真夜中のピエロさん 2024-09-01 11:34:30 |
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…ありがとな。
(貴方から掛けられた言葉にぱちぱち、と何度か目を瞬かせた後─複雑だった表情をふ、と緩く崩し、半分冗談混じりの声色で無邪気に笑った。手を伸ばしたプリンの封を切り、中身に手を付けると─また表情が明るくなる。特に何を言うでもなくプリンを食べる様子を見る限り、先程までの落ち込んだ気分はすっかり直ったらしい。プリンを食べ終わった後、貴方をじっと見据え─"俺もレーザーのこと、もっと知りたいと思ってるぞ"と真っ直ぐな言葉を吐き出した。自身の宿主から同僚のドクターたちの話を聞きはするが、実際のところ─人となりを良く知っているのはブレイブ程度だ。貴方のことを知りたいのはこちらも本心なようで)
おっ、嬉しい事言うねえ。お互いの事知って貰うには何が良いかな。……たとえば、デートとか?
(相手から意外な言葉を聞いて意表を突かれたらしく、両目を丸くした。他人から散々嘘つき呼ばわりされて(実際否定はできないが)敬遠される事が多いので、此方へ向けられた眼差しは眩しくて、目の前の視界が点滅しているような気がした。相手の事を更に知りたい気持ちは本心なので好機にはしっかり乗ってやろうと、本調子で冗談を投げ掛けてから顔を綻ばせて微笑み、相手の出方を窺っており)
…デート?
(返ってきた言葉を少々困惑したような声色でそのまま問い返し、困ったように眉を下げては貴方の方をまじまじと見据えた。単語へ対する知識も禄に持ち合わせておらず、その単語が何故自身へ向けられるのか分からない─といった風体で押し黙ってしまった後、自身の中で何か合点が行ったらしい。普段の飄々とした雰囲気を取り戻してから─心做しか貴方の反応を伺うような上目遣いで、小首を傾げながら"それ、俺とレーザーで一緒に出かけるってことか?"と貴方に問い掛けて)
あ~……、そうね。水族館、ゲームセンター、雰囲気がいい感じのレストランに、公園でもイイな。
ざっとまぁ、行き先としてはこんな感じかな?
(飄々としたミステリアスな雰囲気が漂う相手から、上目遣いをされてしまうと此方の心臓も些さか高鳴ってしまい視線を下方へ逸らした。相手を乗せようとした筈が、逆に乗せられてしまってどうするんだ、と内心自分を指摘する。指折り数えながら定番のデートスポットを挙げてから、あわよくば誘い出してみようかという考えが浮かぶ。丁度明日は休日だからだ。相手を試して半ば揶揄っているような口調で尋ね)
…んじゃ、早速明日行っちゃいますか?パラドくん。
そうだな…水族館?に行ってみたい。
(今しがたまで見つめていたはずの貴方の目が自身から逸れるのを反射的に目で追い、少しばかり不思議そうな表情を浮かべる。何故目を逸らしたのか、が少々気になる反応ではあるが─どうやら、"デート"の意味は自身の認識で大方合っているらしい。貴方から挙げられた候補を脳内で暫し思考した後、一番初めに挙げられていた候補の名前を口にした。魚を見る場所だ、という程度の知識は持ち合わせているが─どんな魚がいるのか、そもそもどんな雰囲気の場所なのかすら分からない。残り三つ─ゲームセンターは何度も行ったことがあるし、レストランにはあまり興味がない。公園は宿主と時折遊びに行く─貴方の反応を待つように"…ダメか?"と少々不安げな声で問い掛けて)
全然ダメじゃ無いよ~、水族館ね。りょーかい。
(首を横に振って宥める口調で快諾する。週末に誰かと出掛けるのは夏季休暇以来で、しかも相手と2人きりで出掛けるのはこれまでに無い事だから、まるで心が擽ぐられたように楽しい気持ちだった。それに、真っ青なアクアリウムの中で悠々と泳ぐ魚を眺めて羽を伸ばしたい気分でもある。目的地が決まれば早速待ち合わせをする場所を相談しようと思い、話を持ち掛けて首を傾げ)
よければ明日、永夢の家まで迎えに行くぜ。時間は大体朝の10時過ぎが良いかな。……それで良い?
ん、いいぞ。永夢に連絡しとくな。
(貴方の言葉に反応してばっと顔を上げた後─こくり、と素直に頷いた。ポケットから携帯電話を取り出し、再びメッセージアプリを起動する。先程自身が送った"帰りが遅くなる"の連絡に既読とスタンプが返ってきているのを確認し、"明日、レーザーと水族館に行く"と新たなメッセージを送信した。─自身の宿主も丁度メッセージアプリを開いていたらしく、直ぐに既読が付く。"分かったけど、迷惑掛けちゃダメだよ"と子供を心配するようなメッセージに若干眉を顰めつつ、貴方の方へと向き直って)
うん、大丈夫だ。
オーケー、じゃまたな?もっと話してたいけど、
…名人が心配するだろうし。
(携帯電話で連絡を取っている最中の相手を見守り、お誘いの承諾を貰えたのでホッとした。壁時計を一瞥すれば間もなく午後10時を指す所で、永夢が相手の帰りを待ちかねているのを想像するのは容易にできて、名残惜しいがお開きの時間だと悟った。左手を肩の高さまで上げてヒラヒラと振り、その一言を相手の耳元で囁くと本日1番の笑顔を見せて)
…明日、楽しみにしてるから。
ああ。じゃあな、レーザー。
(すっくとソファから立ち上がり、玄関先まで向かおうとした所で─掛けられた貴方の言葉と笑顔に釣られるかのように、普段通りの無邪気な笑みを浮かべた。同じように手を振り返しつつ、玄関先で自身のスニーカーを履く。爪先を何度か床に打ち付け、踵の位置を調節した後─ドアに手を掛けて開いた。ドアを閉じた後、ノブに掛けた手にノイズが走る。刹那の間にそのノイズは自身の全身を包み、自身の身体はオレンジ色の粒子となって空気中に溶けた。宿主の家の前で身体を再構築し─"ただいま"と声を掛けながら扉を開き、宿主から少々叱られながらも眠りについて)
(自分がかなり浮き足立っているという事を、起きてすぐに飲んだ一杯の珈琲によって気づかされた。元々の風味を損なうくらいに、角砂糖とミルクをたっぷりと淹れるのが慣習だったから、今朝はそれらを忘れ、珈琲のほろ苦さに目を白黒させる羽目になった。お陰で目はすっかり覚めたものの釈然としない気持ちになった。気を取り直して顔を洗い、歯を磨いた後でクローゼットの扉を勢いよく開ける。本日は所謂デートなのだから、普段のものは締まっておこうと思い、アロハシャツは色が控えめな黒色を選び、上着にジーンズ、スニーカー等はそれの色味に合わせたコーディネートとなった。髭の剃り残しや寝癖が無いことを確認して、鏡の前でほくそ笑んだ。永夢の自宅前へワープを試み、体が量子単位にまで分解し再構築される妙な感覚を経験した後で、人差し指でインターホンのボタンを押し、おちゃらけた口調で画面に話しかけ)
九条貴利矢でーす。迎えに来ました~
分かった、すぐ行く!
(どうやら今朝は、普段以上に寝起きが悪かったらしい。暫しの間、ベッドから起き上がった体勢のまま虚空を睨んで固まっていたが─"パラド、貴利矢さん来てるよ"とリビングの方から掛けられた宿主の声に、寝起きでぼやけていた意識が一気に覚醒する。寝癖を直して髪を適当に整え、普段よりももう少しラフな格好─具体的に言うなら、所々にカラフルな差し色が入ったグレーのパーカーにダメージジーンズ─に身を包んだ。リビングで胡座をかいてゲームをする宿主からは"気を付けてね"と声を掛けられるものの、それには曖昧な返事を返すに留まる。そのまま玄関先まで歩を進め、ドアを開いて)
待たせて悪いな。
今来たばかりだから気にすんな。
(普段から聞き慣れている無邪気な声を耳にして、微笑ましくなる。ドアが開いたかと思えば、普段と格好が異なる相手がすぐ目の前におり、驚きを隠せずパチ、と大きく瞬きをして『似合ってるじゃん』と掠れ気味に独り言を零した。ゆったりとした速度で歩き閑静な住宅街を抜ければ、じきに人の行き交いが多い通りに辿り着く。休日の為か普段よりも交通量が多く、時折タイヤがアスファルトに擦れる音が聞こえた。水族館の最寄り駅まで向かうバスの停留所を指差して歩を進め、子供に物を尋ねるような口調で話し掛けて)
泳いでる魚はあまり見た事無いんだっけ。…あと、財布は持ってきたか~?
ん、ちゃんと持ってるぞ。
(貴方の独り言は聞こえなかったのか、心做しか普段よりも楽しげに見える様子で歩いていたが─ふと投げ掛けられた質問に反応し、何故か得意げな様子でジーンズの尻ポケット辺りをぽん、と叩いた。─まあ。実際のところは忘れて家を出ようとしたところで、気付いたらしい宿主に"忘れてる!"と半ば無理矢理ポケットにねじ込まれたのだが。その点には目を瞑り、一旦の目的地であるバス停へ向かって歩を進める。道路を行き交う車に時折興味深そうな目線を送りつつ、たどり着いたバス停のベンチに腰を下ろし)
なら良かった~、えらい偉い。
(続けて相手の隣に腰を下ろす。得意げな反応が返ってきたので相手の肩に軽く手のひらを乗せて頷き、おだてた口調となった。相手の素直な素振りから永夢の教育が行き届いているようで良かったと内心思いつつ、次にやって来るバスを待ちながら、両足をぶらつかせて青空を眺める。最近になって相手と他愛無い会話をするだけでも、案外楽しいことに気づかされたほか、相手の無邪気で、誰に対しても真っ直ぐに接する一面に「イイな」と感じる時がある。この心の揺れ動きは一体何だろうか、とぼんやりと考えているようで)
…お、来たぞ。
(褒められたことで上機嫌になったのか、"だろ?"と再び得意げな表情で笑いながら胸を張る。バスが来るまでの間、特に貴方と会話をするでもなくバス停の向こう側、その車線をまじまじと見つめ─ひっきりなしに道路を行き交う色鮮やかな車を観察していた。─暫しの間そうしてバスを待っていたが、ふと─目前にバスが停まるのが目に入ったらしい。何処か気の抜けたような声を上げ、ベンチからすっくと立ち上がった。隣に座る貴方にも声を掛け、バスに乗るよう促して)
だな、すぐに乗ろう。
(暫く考え事に耽っており相手からの呼び掛けに数秒遅れて気付くと、白い歯を見せてニヤリと笑った。入口でICカードを翳して空いている2人がけの席へと向かい、窓際でゆっくりと腰を下ろした。バスの中は冷房が効いて冷んやりとしており、気持ちが良い。時々車窓から見える景色を一瞥しつつ、『バスって結構揺れるねぇ』等と取り留めのない話を持ち掛けては、目的地付近のバス停に到着するのを気儘に待っており)
…初めて乗った。
(貴方の後を追うようにしてバスへと乗り込んだ後、貴方の隣の席へちょこんと腰を下ろしたかと思えば─小さくそう呟いて、貴方と自身以外にはあまり乗客の居ない車内を興味深そうに見回す。小さな車窓から見える景色に興味を惹かれているのか、貴方から投げ掛けられる話に応対する様子はほとんど無かった。目的地でバスが停車するまで景色を眺め、目的地に到着してからも─少し遠くに見える、水族館の水色を基調とした外観に子供かのように目を輝かせており)
到着~、おっ、最近新しくなったみたいだな。
(相手はきっと初めての事だらけなのだろうと微笑ましく思いながらぼんやりしていると、間もなくして停車を知らせるアナウンスが耳に入った。降車して目印になっているイルカのオブジェを通り抜ければ、どうやら自分の知らないうちに改装されたらしく、より洗練されたデザインとなった水色を貴重とした建物が視界に入った。窓や壁面には翼を広げているペンギンや群れたマグロのシルエットが所々装飾されており、『水族館なんて久し振りだわ』と嬉々とした口調で独り言を溢し、チケットの窓口へと向かった。大人2枚分をお釣りを残さずにピッタリと支払い、アクリル窓越しに係員から受け取ったチケットとフロアマップを相手に手渡しながら尋ね)
チケットと地図はコレね。……順路通りに周るのも良いけど、まずは行きたいところに行ってみる?
そうだな…
(貴方から手渡されたチケットとフロアマップを受け取った後、まじまじとそれらを見つめる。─宿主とゲームセンターやら公園やらには良く行くため、それらの構造は理解しているものの─こういった施設に行くことは正真正銘初めてだった。紙のマップがあることもそうだが、何よりフロア毎に黄色だの赤色だのと様々な色を割り振ってあるのが新鮮らしい。少し悩んだような様子を見せた後、比較的大きめなマップの中でも一際大きいスペースが割かれている『ペンギンエリア』なるものに興味を示したらしく─それを指差し、貴方に声を掛けて)
ここから回ってもいいか?
お~『ペンギンエリア』か、行こう!早速出発な。
(その提案に快諾し含み笑いを浮かべた途端、相手の手を引いて空いている片手でエリアの方向を指差し、流行りの曲だろう──鼻歌混じりで歩き出した。手を繋ぐという行為には館内は親子やカップル、若者で賑わっていて逸れるといけないから、という建前がひとつ、一寸だけ相手を驚かしてみたいという動機がもうひとつ起因しているようだった。一方で温かいような、はたまた冷たいような相手の体温を直に感じ取り気持ちがはやるようで、相手の方を節目がちに見上げており)
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