異常本丸調査室の日常(〆)

なるほど、そういう事だったんだな。
さあ、借景本丸に行こう。


【借景本丸にて】

…なあ、この本丸は調査員の過去を写す、とかはないだろうな…？もし、そうだとしたら俺はこの風景を知っているかもしれない。

・・・・・・んー、そういう話は聞いたことは無いかな。ただ、本丸と縁のある刀の時は過去を辿ることが無いとは言い切れない。異常本丸調査室は、本丸と縁のある刀が所属してたことほとんどないんだ。
でも、借景本丸の風景は過去の再演じゃなくて今の中継、みたいな感じだったはず。ここで流れている景色は文字通り今借りられているものだって。

なるほど、それなら俺の勘違いのようだ。
少し懐かしさを感じたが、それも無さそうだ。

見たところ、普通の本丸だな。
異常も感じられない。

あくまで可能性の一つだと思って欲しい。都市伝説の類だ、政府の裏付けがあるわけではない。折れた刀剣の記憶や経験を引き継いで顕現する刀剣が居る、という話がある。教えたわけじゃないのに顕現直後からパソコンを使いこなす、練度一とは思えない動きをする、とかね。今流れているこの穏やかな風景の本丸で折れたか刀解されたかした刀剣の何かを君は持っているから懐かしさを覚えている、なんていう考えは少々浪漫に走り過ぎたかもしれない。

特に異常はないかな、辺りを少し確認してくる。

ああ、わかった。
俺もこちら側を見ていく。

うん、いつも通りの無人本丸のまま。景色も変わってないし、問題無しかな。そっちはどう？

こちらも特にこれと言って目立つ物もないな。

なら次は海城本丸ですね、あそこは、直帰確定の本丸なんだよなァ・・・・・・。

朝確か海に囲まれてるんだったか…？濡れるのは大前提だろうし、それは直帰になってもおかしくないな。

(朝、は打ち間違いです。申し訳ありません…！)

あと純粋に、潮風で髪が・・・・・・。だから直帰確定。

さて、行こうか

(了解しました、お気になさらず)

ああ、なるほど…女の人は大変だな。

【海域本丸】

海の匂いがすごいな…。確か地下にある祭壇にとある物を置きに行くんだったか…？とある物って言われてもな…。まあいい、探すとするか。

その辺も調査票に書いてあるよ、祭壇に置く以外にもあるから確認してみて

・・・・・・ここの直帰、切っ掛けは刀剣男士が「錆びる」って大騒ぎしたってことは黙っててあげよう

ああ、分かった。
まずは“本丸中央、海の真ん中にある鳥居をくぐる”…？！
最初から難しいものがきたな…と言うより、俺たちは錆びたりしないよな…？

その恐怖心、もしかして全刀剣男士共通？
怖いならここも私が引き受けようか？

俺たちは刀だからな、出来る限り脅威は避けたい…。
だが、この通過儀礼は俺がやらないと意味ないんじゃないか…？そうだとしたら、少しくらい我慢する。

【「通過儀礼って、そこまで気を張らなくていいのに」と思っている紅葉傘さん】

じゃあ行こうか、この道をまっすぐね

…ここだな。少し待っていろ、鳥居をくぐってくる。
【流石に布は邪魔と判断したのか嫌々外してから海に飛び込んだ】

え！？潜るの！？ギリギリまでボートで行けばいいのに！？すぐそこにあったのに！？【透明度が高いから海底の道が見えると思って方角を教えたつもりが目の前でダイビングが始まってびっくりしている、普通に現在地から五メートルくらい離れた場所に小舟がある。】

布、畳んで運んであげるか。私は舟で行こうっと。