最後の晩餐　〆

なんだそれ、俺がいつ仕事帰りだって…まあいい、いただきます。

（　座るよう促され、適当に空いているスペースに腰を下ろす。正直立っているのもやっとだったのでありがたい。先ほど仮眠できたおかげか眠気はないと言いたいところだが、暇を持て余し、料理をする生活音を静かに聴いていれば眠気に誘われて。こくりこくりと舟を漕いで数分、数十分、数時間。どれほど待ったのか定かではないが、声を掛けられ瞼を開く。労いの言葉には思わず軽く笑ったが、なんとも美味そうな匂いが鼻腔をくすぐると、意識はそちらに向いて。しょうが焼きと白米、味噌汁。机の上に置かれた料理たちを見れば、苦しいほど腹が鳴る。もう我慢の限界だと箸を持てば、手を合わせて挨拶を済まし、さっそく肉を一枚口に放り込む。間髪入れず白米をかきこみ、大きく口を動かしながら咀嚼する。じわりと味が広がり、一口、また一口と食べ進めていけば空きっ腹が満たされていく。生命線を繋げようと飯を食らう行為に必死で、忘れかけていた家主の存在をふと思い出し、こういうのは最低限味の感想を伝えるのが義理だろうと、一旦すべて飲み込むと幾分かマシになった顔色で相手を見て　）


……うまい。手料理なんて久しぶりに食った。コンビニ弁当とは訳が違うな。

そんな形してたら仕事帰りって思うだろ。（　自身の言葉になんでと疑問に思う相手をさも当たり前のように答える。後から追うように自分の分も机に置いて、彼とは正面ではなく斜めになるように座る。初対面の男が目の前で食事をしていたら気になるだろう。いただきます。箸を手に持ちながら両手を合わせる。1人のときだってしっかり挨拶をする。一口、白米を口に放り込もうとしたとき、彼が必死に口を開けて頬張る姿に見惚れる。ああ、食事とは幸せな時間だ、と、思い出させてくれるように。温かい食卓からどれだけ離れていただろうか、1人、今夜声をかけた。それだけだったのに。見ず知らずの、なにもわからない彼が食べている空間に少しの安心感を覚える。うまいと評価してくれればそれを受け止めるように少し目を瞑り、口角を上げて、自分も一口放り込む。それが、いつもの数割増しで美味く感じてしまうのは、1人が長かったせいだろう。暫くは食べることに集中しながら、ふと思い出したように顔を上る。手に持ってる箸で行儀悪くもご飯を突きながら　）

じゃあ、コンビニより美味いってことで。2000円、頂戴するかな。


、

……嬉しそうだな。

（ 純粋に感想を伝えると、それに応えるように嬉しげに微笑まれたものだから、何故だかこちらの胸がじんわりと暖かくなる。何を言えばいいのか分からず、とりあえず見たままの相手の様子を声に出した。なんだ、この感覚。摂取したばかりのエネルギーがそのまま思考回路に供給され、少し冷静になった頭で考える。親父の付き添いで何度か行った、社交辞令が飛び交う上辺だけの会食や、上司の接待で息つく暇もない飲み会とも違う。そういえば、こうして何も取り繕わずに誰かと食卓を囲んだのは初めてだった。幼い頃から今に至るまでずっと、両親や他人の顔色ばかり気にして生きていたから。限界が近かったとはいえ、赤の他人にここまで甘えてしまっている現状が、夢のようで。否、赤の他人だからこそ、この距離感が叶っているのだろうか。確かに自分は独り身ではあるが、出会ったばかりの男と飯を食って、腹だけでなく心まで満たされるなんて。そんなことあっていいのかと戸惑いながら、食事を進めていく。ちょうど味噌汁を完飲する頃、聞こえた声に顔を上げ。その言葉の意味を理解すると、隅に置いていた鞄の中から財布を取り出し「金ならある。上乗せして払ってもいい」と要求された金額の2倍、つまりは4枚の紙幣を机に置いて　）


ごちそうさん。すげえ美味かった。
……ぶっちゃけ、また食いたいくらいだ。

うわ。やめろよそんなに。2000円でも高えんだから、これは引き取ってくれ。＿＿また、来ればいいよ。その時にとっとけって。（　机に置かれた４枚のお札に少し顔を顰める。元々割と真面目な方だったし、金銭面には結構シビアなとこもあり、急に出てきた４枚の札を受け取る気にはなれなかった。もらいたい状況ではあるが、他人から倍の値段を取れば人間が終わってしまうとも思っていた。さっと２枚だけ手に取り残りの２枚を指差しながら下げろとばかりに。机に残った２枚、綺麗に無くなった皿、もう終わってしまうのだと思った。素でいることなんて最近はめっきりなくなっていて、ほんの少しの時間でも楽しかった。また、なんてあるわけもなく、それでも言葉はするしかない自分は落ち着いたら声色で願いを伝える。何もなかった自分に、少しの楽しみをくれた彼を、名残惜しいと思ってしまった。「　まあ、無理にとは言わねえから　」まるで断られるのを怖がるみたいに付け足す。苦笑いを隠すように残りの食事を口一杯に頬張った。全てを完食し箸を置いて。口の中は未だモグモグと咀嚼を続けながら　）


ごちそうさまでした。

なんだ、いらねぇのかよ。
……そこまで言うんなら、また食いにくる。俺の連絡先…スマホは電池切れだから…えーっと、とりあえずこれ。


（　差し出した全額を受け取ったところでどうとも思わない。命の恩人ともいえる行いをしたのだからこれくらい当然で、むしろ足りないとすら思ったが、相手は遠慮がちに半分しか受け取ってくれず、落胆したような声が出る。金がいらないなら他に何が欲しいんだと思いながら、渋々と札を財布に戻した。すると、次の機会を匂わせる発言にはたりと動きを止めて。相手の顔を見れば、なんとなく、彼の欲しいものが分かったような気がした。見たところ一人暮らしであろう彼は自分と同じく、孤独を抱えているのだろう。故に、食事中に感じたあの暖かさを、きっと彼も。だからこそ、共に食卓を囲むことが、恩返しになる。自分としても一期一会で終わるには惜しいと感じていたところで。そうと分かれば、答えはひとつ。またいつでも予定を合わせられるように、連絡先を伝えようとして。スマホの電池切れを思い出し、代わりにメモ帳の紙を1枚引きちぎり電話番号を書いて差し出した。今日は仕事でミスをしたり、電車が遅延したり、雨に降られて、嫌なことばかり。しかしそんな出来事があったからこそ、この縁と巡り会えた。散々な一日だったはずが、不思議と心は晴れやかで。外の天気も気分と比例していればいいんだが、と窓を覗こうとしながら　）


……雨は、そろそろ止んだか？

あ、ありがとう。（　渡された紙を戸惑いながら受け取れば、そこには電話番号が。母親とバイト先の連絡しか登録されていなかったスマホ、受け取ったその紙を見つめながらお礼を一つ。まだ、次もあるのだとわかると顔が綻ぶ。ニヤニヤしてしまうことに気づいて手の甲を口元に。隠せているかわからないが、素直に嬉しさが顔から溢れてしまっていた。誰ともわからない、わかるのは苗字だけ。それでも、彼との関係がここで終わらないことが少しだけ嬉しかった。パッと切り替えるように番号のかかれた紙を置いて、その辺に転がっていた広告の紙の端をちぎって、鞄から大量生産されているようなボールペンを出し、紙に書き始める。そこに書かれたのは自身がバイトをしているコンビニの店舗名。ボールペンを机に置いて相手の胸元目掛けて勢いよくその紙を差し出す。「　ん、俺、この家いなかったら大抵ここにいるから。何かあったら＿＿こいよ。　」何かあったらってなんだ。自分でも少し理解不能な言葉につづきの言葉が出てこない。一瞬言葉が止まるものの、自分の願いを最後に付け足す。要はまた来ればいいと。外の天気をのぞく彼の後ろから自分も外を見てみる。あ。天気は自分らの今の気持ちを表すみたいに、これからの未来に明るさが照らすように。雲間から月や星がのぞいていた　）

ああ、これなら明日は晴れるだろうな。

へいへい。ふーん、コンビニで働いてんのか。了解、……なんかあったら、行くわ。

（　連絡先を与えただけでこの喜びよう。存外表情豊かで分かりやすい奴だなと、釣られて若干口角を上げながら相手の行動を目で追って。差し出された紙を受け取り、相手の言葉には同調してにやり笑いながら返事をする。紙に書かれたコンビニの店舗名を見て、ようやっとここの住所を把握して。何時間も歩いてきたつもりが、意外と駅から遠いわけでもなさそうだ。これなら気軽にまた会える。今日のような大それたトラブルが今後も起きるとは限らないが、彼が言うように「何かあったら」という曖昧な理由でも会いに来ていいらしい。なんだか、新しい友達ができたことを親に報告したくなる子どものような、そわそわとした気持ちでしばらく紙切れを見つめて。雨も上がったようだし、そろそろ帰ろうかと思えばふと我に帰って、机の上に視線を移し。ひとつ、しょうが焼きが盛られていた大皿を持ち上げて　）


───そうだ、食器片さなくちゃな。流しに持っていきゃいいんだよな？


（ ／ 背後失礼します。今後の展開について相談です！
後片付けをしたら浅倉は一旦帰宅。そして少し時間を進めて後日、またコンビニへ会いに行く、という展開を考えていましたが、何か他に案があれば教えていただきたく思います。

ああ、いいよ。俺あとでやるから。それよりも早く帰った方がいいだろ、明日も仕事だろ？（　食器を持ち上げる彼を制止するように声をかける。明日も平日であるため、世の社会人は仕事だろう、彼がそうとも限らないが、もしそうであったなら早く帰って睡眠をとるべきかと思案して提案する。自分は明日仕事があったとしても所謂責任のないバイトの身だ。相手とは重さが違う。そう思えば濡れていたコートをハンガーから外して帰宅の手伝いをし始め。「　あとこれ、具は入ってねえけど、　」そそくさとキッチンの方から保冷バックを持ってきて相手の前へ差し出す。中には丸く握られたおにぎり。今日炊いた米をそのまま塩を振ってラッフルで包んだだけだが、少しでもと思い用意していた。何かあったら行くと告げる彼の言葉に再度まるで念押しするみたいに　）


何かあれば、いつでも。



（　／　ご提案ありがとうございます！それでお願いしたいなと思います。電話するにも、勇気の出ない瀬戸のためにコンビニにきてくれるなんて、素敵すぎます。よろしくお願いします。　）

いいのか？じゃあ任せた。……おにぎりか、いいな。明日食わせてもらう。いろいろと貰ってばかりで悪ぃな。

（　手伝う必要はないと止められ、素直に従って一度持ち上げた皿をまた机に置いて。そういや明日も仕事かと早くも憂鬱になりながら、多少は乾いたコートを受け取る。鞄を持ち、忘れ物はないかと周囲を確認していると、相手から何かを差し出されて首を傾げる。いつの間に作ったのやら、中身はおにぎりのようで。明日にも食事の楽しみが出来たことが喜ばしく、思わず顔が綻んだ。至れり尽くせり世話してくれる彼には頭が上がらない。尽くされてばかりは癪なので、次会うときはしっかり礼をしようと心に決めると「じゃ、またな」片手を振りながら、玄関から夜の闇の中へ消えて行った　）



───おう、久しぶり。家行ってもいねぇから探したぞ。…あ、カードで。


（ あれから数日後。相変わらず寒さは厳しいが、あの日とは打って変わりすっきりと晴れた空の下。駅からしばらく歩いた場所に位置するコンビニに入店すると、出入り口からすぐ目の前にあるレジに立つ目当ての人物を発見。「いたいた」と呟きつつ、そこに直進するかと思いきや、向かったのはアルコール飲料の棚で。何本か見繕うと、今度こそ彼のいるレジへと歩みを進め、気さくに話しかけて。「あんたも飲みたいんなら追加すっけど」と酒缶を指して、しれっとこの後家に寄りたいという意思を匂わせて　）



（ ／ 提案を聞き入れてくださりありがとうございます。勤務中の瀬戸さんに会いに行くという場面転換をしてみました。今後も何かあれば相談しますので、よろしくお願いします…！

お待たせしまし…って、浅倉？あ、カード…で、（　出ていく彼の背を少し眺めながら食器等を片付けて眠りにつく。今まで一度もなかった来客にはじまって、多くの感情が入り混じった今日。連絡先ももらいながら、あれから何もできずにいた。勇気が湧かないのは、今までのことがあったからだろう。友人など、いつか見放されるくらいなら最初からいない方がいい。そんなことを頭のどこかで考えていた。何日か彼にもらった連絡先を眺めながら、通話ボタンを押さずにいた。いつも通りの時間にバイトへ向かって、何ともない1日を過ごしていく。レジに向かうお客さんに気づいて決まった台詞で答えてみると、聞こえてきた見知った声と、久しぶりという言葉に顔をあげる。あれから忘れることのなかった顔がそこにあった。動揺しながらレジを打ち、状況が理解できないままカードを受け取る。「　えっと、じゃあ、ビール。　」追加を聞かれればとりあえず答えて。何が起きているかもわからないまま会計を済ませてやれば袋詰めした商品を渡そうと手を伸ばしたところで止まる。彼の口ぶりからして会いにきてくれたのだろう。勇気の出なかった自分の行動を少し恥ずかしいと思えば、自分も意気込むように口を開き　）


１９時に終わるから。あと、今日は肉じゃが…、食ってくよな？



（　／　展開を引っ張ってくださりありがとうございます！もう既に絆されつつある瀬戸ですが、もう少しお互いにギクシャク感だしていき、ある程度のところで半同居的な形に持っていく、というのでどうでしょうか。今後の流れの確認に提案させていただきますね。　）

まあ、そのために来たようなもんだしな。……あと30分くらいか？それくらいなら待ってやるよ。寒ぃし店内に居座るけどいいよな？


（　下戸だった場合を配慮して選択肢を出したが、相手からは動揺しつつも酒を求める声が返ってきて。「はいはい」と妙に嬉しげな様子で口角を上げそれを聞き入れると、お望み通りビールを何缶か持ってきてレジに置いた。彼のアルコールの許容量も酩酊するとどうなるかもまだ分からないが、共に酒を飲む相手が出来て早くも上機嫌で。退勤時間を告げる彼には軽い調子で返し、袋を受け取ると返事を聞くより先にイートインスペースに一直線。そこに留まることにして。スマホを取り出しニュースサイトを開くと、適当な記事に目を通して、時々あくびを漏らしながら暇を潰す。すると、突然仕事先からの着信が。退屈そうな顔を一変させて表情を強張らせると、ちらりとレジにいる彼に目配せしながら店の外に出た。かちり、とスイッチを押す音が脳内に響いて、電話先の相手に「すみません。私は今、別件で動いてて…はい、また明日対応させてください」と高く猫被った声色で、見えてもいないのに頭を下げた。馬鹿正直に今から宅飲みなんですと答えられる筈もなく、「別件」なんて都合が良い言葉で包み込んだ。嘘ではぐらかされたと知れば、同僚はどんな顔をするのか。想像したところで心が痛むほどの善心は持ち合わせていない。電話を切り、深く溜息を吐くと、店内に戻るのも億劫になり結局外で待機することにして　）



（ ／ そうですね、私もギクシャク感がもう少し欲しいなと思っていました笑　お互いなんだかんだ優しくて人に気を使うので冷たくあしらえないんですよね……ですがまだ他人以上、友人未満のむず痒い関係のまま、徐々に仲を深めて半同居の形へと持っていければと思います！

わかった。（　そのためにきた、と言われれば顔が綻ぶ。久しぶりの友人のような感覚に戸惑いつつも、彼からの問いかけに応答した。残り３０分がいつもなら別に何とも思わないが、今日だけは早く終わってくれないかとそわそわしていた。途中、オーナーに知り合いなのかと声をかけられたが、別に。とだけ返答した。元々お喋りだった性格もいつしか口数の少ないものになっていて、それでも、彼といるときはそんなの気にせずにいられる。実際、自分たちの関係はなんなのだろうかとオーナーの問いに悶々としながらも棚の奥の商品を前へ出していく。途中廃棄のものを見つけながらふと視界に入った彼が携帯を持って外へ出た。興味本位で窓際に移動しながら彼の行動を見つめると、顔つきは前とは違ってキリッとしていて、電話越しでも頭を下げている。律儀な人だな、初めて知った外面が少しおかしかった。電話が終わっても戻る気配がないからか、気になって気になってしょうがなく、まだ５５分だというのに既にバックヤードへ帰り着替え始める。「　ちょっと、待たせてるんでもういいっすか　」オーナーへ早く帰りたい旨を伝えれば、少し呆れたような表情だったが普段からシフトはいいように使われていたためオーナーも文句が言えず片手だけ上げて返事をした。店内を少し駆けて彼の元へ向かう。後ろから相手の頬に少し暖かい缶コーヒーを当てて　）

何で外で待ってんだよ、風邪引くだろ。これ、新商品出すんで廃棄になるやつ＿＿体あっためろ。


（　／　今とても楽しいです。お相手してくださり本当に感謝しています。これから先どんな関係になっていくのか、日々想いを巡らせているところです。素敵なお話が紡げたらと思います。要望等ありましたらいつでも仰ってくださいね。何卒よろしくお願いします。　）

うお、もう終わったのか？早えな。
あのなぁ、あの雨の日でも大丈夫だったんだ。そんなヤワじゃねーよ。


（　頬に与えられた温度に驚き、振り返ると予定時間より早く店から出てきた相手の姿。まるで母親のような口ぶりでお節介を焼く彼には、こいつも随分と世話好きな奴だなと思いながら、心配される筋合いはないと一蹴して。あの日も結局風邪を引くことはなく、体調不良を口実に会社を休めなかったのが惜しいと感じるほど体調は良い。いっそのこと風邪を拗らせて寝込めたら、ちょっとは疲労感もマシになるかもしれないが、これでも身体だけは丈夫で困った。先ほどの電話の件もあり、やれやれと行き場のないやるせなさが口から漏れて。まるで相手を責めるような態度をとっていることを自覚すると、これから一緒に飯を食う相手に対してこれはいけないと思い、ばつが悪そうな顔をしながら「…ま、一応もらっとく」と缶コーヒーを受け取って。"オフ"の自分なんか、ただのくたびれたつまらない男で、疲労困憊で相手を気遣う余裕なんかない。それでも、彼だけは無碍に扱ってはいけないような気がした。それは命の恩人だからだろうか、久しぶりにできた友達…だからだろうか。正体不明の感情を解き明かそうとする前に、唐突に腹が鳴って。考えるのは食った後でいっか、と一歩踏み出して　）


ほれ、行くぞ。腹減った。



（ ／ いえいえこちらこそ！楽しくやりとりさせていただいております。瀬戸さんのドライに見えて人をほっとけない性格が本当に好きです。少しずつでも関係を進めていけたらと思います。ぜひ今後ともよろしくお願いします！（蹴り可）

すげえ頑丈だな。＿＿いつでも腹なってんな。（　受け取りながらも悪態をついているような彼の発言に気を落とす、なんてことはなく、素なんだな、と改めて感じる。元々あまり人からの評価を気にするタイプでもないし、ましてや他人からの悪態も別に気にしたことはない。彼の言い回しも気にすることはなかった。ただ、電話越しの彼を見ていたからか、自分に対する態度が素であることが嬉しくもあった。こんな自分に気を許してもらえている気がした。彼からの返答に軽く笑みこぼしながら頑丈だと告げる。大丈夫だったなら何よりだ。すぐに聞こえてきた腹の音に、一瞬固まるも、ぶふっと吐き出すように笑い出しツッコミをいれる。彼が現れる時は大体空腹時なのだろうな。わかったよ、と彼の前にいき先導するように歩き始める。近場のバイト先ゆえに歩いて数分。自宅へと辿り着けばいつ通り部屋の中へ。歩いていく道の電気を全てつけながらすぐに洗面所へと向かい　）


じゃあ、適当にくつろいでて。あっためるだけだからすぐ出せると思う。

うるせえ、今日もあんまり食ってこなかったんだよ。どうせ夜にたらふく食えるしと思って。


（　腹の音を笑われて、若干顔を顰めながら言い訳をする。仕事中は死ぬほど空腹でも腹が鳴ることはないのに、どうしてか彼の前だと気が抜けてしまう。あの手料理の味を知ってから、コンビニ弁当が無味に感じて、どうも食べる気が起きなくなった。気づけば作業の傍、あの味と、食卓を囲んだ時間のことを思い出しては、もう一度あの瞬間に戻りたいとそればかり考えていた。すっかり胃袋を掴まれた、というやつだ。他人と深く関わったところで、碌なことがない。分かりきっているはずが、こうして会いに来てしまった。何してんだかと内心自嘲しつつ、歩き出した男の後ろをついていくこと数分で彼の家に到着した。家に上がり込むのは二回目といえど、やはり他人の家というのは簡単には馴染まないもので。くつろげと言われて素直に羽を伸ばせるほど懐こい性格でもなく、以前のように眠りこけるほど限界に達してはいない。どうしたものかと悩みながら、とりあえず酒が入った袋と缶コーヒーを机の上に置く。料理はすぐ出せるという相手の言葉を受け流しかけたが、よくよく考えると凄いことを言ったなとワンテンポ遅れて衝撃を受け。自分が出来ないことをやってのける人間は、どうも偉大に映るようで。粗暴な口調ではあるが、密かに尊敬の眼差しを向けて　）


は？お前、出勤前にあらかじめ飯用意してんのか？それともなんだ、作り置きか？

（　／　度々申し訳ありません。土日祝日は基本忙しくなってしまいレスに時間がかかってしまうかもしれません。連絡もできない時があるかもしれませんが、必ずお返事いたしますのでお待ちいただければと思います。身勝手なお願いで申し訳ありません。よろしくお願いします。　）

（ ／ ご連絡ありがとうございます。あくまでリアル優先で、ゆるりとやりとりを続けていきたく思いますので、お気になさらないでください。厳しい残暑の中、体調を崩しやすい季節ですのでどうか無理はせず、ぜひ背後様のペースでお返事をいただければと思います。

いや、昨日の余りもん。1人分作んの面倒なんだよ。（　ぎこちないのはこちらも同じ。完全に彼に気を許したわけでもないが、一緒にいて心地良くはある。ただ、他人の家でくつろぐことが難しい相手の気持ちもよくわかる。故にそれ以上彼へ気遣いの言葉をかけることはなく。昨晩の鍋を冷蔵庫から取り出し皿へと盛っていく。途中、彼からの疑問に答えながらもいつの間にか数品が食卓へ並ぼうとしていた。自家製の漬物や、キムチを取り出して居間へと持っていく。皿に移すだけのものは秒ででてくる。あとはバイトへ行く前にセットしておいた米が炊ければ全てが終了するようだった。台所から彼の姿を捉える。前回はあまり気にしてはいなかったが、ふと疑問に思ったことを口から出してしまう。後にその行為が過去の時間が1人になった原因だと反省してしまう。デリカシーのない、思ったことを口にする悪い癖が出てしまい　）


あんた、あんな腹減ってたけど、1人暮らしか？実家とか、彼女とかいないの？


（　／　かなり遅くなり大変申し訳ありませんでした。やっと落ち着いたのでお返事させていただきました。度々このように時間が空いてしまうこともあるとは思いますが、多めに見ていただいたく。すみません。　）

へぇ、あの日パッと2人前が出てきたのもそういう訳か。なおさら凄えな…。


（ 自分も袋から酒を取り出したりと準備を進め、返ってきた相手の言葉にはそういうものなのかと鵜呑みにして。1人暮らしで自炊するならありがちなことなのかもしれないが、共感できるほど自炊の経験はないため、作る量は少ない方が楽なんじゃないのか…？と内心首を傾げながらも無理やり納得した。あらためて、ここの家主に拾われて助かったと思う。ひとつ隣の部屋の扉にもたれていたら、また違う未来があったかもしれない。こちらに選ぶ権利がある訳ではないが、少なくとも自分と同等か、それ以下の料理音痴な奴じゃなくてよかったと、手際良く食事の準備を進める彼を見ていた。すると、不意に目が合って、唐突にプライベートを詮索される。ついに切り込んできたかと一瞬身構えたが、長年溜めてきた愚痴をこぼせる好機かとポジティブに解釈して。長めに息を吐くと、遠い目をしながら淡々と話していき　）


……1人暮らしだ。いつも腹空かせてんのは金が無いんじゃなくて、仕事が忙しくて食う時間がねぇの。カノジョ…は、早く身を固めてほしいのか、親父がたまに嫁候補を紹介してくるけど、今は居ねえよ。




（ ／ お待ちしておりました！毎回ご連絡いただけなくても事情は理解しておりますので、こちらのことはお気になさらず！むしろお忙しい中いつもありがとうございます。

ふーん。もしかして、どこぞの貴族かなんかか？（　踏み入った話を始めてしまったことに後悔しつつもしっかりと返答してくれたので少し安堵する。このままこの関係に終止符をうってしまうところだったと内心焦っていた。何も知らない関係性だからこそ、気楽で心地いいのだと、そう思っていたから。元からの性分で思ったことを口にしてしまうのは、やはりリスクがあるものだと改めて実感する。反省も束の間、彼からの言葉に前々から思っていたことがあった。腹をすかしていた、という割には金は払うの発言。そして今回の嫁候補のこと。もしや、と思い思考を巡らせる。彼の綺麗なスーツもそうだが、お金持ち、という類のやつではないのかとあっけらかんとした表情で訪ねた。その間に全てを温め終え机に並べていき、自分も前回同様斜めの位置に腰をかける。買ってくれたビールを手に取り片手で開けはじめ、乾杯のため手を伸ばし　）


いただくわ。乾杯。



（　／　これからもどうぞよろしくお願いします。　／　蹴推薦　）