぁ……ですが、私は公道レースはあまり……
(これだけメカニックに関するトークで意気投合した先輩の手前、あまりその気持ちをむげにしたくない気持ちはあったが、レースに対する熱量や意気込みでは既に入部を決めてウッキウキな陽菜乃との間にはやはり乖離があるような気がしていて、今でも競い合うことにはそれほど積極的にはなりきれない自分がいて、やはり自分のような半端な気持ちで飛び込むのは……と、どうしても二の足を踏んでしまい。しかし、先輩の押しは決して強くないが、それでもその目には期待の色が滲んでいるのがわかり既に自分に選択権は無さそうだと半ば諦めに近い形で小さく息を吐き「わかりました、それではよろしくお願いします」本当は体験入部で様子を見てからと思っていたがどの道この調子では抱き込まれるのは時間の問題、それならもういっそ入部してしまったほうが早いと判断して自身も車両を遠隔呼び出し、ガレージへと乗り入れて)
――ふふ、乗り気じゃないみたいだね
こちらがガレージに乗り入れてから春風が続くけれど、まだその顔には迷いが見える。そんなに車が好きならここは天国みたいな場所じゃないかと思っていたのだけれど、どうやら全員にとってそうという訳ではないらしい。
先輩も嬉々として招き入れてはいるがその迷いには気づいているみたいで、柔らかで穏やかな口調とともにS2000へと歩み寄った。口調も雰囲気もさっきと変わっていないはずなのに、目元だけはどこか鋭く変わったような気がして、赤色のボディに反射する顔は真剣な色を見せる。
――この子の本気、引き出せるのが他人でいいのかな?
「本気?」
――そ、本気。
先輩は相変わらず眺める足を止めずにフロントホイールの前でしゃがみこめば、ブレーキや足回りを見つめた。私には何を見て何を考えているのかはわからないけれど、春風に説くような言葉は続いて、思わず呟いたこっちの言葉を拾われた。
――この子達は速く走るために作られたからね。競走馬が勝つために走るように……誰より先頭を行くために生まれた。
――追いかける背と、追われる背が必要だと私は思うんだ。どれだけ完璧に仕上げたとしても、隣の誰かより速く走れなければ無意味なのかもなって。
先輩の声色は低いものの、どこか遠くを眺めながら語られるように不確かで、誘い文句としては難しく思う。ただなんとなく言っていることはわかる。要するに絶対的な速さよりも、バトルにあるような相対的な速さを求めたいってことだろう。そんな事を直感的に理解できるのは私がそっちのタイプだからであって、タイムアタックで誰かに勝つよりもバトルで誰かより先にいることの方が大事ではあると思う。
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