異常本丸調査室の日常(〆)

急な展開だな…。

そうだな、俺ならまず大広間から聞こえる音、開かない襖の状況からして異常と判断する。そして本丸を走り回って広間にいない者や近侍、同部隊だったやつに緊急事態の旨を簡潔に伝えて主をとにかく死守するように伝える。政府に繋がらないことは分かっているなら孤立したこの本丸にいる刀だけで守るしかない、だが広間にどれくらいの刀があるかも分からない…ならば隣接している壁をぶち破り仲間の援護に回るだろうか。

ならこの大広間の周囲を回って、その後審神者の執務室か私室を探そう。あとさっきあった出陣後の刀剣男士が簡単に何か食べたり身体を流せるように用意されていたであろうスペースも見てみるか。
ただ、それはすべて審神者がその時大広間に居なかった、という前提の上で成り立つ話だけど。

ああ、そうだな。だが何かしらの痕跡はきっと見つかるはずだ。

大広間と繋がるようにあるのは、厨、キッチンね。ということは食事は基本ここだったのかしら？隣接しているのはキッチンと他二部屋、他の部屋は何に使っていたのかな、まず何処から確認する？

順番にキッチンを見て行くとしよう。

んー、この惨状を見たあとだとどんなにクリーニングしてもここで料理するのは嫌だなァ・・・・・・。でも一般的な本丸のキッチンみたいだね？

ああ、特にこれといった痕跡は無さそうだ。時間的に使うものがいなかったのか…？

となると発生した時間がおおよそ推測できるようになる、恐らく夕食も終わり翌日の朝食の仕込みも終えた深夜か、それぞれの食間か。兎にも角にもこの場に刀剣男士が居なかったか隔離されたのが大広間だけだったのかは特定できないわね・・・・・・。

ああ、そうだな。他の場所も地道だが探していこう。

大広間と繋がる部屋の二つ目はここね。これは・・・・・・。

何かしら、大広間と比べて、キッチンといいここといい人為的な痕跡が無さすぎる・・・・・・。【テレビと推測されるものや棚にDVDなどのケースが収納されているあたり、この部屋は娯楽室のようだ・・・・・・】

ああ、痕跡として分かっているのは大広間の刀傷のみ。不自然なほどに戦闘の跡がそれ以外から見てとれないな。抵抗する間も無く喰われたのだろうか…。

因みになんだけど、あの大広間の刀傷が実は今回の案件と無関係の可能性は？喧嘩の勢いで本体持ち出しちゃった可能性。

あ、薄〇鬼あるじゃん。こっちはゴールデン〇ムイ、これは、鋼の錬〇術師！？誰の趣味なんだこの棚の中身【棚のDVDを漁っている紅葉傘】

それは大いにあり得るが…だとしたら本丸内の私闘による抜刀権限は特に制限していなかったということになるな。


って、こら、おい…ここは仮にも他所の家のようなものなんだからそんなに漁るな…。

私闘の定義って面倒だしね～。因みに政府ではきのこたけのこ論争で抜刀騒ぎまで行ったことがあります、当刀たちは聖戦といったらしけど。

大広間付近と繋がってる部屋はあと一部屋か、空振りにならなきゃいいけど。それか、特定のエリアだけが隔離されたのかな。

どんなことで争ってるんだ…。いや、聖戦と言うくらい当人達は本気なんだろうな。

ここだな。これは…誰かの手記？おい、これは手掛かりになりそうだ。かなり走り書きだが、解読したら何かわかるかもしれない。

古来からきのこたけのこ論争に終わりは無いのよ

うわ、本当に走り書きね。追い詰められる中必死に手がかりを残そうとした気持ちしか分からない、なんて書いてあるか読める？

…これを書いたのは山姥切長義のようだ。

─『本丸にて侵入者あり。遠征から帰還後大広間の異常を察知したがまるで遮断されているかのようにこちらの声は届かない。低練度の刀剣達が消えて行った。高練度の俺も霊力が無くなってきているように感じる。主は大丈夫だろうか。初期刀や精鋭部隊が守っている。』…箇条書きでとにかく思ったことを書いたようだな。

本当に簡潔に書かれてる、調査は一気に進むわね。つまるところ異常らしい異常が起きたのは大広間、一定練度以上の刀剣は耐性があり異常に対処する余裕もあった。
これ以降は調査対象を大広間に絞るべきかしら。

ああ、ここに書いているように山姥切長義も高練度であった為少しだけ長く留まれたんだろう。…その侵入者が大広間から移動したとしたら痕跡はそちらに移動しないだろうか。言い方は良くないが、餌が無くなった場所にずっといるとは思えない。もっと喰らおうと本丸内を移動し、霊力が強いものを探すはずだ。それこそ…高練度、精鋭部隊…審神者、とかな。

それか、山姥切長義が政府出身又は霊刀であったことが影響している可能性もあり得る。
自力で動けるタイプなら移動しただろうし、移動できないタイプもあり得る。可能性だけならいくらでも考えられてキリが無い・・・・・・。

よし！！この本丸で九番目に顕現した山姥切国広くんなら、この状況で審神者を何処に隠す？どう隠す？この場合の精鋭部隊は、練度か刀種かそれ以外か、どの基準で選定する？侵入者を迎撃する？迎撃するならどこで迎撃する？救援を待つならどう外部に救援を求める？