異常本丸調査室の日常(〆)

隠す場所か…審神者の部屋にもし避難場所があるのならそこに隠すだろうな。精鋭部隊に関しては極高練度で固めて刀種は短刀3、脇差2、打刀1だろうか。屋内戦となると短刀や脇差の方が有利だろうからな。迎撃は大広間上の屋根に2振りほど置いて出てきた場合迎撃。政府に繋がらなくとも、交流のあった本丸などがあったとしたら救援信号を送るかもしれないな。

・・・・・・全ての本丸に政府に片道だけ直通する転移装置が設置されている、襲撃などを受けた際に審神者と護衛一振りを逃がせるようにするための設備だ。その位置はランダムで審神者と初期刀にのみ場所が開示される。その転移装置がある場所は簡易的なシェルターにもなっている、先ほどの手記に初期刀と審神者が行動を共にしていると書かれていたからその場所に逃げたかもしれない。
練度80以上の極刀剣だけで四部隊構成できるだけ育てていたから、侵入タイプなら普通に迎撃に走った可能性もある。本丸間の救難信号は政府の通信ではなく審神者の個人端末を使用した可能性があるから特定は難しいかもしれない。

そしてこの前提全てをひっくり返す仮定が、この廃墟となった本丸が怪異の“吐き戻し”の可能性だが・・・・・・。まあこの可能性は侵入者の可能性が全て排除された後に考えても良いか。

吐き戻し…？

とにかく、資料によると審神者も死んでいたんだったか…？簡易的なシェルター越しでも危害を加えられると言うことが分かったな。だとすると怪異はかなり面倒なやつだ、遠隔攻撃が出来るようなものだからな。

審神者の死体があったのはシェルターじゃない、庭の木に引っ掛かっていたんだそうだ。だからこそ不可解、刀剣男士なら今君が言ったように考えるはずで、シェルターに向かうなら庭を通る必要が無いから。

刀剣男士の思考をなぞっても分からないか・・・・・・。

庭の木…。シェルターに避難したとしてわざわざ審神者が危険を冒し刀剣男士の制止を振り切ってまで外に出るとは考えられない。となると、場所が特定され襲われたのだろうか。それとも、全ての刀剣が折れ、自分だけ生き残るのはと外に出てしまったのか…。

正直、刀剣男士の思考といえど個体差というものもあるから一概にこれだとは言い切れない。逆にあんたはどう考える？人間側の考えで、もし審神者だとしたらどう行動すると思う？

私の場合は政府の人間だ、という前提もあるが・・・・・・。

私なら外部への脱出が不可能だと分かったら対象の迎撃及び殲滅を狙う、殲滅できずとも弱体化させることが肝心だから。その正体なり何が切っ掛けで入ってきたか呑まれたかの証拠を残すことを優先する。っていう考えも政府の人間だからかな、この部署だってのもあるのかもだけど。

…どうしても念頭にそういうのが来てしまうな。
俺たちが分かったことはこの本丸にいた山姥切長義の手記で書かれていることくらいだな。

ならその手記を前提に、もう一つの可能性を探ってみよう。さっき私が言ったこの本丸の成れの果てが、怪異の“吐き戻し”の可能性だ。それなら説明が付く点がある、例えば刀剣男士が居たのならありえない位置にあった審神者の死体の話とか。

なるほど、確かにそれなら説明がつきそうだ。

本丸にて侵入者あり、侵入者ではなく怪異の領域に呑まれたのではないか。

遠征から帰還後大広間の異常を察知したがまるで遮断されているかのようにこちらの声は届かない、怪異の領域であれば主たる怪異の優位になるように厄介者を隔離したかもしれない。

低練度の刀剣達が消えて行った、刀剣男士の本体は霊力の塊だから怪異にとってはご馳走だろう。

高練度の俺も霊力が無くなってきているように感じる、一気に捕食したのではなく時間をかけて捕食しているとしたらこの怪異は初犯じゃない。

主は大丈夫だろうか、審神者も喰ったということは知能がある可能性が高い。

初期刀や精鋭部隊が守っている、この時点で山姥切長義は恐らく一度審神者とその護衛と一度対面している。


この怪異、もしかして本来は吐き戻しをしないで空間ごと捕食しているんじゃないか？怪異側が手慣れてるというか、審神者と刀剣男士の動きを読んで事前に対応しているみたい。育成の手が回っていない低練度の刀を最初に捕食することで物量戦を封じ、一部の刀剣を隔離することで残された刀剣が審神者の護衛に回るようにさせて審神者と護衛を捕食してるんじゃないかしら。その後隔離して置いた刀剣を捕食し本丸も喰う。
でもこの本丸は吐き出された、つまり怪異側にとってのイレギュラーが発生し本来起こるはずだった本丸の捕食と審神者の完全捕食がされていない。【ぶつぶつ言いながら大広間に足を進める紅葉傘、護衛役でもある後輩のことが頭からすっぽ抜けているらしい】

お、おい待て。そんな恐ろしいことを言いながら勝手に歩くな…！相手にその知能があるとするとかなり危険だぞ。

そうするならロストコードの中にもこの怪異の被害本丸がある可能性がある、遠征に出ていたり修行に出ていたりして生き残りがいる本丸が無いのは発見を少しでも遅らせるために全刀剣と審神者を捕食できるタイミングを怪異側が図っていた？だとするなら今回の廃墟となった本丸は怪異にとってはよほどの反撃を受け弱体化した証明、流石に討伐までは出来てないだろう。

・・・・・・審神者は何故動いていた？自らの目で異常を確認する為？山姥切長義は大広間の周囲に居たと推測されシェルターはその奥だから審神者を守っていた精鋭部隊は審神者が出歩くことを許容した？それとも審神者は助からないと判断すると同時に反撃に出ていた？それとも【大広間の襖をすぱーんと開けて踏み込んでいく】

怪異が、審神者が動かなければならないような仕掛けをしていた？頭回せ私、そんなに都合よく大広間だけに刀剣が固まっている？私なら複数個所隔離して少しでも戦力を減らす、大広間と同じように隔離されていた場所が他にもあったとすれば？その隔離された場所に何かの共通点があって審神者はそれを利用して刀剣の救出を実行しようとしていた？【切り裂かれたあとをじっと見ながらぶつぶつ呟いている】

大広間に多くの男士と審神者が集まるとしたらどんな時だろうか…。就任記念？来客の訪問？もし怪異が仕掛けをしたとして、何かの姿に化け目を欺いたとかだろうか。

・・・・・・姿を、欺く？
例えば、部屋が違ったりしたとしたら？怪異の被害を受けている最中、刀剣男士にはこの場所が大広間ではない別の部屋に見えていた？この場所を、執務室と誤認させられていたとか、自分の本丸じゃないように。
被害本丸は一つじゃない、本丸は主に合わせて形を変える。この本丸の前に被害を受けた本丸の間取りを写し審神者や刀剣男士に誤認させた？

そもそも推測される他の被害者は亡骸が見つかってない、急に知らない審神者が訪問してきたら審神者刀剣男士の両方を一か所に纏められる？自分が喰ったものを、利用して【そのままふらーっと庭のほうに歩いていく】

それもそうだな…。あんたの言うように、誤認させていた可能性はありそうだ。
流石にないと思うが、もしこんのすけなどを喰ったとしたらその姿にも化けられるとする。政府からの通達があると嘘の情報を本丸に流し大広間に集めることもできそうだ。まあ、これは考えすぎだと思うが…。
【ふらっと歩いて行く先輩のあとをついて行く】

こんのすけ、が、未発見の例が一つだけある。こんのすけは破壊されたとしても記録が残るから、ロストってのは本来有り得ないけど、一体だけ所在地不明のこんのすけがある。

これは、怪異討伐班どころの騒ぎじゃなくなるぞ。最初期から存在する、未確認の厭世怪異の一つなんじゃないか。【厭世怪異：所謂サーバーの設立と刀剣男士による歴史修正主義者との開戦のころから存在する実質討伐不可能な怪異の総称、現在確認されているのは11でそのうちの一つは当時政府に勤めていた術者及び戦闘要員の七割と引き換えに討伐された。以降厭世怪異は政府内では禁句の一つになった】

もし、そのこんのすけが喰われていたとしたら…。
それに未確認の厭世怪異だとしたら確かに面倒だ。どうする、一度政府に戻りこの事を報告するか？

もし厭世怪異ならこれで12、厭世怪異のコードネームに旧暦の月の名前付けた奴の想定通りになってるじゃない！！どこが簡単な調査任務よ！！！！！！【厭世怪異の唯一討伐された怪異のコードネームは師走、なお欠番になっていたのは神無月である】

いま多分ここには何もいない、から、帰る。即時ゲートを動かし政府に帰還し上の判断を仰ぐしかない。

ああ、分かった。この手記だけ持って帰るか？証拠になるだろう？

そう、そうね。この手記と、大広間の写真と、持って帰れば良いかな。