ビギナーさん 2024-09-07 21:36:57 |
通報 |
…えらいすんませんなあ。
(まあ、元を辿れば自身の落ち度ではあるのだが─静かな中にも咎めるような響きを持った彼の声に眉を下げて謝罪する。マイルームへ向けて歩き出す頃には古傷の痛みはすっかり消え、普段通りに振る舞える程度には回復していた。そのまま、特に何が起こるでもなくマイルームへ辿り着く。物が少なく、整理された─と言うよりは必要最低限の物しかないような─殺風景な室内に据え付けられたベッドへ腰を下ろし、律儀に自身をここまで送ってくれた彼に礼を述べて)
…もう大丈夫や、送ってくれておおきに。
…そうか。……随分と、物が無いのだな。
(彼の隣を歩き、マイルームへと一緒に入る。と、視界に広がるのは本当に生活必需品しか無い殺風景な部屋で。ベッドに腰掛け、礼を言った彼に対して頷くと、部屋全体をぐるりと見渡してから、部屋に関して言及する。なにか彼の趣味で集めている物とか、彼の人柄なら友人も多くいるだろうし、贈り物らしき品があっても良さそうだが…部屋には収集品や嗜好品、小さなインテリアすら無い。気にも留めなくて良い小さなことだが、生前の自身の部屋ですら親友からの贈り物でいっぱいだったため、部屋にほぼ何もないのがやはり気になってしまって)
…あー…俺な、物の整理苦手なんよ。
(彼からの問い掛けは曖昧に誤魔化しておく。─弁明しておくが、嘘は一言も言っていない。実際、物の整理をするのは苦手なのだ。が、この部屋に限ってはその理由ではない。─本心を器用に覆い隠したまま、心做しかこの部屋を気にしているらしい彼に"…良かったら、暫く居てくれへんか
"と声を掛けてみる。その反応を待つ間、ベッドのシーツを気まぐれに弄んでみて)
…オレで良ければ、付き合おう。
(物の整理が苦手、という彼の言葉には「そうなのか」と単調に返す。なるほど、それなら納得だ。もしも整理できないのになんでもかんでも置いていけば、最終的に足の踏み場も無くなっているだろう。それならば最初から何も置かない方が良い、中々斬新なアイデアだ。ふむふむと頷き、彼の行動に感心していると、ベッドに座る櫻井から声をかけられる。この後は特段何もすることがなく、あるとすればカルデア内の見学…まぁ、これはいつでも構わないだろう。ベッド近くまで歩くと櫻井の横に腰掛け、少し口の端を上げながら彼に言葉を返して)
ん、おおきに。
(自身の誤魔化しを至極真面目に受け取っている彼を見ると、ほんの少しだけだが─胸がちくりと痛んだ。表情には出さないまま隣へ腰を下ろした彼を一瞥し、普段通りの笑みで礼を述べる。物の無いマイルームでは特に何をするでもない─普段は気まぐれに瞑想やら何やらをしているのだが、別に彼と二人でやるような事でもないだろう。暫くぼんやりとした様子で黙っていた後、ふと何かを思い付いたらしい─ずい、と彼の方へ顔を寄せて首を傾げ)
そや。悩みとかあらへんか?…まあ、大した事は言われへんけど…聞くだけならできるで。
ふむ、悩みか……
(顔を近づけられると少し驚くも、すぐに自身の持つ悩みについて考える。と、爆速で一つ、自らが抱える深刻な悩みに思い至る。そう、コミュニケーションである。ただ、どうやら彼には伝わってはいるようだし、相談するのはもう少し小さな悩みでも良いだろうと他の悩みを考えるも…特に思いつかない。どうしたものかとしばらく腕を組んで首を捻っていたが、マスターには伝わっても他の英霊に伝わらなかったらダメだと思い至り、結局最初に思いついた深刻な悩みを相談することにして)
……オレは元来、コミュニケーションが苦手だ。なんでも、一言足りない……らしい。どうすれば、良いだろうか。
あー…言葉は悪いけど、せやろなあ。
(彼から相談された悩みは、つい数時間前に出会った時から自身も気になっていたもの。─恐らく悪気がないのであろう事は分かるのだが、確かに彼が少々言葉足らずなのは否定できない。眉を下げ、困ったように笑いながらしみじみと頷いてみせた。そういえば─昔インターネットでこんな事をしていた時も、似たような悩みを聞いた気がする。鼻から深く息を吐き出し、いつの間にかベッドの上に胡座をかいた脚の上へ肘を乗せた。─少々だらしなく見えるだろうが、この体勢が一番落ち着く。少しの間瞳を伏せ、それからまた口を開いて)
…そうやなあ…めちゃめちゃ直したい、ってあんたが思うなら別やけど。ここではそない気にせんでええんと違う?…ここだけの話、綱さんやってたまーに言葉足りん時あるねん。まあ、それでも意味は分かるし…そもそも誰もそないな事で責めへんしな。
…顔についてのあの一言は、申し訳ないと思っている……
(自身の悩みに困ったように笑いながら頷く彼を見ると、召喚されてものの数分でその言葉の少なさを披露したのを思い出し、顔を伏せては改めて謝罪をする。たとえ彼が気にしていなくても、あまりにも申し訳が無くてしっかりと謝らねば気が済まないのだ。彼が口を開き出すとぱっと顔を上げ、真剣に話に耳を傾ける。綱の話には親近感を感じたようで微笑むが、少し腕を組んで考え始める。確かにここに召喚されている英霊達は優しい者ばかり、誰も責めないと言われれば納得はするが……意味が分かるかどうか、そこが問題だ。一言少ないレベルならまだしも、自分は二言も三言も足りないほどだ。浮き出てきたその不安を、心配そうに口に出して)
……そう、だろうか。誰も責めない、という点には同意するが……オレの言葉足らずは、ツナよりも酷いものだろう。到底、理解できると思えんが……
あはは、気にせんでええって。
(相変わらず生真面目に謝罪してくる彼の言葉を明るく笑い飛ばし、小さな欠伸を一つ。─どうやら彼は、自身が思っていたよりも深刻に悩んでいたらしい。今思えば、何故そんな行動に出たのか自分自身でもよく分からない。恐らくは、肩肘を張っているように見えたのかもしれないが─自身よりもいくぶんか上背のある彼の頭へ手を伸ばし、子供でもあやすようにぽんぽん、と軽く叩いてやった。想定していたよりもずっと柔らかい髪に少々驚きつつも、"…あんたは真面目やなあ、俺とは大違いや。真面目すぎるから悩んでまう、ってところもあるんと違うか?ま、俺かてたまに勘違いされることもあるしなあ…ちょーっとばかし肩の力抜いてみたら、案外さらっと改善するかもしれへんで?"と─目前の彼を慈しむような柔らかさを持った声を掛けてみて)
!……肩の、力を……ふむ。
(相手が本当に気にしていないことを確認すると少し安心するも、それでも悩みは消えない。むむ…と考え込んでいると、ぽんと頭を優しく叩かれ、思わず目を見開く。急で驚きはしたが…ふと、先程までの不安がなくなっていることに気づく。そのまま先ほどよりも幾分か軽い気持ちで話を聞くと、顎に手を当てて少し考える。先ほどよりもその表情は暗くない。顔を上げて彼の方を向くと、優しく微笑みを浮かべて)
……なるほど。確かに、気難しく考えすぎていたのかもしれん。肩の力を抜く、か……容易ではないが、挑戦してみることにしよう。感謝する。
…ま、いきなりやるっちゅうんは難しいやろなあ。ちょっとずつでええよ。
(彼の礼の言葉にはただでさえ細い目を更に細め、彼の微笑みに釣られるようにして表情が綻ぶ。─どうやら、ほんの少し程度は彼の力になれたらしい。肩の力を抜くことにまで生真面目な彼にそんな言葉を掛けたところで─自身が彼の頭を撫でていたことにようやく気付いた。慌てて手を離し、"あ、気ぃ悪うしたらすまんな。ネットでやってた時な…よう『頭撫でてほしい』みたいなリクエスト来とったんよ。せやから、つい…"と弁明を口にする。そのまま彼の反応を待ち、口を噤んで)
…ああ。そうしよう。
(微笑みながらそう返すと、頭から彼の心地良い手の感触がぱっと消えたことに気づく。すこしぽかんとして彼を見ると、どうやら無意識だったようで、慌てた様子で弁明を口にする彼が視界に入った。確かに、そのリクエストには同意する。なにせ今気が楽なのは、彼の手の感触が暖かく、優しいものだったから。…ただ、もう少し。施しの英雄とまで呼ばれるほど他者に何かを与えてばかりの人生だったのだ、たまには自分も求めてみてもいいだろう。そう考えつつ彼の手を掴むと、ぽすりと自身の頭に乗せて)
…お前の手は、暖かい。………できれば、もう少し続けてほしいのだが……構わないか?
ん、ええよ。
(いくらインターネット上でリクエストに答えていたとはいえ、それはあくまでも画面上の"フリ"だけ─実際に、家族と親戚の子供以外で他人の頭を撫でるのは初めてだ。だが、まあ彼の返事を聞く限り─気分を悪くした、という訳では無さそうに思える。内心胸を撫で下ろしつつ、軽く同意してから彼に促されるまま、その頭をもう一度撫でてやった。先程と同じふわふわとした質感の髪に指を埋めていると、ふと悪戯心が沸いて─かつて親戚の子供にしていたように、セットされたそれをくしゃりと雑に乱してみる。いつの間にか表情も柔らかく緩み─掛け合う言葉こそ無いものの、穏やかな雰囲気が彼と自身を包んでおり)
…感謝する。
(同意の言葉を得ると、目を閉じて彼に頭を預ける。やはり、彼の手は優しく暖かい。今まで頭を撫でられたことがあるのはたった数回、全て親友によるものだったが…彼の手の暖かさは、その親友に近いものだ。不安など一切ない、穏やかな顔でしばらく頭を撫でられ続ける。途中で髪型がくしゃり、と雑に乱れたときは少し驚いた様子で目を開くも、すぐに閉じてまた撫でられるのを楽しむ。まぁまぁ時間がたった頃、ふと目を開けると、優しい笑みを浮かべながら彼の方を見て)
……満足だ。……良ければまた、頼んでも良いだろうか。
俺でええんやったら、いつでも。
(彼の笑みと良く似た穏やかな声色で彼の問いに答え、ぱっと頭から手を離す。─彼の頭を撫でるうちに、自分自身も無意識でリラックスしていたらしい。普段ならば、そろそろ古傷が痛み始める時間帯なのだが─今日は、一切疼く気配を見せなかった。指の腹で自身の脇腹にこっそりと触れ、他の場所と比べて皮膚が薄くなっているそこをなぞる。─そこはまだカルデアに到着する前、スケルトンに切られた傷。ドクターの話によると、傷口から出てはいけないものがはみ出ていたがまあ、今はきちんと塞がっているので問題ないだろう─とのこと。少しだけ自虐的に笑ってから彼に向き直り、長い時間引き留めてしまった事を詫びて)
ああ、えらいすんません。…そろそろ綱さんらも戻ってきてる頃やと思うし…行ってきたらどないや?
…む、もうそんな時間か。
(自らの問いに対する答えを聞くと、ぱあっと嬉しそうな雰囲気を醸し出す。次はいつにしようか、と少し心の中でわくわくしていると、綱達も戻ってきているだろうと聞き、時計を見てみると1時間ほど経っている。もうこんな時間かと驚きつつも、そういえば水浴びをしていない事を思い出す。空調のおかげもあってか汗はひいたが、埃や塵も体についていることだろう。それであれば先に水浴びをしてから彼らと合流した方が良いだろうと考えると、ベッドから立ち上がって)
……確かに、彼らとも合流したいが…先に、身を清めることにする。埃などもついているだろうしな…寝台は、汚れていないだろうか。
ん?大丈夫やって、心配せんでええよ。
(彼の言葉に目線だけを動かし、シーツの全体をざっと確かめる。─彼が座ったことによって生じた細かなシワはあるが、それ以外特に気になる点はなかった。その部分を手で軽く伸ばしつつ、目線を彼に戻して緩く微笑む。彼の背中を追うようにベッドから立ち上がり、マイルームの入口まで彼を見送って─"ほな、また…待っとるから、いつでも来てな"と声を掛けながら手を振り、彼がマイルームを出ていく姿を見守って)
…それは、良かった。
(自身の体で彼のベッドを汚していないことに安堵すると、入り口に向かって歩き出す。扉を開いてからくるりと部屋に体を向けると、手を振って見送ってくれている櫻井の姿が目に映る。わざわざ立ち上がり、いつでも来て良いと言ってくれる彼に嬉しさを感じ、優しげな声音で「…ああ、また。」と返す。そのままゆっくりと扉を閉め、水浴びのために歩き出す。…さて、櫻井の部屋からしばらく歩いてから気づいた方がある。シャワールームが分からないのだ。どこにあるか聞いてから出れば良かった、なんて後悔しつつ、誰か通りがかる者はいないかと探して)
………誰か、いないだろうか……
…さーて、俺も寝よ。
(彼の背中が見えなくなるまで手を振り続けた後─閉じられたマイルームの扉を見つめながら、大きく伸びをする。そのままベッドに逆戻りし、ぼすんと音を立ててシーツへ倒れ込んだ。先程まで彼が座っていたからか、ほんのりと暖かいそれに身を委ねて目を伏せる。─その頃─金時と渡辺綱は頼光の前を先導し、カルデア内を案内していた。頼光は彼らの案内に時折相槌を打ちつつ、感嘆したような眼差しをカルデア内へ向けていた。と─頼光がカルナを見つけたらしい。彼女は"あら、こんにちは"と挨拶をしてから穏やかな笑顔で頭を下げて)
…?…あぁ、お前が新たなサーヴァントか。
(困り果てていたところに見知らぬ女性に声をかけられ、頭を?が覆い尽くす。と、彼女からサーヴァントの気配を察知し、ようやく先ほどのマスターの言葉と繋がる。彼女が、先ほど彼に召喚された英霊なのだと。「カルナだ。ランサーとして現界している」と簡単に自己紹介をすると、先程刃を交えた彼らー金時と綱が目に入る。どうやら彼女にカルデアの施設を案内していたようだ。これは運が良い、シャワールームまでの道を教えてもらおうと考えると、彼らにも声をかけて)
…金時に、綱もか。ちょうど良かった。シャワールームまでの道が分からないのだが……案内しては、貰えるだろうか。
トピック検索 |