ビギナーさん 2024-09-07 21:36:57 |
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え、飲めるけど…どないしたん?
(素っ気なく断られ、少々残念そうな様子で元の席に戻ると─またおにぎりをのそのそと食べ始める。彼の様子を見守りながらようやく二つ目の半分程に差し掛かった所で、キッチンで何やら作業をする彼から、紅茶は飲めるか─と声を掛けられた。目を何度か瞬かせながらもその問いに頷き、彼の手元を改めて見てみる。─冷蔵庫に入れてあった野菜とスパイス、それと─紅茶を淹れようとしているのだろうか、ガラスのティーポットが見えた。テーブルに置いたままだったお茶のペットボトルに一瞬目が行くものの─それは自身の座る椅子の方へ避けておいて)
…そうか、それは重畳。
(飲めると聞けばふわりと微笑み、作業を開始する。湯を沸かし、ぬるま湯と薄力粉、塩とサラダ油を用意するとそれらを混ぜ合わせ、何かの生地を作り始める。それをラップで試行錯誤しながら包んで置くと、スパイスを三種ーカルダモン、シナモン、クローブを取り出し、手鍋に水と共に入れて火にかけ始める。沸騰したら弱火にし、1分ほど経ってから火を止め、茶葉を入れて3分ほど蒸らす。冷蔵庫から取り出した牛乳を加えて火にかけ、焦げ付かないように混ぜ合わせながら沸騰直前まで煮込む。…辺りにスパイスの香りが充満し始め、またくぅと腹が鳴る。あと少し、あと少しの辛抱だ。そう考えているとまさに鍋は沸騰直前、少し慌てて火を止めるとポットにそれを移し替える。二人分のカップを取り出してはポットの中身を注ぎ入れ、そのうちの一つを主人の目の前に差し出して)
…マサラティー、というらしい。初めて作るが、悪くない出来だ。飲んでくれるだろうか、マスター。
おおきに、頂くわ。
(慣れない手付きで調理をする彼を微笑ましげに眺め、残ったおにぎりを口の中へ放り込んだ。もそもそと音を立ててそれを咀嚼している内に、彼の方の作業は終わったらしい─目の前に、ほんのりと湯気を立てるティーカップが差し出される。米粒で汚れた手を拭きながら礼を述べ、そのティーカップにのんびりと口を付けた。程良い甘味が口の中に広がり、今の今まで眠そうだった表情と─無意識の内に張り詰めていたらしい意識がふわりと緩み)
…どう、だろうか。
(もう一つ、軽食の生地ができるまであと十数分。それまではこの紅茶を飲んで待っていようと考えながら一口飲む。…少々シナモンを多く入れたからだろうか、ほんのりと甘い。初めてでこの味、この出来栄えなら、我ながらよく出来たものだ。ほっとしたように微笑むが、はっとした顔で櫻井の方を見る。…もしも彼の口に合わなかったらと心配していたのだが…不味そうな顔はしておらず、むしろ先ほどより緩んだような表情を浮かべている。どうやら不味くはないらしいと胸を撫で下ろしつつ、味はどうかと聞いて)
ん、美味しいで…ありがとうな。
(自身と同じように微笑む彼の顔を横目に、また一口カップの中身を喉に流し込む。心做しか心配そうに尋ねてくる彼を安心させるように─ふわ、と緩やかに笑いながら首を縦に振った。カップを一旦テーブルに置き、また無意識の内に─彼の頭へ手を伸ばし、手触りの良い髪をふわふわと撫でる。ペットか何かを慈しむような優しい目線を彼に向けつつ、暫くの間また彼の頭を撫でていて)
…それは、良かった。
(にこりと微笑みながら首を縦に振る彼を見ると、つられて自身も口角を上げる。紅茶はまだ少し残っている、おかわりはいるかと聞こうとした時。頭に、彼の暖かい手が添えられた。なにやら小動物かなにかを愛でる様な目線を向けられている様な気がするが…心地良さにそんな不満も全て吹き飛んでしまう。机にもたれると彼の方に身体を預け、穏やかな顔で目を閉じる。…彼の手にはなにか、人をリラックスさせる魔術でも宿っているのだろうか。そんなふうに考えつつ、なされるがままに撫でられ続けて)
…
(彼の髪の感覚が心地良く、暫く無心で撫で続けていたが─またはっと気付いたらしい。が、今度は手を引っ込める前に彼の表情をまじまじと観察したかと思えば─もう少しの間撫でた後に手を離した。渡辺綱やら新宿のアーチャーやらを撫でるなど恐れ多いし、金時は肩を叩く程度のもの。頼光─女性の頭を撫でるなど論外。それ故だろうか、こうして頭を撫でさせてくれる彼のような存在が居ることで、気が楽になるのかもしれない─内心そんなことを考えつつ、テーブルに頬杖をつきながら自分の髪を弄って)
…あんたの髪、ふわふわやな。俺の髪はクセ強いからな、ワックス使こても上手いことまとまらんのや。
…む……髪、か。生前、友にもその様なことを言われたことがある。特段、何もしていないのだが…
(手が頭から離され、目をぱちりと開けると手を頭に置く。普段は気にしたことがなかったが、彼の言う通り確かにふわふわとした手触りだ。…生前、親友であるドゥリーヨダナが『お前は美しい髪をしておるなぁ!!』とよく褒めていたな。なんて考えていると、目の前の彼が頬杖をつきながら自身の髪を触っている。髪のクセが強いと聞くと、まじまじと彼の髪を見る。確かに全くまとまらず、すぐにはねてしまっている。…ぽん、と彼の頭に手を乗せてみる。自分の髪よりは確かにふわふわではないが、触り心地は良いものだ。微笑むとそのまま、くしゃくしゃと彼の頭を不器用に撫でて)
ふわふわ、とは言えんが…お前の髪も、撫でがいがあって好ましいな。
…そうやろか?
(自身が撫でられるとは思っていなかったようで─髪を弄る手を止めて、少し驚いたように目を何度か瞬かせながら首を傾げる。少しぎこちない彼の手付きに何を言うでもなく目を細め、黙って彼の方へ身を預けた。─暫くの間、そうして穏やかな時間を過ごして)
…ああ、とてもな。
(驚いた様に瞬きする彼の反応が少し面白く、優しく撫でてみたり、かと思えば少し雑にわしゃわしゃと撫でたりしてみる。人の頭を撫でるのは初めてだが、表情を観察しているとどうやら安心してくれている様で、自身も少し安心する。…しかし、彼に触れる、触れられると本当に落ち着く。もしやリラックス効果のある固有結界の持ち主か、なんて的外れな事を考えつつ、しばらく彼の頭を撫で続けていると……ぐぅぅぅ、と少し大きな腹の音が。少し驚きつつ時計を見やると、もう十数分以上経っている。そろそろ生地も発酵している頃だろう。最後に大きく二回ほど撫でてからそっと彼の頭から手を離し、再度厨房に戻って)
…今からもう一品、軽食を作るが…初めて作るため、上手く作れるか分からん。良ければ味見をしてくれないか、マスター。
ん、ええよ。
(暫くの間は大人しく撫でられていたが、頭から彼の手が離れると欠伸を一つ、キッチンへ戻る彼の背中を見送った。─普段ならこのまま一人でひっそりと雑な昼食を済ませ、マイルームに戻って寝るだけなので─こうして人と昼食を共にすることなど、滅多にない。テーブルに頬杖をつき、彼の作業をまじまじと見守りながら─再び欠伸をして)
感謝する、マスター。
(少しだけ柔らかい表情を浮かべると、先ほど取り出した野菜各種を見つめる。今から作るのはサモサという軽食で、今のインドの揚げパイの様なもの…らしい。食べたことも無ければ見たことも無いが、知識によると美味しいとのこと。さてどんな味かとわくわくしながら、じゃがいもの皮剥きから始める。自らの鎧を剥ぐのと同じ要領でやると、中々上手く剥けた。次にそれを1cm片ほどに切り、水を入れたボウルに入れしばらく水に晒す。その間に玉ねぎをみじん切りにし、しょうがをすりおろし、グリンピースの缶の汁を切る。じゃがいもの水気を切ると耐熱容器に入れ、先ほどよりよくなった手つきでラップをするが…ここで問題発生、電子レンジの使い方が分からない。しばらく試行錯誤するものの分からなかった様で、申し訳なさげに彼の元へ)
……すまん、マスター。このじゃがいも、電子レンジで…600わっと?で五分加熱しなければならんのだが…使い方が分からん、助けてくれ。
ええよ。
(彼が料理する姿をぼんやりと見守っていたが─最新型の電子レンジに悪戦苦闘するインドの英雄に笑みを零し、キッチンの方へと歩み寄る。"これなあ、難しいよな。ボタンがややこしい位置にあるんよ"と苦笑いしながらボタンを操作して電子レンジのワット数を変え、じゃがいもの入ったボウルを突っ込んでは加熱時間の設定をして)
…すまない、助かった。
(彼の手慣れた操作を横から見つめ、どうやって操作するのか目に焼き付ける。しかし中に入れてボタンを押すだけで加熱できるものがあるとは、現代は便利になったものだ。そんなことを考えながら彼に礼を言うと、まな板の方へ向き直る。さっと水でまな板と包丁を洗って置き直すと、先ほど作った生地を手に取り、ラップを外してまな板の上に置く。生地を八等分に切って一つずつ丸めると、まな板に薄力粉をふるい生地を楕円形に伸ばす。全ての生地を伸ばす頃には5分経ったらしく、レンジから軽快な音が鳴る。じゃがいもを取り出すとフライパンに油を引き、先ほどみじん切りにした玉ねぎを炒め始める。…きつね色になるまで、だそうだが……きつね色とは、何色か。難しい顔をしながらも、とりあえず焦げない程度にと考えながら炒めて)
………きつね色…………焦げかけたら、火を止めるか………
…任しとき。
(このままだと具材を全て丸焦げにしてしまいそうな彼の間に─少し溜息混じりに割って入り、彼の手の上からヘラを掴む。そのまま手際よく玉ねぎを炒め、きつね色になった所で素早く火を止めて)
む………すまんな。
(横から入ってきた彼に少し目を開いて驚くも、その手際の良さに感服する。やはり経験者は違うな、まだまだ精進せねば。幸い、ここからは自分だけでもなんとかなりそうだ。「助かった。後は大丈夫だ、座って待っていろ」とやんわり微笑みながら彼に礼を言うと、フライパンにターメリックなど五種類のスパイス、そして先ほど下拵えしたじゃがいもなどの野菜たちを加えて再び火を付ける。全体的にスパイスが馴染む様に数分炒めると火を止め、ボウルに移し少し冷ます。…スパイスを加えたからかカレーに近い匂いが辺りに漂い始め、さらに大きく腹が鳴る。…ひょいと具をひとつまみし、口に入れる。と、口の中に広がるスパイシーな味。想像よりも辛くなく、これなら彼も食べやすいだろう。スプーンを取り出すと一口分すくい、彼に差し出して)
…中々美味い。お前も一口、食べてみてくれ。
…ん…ああ、ほんまや。
(彼に言われるがまま、食堂のテーブルに戻ってはのんびりと時間を潰していたが─ふと差し出されたスプーンを躊躇なく口に含み、もそもそと咀嚼してから─穏やかに微笑んでそんな感想を漏らし)
…口に合った様で、何よりだ。
(微笑みを向けられると、少し嬉しそうにしながらまた厨房へと戻る。さっさと具を生地へと包み、小さな餃子の様な形にする。それらを16個ほど作ると、油を鍋に入れて中火で熱する。…温度の測り方は…と考えていると、ぴこんと聖杯から知識が。さっそく実践しようと菜箸を取り出し、濡らしたキッチンペーパーで箸先を湿らせると油につける。…全体から少し大きめの泡が出ている。最適な温度になったようだ。16個の具を包んだ生地を油内に投入し、その間に油を切るためのキッチンペーパーと盛り付け用の皿を用意する。スパイスの香りがさらに強くなり、また大きい腹の音が鳴ってしまう。腹をさすりつつ鍋を見ると、こんがりとした色が付いているのに気づく。全て取り出し、油を切ってから皿に盛り付け、厨房から出るとマスターがいる机の上に置いて)
…出来上がった。サモサ、と言うそうだ。…いくつか、食べてみてくれ。
ん、おおきに。
(腹の音を鳴らしながら調理を続ける彼を見つめていたが─どうやら完成したらしい。テーブルの上に置かれた皿に目を遣った後、彼に礼を述べながらサモサに手を伸ばした。一口齧ると、先程味見した時に感じたスパイスの風味が口の中にふわりと広がる─そのまま続けて何口か食べた後、目に見えて柔らかい表情を浮かべながら"めっちゃ美味いわ、これ"と彼に向けて微笑んだ後、"…俺も作ってみよかな"と独り言のようにぼそりと呟いて)
そうか。…そうか。それは、何よりだ。
(味を褒められると、目に見えて分かるほど嬉しそうなオーラを出しながら目を開く。それを受け、自身も一つ手に取るとぱくりと一口でそれを食べる。と、油で揚げたからかさくさくとした食感と同時にスパイスの風味が口の中に広がる。…うむ、うまい。ほこほこと周りに花を飛ばしながらもう一つ手に取る。未来にこんな美味しいものがあったとは、召喚されて本当に良かった。そんな風に考えつつ、目の前のマスターを見ながら微笑んで)
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