さすらいの旅人さん 2024-09-08 18:25:07 |
通報 |
はい、呼び方で大きく変わる訳ではありませんから…。それに、私はアイシアの言ったことならなんでも受け入れます
(最初に気軽に呼び捨てで呼んでくれても良い、と言われた時は貴方が主人で此方が奴隷という立場であるのに、そんなに気安く名を呼んでもいいのだろうかという疑問が残っていた為、アイシアの毅然とした態度と呼び捨てについて明確に咎めたのを聞いて、自分も其方の方が良いだろうと内心思って。気軽に呼んでくれと言った手前、変更するのが後ろめたいのかそれでも大丈夫かと控えめに尋ねられた質問に一つ返事で頷くと、呼び方で大差があまりないという理由だけでなく、自分が心を許しているアイシアが提案したことならば聞き入れる、ということもあるようで。「アイシアのことも呼び捨てで呼んではいけないのでしょうか…?」と指先でアイシアの服を摘み、見捨てられそうな子供のように不安げな瞳で貴女のことを見つめる。貴女は唯一心を開いた人間であるため、そんな人までも呼び捨てで呼ぶことは許されないのだろうかと考え、そんなのは嫌だと言っていないながらもその瞳はそうなることを否定していて。)
『え?ううん、私に気遣いは必要ないよ。一応ウルちゃんも立場的には私と同じ立ち位置になる訳だし、対等の立場の相手に気を遣うって変じゃない?』
(まさかそこまで懐かれている自覚はなかったようで名前で呼ばせてくれないのかと、泣きそうなようにも見える表情でこちらを見てくる彼女にアイシアは一瞬キョトンとした表情を浮かべるがすぐに顔を綻ばせ、女中としての仕事をする義務などはないが一応世間的に見た立ち位置的には自分と同じように主人であるカインに仕える立場ということになるのだろう、それなら同じ主人に仕える者同士で特別畏まった態度で付き合う方が変な話だろうと、自分には気遣いは不要であると微笑みかけ。しかし、そんな二人のやり取りを見ていてこちらとしては少し納得の行かない部分があり「アイシア、それは少しズルくないか?俺だって名前で呼ばれたいというのに…」こちらに対する名前呼びを咎めたアイシアが自身に対する名前呼びは容認したことにズルいなんてまるで子供のように不満をこぼしてしまっていて『そんなこと仰られましてもウルちゃんがそうしたいと言うのですから、仕方がありませんよね?まさか駄目とは言えないでしょう?』女中を相手にこんな子供じみた理由での軽い言い合いには発展してしまう程度には彼女に対する愛情の程は滲み出ていて)
そうですね…ならいいのです。
(自身には女中のような仕事の役割がなくとも、アイシアとほぼ同等の立場に置かれているようで、その為アイシアには敬称をつける必要がないことが分かると安心したのか不安げだった瞳は元のなんとも思っていないような目に戻り。自分たちの会話を聞いていて、不服そうに声を上げたのが耳に入ると、其方にちらっと視線を向けてみると、呼び捨てで呼ぶのを咎めたアイシアが呼び捨てで呼ばれることが気に入らないようでズルい、なんて子供が使うような言葉を体の大きな男性か使っているのは何だか違和感が残るものだが、それは口に出さないでおいて。それに対してアイシアが返答をすると、傍から見れば軽い言い合いのようにも見える光景に呼び捨てにするかしないかでこんな状態になってしまうのかと一つ貴方について学ぶと、「では、ここにいる間はカイン、外にいる時はご主人様と呼ぶのはどうでしょうか?」と軽く首を傾げながらそう提案をする。)
…いや、今のは少し大人げなかったな…ふと気を抜いた拍子にここでの呼び方が外で出るのは不味い、使い分けはやめておいた方がいい
(アイシアとの小競り合いを見て、それを真に受けて彼女なりに考えに考えた末に示してくれた提案に、流石に子供じみた自身の発言を自覚して恥じると、魅力的な提案ではあるもののやはり余計なリスクを背負うべきではなく、当主という責任ある立場にある者として最大限身内の立場を守ることに尽力しなくてはならないと私情を抜きにして考えて。アイシアに対するものに比べるとどことなくまだまだ壁を感じる態度ではありながら、こちらにも優しさのようなものを見せた彼女を改めて真剣な表情で見ると、まるで子供のようなことを言っていたのと同一人物なのかというぐらい当主らしい意見を毅然とした態度で述べて)
そうですか…わかりました
(自分の考えた提案は先程子供のような様子だったのがガラッと変わり毅然とした態度で、此方のリスクもあるということを伝えながらやめておいた方がいいとやんわりと断られ、自分らしくもないことを言ってしまったことと、それが空回りして断られてしまったことが少し気恥しく心を落ち着かせるためにふぅ、と小さく息をつく。「あの…この屋敷の中を教えていただけませんか」と、玄関に入った時やこの部屋に来るまで長い廊下を歩いたのを思い出し、さぞかしこの屋敷は広いのだろうと概ね予想はついているものの、迷子になってしまう可能性もゼロではないと考えていなかったらしく、アイシアとカインのことを交互に見た後でそんなことを聞いてみる。)
おお、それもそうだな。よし!俺が直々に案内してやろう
(屋敷の案内を求められると、出会って間もないというのにいつの間にか彼女と絆を築いていたアイシアに続いて自分も気に入ってもらおうと、呼び名については互いの立場など諸々の事情を考えて妥協したものの、やはり彼女に懐いてもらいたいという気持ちは依然として強くあり、相変わらず主人らしい毅然とした態度との落差を感じさせるノリの良い態度で胸をドンと叩き、ここぞとばかりに良いところを見せようとやや前のめり気味に案内役を買って出て『それぐらいのことでしたら私が…いえ、旦那様がそういうのでしたら…ウルちゃんもそれで大丈夫?』屋敷の案内とはいわば雑務の一つであり、それぐらいのことにわざわざ主人に手を煩わせる訳にはとアイシアは自分が…と名乗り出ようとするがすぐにこちらの意図を察したようで引き下がり、彼女に向けてそれで構わないかと意思確認をして)
はい、私はどちらでも…
(子供のような態度と主人としての威厳のある毅然とした態度のギャップに追いつけなくなりそうになりながらも、この屋敷の中を案内して欲しいという自分の要望にアイシアよりも懐いていないのを感じ取ったのかいい所を見せたいというのが顔に出ていて丸わかりであるが、それは言わないでおいて。その様子にアイシアに案内してもらいたいという気持ちはあるが、態度に出てしまうくらいならばいいかと思い頷く。「では…お願いします」と自分よりも遥かに大きい身長の主人の顔を見つめながら案内をするようにお願いして。アイシアとは軽い会話を交わすことはできたが、あの長い廊下を歩いている時話題がないと気まずい空間になってしまうだろうかと考えながらもそんなことは言えるはずもなく。)
ああ、任せてくれ。さあ行こうか
(やはりアイシアに対する態度との差は肌で感じるもとりあえず自分の案内を受けることに異論はない様子、そもそも今日初めてこの屋敷で迎え入れたばかりであり、最初は確かに気まずい雰囲気があろうと、なにも慌てる事はないと自身に言い聞かせると早速案内を始めるべくドアを開けて廊下へと出て。長い廊下を歩きながら、彼女の内心の不安を読みとったから…というわけでは勿論ないが、それでもこのタイミングで見計らっていたかのように口を開き「しかし我が屋敷ながら、少し広すぎるな…ウルは物覚えは良い方か?」住んでいる本人でも実はうっすら感じている本音零し、そんな軽口を叩きながらもキチンと案内はしようとするが、いくら広いからとあまり駆け足ではもしかしたら覚え切れず今後苦労するかもしれないと彼女を気遣って、記憶力に自信はあるか話しを振って)
分かりません…これまで覚えることなんてしたことがなかったので
(本人でも広いと感じるこの屋敷を把握するにはどれほどの時間がかかるだろうか。そんなことを廊下の天井や飾ってある絵画など、様々なところに視線をいかせていると、まるで此方の心の中を見透かしたように気まずい雰囲気の中口を開いて飛んできた質問は物覚えは良いか?というもので。自分がここに至るまでのことを思い出し、なにか覚えるということをしたことがあっただろうかと考えてみるも、特に思い当たる節はなく。そのまま首を振って否定したあと、でも確か少しでも奴隷として気品のあるようにと敬語を覚えたことはあったかと思い出すが、今それを言ったところで相手の気持ちを複雑にするだけだろうと気を遣った訳ではないが口には出さないで。ふと横を歩く貴方のことを見てみれば、自分よりも大きな身長と、服の上からでもわかる鍛えられた肉体を見てただの貴族ではないだろうと考え「ご主人様は前何をされていたのですか?」と気になったことを聞いてみて。)
俺は元は軍人だ。元々は平民の出だったんだがな、働きが認められて大佐にまで登り詰め爵位を与えられて今がある
(一般的な貴族のイメージとは違う筋肉質な身体つきを見ての質問なのだろう、視線やその物言いに彼女の言わんとすることを察すると、自身が生粋の貴族の生まれではなく異例の特進で叩き上げによって平民の立場から軍人を経て貴族になったという遍歴を包み隠さず正直に話して。軍人上がりの貴族は少なくはないが、それらは大体実績よりも生まれが相応に名門の出であったり権力者の親族であったりが殆どで、自分のように戦果が認められてその一点でのみ評価された者というのは異例中の異例であり、それ故に貴族の中では未だに自分を色眼鏡で見る者も少ないため気苦労もそれなりで「おかげで平民の頃よりはずっと良い暮らしは出来てるが、何かと面倒がつきまとうし、いいことばかりじゃない…なんて、ウルの前でそんなことを言うのは些か無神経か」生活の水準は大きく上がったが、立場が上がればそれだけ責任も付き纏う、少なくとも貴族間の小競り合いや付き合いにはややうんざりしている本心をこぼすが、そんなものとは比べ物にならないぐらい多くの苦労を抱えて生きてきたであろう彼女を前にそんなことを言ってもそれは自虐風自慢、嫌味にしかならないだろうかと思い直し苦笑して頬を掻いて)
へぇ…軍人ですか…
(元軍人だと簡潔に言われると、それならば貴方のその屈強で鍛え抜かれた体にも納得がいき頷いて噛み締めるように言葉を繰り返す。何か力仕事で困ったときにはアイシアではなく貴方の所に行ってみようか、なんて最初の頃と比べて頼ろうとする余裕はあるようで。それに続いて告げられたのは家柄は貴族などではなく平民で、軍人としての成績で今の立場を手に入れたのだと言われると、素直にそれは凄いなと感嘆する。領地を貰えただけではなく、こんなに広くて立派な屋敷を立ててくれるぐらいなのだから、相当良い成績を収めたのだろうなと思いながら廊下を歩いていれば、貴族でもいいことばかりではないようで。責任や貴族たちとの付き合いだけでなく、そのしっかりとした体に加え、悪くない容姿ともなれば何処かの令嬢から目をつけられるのも時間の問題だろうなと考えていれば、先程居た部屋のドアと同じような扉があり、「いえ、私はなんとも思ってません。…この部屋はなんですか?」と良いことばかりでは無いのだと言ったことが自分の気に障るのかもしれないと思ったのか苦笑を浮かべながら言葉を零したのは気にしていないらしく、それよりもドアの先の部屋が気になっていて。)
ああ、ここは客室だ。本来は外から来客があった時に宿泊をしてもらったりする部屋だな
(屋敷の中の案内を続ける此方の説明に、反応は薄いながらも相槌は一応打ってくれる彼女、相変わらず自身に対しては心を開いてくれたとは言い難いがそれでも素直に自分の後について歩くその様子がなんとも愛らしくて、庇護欲のようなものが芽生えて微笑ましく感じていると、ここまで自分の案内に付き従うだけだった彼女の方から不意に関心を持って投げかけられた問いかけ、内容はなんであれやはり彼女の方からこうして言葉を投げかけられるのは嬉しく饒舌に、この部屋が客人をもてなす為の部屋である事を説明しながら扉を開ける。中はベッドやテーブルなどいずれも若干古いながらも質のいい家具が揃えられた部屋となっていて「といっても、使った事はないんだがな。こんな辺境の土地を尋ねて泊まっていこうという物好きは…まあいない。ウル、お前が良ければこの部屋を使わないか?アイシアの部屋もすぐ近くだから困ったことがあればすぐに頼れる、どうだ?」元々、彼女の為にあてがうつもりだった部屋、そこに本人が興味を示したのは偶然か必然か、全く使われることなくほったらかしになるより誰かに使ってもらった方が有意義であり、彼女の為に改めて別途寝床などを用意する手間も省けるとあってこの客室を私室とすることを提案して)
!…いいのですか?この部屋を使いたいです…!
(自分の気になっていたドアの先の部屋はどうやら客室という、この屋敷に訪れた者が宿泊出来るように用意されている部屋のようで。だが、この近辺を訪れて屋敷に足を踏み入れる者はまだ居ないようで、客室の意味を果たしていないのだと言われ、この屋敷が会場となってパーティーのようなものを開いた際、使う時が来るのではないかと考えるも、先程貴族間での付き合いも面倒だと零していたのを思い出し、それならば態々ここを会場にしてまでパーティーを開き、ましてや客を泊まらせるなんてことはしないのだろうと勝手に結論に至れば、下にやっていた視線を上げ、獣耳をピン、と立たせればわかりやすく興味を示しており。それに加え、無意識的に貴方の大きな手を両手で握っていて、使いたいと意志を伝える。アイシアと近いということももちろんとても嬉しいことだが、奴隷として買われた身でありながら立派な部屋を貰えるということが一番嬉しくて。)
おお、そうかこの部屋がいいか!それじゃあ今日からここがウルの部屋だ
(ここに来て初めて、ずっと自己主張は殆どなく消極的だった彼女自身の口から何をどうしたいか、ハッキリとした口調で自らの想いをこちらへと真っ直ぐに伝えてきて。そんな積極性を示すかのように細っこく、真っ白な手でこちらの手を力込めて握ってくる様子がなんともいじらしく、多少なりとも自分にも心を開いてくれつつある証左であるという実感が伴うと込み上げる嬉しさのあまり今すぐにでも抱きしめてやりたいぐらいの気持ちだったが、当然そんな事をすれば、またあの警戒心に満ちた冷たい目が戻ってくるのは火を見るより明らかであるためなんとかその衝動は抑えつつ改めてこの部屋を彼女のための部屋とする事に決めて「なんでも足りない物や必要なものがあれば遠慮なく言ってくれていいからな、ウルはもう奴隷ではなく俺の家族の一員なんだからな」部屋の中をじっくりと彼女へと見せてやろうと中へと一緒に足を踏み入れては、彼女自身にとって住み良いように変えていくことへの協力は惜しまない事を伝え、勿論家族だなんて言われてもそう簡単に受け入れるつもりはないだろうがこちらが一方的にそれぐらいの心持ちで接するのは自由だろう、そんな風に考えながら強面と言われる顔でやや不器用に引き攣ったようにも見える笑顔で笑いかけて)
ありがとう、ございます…。部屋の中を見てもいいですか?
(この部屋がいい、だなんて柄にもなく興奮気味に貴方に訴えかけた自分の過去の行動に少し驚きながら、思わず掴んでしまった貴方の手を急いで離して。そんな自分のわがままに嫌な顔一つせず、一つ返事で頷いて答える貴方に感謝の言葉を告げつつ、もちろん部屋の中がどんな物であってもこの部屋を喜んで使うのだが、気になってしまっては好奇心が止められず、この部屋の中を見ても良いかと聞いてみる。「わかりました…、はい。…笑顔が引き攣っていますよ、不器用なんですね」足りないものや必要なものがあれば言ってくれ、という貴方の言葉に頷くと、その次に告げられたのは自分は奴隷ではなく家族だ、と言われてしまえば少しの間思考が止まるが、その言葉を素直に受け止めて。ふと貴方の顔を見てみればぎこちないながらに顔を引き攣らせ笑顔のようなものを浮かべるのを見てほんの少し笑みを零しながら貴方の顔に手を伸ばし指先で痛くない程度に頬を摘み引っ張って。)
お、おお…過去一番渾身の笑顔を浮かべたつもりなんだがな…
(彼女への親愛の気持ちを込めるつもりがそんな思考がかえって雑念となったのかもしれない、笑うという行為が出来ないほど不器用なつもりはなかったが、結果として無駄な力が入って酷く不恰好な笑顔になってしまったようで。そのことを指摘して修正するように伸びてきた手、少しばかり冷たさのある細い指先が頬に触れたかと思うと左右に控えめな力で引き伸ばされるという予想だにしなかった行為に思わず呆気に取られてしまうが、こちらへと向けられた表情を見た瞬間、困惑や戸惑いは全てが過去のものとなり、ただただ初めて見せるその可憐な笑顔の虜になってしまって。ほんの僅かばかり言葉に詰まるが、すぐに気を取り直すと自分としては自信満々に、最大級の笑顔を見せたつもりだったなどと嘯いて今度は歯を見せて爽やかに笑いかけると、改めて部屋の中へと彼女を案内して「どうだ?実はまだあんまり内装とかにも殆ど手をつけていなくてな、最低限人をもてなす体裁だけは整ってはいるが、少しばかり華がないかもな」客室として、人が滞在する上で必要なものは一通り揃ってはいるが、あくまでもそれまでの話、家具も取り急ぎ揃えた感があり、部屋自体の使用機会もないとあっては敢えて内装などに力を入れる気にもなれず今日まで来てしまっていて、そんな部屋を見ての感想を部屋の中を見て回る彼女へと尋ねて)
そうですか…
(笑顔を浮かべることが出来なくなってしまうほど生活の中で笑っていないのだろうか、と自分も笑うことは数少ないながらにもそんなことを考えていて。貴方の頬が自分の指によって軽く抓られている顔を見れば、貴族にまで成り上がるくらいの元軍人にこんなことをするのは自分くらいなのだろうなと思うと、再び笑みが混み上がってきて。それを隠すことなく口元を緩めれば、抓っていた指を離し、アイシアにもやってみたらどのような反応をするんだろうかと意地悪げなことを考えて、初対面の時のような冷たさや警戒心は解れていて。部屋の中を案内してもらえば、内装は他の部屋よりも力を入れておらず、生活出来るくらいの家具が取り揃えてあり。その部屋の内装について華がないかもしれない、と零したのを聞くと「いえ、私には充分です。あまり部屋の中が華やかでも落ち着きませんから」と他の部屋のように豪華な内装になってしまったら自室だと言うのに安心できないだろうと思って。)
ああ、それはなんとなくわかる。あまり身の丈に合わない環境にいきなり放り込まれる居心地の悪さは筆舌に尽くし難い
(元が平民であるが故に彼女の言う感覚への理解はあって、今でこそ周りの貴族に示しがつかないという理由で表面上の体裁を保つ為自室も含めてああいった豪奢な環境に敢えて身を置いて生活を送っているが、本当はもう少し落ち着いた環境で過ごしたいという気持ちも多少なりともあるのも事実で同意を示して相槌を打って「まあ窮屈だが…でも俺が貴族でいることで護れるものがある。領民の笑顔とかウル、お前の事もな」今の立ち位置は立場相応に窮屈でもある、その上でその役目を投げ出したいかと問われればそんな事はないと断言出来て、偉ぶりたい訳ではないが力が無くては護れないものがある。戦争の経験があるからこそ余計に争わずして力を示し護るべきものを護る強さを持つ象徴として居られることに矜持を持っており、護りたいものの中には既に彼女も含まれているのだと今度は不格好ではない笑顔でそう想いを口にして)
私のことも、ですか…
(周りの状態がガラッと変わったことがある貴方にはこの気持ちが分かるようで、此方の言ったことに賛成するように相槌を打ったのを聞いて。だが、平民から貴族に成り上がったことで軍人の時よりもさらに責任感や役目を覚えているようで、領民のことだけではなく自分のことまでも護りたいと言う貴方の言葉を繰り返し呟き。今日出会ったばかり、更には最初に酷く冷たい対応をしていた自分にも、そんなことを思ってくれるのかなんて、心の中で平民の軍人から貴族にまで上り詰めたのは技術面だけではないのだろうなと考えながら、「ご主人様、少しは…貴方のことを信用します」とこんなことを言うのは少し小恥ずかしい気持ちはあるのか敢えて目は合わせずそんな言葉を口にして。)
ん?そうか…それでいい、十分だ
(こちらから真っ直ぐに差し伸べた想い、それに対する僅かばかりの戸惑いを見せながらも、それでも冷え切っているかのように見えた心は着実に春の気候に根雪が溶けてゆくように確かな変化が見えて、その変化を彼女自身は少しずつ受け入れ歩み寄ろうという最大限の努力が垣間見えれば今はそれだけで十分と肯定して、関係が進展を見せた嬉しさのあまりついつい無意識に手を彼女の頭上、髪色と同じ美しい白銀に覆われた耳と耳の間にポンと置いてしまうと、わしゃわしゃと撫で回して)
トピック検索 |