白うさぎ 2024-09-17 00:22:13 |
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…だからこそ、貴方の可愛らしいおねだりが見たいのに。──…!( 白い兎耳とふわふわの尻尾などという反則級の見目なら可愛らしいのは至極当然、大前提。例えその主が成人をとうに過ぎた男体であろうと一顧だにせず、むしろ何故そこまで把握しておいて此方の需要に応じてくれないのか、と冗句を完全に真と受け取った眼差しがじとりと湿り気を帯び始めた頃。当の本人が此方の意図を明らかに察した動きを見せ始めると、自らも一転して期待を孕むようにそわそわと対面を注視し。中途で急な路線変更を行った挙動には瞬きと不思議げな視線を送るも、その返答としてのひどく端麗な破顔と膝元を差す手が示す事柄は明瞭。思わずふわりとそれまでの淡白な顔貌へ、ひとひらの警戒心すら抜け落ちたごく柔らかな微笑が彩られて。「 ……うん、良い兎さんだ。 」いたく満足気な心持ちを口にすると、微笑みの余韻を唇へ仄かに残し上機嫌に相手の傍へ。スカートのひらつきを抑えながらもそっと、しかし遠慮なく彼の膝上に腰を下ろし、給餌を待つ無垢な雛鳥よろしく口を開くだろう )
貴女、食事量は足りているか?……背丈から考えるに体重が足りていない。もしも、ここでの食事が口に合わないのであれば早急に城の料理長に話をつけるので不満や希望があるなら早めに言うように。( ふんわりと柔らかく花が咲き綻ぶような微笑みに射抜かれたように見惚れてしまう。それから少しして羽が舞うような可憐な動きで彼女が膝の上に腰掛ければ、胸を鳴らすよりも先に心配や不安が顔を覗かせてしまった。普段見せる冷ややかな表情よりも些か感情が浮かぶと眉間に深く皺が刻み込まれ、口角が落ちると唇は平仮名のへのように形どられて。雛鳥の如く口を開き待つ彼女へ一口サイズのチョコレートを刺したデザートフォークを運ぶと小さな口が小さなチョコレートを食べるのを待ち、その間にツラツラと喧しい小言を連ねて「 ………イチゴのタルトも、チェリーとベルガモットのムースも、シャンパンのジュレも、…どれも私の好きなものだが、貴女に譲ろう。 」そう伝える癖に目の前に並ぶ好物の数々に名残惜しい気持ちが強いようで、後ろ髪を引かれるようにちらりとテーブルの上を彩るキラキラと輝くようなスイーツに視線を向けて )
──…へぇ、とっても綺麗に舌の上でとろけた。良い品だね。( 上等なカカオが口腔内で瞬く間に原型を失い、極上の幸福感を脳髄にもたらして喉を伝う。少しの甘みも逃さぬよう十全に待機した後、やがて頬を緩めながらうっとりとその感動の一端を零す様は、はたして相手の有難い申し出を聞いているのかいないのか。続く言の葉を受け、改めて瞳に捉えた菓子達は珠玉の宝石もかくやとばかりに艶やかで、正味胸をときめく物こそあれども、当初の目的を見失ってはおらず。「 ……少し惜しいけど、今日は甘い物をねだりに来たわけじゃないから。 」ここで言う“惜しい”とは、言葉とは裏腹に机上へ残るその可愛らしい眼差しに、何ら嗜虐的なちょっかいを入れられない事も当然に含むもので。この場はやんわり頭を左右に振ると、座る位置を横向きに調節して相手の顔がよく見えるように。いつもより遥かに目線の近付いた真紅を覗き込み、純に澄み切っているが故に返って心内の読めぬ双眸で問い掛けて )ねぇ兎さん。私の帰り道は知ってる?
…………。疑問に対する解答を行うならば、答えはイエス。( 小さな小さなひとくちサイズのチョコレートを美味しそうに食べる姿を前にして抱く感情は安らぎが八割と衝動が二割。二割の感情を分厚い理性が繋ぎ止めると上手いこと隠し切る事が出来たらしい。澄み渡る海や空のように青青と少しの汚れも見られない大きな瞳に見つめられるとある事もないことも全て薄情してしまいそうで、その瞳に飲まれてしまわぬように作り上げた不自然なほどに長すぎる沈黙。ただの少しも顔色を変えずに正面から彼女の顔を見た目返し述べた回答は続くだろう疑問を挟む隙を与えずにもう一つの回答も先に述べてしまって。「 次に、その方法を私が貴女に教えるかどうか。答えはノー、断らせていただく。以降、この件に該当する質問に答えることは出来ない。 」繰り返す毎日を彼女のことだけを思い待ち望んで過ごしてきた、その私情を大っぴらに伝えるつもりは無いらしい。そんな個人的な感情を箱にしまい鍵をかけて隠すように他ならない彼女だけにはしっかりと伏せ、我儘のように送る回答の後は口を固く結んで音を立てずにこの件に関する回答の拒否を示して。 )
悪い兎さんだ……。でも、そういう真正直なところは貴方の美徳か。( 期待通りの返答へ少し眼を見開いたのも束の間。完璧な先回りを見せた理知的な付言に不満を湛え、常の半分ほどを伏せた眼差しを向けて。けれど、元より一筋縄では行かない事は承知の上。だからこそ虚言を弄さない誠実な彼を一番手に選んだのだと口許に薄く弧を描き。「 …折檻のし甲斐がありそう。 」相手の過去や慕情を知ってか知らずか。そんな戯れを飄々と口にしつつ、硬く真一文字に引き結ばれてしまった唇横の頬肉を指先で軽く摘んで弄び。そういえば、……兎肉って、美味しいんだよね。幸か不幸か定かではないものの、上等なプチガトーが転げ落ちた昼も半ばの胃はまだ満ちてはおらず。ぽわぽわと奇怪な方角にすっ飛んだ空想が唐突に花開いては、頬に触れたままの相手を見つめる不穏な沈黙が一拍、二拍……三拍。あくまでも所作だけは優雅かつ上品に、長さのあるブロンドを己の片耳にかけると、一層互いの身を密着させるようにその肩へ手を掛け──かぷ、と筋張った白い首筋に柔く歯を立てて )
……………。( 納得のいかない返答だと自覚している。それを踏まえた上で彼女が望む答えを伏せ、良い返事の出来ない己を振り返り遊ぶような力加減で触れられる母をそのままにして。歌うようなあどけない少女の声では相応しくない折檻という不穏な単語に耳の先が僅かに揺れて、変化のなかった顔よりもよっぽど素直に動揺を表すようで。いっそのこと居心地の悪ささえ抱かせる不自然な沈黙にも毅然とした態度で臆する事なく視線を返し、正面から見つめる彼女には眠りネズミが所有するお人形を思わせる作り物のような可憐さが見えた。そんな風に少しだけ気を逸らしたことが悪かったのかもしれない、わずか一瞬のうつつに与えられた状況を理解するには時間を要してしまう。はく、はく、と唇を開閉させる数秒後、大きく開かれた両目と白い肌が血色良く赤く染まり「 んな…ッ。な、……な!なにをっ 」突然の距離感と僅かに痛みを感じさせる刺激が噛まれていると状況把握が出来た頃には真っ赤な顔で体を強張らせ動揺の声を彼女に伝え )
美味しそうだなって。……あぁ、あと、折檻とか。( 明確な動揺を顕に、白の兎が赤に染まる様は中々に甘やかな愉悦と食欲を煽る。問われたそれには一度唇を離してから直截的な解を差し出し、今思い出したとばかりに取って付けたような動機を平坦に添えて。密着した体勢では相手の鼓動も筒抜けではあるが、やはり見目に反応がある方がより仄暗い支配欲を満たすというもの。「 熟れた林檎みたいで、もっと美味しそうになった。…早く吐いた方が楽になるよ 」相手の首元をくすぐるように、吐息を孕んだ悪辣な笑声を零し。感興の赴くままに再度唇を寄せれば、次第に悪質な取調官らしい台詞までも板に着いてくるようで。…とはいえ、本当に食してしまう訳にはいかない以上、味を確かめる為には舌を使う方がより有効だろう。肌の弾力を味わうように柔く食むに伴い、時折控えめに舌を這わせながら、この様子では今に音をあげるだろういたいけな声を待ち )
( 近い距離感では隠すことも出来ずに平常時よりもずっと賑やかな心臓を自覚しつつも目を背け。止むことのない行為に心を掻き乱されるばかりで無意識の内に呼吸をすることさえ忘れてしまっていたらしい、酸素不足の息苦しさが忘れていた呼吸を思い出させて体温よりも冷たく感じる酸素を深く吸い込み肺へ落とし込んでグッと強く奥歯を噛み締めて。甘える子猫みたいに愛らしい彼女の小さな口を覆い隠すように手で塞ぎ「 マヌケもそこまでだ。……時にアリス、人にする事はされても文句は言えないと認識しているが間違いはないか? 」塞ぐのに使った手は滑らかな肌を滑るような動きで綺麗な輪郭を辿り形のいい顎に指の背を引っかけクイっと顔を上げさせて。普段浮かべる無愛想な面構えからにっこりと愛想のいい笑顔を見せて親指の腹を使ってふっくらと膨れる柔らかな唇を撫でて )生憎だが、私はご馳走を前にして我慢ができる良いウサギではないらしい。
っ、……えっと。兎さんは……草食でしょう?( いよいよ行き過ぎた悪ふざけに静止が入り、相手の大きな手で口元を覆われながら至近距離の赤に詰められる。…自身がしたことを、今度は彼が。それまでの涼やかな蒼眼に初めて羞恥に基づく動揺が過ぎっては、苦し紛れにも程のある反論をぽそぽそと口にして。それも事もあろうに膝上という、相手の領域に身を置く不利をようやく悟ると、触れられた唇から紡がれる淡白な物言いにも少々綻びが生じ始め。「 私はそう美味しくないから…。あぁ、そろそろ机のデザートに手を付けたらどう? 」攻守逆転、とばかりに細められた双眸へ宿る捕食者の光にたじろぎ、強制的に顔を上げさせられながらも懸命に視線を逸らし逃げ道を探す。やんわり相手の胸板を押して今更ながら適切な距離を取ろうとする様は、悲しきかな完全にマヌケな獲物のそれだろうか )
会わないうちに私の事を忘れてしまったのか?…………私は草も植物も野菜が嫌いだ。( 舌の根も乾かないほど短い間に立場が変わり、小さな体はあまりにも簡単にリードを取ることが叶ってしまう。僅かな糸口を探し求めるようにあまり効果のない力加減で胸板を押されても抱くのはより強い愛しさだけ、女性らしく華奢な体に自由を与えないように片腕はがっちりと彼女の事を抱き締めて。口をつくのは小型にも似た訂正の言葉、丸いレンズ越しに少しも逸らすことなく彼女の姿を瞳に収めて浮かべる笑みには目の前の獲物をどう頂くかということを含んでいて。距離を縮める為に体を寄せると鼻先同士が触れ合いそうなほど近い距離で戸惑いに揺れる澄み渡る蒼の色を楽しんで「 デザートと貴女のどちらが優先するべきか、そんなものは答えずともわかると思うが 」く。と喉を鳴らすような笑い声が無意識にこぼれ落ち、意地悪にも声をかけてから頬へと口付けて )
忘れてはいないけど、……意地悪。( 個人というよりも元の種族を持ち出した明らかに無理のある反論は、実に丁寧な拾い上げと訂正により却下され。どうやら袋小路にある獲物へ逃げ道を設けてやる慈悲はないらしい相手を、羞恥の滲む表情で恨みがましげに見つめ返した所で。差し出した代替案も虚しく、予告と共に頬へ落とされる柔らかな感触。「 っ、う…………~ッ! 」呆けるような数拍の間の後、ぶわわ、と一挙に頬が朱に染まり、身体の芯が熱を持つ感覚。背に回る腕の逞しさが、押し付けられる硬い胸板が、急速に相手が可愛らしい兎ではなく男性であると意識させられる。これが幾度も降ってくるなど、およそ耐えられるものではない。慌てて間近にある相手の唇を両の手で重ねて覆えば、ふるふると今度はこちらが哀れな小動物じみた仕草で首を振って懇願し )ッま、まって。クィンシー、ほんとに……っ。
………( 意地悪と呼ばれる事をしている自覚はある。自覚を持って少しばかり行き過ぎた悪戯をした彼女にそうした末路を教え込むつもりだったようで、そこに下心が全く無いかと言えば嘘になる。戸惑いと狼狽えで顔を染める可愛いアリスにより気持ちが掴まれて、可愛いアリスを可愛がりたいとそう思う感情と同じくらいにいじめてしまいたいとも思ってしまう。小さく細い華奢な手が口を隠すように重なると物理的な理由で口付けが止められる。「 これではどちらがウサギかわかったものじゃないな。 」ふるふると震えるような懇願は小さくて守らなければならない小さな命だと思わせるのに十分効果的。ぱち、と静かな瞬きを一度行ってから落ち着いた声色で口にして。これ以上は泣かせてしまうだろうか、そう考えることが出来る程度には冷静さを取り戻すことが出来たらしい。ふむ、と小さく息を吐いてから彼女が同じ過ちを繰り返さないように淡々とした声色ながらそこに確実な独占欲を含ませて伝え )アリス、私だから貴女を尊重して言うことを聞く。誤っても他の奴らに同じ事をしないように。
……、ここの皆は優しいから。私が本気で困るようなことはしないよ。( 無事に緩んでくれた攻勢に安堵の息を吐き、押さえた口をそろりと解放する。他の住人の話題がその口から転がり出ては、少し不思議げな顔をした後に自然と柔い笑みが零れて。「 …兎さんはちょっと意地悪だったけど 」何だかんだと心根の優しい相手が、今回の件で自身に何を伝えたかったのかは何となく察しがつく。しかし、それはそれとして先ほど散々な痴態を晒してしまった身としては少々思う所があり、思わずツンと横を向いて減らず口を。それは未だ相手の顔を正面から見られないという照れ隠しの側面を含むものの、暖かな膝上を手放す気配までは見せずに。気恥ずかしさを引きずるように自身の胸元に垂れた金髪を手櫛で軽く梳いては、そもそもの話に立ち戻ろうと再び口を開き )まぁ、そうでなくても。悪い悪い兎さんが帰り道を教えてくれないなら、必然的に他の子のところへ尋ねに行って……お願いか折檻かしないといけないでしょう。
私が意地悪?……まぬけもそこまでにするように。会話もろくに成り立たない異常猫や喧しいだけのいかれた帽子屋風情よりも私の方がよほど優しく誠実だ。( 自分の事は意地悪だと言い、具体例が無くとも他の誰彼のことを優しいと褒める彼女に抱くのは嫉妬と言うよりかは不服、納得がいかないと難癖にも近い感情で。至って真剣に少しも冗談ではなくそう考えているというのが伝わる真面目な顔でツラツラと止まることのない演説を行い、全てを言い切ってから気分を害してしまった可愛い彼女に視線を下ろして。現実に帰りたいと願うアリス、アリスがそれを本気で願うなら今この場ですぐにでも教えている。それを伝えないのは彼女の中にまだ元の暮らしに帰りたいと思う気持ちと不思議の国でもう少し過ごしたいと思う気持ちが見て取れるから。耳の先をぴく、と僅かに揺らしてから依然変わらず淡々とした喋り口で伝え )……貴女、本気で他のまぬけ共が帰り道を知っているとでも?私だけが貴女を現実の世界からここ不思議の国に連れてこられるのに、行き来も知らない奴らが"本当"の帰り道を知る訳がない。適当な嘘を教えられて終わりだ。
そんな風に言わないで。猫さんはとっても面倒くさくて可愛いし、帽子屋さんは楽しいお話を沢山聞かせてくれる可愛らしいひとだよ。( こんなにも素敵な人達なのに、不思議と彼らの仲は良好とは言えない。依然として相手からは視線を逸らしながらも、疑義のある内容にはしっかりと反証を唱える事は忘れず。「 それに比べて兎さんは……ええと。少し格好良い、…かもしれない 」自らのブロンドの端を指先でくるくると弄びつつ、引き続き相手を軽く貶そうという試みがそのように失敗した辺りで機嫌を損ねたフリは諦める事として。それはさておき、彼の言を信じるならば、やはり帰り道は案内人たる白の兎のみが握る情報らしい。最高権力者である女王陛下などであればと薄ら思っていたものの、当てが外れた事を察しては小さく息を吐いて居住まいを正し。正直まだ相手と正面から顔を合わせるには熱が冷め切っていない身とはいえ、先の折檻も実を結ばなかったとなれば正攻法を取る他ないだろう。しばし逡巡するような間の後、まるで恋する乙女さながらに薄らと頬を染めて傍らの真赤と視線を絡めると、少しばかり困り眉を垂らして小首を傾げ )そっか、帰り道は貴方しか知らないんだ。うぅん、じゃあ……──兎さん、おねがい。
…………………。( アリスが他者を褒める姿が目の前で繰り広げられるといとも簡単に嫉妬心が掻き立てられる。単純明快に面白く無いと下がる口角がそのまま固定され、眉間にはシワが深く刻まれてしまう。思いがそのまま表情に浮かぶ中で嫉妬心が強かったのが一転、彼女から格好いいと己自身のことを褒める言葉が上がれば数秒までの心境との差に心臓がギュッと掴まれてしまったようで。更には一人の男として可愛いアリスに頼られると男冥利に尽きると言うものらしく、ほんのりと染まる甘い桃のような頬と煌めく湖にも似た澄み渡った蒼の色に見詰められては敵わない。今ここで口を開けば余計なことを口走ると自覚症状があるからこそ口を固く結んで話すことを拒否し、あまりにも不自然すぎる沈黙を作り上げて。ぴくぴくと揺れる耳の先は甘えるようなお願いごとを聞き入れられないことに対する歯痒さからのようで、たっぷりと不自然な沈黙を貫いた末に彼女の動きによって顔にかかる金色の髪を指先で整えるように優しく払い「 貴女と離れたくない。───帰り道を教えないのはわたしの可愛い我儘だ。 」感情の見えにくい赤い目が彼女の蒼色と向かい合い、言葉を使って彼女の良心をつま先で引っ掻いて )
――…うん。私も、このままずっとずっと一緒にいたいくらいみんなが大好き。( 長い沈黙が落ちる間も、相手と絡めた視線は決して外さずに。正味耐え難い含羞はあるも、ここで兎を取り逃してしまえばそれこそ巣穴へと閉じ篭り二度と捕らえる事は叶うまい。ふと、空白を破るように髪へと触れる大きな手の感触にぴくりと反応を示し、数度瞳を瞬く。平素の冷えた瞳の内にある赤熱するような情が自身には読み取れて、思わず胸奥から溢れんばかりの親愛と慈愛の笑みで嬉々と応え。「 …だからこそ、この素敵なおもちゃ箱には蓋をして、大事に胸の内へ取っておきたいなって 」全く同じ笑み、同じトーンで紡がれる明確な別離の言葉。本当は適当な言い訳を募るつもりであったのに、虚飾のない胸の内を吐露してしまったのは誠実を司る相手の力だろうか。現実ではなく、空想に重きを置く自身の歪んだ性分。再び訪れる事となる灰色の世界は彼らにとって酷だろうが、満ち足りぬ分、飢え餓える分、今よりもずっと自身のことを想うだろう様を空想すれば己の我欲はさぞ充足する筈で。無論、自身も現実世界で、彼らの事を忘れずに一生胸に抱えて生きていく。……それはとても素敵な両思いだ。いっそ陶酔するような夢心地を淡い唇へ弧として描き、相手にとっては残忍でしかないだろう悪辣な願いを再度口にして )大好きなみんなのことは、大好きな空想の中に閉じ込めておきたいの。…ごめんね。──帰り道を教えてほしいな。私の、兎さん。
( 丁寧に選択された言葉はあまりにも残酷で、どうしようもない程に誠実だった。アリスが現実世界に帰りたいと説く理由が互いに傷つけ合うだけの残酷な想い愛だと教えられてしまっては、誠実な名の下生きる兎にとって誤魔化しをする事は叶わなくなってしまった。きり、と堪えるように眉間に皺が深く刻まれて喉の奥に重たい石が突っかかるような不快感を耐えれると鏡無しに自分では見ることが叶わないがあんまりにも情けない傷付いたような面を露呈してしまっていた。共にいる空間に降りる沈黙は息苦しくて、そこに作られる無言の間は傷つき寂しいと音を立てずに叫ぶようなひと足先にアリスの世界からプツンと切り離されてしまったようで。夢を語るように残酷な愛を唱えるアリスに困ったような顔で寂しさを隠さない微笑みを見せれば「 あなた、指輪を持っているな。その指輪を無くさず、常に持ち歩き、特別な祈りを貰う。それも一人二人ではなく沢山の人数に。祈りをすることが出来るのは私のような役持ちだが、それを聞けばどれほど難しい事なのか理解が出来るはず。タイムリミットは”あなたなら”わかる。 」例え彼女がいない世界が再び戻ってしまうとしても、たった一度彼女の心の奥にある誠実さに触れたことが白うさぎにとって意味があると言えた。その癖で寂しさが浮かぶのは感情と考えの間に違う部分があるからのようで )
( / 背後よりご連絡の方失礼いたします。生活の方で少々変化があり、今後お返事の時間を取る事が難しくなりそうでして……こちらの勝手な都合で恐縮なのですが、お相手の解消をお願いしたく思います。これまで大変良くしていただいたのにも関わらず、本当に申し訳ございません…。短い間ではございましたが、不思議の国でのとても楽しい時間を誠にありがとうございました…! )
( / 同じく背後から失礼致します…!お忙しいところにも関わらずご連絡を頂き本当に有難うございます。最初から今に至るまで誠実で暖かいご対応に感謝しております。可愛らしくて素敵なアリスちゃんと背後様に出会えたこと、私も不思議な国の住人たちも皆が幸せでした!私生活があってこその也だと思います、お優しい背後様ですので気に留めてしまうかもしれないのですが此方のことはどうか気にせず、季節の変わり目で急に気温が下がっていますので体調を大事にご自愛してください…!素敵なご縁に感謝いたします。またどこかでお会いすることが有りましたらぜひよろしくお願いいたします。 )
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