ユーフォルビア 2024-10-14 02:31:34 |
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……! はい。不束者ですがこちらこそよろしくお願い致します、レグルス様!
(!! もしかしたら名前を覚えられていないのでは…? と不安に思っていたけれど、別にそういうわけではなかったらしい。初めて名前で呼ばれると、ちょっと驚いたような顔をして。その後すぐ、にへっと表情を崩しては此方からも改めて挨拶を返す。言葉の使い時がややおかしいことには気付かずに───)
私が今相談したいのはお金のことではなくて……
(ユフィの父親は自身の愛娘が望むものならば何でも用意した。(とはいえ本しか頼んだことはなかったが)そのため生まれてこの方実際にお金を使う機会をあまり与えられてこなかったユフィには、この旅路でどれくらいの費用が必要になるのか今ひとつ想像がつかなかった。そこで家出前に忍び込んだのは実家の地下にある宝物庫。長年誰も手を付けず、放ったらかしになっていた宝石やら装飾類やらを巾着袋がいっぱいになるまで適当に詰め込んで、[ごめんなさい。ちょっと持っていきます。ユフィ]とだけ書いた羊皮紙を宝物庫に残し持ち出したのだった。これらの品物にどれ程の価値があるかは分からないが、売ればそれなりにはなるだろうし、当分の間はお金に困らないはず。しかしそれも限りがある。今後旅をする上で持ち金が少なくなってきた際にはまた彼に相談しなければならないだろうが、差し当たり特に問題視はしていないので、彼の見当をやんわり否定してから言葉を続けて。「実はレグルス様と別れた後、今晩泊まる宿を探したんですけど何処も満室らしくて…。先ほど、迷惑になるからとお断りしたばかりで本当に申し訳ないのですが、…泊めていただけないでしょうか。」魔法使いの試験だか何だかで各地から大勢が集まっている以上、恐らく他の宿も満室の可能性が高い。一度提案を断ったにも関わらず再度頼むのは忍びなく思うけれど、背に腹は代えられないと恐る恐る尋ね)
おっ!?おお……それは構わんが……
(捉えかた次第では意味深な関係を示すような少しズレた言葉のチョイス、そんなセリフを表情綻ばせながらこちらへ向けてくる彼女に思わず動揺し、彼女の性格上単に天然が炸裂しただけで特に他意はないのだろうと頭ではそれとなく理解しつつも少しばかり頓狂な声をあげてしまい。普段女っ気のない己が珍しく女性連れで訪れたと思えば見た目は年下にしか見えないたった一人の少女の言葉に翻弄され、振り回されている自身の姿が物珍しく可笑しくて仕方ないのだろう、カウンターの隅で後から入ってきた客の対応をしているロザミーネが含み笑いをチラリと送ってくるのを、少しズレた眼鏡のポジションを正して恨めしそうに見返してから、続く彼女の言葉に耳を傾けて。改まった様子での相談事が今晩の宿のこととわかれば先程のセリフのことも相まって、先に泊まりの提案したのは自分ではあるが若干の歯切れの悪さはありつつも、そういう事情であればとぎこちなく頷く。しかしそれは傍から見れば自宅に彼女を連れ込もうとしたものの一度は断られたが、改めて彼女側から『YES』と意思を明確にされた形……本当に誤解しているのか、はたまた何となくの事情を察しながら面白がっているだけなのか、判断に困るロザミーネのニヤけ顔に深いため息吐きつつ頭を抱えて)
…やっぱりレグルス様はお優しいですね。ありがとうございます。お友達の、しかも男性のお宅にお邪魔するのは生まれて初めてのことなので緊張しますが、えっと…お手柔らかにお願いします…!
(家出を決行して3日。ここまで慣れない野宿でやり過ごし、さらにやっと訪れた大都市シュノークでも今晩泊まる宿が無いというアクシデントに見舞われたものの、現れた救世主のおかげで今夜は久し振りに屋内で眠れることになり心底ホッとした様子で。この長い1日で、彼がかなり信用出来る人物であることは身を持って理解したつもりだし、それに明日一緒にシュノークを発つのなら、旅仲間になった彼の近くに居る方が寧ろ好都合かもしれない。ただ過保護な父親にこのことが知られたら、大激怒の末に彼を八つ裂きにし兼ねないけれど。…彼と店主との間で無言のやり取りが行われているとも知らず、そして次なる言動が更なる誤解を生むとも思わず、ほんのり頬を染めながら恥ずかしそうに感謝の気持ちを伝えて。───宿泊場所も決まって安心したからか、お腹が空いていたことを思い出した。気付けばロザミーネ様お手製料理がカウンター上に並べられている。冷める前に食べようと改めて姿勢を正し、両手を組んで静かに目を閉じては家の風習である祈りを暫し捧げて。それからまずはハーブティーを頂こうと、上に浮かぶレモンバームの葉をティースプーンで掬ってソーサーの上に移動させてから、カップのハンドルを指で摘むようにして持ち上げ。リラックス効果のある香りを楽しみつつそっと一口…。「…おいしい。」ぽかぽかと全身に染み渡っていくのを感じて)
レグルス様のお家に着いたら、作戦会議をしないとですね。
……!あ、ああ、そうだ、旅のプランをしっかり立てないといけないねぇ。どこか立ち寄りたい場所なんかの計画も綿密に練るとしようじゃないか
(どんどん立場が悪くなっている自身の事など当然気づいてもいないのだろう、そんな己への彼女からの殺し文句……のようなもの、実際にはそんな色っぽい要素が皆無なのはわかりきっており、そろそろそういった相手ではない事に気づいても良さそうなものだがこんな面白い状況をやすやす見逃してくれるほど生易しい相手ではなく、口笛を吹いて茶化してくるロザミーネ。もう勝手にしてくれと、軽く目眩を覚えながら目頭を指先で揉んで。しかし、実際に家に着いた後にするべきは男女のそういった営みなどではなく、今後の旅の方針について話し合うことを伝えてくる彼女に助け舟を出された形になれば、日頃計画性とは無縁ないい加減な生活を送っているというのに、ここぞとばかりにわざとらしいぐらいに旅に向けた作戦会議に乗り気な様子を見せて『あら、レグルスここを離れるの?……まあ、それが正解ね、私に言わせればロクデナシよあいつら。いいわねぇ……私ももう少し若ければご一緒させて欲しかったのだけど……』先程までのおちゃらけた雰囲気から一転、シュノークを離れ旅に出ることを匂わせるこちらの会話ににロザミーネは真顔で詰め寄り割って入ってきて、遅かれ早かれこうなるべきだったと訳知り顔で語った彼女は、熱っぽい眼差しをこちらに向けてきていて。そんな目線を受けてバツが悪そうに目を逸らすと「願い下げだよ、お前さんと一緒だと命がいくつあっても足らんのでね」気まずそうに、それでいて彼女への信頼や共に乗り越えてきた死線、そういったものを想像させる余地を残し皮肉っぽく言葉を返し手をひらひら振って)
(ハーブティーで一息ついた後、2人のやり取りに耳を傾けながらも先程彼が美味しそうに頬張っていた料理に目を留める。…食欲をそそる匂い。これは何の肉を揚げたものだろう? メニューをちらりと見ると一覧の中に、“一番人気! コケッホ(※鶏型モンスター)揚げ”と記載されているのを発見。きっとこれだ。お任せオーダーだからオススメ料理を作ってくれたに違いない。そう人知れず予想を立てながら、香ばしい匂いに誘われるままフォークとナイフを手に持つと、小さな一口サイズに切ってからゆったりとした所作で口へ運ぶ。サクサクッとした食感の後にじゅわっと広がる旨み。あまりの美味しさに思わず表情が緩んでしまう。……ロザミーネ様が一緒に来てくだされば、この美味しい料理を何時でも食べられるのでは…? という我欲に走りまくった思考が一瞬脳裏を過り、[そんなこと仰らずに一緒に行きませんか?]とつい口をついて出そうになったが、その前に彼があっさり拒否したのを見て途中まで出かかっていた言葉を飲み込んだ。よくよく考えてみればシュノークで既に立派な店を構えていることもあり、彼女の気にする年齢の問題以外の都合もある以上、自分たちと旅に出るのは難しいだろう。…諦める他なく、とてつもなく残念そうに肩を落とした。───それはそうと、この2人の関係性について気になるところで。熟年夫婦のような、それでいて姉弟のような、戦友のような、不思議な雰囲気。踏み込まない方が良いだろうかと悩んだのも束の間、旺盛すぎる好奇心は此処でも遺憾なく発揮され、カウンター奥の彼女と隣の彼とを交互に見やりながら控えめに質問を投げ掛けて)
……あの、ところでお二人はどういったご関係なのでしょうか…?
腐れ縁だよ。俺がここに腰を落ち着ける前は日銭を稼ぐため色々なことをやったんだが……その先で何かと一緒になることや、やり合うことが多かったんだ。何回か命を獲られそうになったこともあったかねぇ
(自身とロザミーネの関係について問われ、意外にもその関係において表面上は浮ついた事情など一切なかったことを示すように話し。しかしその一方で二人の関係について嘘はないが、互いに明言はした事はないものの憎からず想い合っていた……そんな時期があったのも事実、ついぞお互いに決定的な一言を伝える機会がないまま今日まで来てしまったが、なにぶんなあなあで過ごしてきた時期が長過ぎた、複雑な心境が見え隠れしているが今更改めて踏み込んだ関係になる気はなく割り切った関係で、と考えているのは彼女も一緒だろう、必要以上に場の空気が重くならないように本当に命を狙われた事もあるとおどけてみせると『あら、それに関しては恨みっこ無しのはずよ?あくまでもビジネスなんだから、騙し騙され、奪い奪われは常でしょう?私だけを悪者みたいに話すのはやめて欲しいわね』此方の意図をなんとなく察したのだろう、憎まれ口を叩き言い返してきたロザミーネはユフィの方を見て、彼女に変に誤解をされたらどうするのだと言わんばかりに深いため息を吐き)
……お二人ともとてもお似合いだと思うのですが…。それにしても、あれほど腕のたつレグルス様を追い詰めるだなんて、ロザミーネ様もかなりお強いのですね。
(傍らでのんびり料理を食べつつ、冗談を言い合う2人の様子を眺める。恋愛経験のないユフィに男女の機微は分からないけれど、彼らの間になんとなくいい感じの雰囲気が漂っているのは感じていたし、傍から見ても美男美女でお似合いだと思っていた。しかし言外の意味まで汲み取ることは出来ず、2人のいう腐れ縁だったりビジネスだったりという言葉通りの意味に捉えては、彼らがそういう関係性でないことを心底勿体なく不思議に思いながら率直な感想を溢して)
───まだ話足りませんが、明日も早いのでそろそろお暇しようかと。…どのお料理もとっても美味しかったです。他にもいろいろとタメになることを教えてくださりありがとうございました…!
(そのあとも話は盛り上がり、経験豊富且つ情報通のロザミーネ様は旅支度を整えるのにおすすめのお店や魔導書店の場所を教えてくれただけでなく、美容の秘訣や駄目な男性の見抜き方?など様々な話をしてくれた。ユフィはユフィで、とりあえずの目的地としてオーランツを目指していることや父親が過保護過ぎるあまり3日前まで外出したことがなかったという話、レグルス様と何処で出会ったのかという話を包み隠さずにしたのだった。こうして美味しい食事を楽しみながら、時折接客の合間を縫って話し相手になってくれる話上手な店主とガールズトークに花を咲かせていると、あっという間に時間が過ぎていった。気付けばユフィ達の後に入店したはずの客数名も食事を終えたようで帰り支度を始めている。居心地が良くてつい長居してしまったが、自分達もぼちぼち引き上げないと。名残惜しく思いながらも席を立つと、改めて彼女にお礼を伝えて。「それから、お代はいくらでしょうか。」続けて食事代を支払おうと鞄の中の革財布(これまで使う機会がなかったお小遣いが多少入っている)を探りつつ店主に金額の確認をして)
(軽く食事を済ませて立ち去るつもりが旅立ち前の軽い送別会のような形となり、盛り上がりをみせるが宴もたけなわ、そろそろお開きにしなければ明日に支障が出ると考え席を立てば、代金を支払おうと彼女の鞄から取り出された上等そうな革財布を見やり、育ちの良さそうなのは見てくれだけでなくやはりどこかのお偉いさんのところの娘か……そんなことを考えつつも支払いをしてくれるというなら好都合と顛末を見守ることにしたのだが『あら、いけないわ。こういう時、女性の方から財布を出させる男なんてロクな男じゃないんだから。レグルス……貴方まだ、支払い終えてないツケがあったわよね?それ全部と今日の飲食代、合わせてちゃんと支払いなさい。……もっとも、貴方のことだから纏まったお金の持ち合わせなんてないんでしょうから旅が終わってからでもいいわ、だから……必ずまた生きて顔を出しなさい、いいわね?』どうやら甘えは許されないらしい、確かにここを拠点として当面過ごす予定だった自分には、そのうちそのうちと考えながら溜めに溜め込んだツケがあり、その弱みを突かれると弱い。しかしながら、ツケの支払いそのものは口実に過ぎず二人の旅の無事を祈るロザミーネなりの餞別の言葉であることは考えるまでもなく理解できて、最後まで彼女には頭が上がらないなと顔を伏せて「くく……」と苦笑浮かべ「やれやれ…俺とて男の端くれ、そこまで言われちゃ仕方がないねえ。必ずまた『二人で』来るよ、その時は今日よりもっと盛大に宴でもしようじゃないか、勿論俺の支払いでね」ゆっくり顔をあげて隣のユフィを一瞥、無事再会を願う意図を読み切って二人でという部分を強調し、別れを惜しみつつも男気を見せて返答して退店し。「さて、戻るとするかね。俺の拠点は路地裏にある、はぐれずついてきたまえ」店を出てから自分の自宅がわりとして与えられた拠点を目指し歩き出す、危険があるから足を踏み入れぬようにと彼女に忠告した路地裏へと躊躇いもなく足を踏み入れると、離れずついてくるようにその姿を視界の端に捉えつつ改めて言い聞かせて)
! ふふっ。そういうことでしたら…、また次の機会に。
(先程彼女との会話の中で挙げられた好きになってはいけない駄目な男性の例として、金払いの悪い男、ツケを滞納するだらしのない男、と真っ先に挙げていたがあれはもしかして…いやほぼ確実にレグルス様のことだろうと合点した途端堪らず小さく吹き出してしまって。ここまで道案内をしてもらったお礼と人攫い集団から助けてもらったお礼に彼の分の食事代も支払うつもりだったが、ロザミーネ様の言葉裏に隠されたレグルス様への深い愛情に気が付くと、彼女の意図するところを察して取り出した革財布を引っ込め、その代わりにまた二人で必ず会いに来ると約束することにした。そうして、ぺこりと丁寧に頭を下げてから彼に続いて店を退店したのだった。───店を出てすぐ念の為に再びフードを目深に被り、彼の忠告にこくりと頷くと、傍を離れないよう気を配りながらその後ろを歩く。…思えば1日森を彷徨い歩いたり誘拐犯に攫われたりといろいろなことがあった。知らないフリをしていたけれど体はもうくたくた、そして現在程よくお腹も満たされたのも相俟ってか途端に眠気が押し寄せてきたようで。しかしこの後には作戦会議が控えている。もう少し堪えないとと目を擦りながら彼の拠点を目指して)
……おっと……ったく、仕方がないねえ……
(店を出て歩き出して、こちらの忠告があってか、あるいは今日一日で晒された危険で警戒心というものが相応には身についてきたからか、目深にフードを被り大人しくついてくる彼女を尻目に歩みを進めるが、それにしても店を出てからというものなんだかやけに静かだ。そんな風に考えて足を止めて少し遅れて歩いてくる彼女振り返れば、こちらへとぽすっと身を預けてくる、先程から何やらフラフラしていて危なっかしいような気がしていたがどうやら疲れ果てて眠気がピークに達してしまったらしい、その身体を抱き止めどうしたものかと暫し思案した後[これは介抱であって邪な気持ちは断じてない、余計な事を考えるな]そう自らに言い聞かせながらそっと背負い上げると背中に感じる体温やら諸々の感覚を意識の外に極力追い出しつつ真っ直ぐ早足で拠点を目指し。やがて路地裏の奥まった街の明かりの届かない真っ暗な場所にある古びた物置のようにしか見えない石造りの建物の前に到着すると扉を開けて中へ。そこは乱雑に書物やら脱ぎ捨てた衣服やらが散乱する生活感溢れ過ぎなぐらいの煩雑な手狭なワンルームで、とりあえず彼女を普段自分が眠っている部屋の隅のベッドへとおろしてやって)
(ふと身体が横になった感覚がしていつの間にか閉じていた目を僅かに開けてみると、視界に広がったのは真っ暗闇。どうやら月明かりさえ届かない場所にいるらしい。…ここはどこ。横になったまま数回瞬きを繰り返すうちに段々暗闇にも目が慣れてきて、漸く近くに彼が居るのが分かった。ついぞ疲労と眠気に抗えず気付けば意識が飛んでいたユフィは、此処に至るまでに彼の背中を借りたことも、無意識にぎゅうっとしがみついてしまったことも、つまるところ路地裏に足を踏み入れて以降のことをまるで覚えておらず、きょとんとした顔で彼を見ていたが、一拍置いて段々と頭も働き始めるとなんとなく状況を理解。恐らく途中で力尽きた自分を彼がどうにかして拠点まで運んでくれたのだろうと。「……もしかして私、寝てしまったのでしょうか…?」ゆるりと疲れ切った上体を起こしては神妙な面持ちでおずおずと尋ねて。さらに今自分が寝ていたのが彼のベッドの上であることを認知するや否やハッとした様子。早々に立ち退こうと身体を動かしたはいいものの、その拍子に寝起きのせいかふらついてしまって彼にぶつかり)
す、すみません…。何から何まで…。
……やれやれ、とことん危なっかしいお嬢さんだねえ。あまり心配をかけさせないでくれたまえ
(ベッドは彼女へと貸し出したため、自身はベッド脇の壁に寄りかかるようにして目を閉じて静かに身を休めていて。少しして暗がりの中、仕事柄研ぎ澄まされた感覚によって微かな物音に気づけば薄ら目を開けてその物音の主が今現在自身のベッドで休んでいるユフィであることにはすぐに気づいたが、ひとまずは気づかないふりをして状況をしばし静観していると、ふらりとこちらへ向けて倒れ込んできたため、完全に倒れ込む前にその身体を抱き止めてやり。暗がりだったこともあり間違って変な場所に触れないよう細心の注意をはらいつつ真っ直ぐに立たせると呆れたように声をかけつつ、ベッド脇にあるランプに火を灯して室内を照らして「ゆっくり休めたかね?少し遅くなったが今後の旅の方針でも話し合うとしようか」なんだかんだ言って眠っている間にそろそろ夜も明けてくる頃合い、旅立ちに備え作戦会議というほど大仰なものにする訳では無いがサクッと用意する物やルート選択なんかを話し合う事を提案して)
そうですね……それではまず、次に目指す場所を決めさせてください。
(赤っぽいランプの灯りが辺りを照らし、部屋の中の雑多な様子や簡易的な家具の配置などが視認出来るようになった。またも彼を呆れさせてしまったけれど気を取り直すことにして、何がどれだけ必要なのか、シュノークで準備するものをはっきりさせる為、彼の提案に乗っかって先に次の目的地までの経路確認をしたいと申し出ると、机上に置かれた書物類をそーっと端の方へ寄せてスペースを作り、鞄の中から地図を取り出し其処に広げて。お店でロザミーネ様にオススメスポットを教えてもらった際にその場所を地図上にも記しておいたので、その辺もきっちり組み込みつつ、ユフィが今のところ考えているルートを地図で確認しながら順を追って説明していき。「シュノークを出て次に寄りたいのは、ここ…“ポック村”です。こちらでまた食料を調達したいと思っているのですが、この村に辿り着くまでに歩きだと1週間くらいかかるらしいので、後で当面の飲食料を買い込む必要があります。その次に行きたいのは…、この辺りにあるという“ゼルゲマ温泉地”です。地図には載っていないそうなのですが、ロザミーネ様曰く美肌効果が期待出来る秘密の入浴場があるとのことで是非行ってみたくて…。」ポック村は旅支度を整える為に立ち寄るという名目があるが、温泉に至ってはユフィの願望。完全に寄り道だった。温泉にも美肌効果にも興味の無さそうな彼が付き合ってくれるか分からないけれど、とりあえず提案してみて)
おー、温泉かい?そいつはいい、旅の疲れもよくとれそうだ
(自分から改めて提案した作戦会議……のようなものだが、そもそも自分は計画を立てて順序立てて行動をするというのがあまり得意な質ではない、行き当たりばったりという言葉の似合ういい加減な男だ。今後の行動方針について色々と考えているらしい彼女にあっという間に会話の主導権を握られ自身はそのルート構成に地理的な無茶がないかだけ自身は二人分の緑茶の用意をしながら地図と目的地の位置関係なんかをザッと把握しつつ、話しに耳を傾けていて。二つ用意した湯呑みに注いだ湯気を立てる熱々の緑茶、その一方を彼女の前に置いてやり、そしてもう一方を自身の口元へもっていきズズッと音を立てて啜りながら温泉という単語に反応を示し、自身の故郷にも様々な効能の源泉のあったその温泉という施設、美肌効果とやらには全く興味が持てないが一度浸かるだけで身体の疲れが抜けてリラックスできるあの感覚は唯一無二であり、あれほど心地の良い物は他に知らない、彼女の計画自体動線もちゃんと考えられており異論を挟む余地はなくそれでいこうと両手放しで賛同して「となると、買い出しのためには夜明けを待つ必要があるね。出来れば奴らには少しでも足取りを掴ませたくはなかったんだが……そこはまあ、上手くやるしかないかねえ」纏まった方針を再度二人で確認、食料調達のため必然的に店が開く時間まではここに滞在を続ける必要があり、周囲に人目が多い時間帯の旅立ちとなることからどうしても足取りを掴まれるリスクは大きくなる、辞めさせてくれと言って、はいそうですかですんなり解放してくれるような奴らでもないため出来るだけ内密に動きたいところだが食料無しでの旅などもっての外、そこは自分がいかに上手く立ち回るかだなと、旅の計画について大部分を考えてくれた彼女横目に策を練り始めて)
わ、ありがとうございます。なんだか不思議な香りのするお飲み物ですね。…いただきます。
(その口ぶりからして、どうやら彼は温泉がどういうものなのかを知っているらしい。思いの外すんなりユフィの要望が通り、取り敢えずのところはポック村を経由してからのゼルゲマ温泉地を目指すルートに決まった。其処からの経路については、またその時に相談すればいいだろう。…徐ろに目の前へと置かれた、見たことのない形の小ぶりな茶碗を両手で丁寧に持ち上げて、中身をまじまじと目詰める。見た感じ恐らく彼が淹れてくれたのは茶の一種なのだろうが、今まで嗅いだことのない爽やかな香りが鼻孔を擽った。「あつつっ…」試しに飲んでみると味を感じる前に熱さが勝り、両目をきゅっと閉じてしまって。もう少しだけ冷ましてから頂こうと一旦机上に戻し。───「とにかく身を隠す必要があると。……それなら変装してみる、というのはどうでしょうか!」彼が仕事を辞めたのは知っている。それに詳しい事情は分からないけれど、その件であまり良くない立場に置かれていることも、ロザミーネ様との会話から何となく察していて。このままでは動きが取りにくいという彼のために、自分にも何か手助け出来ないだろうかと顎に手を当て思案すること十数秒。頭上に見えない“!”をぴこんと浮かべては、良案を思い付いたとばかりに鞄の中からお気に入りのふんわり袖のロングワンピースとつば広帽子を引っ張り出し、心做しかわくわくした様子で女装…否変装の提案をしてみて。しかし肝心なのはサイズ問題。よくよく見ると彼の身体は自分よりもずっと大きくて、ユフィサイズのワンピースは到底着られそうになく。…変装案は敢え無く断念し、代わりに他の提案をしようと鞄の中から紫色の液体が入った小瓶を取り出して)
……と思ったんですけど、私の服はレグルス様には小さいですね。…ではこの、《透明薬》を使うのはどうでしょう? その名の通り、服用すると一定時間透明になる薬です。身に付けている衣類も全部。私も家を出るときに使ったので効果は実証済みですし…。
……そんなものがあるなら初めから出して欲しかったねぇ
(隠れてここを出る手段について考え巡らせていると彼女に何やら考えがある様子、なるほど確かに変装は隠密活動の定番ではあるが、これをどうぞとばかりに鞄の中より取り出されたその衣服を見た途端に一気に表情が強張り。思いっきり女性向けの服と帽子、自身の背格好からしてあまりにもアンバランスなそれらを身につけた姿を想像すれば女性というよりは化け物や怪異の類い、かえって目立つ結果になるのではないかとすら思えるのだが彼女の方はむしろ我ながら素晴らしいアイデアとばかりに目を輝かせているのを見て絶句してしまうも、どうやらサイズ的な問題からこの案は無理だと自己完結した様子の彼女を見てひとまず最悪の事態は免れて一つ安堵の息を吐き。それからその代替案として取り出された物、その説明を受ければ聞く限りでは今回のような状況においては願ってもないぐらいの便利な代物、本人が使用した実績があるなら効果のほどは疑う余地もないだろう、彼女側からの厚意でアイデアを提案してもらっている立場でこんな事をいうのはなんだが、最初からそれを出して欲しかったと軽く愚痴っぽく口にして「……まあ、なんにせよ方針はこれで決まりかね、後は日が昇り次第行動開始するとしよう」多少の紆余曲折はありつつも旅立ちに向けての行動方針はある程度は固まっただろうか、完全な夜明けまではまだほんの少し時間があるため小さな欠伸を漏らし軽く仮眠をとろうと壁に寄りかかり、そんな風にしてゆっくり夜明けへと向かっていって)
それが、効果はあるんですけど……味の方はあんまり美味しく出来なくて…。飲む時は覚悟してくださいね。
(彼の不服そうな様子からその心中を察するに、どのみち変装案は却下されていたであろうことが窺える。多めに薬を作っておいて良かった。…この《透明薬》は、亡くなった母が書き残していた“魔法薬レシピ集”を参考にユフィが調合したもの。なかなかに調合難易度が高く、魔法薬作りが趣味のユフィでもちゃんと効果が出る薬を生成するまでに3か月を要した。服用すれば見る間に身に付けている装飾も含め姿が見えなくなり、半日とまではいかないが暫くの時間は透明効果が続く。注意すべきは、他者から“見えなくなるだけ”で実体は其処に存在する為触れることは出来るという点と、味の方がいまひとつ…激マズな点。実際に飲んだ本人がそう感じるのだから間違いない。母のレシピ通りに調合したものは渋味が強くて飲みにくいのが難点だった。そのうちユフィなりのアレンジを加えて改良するつもりではいるけれど。念のため味について忠告しつつ机上に透明薬の入った小瓶を置き、ユフィの衣装は鞄に戻す。話も纏まって、あとは日が昇り次第行動開始とのことで、それまで彼は仮眠を取ることにしたようだったが、二度寝をしたら起きられる自信のないユフィはいろんなものでごった返す鞄の中身を整理することにしたのだった。)
───……
(二度寝はしない。そう心に誓ったはずが、鞄の整理を早々に終えたあと気付けば彼と同様壁に凭れかかって静かに寝ていた。…もうじき夜が明けるにも関わらず、基本的に何処でも寝られる性質のユフィはすっかり寝入ってしまって起きる様子がなく…)
ユフィ、気持ちよく寝てるところ悪いがそろそろ起きたまえ
(この時間から眠ってしまえば起きられなくなってしまうと判断したのだろう、眠ってしまわないようにと作業をして眠気を紛らわすことにしたらしい、そばで荷造りなどに勤しむ物音を遠くに感じながら目を閉じて身体を休めていると、しばらくそばでゴソゴソと聞こえていた物音が聞こえなくなり、代わりに聞こえてきたのは静かな寝息で、今更ではあるが出会って間もない男のそばで、しかもその男の根城としている場所でよくもまあここまで無防備な姿を晒せるものだと思うが、それだけ自分に対する信頼があるということだろうと考えるとなんだかんだ悪い気はせず心穏やかに朝を迎えて。外の明かりなどは感じられないものの長年の経験と肌感で大体の時間がわかるが、彼女の方はそうでもないようで、相変わらずすやすや心地良さそうな寝息を立てており。幸せそうな寝顔を見れば起こすのは少し忍びなく思ったが、ここを離れることを決めた以上あまり時間をかけたくないのが本音、迅速に行動に移すべく身体を揺り起こそうとして)
……、……! 起こしてくださってありがとうございます…。
(ユフィの四方を囲むようにして、天井が見えない程にこれでもかと山積みになっているのは、世界中のありとあらゆる魔法が記された魔導書たち。なんという幸せ空間、まるで夢でも見ているよう…。まだ見ぬ魔法に出会えると思ったら逸る気持ちを抑えきれずに、早速そのうちの一冊を手に取って開こうとした。───次の瞬間、自分の名前を呼ぶ声と、身体を優しく揺り動かされる感覚があり、夢の世界から現実の世界へと急遽呼び戻されたユフィはぱちっと目を開いた。見ると目の前にあったはずの魔導書の山は消え失せている。どうやらあの短い時間で夢を見ていたらしく、本当に夢だったことを至極残念に思いながらも、眠りからまだ覚めやらぬ目をこしこし擦りながらゆっくり立ち上がっては、目覚まし係を買って出てくれた彼にお礼を伝えて。室内は依然として暗い為に日が昇る時間帯とは思えなかったけれど、此処に住み慣れた彼がそういうのならもう夜明けに違いない。寝起き早々ではあるものの行動するなら早いほうがいいと気を改めては、ベッド脇に置いていた鞄を肩に掛けてから机上にある《透明薬》の入った小瓶を彼へと両手で差し出して)
それではこれを。…個人の体質にもよるかもしれませんが、効果は大体半日は続くと思われます。効き目が切れる前に買い出しをして、シュノークを出ましょう。
ほう……なるほどこれがねぇ……あぁ、そうだ、コイツを飲む前に、視認が出来なくなってからでは色々と不便だろう。今のうちに最低限必要な合図とかを決めておこう。例えば俺の位置を確認したい時は口元に手を当てる、そうしたら俺はユフィの肩に手を置くようにするとかどうかね?
(受け取った小瓶を目線の高さまで軽く掲げてしげしげと眺め、この少量の薬品に人の視覚から逃れる力が備わっているというのはなんとも信じがたいが、効果は実証済みとの事で疑う余地はない、そもそもこの段階になって彼女が自分を陥れる理由もないだろうし、こういった状況で冗談を言うようなタイプでもないため十分に信頼がおけ不安要素はない。小瓶の蓋をとり中身を飲み干そうとしてふと思い立ち手を止めて彼女へと向き直り。自分がこの薬を飲んで姿が見えなくなれば単独行動ならまだしも同行者がいるとなれば様々な不便が生じることが予想され、あるいは今回の作戦の立案者である彼女の方に何か考えがあるかもしれないが、とりあえずこちらの思いつく範囲で、お互いの位置関係を把握するための合図なんかを提案してみて。他にも何か取り決めがあった方が良いだろうかと考えを巡らせて)
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