今はまだ、このままで( 〆 )

今はまだ、このままで( 〆 )

東  2024-07-20 01:24:27 
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待ってんの、あいつだけ。

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  • No.127 by 平  2024-08-27 20:23:55 

(――なんだこれ。
ドッドッと強く胸を打つ鼓動に収まれと願って握った拳を押し付ける。手首がじくと痛んだ。――ああ怪我してたんだっけ。そんなことさえもう昔のことのようで。鳴り止まない鼓動の音は緊張とよく似ていた。
例えるなら学校。新クラスで見知らぬクラスメイトに自己紹介を一人ずつ告げてゆく。さあもうあと次が自分の番だ、というような……別に死ぬような思いをするわけでもないのに鼓動が破裂しそうな感じ。
……いや違うな。
自分で考えておいてなんだが鼓動が激しいこと以外に共通点ねーな。つい、と肩越しに東を見る。後ろを歩く東は若干俯き気味にみえる。表情はよく見えない。だというのにただそこに居る、居てくれるという事実を嬉しく感じる。
いや、いやいや。どうなってんだこれ。
歩道橋も中頃に差し掛かった辺りで風が吹き抜けた。ざんばらに舞う前髪が眉毛を掠めてゆく。不意に漂う香気。先刻東に感じたものに近い。自身の髪から東と似た匂いがする事実に一瞬、気分が高揚しそうになって。直後にそんな自分に自己嫌悪する。)

マジかよ俺……。

(ぽつりとそう呟いて顔を掌で覆った。ごちゃごちゃの思考に辟易とする。今日はもう色んなことがあった。ありすぎた。駅で動揺して、雨に濡れてコンビニまで走って、人生でも数少ない暴力なんてもんも振るった。人前でみっともなく感情のままに泣いてしまった。
その、どこにも東がいる。
行動の中心に東がいる。
……俺は東が好きだ。それがどういう類のものかはともかく――その好きな相手の前でカッコ悪い、情けない姿しかみせていない。おまけに純粋に俺を心配してくれる東に余裕をもって接することもできない。さっきのもやもやなんかアレはなんだ。
俺からすりゃ元カレはクズだがそんなクズでも笑って許すような東だからこそ俺にも分け隔てなく応援してくれるのだろう。
なんだ東、お前神様かなんかか? 自分を削って施しをするカミサマ。じゃあその神様は誰が救ってくれるんだって話。
俺はお前に――……。)

幸せに、なってもらいてぇよ。

(歩道橋の段差を下る。ぽつりと口からでた本心は間違いなくて。けれど気分は降り階段とどこか似ていた。この階段を下れば目的地はすぐそこだ。)

  • No.128 by 東  2024-08-27 21:30:39 

(一歩一歩進む度に、残りの距離が短くなっていく。あんなに楽しみにしていた景色もろくに楽しまないまま、今はただ俯いて歩いてるだけ。私、何やってんだろ……歩道橋、終わっちゃうな。
いや、平も平だ。向こうから歩道橋に誘ってきたくせに、期待させるだけさせといてさっさと前を歩いてっちゃうとか何考えてるんだ。結局こんなことで浮かれてたのは私だけで、一緒に景色見たり感想言い合ったりしたかったのも私だけで──なんか悔しい。気持ち自覚する前の方が、無駄な期待することも変に意識しすぎることもなくて、平との時間をもっと純粋に楽しめてた気がする──。)

はあ……。

(下りの階段が目前に差し掛かり、最後にもう一度街の景色を見下ろす。……ちっともワクワクしなかった。少し先を行く平はどんどん下っていってるし、誰にも聞かれてないって思ったら気が緩んで思いっきり溜息をついてしまう。恋ってもっとこう、なんかキラキラして楽しいものなんじゃないのか。少なくとも私から見たら鈴木も谷も山田もみんな何だかんだで幸せそうだし、絶対もっと若々しくて青春!って感じの“ちゃんとした恋愛”してるよな……。そーいうのいいなあって思うし憧れるけど……マジでやり方がわからん。今までは向こうからガンガンくるパターンばっかだったから、片思いとかした事ないし……。)

──こら、置いてくなっ!

(……いやだ。こんなんじゃダメだ。私ばっかり勝手に盛り上がって落ち込んで、こんなんで気まずくなりたくない。せっかく一緒にいられるんだから、せめていつも通りに楽しみたい。そうだ、いつも通り。ただ普通にしてればいいんだ。平の態度になんでちょっと違和感あったのかはわかんないし、怒らせちゃうような心当たりはあるにはあるけど──私が普段通り接してれば、平だって普段通りに文句言ってくるだろう。良くも悪くも、平の方はこっちを何も意識してないんだから。
私は一度深呼吸して走り出す。そのまま駆け足で階段を下り、横から平を追い抜き下りきった地点に先回りして振り返り、抗議するように平を見上げて睨みつけようとした。)

  • No.129 by 平  2024-08-28 14:36:29 

(もの凄い勢いで俺を追い抜いて行く東に「おお……」とよくわからん声を漏らす。なんつーか、元気だな……腹減ってんじゃねーのか。先に降りきって相対する姿はなんつーかアレだ。アレ……。
→タイラはにげようとした。
→しかしアズマにまわりこまれてしまった!
なんて、ゲーム画面がぼんやりと浮かんできた。いやべつに逃げようとはしてねーけど……。
つか、なんだその顔。なんか怒ってる……?)

アズ――……。

(マ、と出しかけた声は、
『アズ――――――――――ッッ、危ないから走らないの!!』
という超でかい声にかき消された。
見るとちょうど俺たちが来た方向、歩道橋を使わなければ待っていたはずの信号を駆ける子供とそれを追う母親の姿だ。
俺はしばし呆然とその様子を眺める。
子供はさも応援してもらったかのように一層意気込んで脚を跳ねあげる。母親の方は鬼気迫る表情でそれを追い――あ、捕まえた。
…………。
俺は無言のまま階段を降りきって東の肩にポンと手を置こうと差し伸ばす。
そして一言こう伝えよう。)

…………アズ。危ないから走らないの。

  • No.130 by 東  2024-08-28 16:33:51 

(でかい声で急に名前を呼ばれて、ビクッと大げさに反応してしまった。振り返ってみたら──いや私じゃないんかい。子どもを追いかける母親の姿を見て状況を察し、ちょっと脱力してしまう。まあ、そりゃそっか。知らない人の声だったし……さっきの子ども、アズっていうんだ。偶然だな。そんなことを考えながら親子の方を見ていたら、平が近付いてくる気配に気付いて視線を戻す。今思いっきり反応しちゃったの、見られてたらちょい恥ずいかも。いやその前に何か言えよ。なんで黙ったままなんだ。私は私で反応しすぎかもだけど、逆に平は反応薄くね?
目をぱちくりさせながら、下りてくる平を見上げる。たった数秒の時間がやけに長く感じた。肩に触れられると、距離の近さにほんの一瞬だけドキッとして顔が熱くなったけど──、)

へ?……ふふ、あはは!なんだそれ、私のパパか?

(予想外すぎる言葉にぽかんとしてしまったけど、たった今しっかりと聞こえてきたばかりの母親の言葉と全く同じセリフに笑いが止まらなくなる。突然謎の親子ごっこが始まったことも、どう考えても私の方がママじゃね?って思ってしまったことも笑えるんだけど──平が普通に接してくれたことにホッとしたのが、笑っちゃった一番の理由。
口元に手を添えながら、軽く涙目になってけらけらと笑い続ける。……気は済んだからそろそろ行こうか。なんか知らんけど子ども扱いされたし、こっちからも仕返ししてやろう。ファミレスに向かって歩き出そうとしながら、親子ごっこのノリのまま棒読みで返した。)

パパー。アズ、でっかいパフェたべたーい。

  • No.131 by 平  2024-08-29 14:35:59 

イヤだろ、娘のこと苗字で呼ぶ父親……。

(眉根を寄せて半ば呆れ気味にそう告げて俺もひひひと笑う。
……よし、うん。
フツーだよな。普通に、できたよな。
東がけとけと笑う姿を見て安心する。
ああ、やっぱりこいつはこういう顔の方が似合うよなり
中学の時とは髪型もまとう雰囲気もまるで違っていて。陽キャグループとつるんではいても悪ノリに流されたりはしないようなどこかクールなイメージがあった。
その頃のまま――そのイメージのままならきっと俺は東とは今こうして一緒に歩いてはいないだろう。
だが、である。
だからっていま俺が東の悪ノリに付き合うかといえばそれは別な話。軽妙に棒読みしてくる東に俺は思わず顔を顰めた。)

俺はどのポジションなんだよ。そもそもパパもアズじゃねーかよ……。

(じっとりと睨んで返す。別にいつまでも擦る気はないがそのパフェにアズキは入ってんだろうな、なんて思いながら。
『レストラン ゴスト』の自動ドアをくぐって内扉の取っ手を引く。からんからんとドアについた鐘がけたたましい音を立てて来客を告げる。
ここのゴストは前に来たことがあるがその時とは内装やテーブル席の配置が微妙に異なっている気がした。店員は手が離せないのか『お好きな席へどうぞー』なんて声が飛んでくる。確かに誘導が必要なほど混んではいなさそうだった。二人で使うにはアレだが俺は大きめのボックス席を東にちょいちょいと指し示した。)

  • No.132 by 東  2024-08-29 16:36:04 

意外とすいてんねー。あ、そっか雨の日だ。

(平に続いて入店し、軽く店内を見渡してみれば結構空席があった。これならそんなに待つこともなさそうでラッキーだと思いながら平が指した席に向かい、よいしょっなんて零しながらぽふりと腰掛ける。
早速メニュー冊子を手に取り、同じく着席したであろう平にも見えるよう横向きにしてテーブルの中央にどーんと広げる。さすがにタッチパネルがあるのは知ってる──二度も同じ手に引っかかってたまるか──けど、やっぱ紙のメニュー見ちゃうんだよね。なんかこっちのが見やすくない?ってわけで、広げたメニューを覗き込みながら、何を頼もうか悩み始める。)

“雨の日クーポン”使えるから、ポテトフライは絶対。で、和風パフェ……あっでもハンバーグ&海老フライのセットもいいな──よし全部いこう。

(私の中で、ゴストが公式アプリで配布している雨の日クーポンを使わない手はない。ポテトフライのページを見る前に断言する。それから、私が普通に食べたいパフェも。フルーツパフェもあったけど、一応あずきが乗ってるやつにしとくか。パフェも結構でかいし、正直そんくらいで十分っちゃ十分なんだけど──片手でスマホを操作しながらアプリのクーポンを確認してみると、ハンバーグ&海老フライのセットも“雨の日クーポン”の対象みたいだ。そうなってくると、脳内にいる別の私がせっかくだからいっちゃおっかって唆してくる。う~~~ん。軽く唸りながら考え込んで──よし、まあいけるだろ。ここでうじうじ悩んでたら、せっかく待ち時間短くても意味ないし。こーいうのは勢いだ。迷ったら全部頼んで、更に雨の日クーポンでドリンクバーもつけちゃえ。私はキリッと宣言しながらメニューから顔を上げ、見終わったメニューの向きを平の方に向けようとした。)

  • No.133 by 平  2024-08-30 12:02:09 

――ん。ほれ。

(メニューを向けられたと同時に俺は注文用のタッチパネルを充電台から引き抜いて東側へとテーブルを滑らせた。
終始楽しそうにメニューでアレコレ考える東の様子を頬杖をついてぼんやり見つめていたが飽きなかった。雨の日クーポンとか俺より全然ゴストに詳しいし。アプリとかあんだな。まあ今だとどこもかしこもやれネットオーダーだ公式アプリだと顧客とのエンゲージメントをとにかく高めようとするのが企業傾向だ。
俺みたいな極力余計なアプリを入れたくない派には生きにくい世の中。スマホのホーム画面とか二ページ超えんの嫌だし。
それでも。東がそんな楽しそうにしてるなら俺も取ってみるかなんて事を思った。)

よく食うな……マジで腹減ってたんだな。

(メニューに視線を落としてポツリと洩らす。本当は空腹なんてただの口実で、なんとなくただこのまま帰るのがちょっと惜しいような――そんな俺と同じ気持ちだったらなと思ったが違ったらしい。
そういえばあんな事がなければ今頃健康ランドでソフトクリームでもつまみつつマッサージ機に打たれていたかもしれないんだよな……。
ゴストのメニューはトップページの季節物の限定商品から始まって定番の肉料理、パスタ、サラダと続く。ページこそめくっているが俺の目はリストを泳いでいるだけでなにかを捉えることはなかった。
沈澱させた気持ちが浮上してこようとするのを無意識に封じる。今はごちゃごちゃ考えても東に心配かけるだけだ。どうせ家に帰って一人になればもうどうしようもない葛藤に苛まれるのは確定している。自分の気持ちを言語化して整理するのはそれからでいい。
それまでは無でいよう。
今の不安定な感情はともすれば予期さえしてないことを口に出しかねない。
視線をメニューから東へ向ける。
タッチパネルを操作しているであろうその姿をみて、ふと頭によぎったのは鈴木の台詞だ。谷と付き合いだしたばかりの頃、あいつらの馴れ初めを知りたくて鈴木に問いかけた。『なんで谷なの?』と。それを受けた鈴木は勘違いして確かこういった。『俺にしとけよ?』。
今思いだしても何言ってんだコイツと思う。
なのにさっき歩道橋で名状し難い感情にとらわれた時――東から顔を覗き込まれた時。
俺はこう思ったのか?
――俺の事を好きになればいいのに。
いやいやいや……まさか。勘弁してくれ。
無でいると決めたはずの俺は顔を手で覆って唸った。)

  • No.134 by 東  2024-08-30 15:55:31 

さんきゅ。……あー、まあねっ。

(タッチパネルを操作して、注文したいものを一つずつ追加していく。既に決まってるからそんなに時間はかからなくて、最後にスマホを見ながらクーポンコードを入力すれば私の分は完了。途中聞こえてきた平の言葉には、ちょっとギクッとしたけど──まだ帰りたくなくて誘っちゃったとか絶対言えないし、お腹がすいてないわけでもないからこれは嘘じゃない。嘘じゃないのに勝手に焦りながら答えて、なんとなく視線を逸らし店内を見渡す。
店内には他のカップルが何組かいた。いや他のって!私らは全然そんなんじゃないけど……え。てか超今更だけどこーやって二人で座って喋ってんのって、他の客からどう見えてるんだろ……うわマジで今更すぎる。平と二人でファミレスなんか、もう何回も来てるのに。全っ然考えたことなかった……。
意識した途端にめちゃくちゃ恥ずかしくなってきて、他のカップルなんかもう見てらんなくて頭を抱えながら視線を前に戻した。それはそれでフツーに平がいて、バッチリ顔見ちゃったら顔というか耳というか何なら首まで火照ってきた気がする。どうしよ、ドキドキしすぎ。てか、よく見たら平もめちゃくちゃ考え込んでるっぽいし。そんなに食べたい物が決まらないのか……。)

平、決まった?まだならピザとかどうだ?ピザ。これ私好き。クーポンも使えるよ。

(とにかく胸がふわふわして平の方を見ていられなくなって、誤魔化すように既に私の注文が入力済みになっているタッチパネルを見下ろした。そわそわしてとにかく何か喋ろうと思って、パッと目についたマルゲリータピザのページを開いてくるりと画面を平に向ける。なるべく自然に振舞おうとしながら、画面を指差し畳み掛けた。)

  • No.135 by 平  2024-08-31 13:55:29 

ピザな――……キライじゃねえけど。

(無にまとわりつこうとする益体もない思考を振り払うように軽く首を振ってから指し示されたタッチパネルを一瞥する。
ゴストのマルゲリータピザといえば値段の割に美味しく腹も膨れる人気メニューだ。もちろんデリバリー中心の有名ピザチェーン店などとは比べるべくもないが懐事情の厳しい学生にはありがたい。
ふと。そういえば、と思い至る。
今日だけでそこそこの出費をしている気がするが――東は大丈夫なんだろうか。
タッチパネルに煌々と灯る注文数は今のところ東だけのものだ。
確か東もラーメン屋だかでバイトはしてたはずだが……まぁ大丈夫じゃなきゃ頼まねーか……。
俺の場合はこういう時の為にコンビニバイトしてたのだから使うぶんには問題ない。普段は無駄遣いなんてしたくないがこういう友人と過ごす貴重な時間でケチケチするのはもったいないと思っている。
思っているのだが――……。)

……どうも食い切れる気がしねえ。なんかもう今日は胸いっぱいなんだよな。

(そういいながらメニューの最後のページを捲りきって裏表紙へひっくり返す。裏面は酒類やつまみが色とりどりと並んでいてその驚きの価格提供であることをこれでもかと強調していた。
もちろん制服きてる俺らには無縁の広告だ。アルコールでなにもかも忘れたい大人の気持ちが今だけはなぜかよくわかる気がした。
俺は頬杖をついてだらしなくテーブルに体重を預けた。)

ゴストっていや昔『ゴストバーガー』ってあったんだよな。ガキの頃食って異様に好きだったの思い出したわ……。

  • No.136 by 東  2024-08-31 15:16:30 

あー、わかる。私、ハンバーグの中にチーズ入ってんのが好きだったな。

(少しずつ具材を変えながらなくなったり復活したりを繰り返していた気がするゴストバーガーの存在を思い出してたら、急に食べたくなってきたけど無いものは仕方ない。てか平、注文が決まらないってよりお腹すいてない感じ?……そういえば急に誘ったのも私からだし、平の口から腹減ったなんて返事は一言も貰ってなかったな。
うわ。私、完全にやらかしてんじゃん。ちょっとでも長く一緒に居たいのなんて私だけなんだから、平が腹減ってないってことはここに立ち寄るの自体全然乗り気じゃないわけで──嫌々付き合わせちゃってるってことだ。二人で寄り道してるとか、舞い上がってる場合じゃなかった。今日一日いろいろあったけど、たしかに平からしたらただただ疲れるだけだわ……。完全にまた平を巻き込んじゃってるよなぁ、これ……。)

そ?んじゃ私ピザにするから、テキトーにつまも。あ、ここ私出すから安心して。

(平が食欲ないとしたら確実にさっきまでの出来事のせいだろうし、その上来たくもないファミレスに付き合わせといて無理やり注文させるってのもなかなかに鬼だろう。だったら二人でつまめそうな物を頼んで、食べられる分だけ食べてもらう方がよさそうだ。そもそも平って、さっき高そうな傘も買ってたよな……。半分以上私のせいで。
タッチパネルを再び自身の方に向け、ハンバーグ&海老フライのセットをピザに変更してドリンクバーも二人分入力しながらそう提案してみた。)

  • No.137 by 平  2024-09-01 13:54:58 

…………は!? いや金の問題じゃなくて……それは無しだろ……そういうのはやめようぜ。

(東の唐突な提案に俺は自分でも思わぬ大きな声をあげてしまう。やべ、と慌ててボリュームを絞って囁くように伝える。
奢りは貸し借りとはまた違うのだろうけど、金銭で誰かに負担をかけたくはない。
それが親や先輩といった立場が上の相手であるならその顔を立てるという意味でもご馳走になるというのは理解できる……それでも苦手には違いないが。
見返りを求めているんじゃないとわかってはいても、俺はそれをしてもらえるだけのなにかを返せる気が到底しない。
なにより東とは対等でいたい、と思う。
全然対等じゃねーし陰キャが何言ってんだって感じだけど……。
だいたい男が女にご馳走してもらうって構図がまずどうなんだって話。やっぱり時代錯誤な考えなのか……?
それでも――もしも。)

……恋人ならやっぱり俺が奢る側の方がいいかな。

(頬杖をついたままそう洩らす。カッコ悪りいとこばかりでもせめてそのくらいの甲斐性はもちたいと思う。
もう一度メニューを見返そう。考えてみりゃ東もなにも食ってねー相手の前で落ち着いて食えるわけねーよな……。タッチパネルを凝視して東が変更した箇所に唸る。)

――このピザとドリンクバーは俺がもらうから東もちゃんと自分の食いたいもん食えよな。

  • No.138 by 東  2024-09-01 15:29:25 

え?…………???

(誘ったの私だしとか、さっき傘買わせてるしとか、キーホルダーとハンカチのこととか、今日のお詫びにこれくらいはとか──いろいろ浮かんでた考えはあるけど、次の平の言葉で全部ぶっ飛んでしまった。思わずぽかーんと固まる。あれ私、なんて返そうとしてたっけ……?いやいや、それよりなんでそこで恋人って言葉が急に出てくるんだ。そっちが気になりすぎて、何も言葉出てこん……。
ぽぽぽぽ……と、顔から湯気でも出そうな勢いで熱が集まってくる。恋人なんて言葉がなければ、私はまたさっきと同じことを考えて凹んじゃってたかもしれない。友達同士だし、そのくらい甘えてくれてもいいじゃんって。何の脈略もなく私が一方的に払わされてるとかならまだしも、今日はいろいろ巻き込んじゃって平に迷惑かけまくってるし助けられてるし、お礼にファミレス奢るくらいはそんな頑なに拒否されるほどおかしい提案でもないだろって。仲良いと思ってたのは私だけで、また一線引かれてるのかって──でも、今のは。)

~~~っ!

(平が変なこと言うから、全身がまた火照ってくる。さっきはちょっとそっけない感じで人のこと置いてこうとしたくせに、急にボソッと期待させるようなこと言うのは何なんだもう。……絶対何も考えてないんだろうな。何も考えてないから、そんな適当なことがさらっと言えるんだ。こっちは浮かれすぎないように必死だっていうのに。私ばっかドキドキさせられて、ほんとズルいよなぁ……。
なんかもう、私も胸がいっぱいになってきた。こっからハンバーグとか海老フライとか、明らかに食える気がしない。なんならパフェとポテトフライだけでも厳しいかもしれない。)

うん、いいからもう確定ボタン押して……。

(落ち着け私。熱くなった頬に片手を添えながら、こっちの分はもう追加しなくていいって意味を込めて空いている手を横に振る。何でもいいから早く頼んで、早くこの話題を終わらせよう。頭が真っ白になってろくに返答が思いつかない中、タッチパネルを平に近付けるように押し出しながらなんとか言葉を絞り出した。)

  • No.139 by 平  2024-09-02 21:27:13 

? おう…………?

(――なんだ?
ずいっと押しだされたタッチパネルを受け取りながら首を傾げる。
東はいかにももう早くしろよといいたげな雰囲気だ。少しウダウダしすぎたのかもしれない。
腹減ってるって言ってたし悪りいことしたな……。
俺はタッチパネルに東が入力した例のピザとドリンクバーが入っていることを再確認して確定ボタンを押下した。軽妙な音が注文の完了を告げる。画面に注文内容が表示されるが東が最初に食べたがっていたハンバーグと海老フライがない。東に声をかける間もなくタッチパネルはホーム画面へと推移してしまった。
まあいいか……俺も俺でピザ食い切れる気はしねーし東が足りなければ食ってもらえばいいだけの話。)

……とりあえず飲み物とってくるわ。なにがいい?

(空腹な顔を見られたくないのか、落ち着かなそうな東にそう声をかけて立ち上がる。別に気にしやしないのにな。
荷物はまあ置きっぱなしで大丈夫だろう。
飲み物が少しでも東の空腹を紛らわせられればいいのだが。)

  • No.140 by 東  2024-09-02 22:49:39 

……あー、私カルピス。

(立ち上がった平に声をかけられて、慌てて返答する。さっきからふわふわしすぎだってば私。とにかく落ち着く時間が欲しかったし、飲み物は平に任せて一旦深呼吸しよう。そうだ。まずは落ち着いて、ただ自然に。普通に振る舞えばいいだけ──普通って何だっけ。
飲み物を取りに行ってくれたであろう平を待ちながら、気を紛らわせようと改めて店内を見渡す。普通の……というか“ちゃんとした”感じのカップルが仲良く喋ってる。普通……勝手にソワソワしてる今の私も普通じゃないかもだけど、じゃあさっきの平のアレは普通なのか?恋人なら奢る側がいいとか何とか──唐突すぎるだろ。そもそも、そんな言葉がさらっと出てくるとかいい奴すぎないか?私の経験上そんなこと言う恋人は過去に一人もいなかったし、むしろこっちが払うよって言うの待ちみたいな人ばっかだったけどな──あれ?
元カレと付き合ってた時は、好きだったし何の疑問も持たなかったけど……そーいえば、デート代って毎回私持ちだったかも?いや、たまたまか?たまたま出せる方が出せばいいじゃん的な考えでいつも普通に払ってたし……まあ私が何も気にしてなかったんだから、べつに普通だったのか?わからん。元カレ達がクズなのか平がめっちゃいい奴すぎるだけなのか、いよいよわからんくなってきた。)

……まず私が“まともじゃない”……?

(“まともな人間好きになろうと思ったら本人にもまともさがいる”──いつか鈴木に告げた言葉が、ふと私自身を抉ってくる。やっぱ、私が知ってるこれまでの恋愛って普通じゃないんだろうなあ。この前サトと話してて告白とかしたこともされたこともないって言った時も、一瞬空気変わったってか変な間あったもんな……。
ついこの間まで、誠実な男からは旨味を感じられないなんて思ってたくせに……今はあーやって言い切れる平がやけにカッコよく見えて、ちょっとした一言でドキッとしてるし。なんだこれ。これがまともな感覚なのか。それとも、クズばっか好きになってた反動なのか……ダメだ、変に考え始めたら自分の感覚に自信なくなってきた。
落ち着くために気持ち整理したかったのに、余計に混乱してきてしまった。……だから、もう考えるのをやめよう。私はテーブルに向き直り、再び深呼吸しながら使い終わったメニューとタッチパネルを元の場所に仕舞おうとした。)

  • No.141 by 平  2024-09-04 13:12:21 

(ゴストのドリンクバーコーナーはおよそファミレスで想像しうる雑多なバーカウンター風だったはずなのだが――…………)

……なんかすっきりしてんな。

(黒と白を基調としたシックな造り。瀟洒な喫茶店のような装いに思わず目を泳がせた。
どこだグラス……ない。
マグカップはあるが……これか? これ使っていいのか……?
マグカップやら小皿やらがひっくり返されて陳列されているがさすがにマグカップでカルピスはねーよな……。
膝下にいくつか空いている棚があり、そこに収められているグラスを恐る恐る手に取る。使って大丈夫だよなこれ……。
まさかゴストで戸惑う羽目になるとは。当時の初カノジョとのデートの記憶が蘇って軽く憂鬱になった。前のままでよかったのに。何勝手にオシャレになってんだゴスト。
グラスをドリンクサーバーにセットしてカルピスのボタンを押す。
ジャバーと痛快な勢いを立ててカルピスが注ぎ口より迸る。……俺の置いたグラスの隣に。)

いや、わかりにくいだろ……。

(慌ててボタンから手を放して誰にも見られてないよな、と周囲を仰ぎみてから悪態づく。
サーバーの表示をよく見ると野菜ジュース系、お茶系、炭酸やジュース系と注ぎ口が分かれている。ジュース系はメロンソーダやカルピス、オレンジジュースなど種類も豊富でそれぞれの絵柄の矢印が一箇所に集約している。俺がグラスを置いた場所はお茶系らしく、二種類しかない。
俺はそのままウーロン茶を注いで、それから隣にグラスを並べてカルピスを程よく注いだ。
両手にグラスを掴んで席へ。以前来た時とは席の並びや配置も変わっていて若干戸惑ってしまう。
ドリンクバーコーナーもそうだが、ずっとおなじままではいられないのだろうか。
飽きるから? 新鮮味を取り入れるために? 今の流行に合わせて?
様々な可能性に思いを馳せてから俺はポツリと「今までのままいいだろ……」と一人ごちた。)

――東。それタッチパネル逆だぞ。

(席へと戻った俺はカルピスとウーロン茶をテーブルに置きながら何故か逆向きにタッチパネルを台にセットしようとしてる風の東に胡乱な視線を向けた。)

  • No.142 by 東  2024-09-04 15:09:12 

……ん?うわマジじゃんおかえり、てかメニューも逆だったわカルピスありがと。

(平に言われてまじまじとタッチパネルを見てみたら──いやそんなよく見なくても、明らかに画面に映る文字や商品画像が上下逆さまになっていた。こんな一目見てわかる間違い、普通しないだろ。置くだけなら逆でも置けるっちゃ置けるけど……どんだけボーッとしてたんだ私。逆向きに置こうとしていたタッチパネルと既に逆向きに立てかけていたメニューの向きをそそくさと正しながら、勢いで返事したら話題混ざっちゃったけどまあいっか。
多少強引に解決させて一息つこうとしたら、タッチパネルの画面が切り替わっていることに気がついた。さっき向きを変えた時にどっか触れちゃったみたいだ。何気なく内容に目をやると、どうやら【店員呼び出しメニュー】なるものが開いてしまったようで、“従業員を呼ぶ” “お皿を下げてほしい” “食後のデザートを持ってきてほしい”という三つのボタンが表示されていた。)

え。パフェってこれ押さんと出てこん感じ……?まあ一応押しとくか。

(ちょっと戸惑いながら、軽く身を乗り出して画面を覗き込み首を傾げる。前に平と来た時もたしかパフェ頼んだ気がするけど……あの時、こんなの押したっけ。そもそも、こんなメニュー画面出てきたっけ。あの時はタッチパネルの存在にすら気付かずに笑いまくってたから、全然覚えてないな……てか私、ゴストに来る度にほぼ毎回タッチパネル絡みでなんかやらかしてないか?しかも絶対平いるし。
画面を指差しながら平にも尋ねてみるけど、実際に頼んだ私が覚えてないのに平が知ってるわけないか。わからん時はとりあえず押しとけば間違いないだろうと自己完結した私は、平が答える前に“食後のデザートを持ってきてほしい”のボタンを押そうとした。)

  • No.143 by 平  2024-09-06 13:10:12 

その話題の混雑なんとかならんのか。

(テーブルに置いたグラスを東側へ押しやりつつ着座した俺は硬めのソファに体重を数度浮かせてポジションどった。本来は二対二で腰掛けるべきテーブル席は二人で使うには広々と感じる。山田と以前来た時なんかは途中から呼んだ東がちょうど良く二人並んでたっけな。
持ってきたウーロン茶に口をつけると、果たして予想していた程よい苦味がかわいた喉を潤して通過していく。
そういや氷入れてくんの忘れたな……などと思ったのもつかの間。何気なくみていた東の動作に目を剥いた。)

! ……おい、ちょっ――なにやってんだ。

(ぶっと吹きこぼしそうになるウーロン茶。グラスを置くのももどかしく左手にもったまま反対の手をさし伸ばした。東がいままさにタッチパネルを操作しようとしているその指先を捉えるように。揺れたグラスから溢れた茶色の液体が指先を伝って木目調のテーブルに小さな地図を作るのも構わずに。
もしも掴めたなら握りしめる程の勢いで。
なんだ?
店員呼ぶ必要あんのか……?
まるでファミレス自体が急に初心者かのような振る舞いに俺の頭の中は混乱が渦巻いた。
『なんと。こんな小さな箱の中に人間がたくさん入っておるのじゃ』――などと古い時代からタイムスリップしてきた現代武者が思考の右から左に騎馬で駆け抜けていく。
いや、そうはならんだろ。どうした東。)

  • No.144 by 東  2024-09-06 15:02:02 

へ?……えー、思いっきり“店員呼び出し”って書いてんじゃん……。

(ボタンを押そうとしていた手を突然掴まれ、驚いて動きを止める。それからキョトンとしたまま、制止してきた平とタッチパネルとを交互に見て──【店員呼び出しメニュー】の文字がハッキリと頭に入ってきた瞬間、ようやく止められた意味を理解して気の抜けた声が出た。……いやいや、見ればわかるだろってのはそりゃそうなんだけど。なんていうか考え事しながらだったから、 “デザートを持ってきてほしい”の文字の方が先に頭に入ってきちゃって謎に混乱してたんだよ……。眠い時とかにボーッとしながら勉強してて、テキストの文字は読んでるけど文章は全然頭に入ってきてないみたいなのあるじゃん。アレだよアレ──なんて脳内で勝手に言い訳してみるけど、そのまま口に出したらそれこそ何をそんなに考え込んでたんだってなるよな……。)

……まあ、こっちはこっちでいろいろあるんだよ……。

(誤魔化しようもないこの状況──いや、誤魔化す意味ってなんだ。フツーに自分に呆れながらフッと溜息をついたら、なんか意味深な返しになっちゃったけど要はただの私のしょーもないやらかしってだけ。そりゃ中学の時なんかは友達グループで来るといぇーいみんなでシェアしよーみたいな暗黙の了解があったし、それぞれが食べたい物選んでく中で私は被らないようにとかこの子はコレ食べれんって言ってたなとか、“自分が食べたい物”ってよりかは“みんなが喜びそうな物”頼むのが癖になっちゃってて──そしたらいつの間にか友達からも元カレからも“アズはコレでいいっしょ?”なんて先に決められることが多くなって、私もべつに嫌じゃなかったから受け入れてそのまま注文任せてたし……ん?私、ゴスト来まくってるわりには言うほど自分で注文してないな。だからってタッチパネルの使い方わからんほど重症じゃないけど。
最近は全然そーいうのなくて、当たり前みたいに自分の好きな物頼んでたからすっかり忘れてた。メニュー見ながら何食べよっかって考えるの楽しいし。やっぱ私いま、めっちゃ友達に恵まれてるよなぁ──とそこまで考えて、タッチパネルから平に視線を戻してハッとした。いや手、手。思いっきり掴まれてるし。気付いた瞬間、顔も触れられている手もドキッと熱くなった。)

  • No.145 by 平  2024-09-06 22:17:43 

?……??……おお……そうか。

(急に陰りが差したような重たい雰囲気を感じ取って俺はコクコクと頷いて元の位置へと座り直した。
数瞬前まで東の手を握っていた手のひらに視線を落としてはぁ、とため息する。それは奇しくも東の嘆息とほぼ同じタイミングだった。
……今日だけで何回目だ、東の手を取るの。
今まで接触らしい接触なんて廊下でぶつかるかくれーのものだったのに。
朝に手を引いたり夕方に握ったり……そんな事あるか?
白木の木目テーブルに下垂れたウーロン茶の零れた跡に備え付けの紙ナプキンを二枚重ねて被せた。じんわりと白い紙に染み込んでゆく液体の様相はまるで今の俺の心にできたナニカを表しているようで落ち着かない。
今何時だっけか。
俺はスマホを取り出そうとカバンにかけると、どこからともなく機械音が近づいてきた。
程なく『お待たせしましたニャン』というぎこちない機械音声と共に猫型の顔文字が貼り付いたロボットがテーブルにやってきた。
配膳ロボットである。
俺は乗っかっているポテトフライを東の方へ、ピザを真ん中に置いて受け取り完了ボタンを押す。やはり例のハンバーグと海老フライはない。この後パフェがくるにしても俺がピザを食っちまったら東はポテトしか食うものが無いことになる。中央に置いたピザ皿を東の方に少しだけ押しやった。)

……食えよ、俺多分全部は食えねーから。

  • No.146 by 東  2024-09-06 23:44:58 

(さっきから平のこと意識してばっかで、意味わかんないミス続きだ。さすがにそろそろしっかりしなきゃって思うのに、手なんか握られたら落ち着きたくても落ち着けるわけない。しかも、平は私のことなんか1ミリも意識してないってのがまた悔しいしモヤっちゃうんだよなぁ。こっちばっかドキドキしてるのに今も平然と座ってるように見える平をちょっと恨めしげにチラ見しながら、今度こそ落ち着こうと軽く息を吐いて姿勢を正す。まだ何となくソワソワしちゃってたけど、丁度いいタイミングで聞こえてきた配膳ロボットの声でやっと目が覚めた気がした。)

……え、マジ少食。どうした?いやわかるけど……。

(届いた皿を受け取り終わった後の平の言葉に、私はぽかんとしてしまった。って言っても、平がピザを食べ切れそうにないって言ったこと自体に驚いたわけじゃない。注文渋ってたし今日は胸いっぱいとか言ってたし、そもそもここに誘ったのは私なんだから──平がそんなに乗り気じゃないのは、さっきからわかってたことだ。けど……そうさせてしまった原因に察しがつくからこそ、やっぱり突っ込まずにはいられなかった。ここに渋々付き合わせちゃってたとしたら、今朝からのトラブルや傘のことで疲れさせちゃってたとしたら、さっきの元カレの言葉で傷つけちゃってたとしたら──平を振り回すだけ振り回してトラブルに巻き込んだまま申し訳ないなって思いながら悩むくらいなら、やっぱハッキリさせとかなきゃ。平からしたら、蒸し返されるのすら嫌かもだけど。マジですまん。)

胸いっぱいにさせた私が言うのもどーなんって話だけどさあ……ちゃんと食べた方がいいって。濡れたばっかだし、疲れてんなら尚更。風邪ひくよ?あ。そっちじゃなくてあっちか?元カレの──アレは私もめっちゃイラッときたな。どの口が言ってんだって……てかランクって何?よくわからんけど平のが下みたいな言い方してた時点で微塵も理解できんし、どー考えても負け惜しみっしょ?あんなん気にしてたら思うツボじゃん?ほらほら、食え食え。

(──あれ?思うところがありすぎて一気に畳み掛けすぎちゃった気がするし、いろいろと言葉選びも間違えた気がするけど。胸いっぱいにさせたって、自分で言うか私。そんな意味で使ったわけじゃないけど何か自意識過剰みたいじゃん?……いやそもそも、こっちが心配になるような提案してきた平も平だ。パフェもポテトフライも私が食べて更にピザまで分けるってなったら、どう考えてもバランスおかしいのちょっと考えたらわかるだろ。それやるならポテトフライも分けてくれ。うわなんか結局何が言いたいのか自分でもわからんくなってきた。
とにかく勢いに任せて、目の前に置かれていたポテトフライの皿を平に近付けるようにぐいっとテーブルの中央へ押し出した。)

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