異常本丸調査室の日常(〆)

本来の、嫁金蚕は、この金蚕蟲で得た利益と金蚕蟲全てを箱に収めて、道に置くものだ。でも、それを、改変して、やっている。だから、あの奥の部屋に、あるはずの、資料で、対策を。もしかすると、現世に【段々と声から溌溂さが消え、点滴の鎮痛剤が効いてきたのか目がうつろになりつつ】

だから、わたしを、あの、おくの、へや、に、せんぱい、だか、ら、わたしが、いか、な、い、と、たよ、れ、る、せん、ぱい、と、して・・・・・・。

あんたは十分先輩としてやっている。
いいからもう寝ろ、あまり起きてると怒られてしまうかもしれないぞ。

奥の部屋の、解除キーは、３，７，２，２，ろ・・・・・・。【完全に寝た】

…3722ろ…。ろ、は6の事だろうか。

─ああ、薬研か。先ほど目が覚めたが一通り騒いだ後にまた眠りについた。当然だが、傷はまだ痛むようだ。
俺は少し任務に出ることにする、その間こいつを頼んだ。
…ああ、分かっている。


─突然電話をしてすまない、室長。ああ、今は医務班の薬研についてもらっている。俺は少し用事ができたので先日向かった本丸にもう一度向かう。あいつが何かを見つけたらしいが、今は動けないからな。ああ、無事帰るさ。


よし、もう一度あの本丸に戻って最後の蔵と「ニ」の蔵の最奥の部屋を調べるか。

・・・・・・【鎮痛剤はまだ効果が続いている】

医務室の薬研先生のお言葉「人間に打てる一番強いのを打っておいたぜ」

【例の本丸に移動】

あの時はあいつを救出するのが最優先だったがここは…死体が多いな。それのせいでこんなに悪臭がしていたのか…。それにこの死体…実験によって作られた失敗作でもここに詰めていたのか…？

…奥の部屋は…ここだな、解除キーを入力して…。よし、開いた…！さて、あいつが言うには金蚕蟲で得た利益と金蚕蟲を入れると言っていたが…。

紅葉傘による蟲毒解説！！

蟲毒とは、上記にもあるように「五月五日に百種の虫を集め、大きなものは蛇、小さなものは虱と、併せて器の中に置き、互いに喰らわせ、最後の一種に残ったものを留める。蛇であれば蛇蠱、虱であれば虱蠱である。これを行って人を殺す」という記述が始まりの虫を使った中国伝来の呪術です。虫以外にも小動物を使った記述もあります。因みに日本では呪殺による実刑判決が出ているので刑事罰の対象になります。
その中でも中国では、金蚕蟲と呼ばれるものがあります。金蚕蟲とはたくさんの毒虫同士を甕の中などで共食いさせ、最後の一匹を用いて呪法を行う蠱毒の一種です。それで生まれたこの妖虫に、高価な錦の織物を食べさせることで排泄される糞を、呪いたい相手の食事や飲み物に混ぜることで、命と財産を奪えるとされていた物騒な呪毒です。これだけ強い術、当然相応の対価が必要です。まぁ高価な錦を入手し続けなければならないという金銭的負担、毎年誰かを生け贄として殺害せねばならず殺したい相手がいない場合には家族を犠牲にしなければならないというコスパの悪さ、このルールが守れない者は、自身が呪いによって死亡してしまうという失うものの大きさ、その為途中でこれを放棄したくなるものも多いとか。
強力な呪物である金蚕蟲は水や火や刃物など様々な手段を用いたとしても絶対殺すことはできないので特殊な方法で放棄します。それが嫁金蚕、方法としてはこの呪法で手に入れることができた金銀財宝及び金蚕を、箱の中に入れて道ばたに捨てることなのである。そうして出来た箱を誰かが持ち去ってくれれば財産こそは失われてしまうが命を脅かす呪いからは解放されるという、そして拾った者に金蚕蟲が憑く。とまぁ、呪詛返しのようなものですね。

因みに憑き物と混同されることもあるのですが、あくまでも呪物や呪毒の類なんですよ！！

この本丸が呪いによって利益を得ていたのなら、その利益は一体どこに…。新しい本丸に持っていけるはずはないし…。
それを集めなければ話は始まらない…。

─これは…呪具にまつわる資料や、それに使う呪具…？
呪具は高価なものが多いと聞いた事があるな…、この呪具たちはもしかしたら金蚕蟲の利益で購入したものになるのだろうか。
そういえばあの実験室にあった同位体はここで顕現したものなのだろうか…。山姥切国広自体はドロップでも鍛刀でも出やすい、だがもし裏ルートで手に入れているとしたら、あれも利益になるのか…。

紅葉傘の呪術解説！！

拾う、ことで他者に金蚕蟲を移す嫁金蚕ですが拾った側に知識が無く勝手に金蚕蟲の主にされてしまうこともあります。その場合も金蚕蟲の呪いは続くので勝手に主にされた側からしたらもう悲惨以外何物でもありませんね。

前回は金蚕蟲の作り方をメインにしましたので今回はその呪詛返しの嫁金蚕についてです。

嫁金蚕のやり方はこの呪法で手に入れることができた金銀財宝及び金蚕を、箱の中に入れて道ばたに捨てることなのである。そうして出来た箱を誰かが持ち去ってくれれば財産こそは失われてしまうが命を脅かす呪いからは解放されるという、そして拾った者に金蚕蟲が憑く、というものです。

これに関しては諸説ありますが、六礼に習ったのではという仮説もあります。ただそれだと手順が異なる点もあり、伝わっていく最中にずれが生じたのかもしれないですけどね。この呪法で手に入れることができた金銀財宝を婚姻に際しての贈り物とし、それと金蚕蟲を納める箱を花車とする説です。古代中国において、一度嫁に行った娘が生家に帰るのは三日以内に一度と己が死んだ際に骨は家に帰される二回だけでしたので、嫁に出した金蚕蟲が三日以内に戻らなければ次に戻れるのは金蚕蟲が死んだときのみという見立てですね。故に、嫁金蚕なのだと。

因みに花車は現代では祭りの際に使う華やかに飾られた車を意味します、地域の人がせっせと花を植え、飾り、共同で作ってるんですよ。

【鎮痛剤の効果はまだ続いている】

…そういえば、箱に詰めないといけないとか言っていたな。
それに近い箱は無いんだが…。
これは…三の蔵の鍵？何でこんなところに置いているんだ…。
しかも、審神者以外持ち出し禁止と書いてあるがそれなら自身で持ち歩いておけばよかったんじゃないのか…？いや、この部屋はそもそも隠されていた訳だし…。

……もしかして、三の蔵自体が箱だったり…しないよな…？
いや、流石に考え過ぎか。それでは嫁金蚕の意味が成り立たない。

とにかく、三の蔵に行くとしよう。

紅葉傘の解説パート３～箱の概念～

今回は嫁金蚕の箱、に注目してみましょう。呪術的、と言いますか概念的な箱という意味から行きたいと思います。
箱、は直線によって築かれたものです。その為なにかを明らかにする、中に入っているものは明らかなものである、という意味合いを持つのです。日本なんかでは枡で米の量を図ったりしていましたよね、これも箱の概念の延長です。図る、量る、測る、以て中身をつまびらかにする。このような感じですね。

ですが蓋をされた箱だと急に意味合いが変わります。中に何かが納められているが中身は分からない、といった感じでしょうか。有名なのは西洋の‘パンドラの箱’ですね。故に箱を開けてはならない、と。閉ざされた場所、を箱とみなすこともあるそうですよ。

今回の嫁金蚕は蓋をされた箱、の概念でしょうか。花車も新郎の家に着き戸を開けて初めて本当の花嫁と分かるわけですし。閉ざされた中では本物か偽物か証明できない、さながらシュレディンガーの猫ですね！！

因みにご存じですか？本丸はその運営に莫大な霊力を必要とするため霊脈上に建ててあります。霊脈は霊道とも呼ぶことがある人ならざる者の通り道、膨大なエネルギーの通り道、だったりするのです。
ご存じですか、本丸はどのように拡張してもその敷地の大きさはすべて固定されているんです。敷地は簡単に説明すれば、長方形ですね。
ご存じですか、本丸は再度リサイクルして使うことがあるんですよ。リサイクル本丸の利点は、前任の審神者が拡張などを行っていればそれをそのまま引き継げることなんです。

本丸は外部からその中をすべて監視することは出来ないある種の閉ざされた空間なんですよ、外に繋がるのはゲートだけで、ゲートも封鎖すれば完全に孤立してしまうわけです。

【紅葉傘は医務室で寝ている・・・・・・】

最後の蔵はここか…。外見は他のものと何ら変わらないな。

先程のと比べて中は広くなっている…。物は少ないが、やはりここは審神者しか入れない場所だったのだろうな。本棚に隠すこともなく資料が並んでいる…。
この棚…他と作りが違うと思ったが…やはり、隠し部屋か。

…この部屋…他と空気が違う…もしかしてここが箱なのか…？くそ、考えれば考えるほど分からなくなる…。
もしそうならこの部屋に利益で得たものと思える物を詰め込めばいいんだろうか？

紅葉傘の教室～金蚕蟲を手放すまで～

最初に説明したように金蚕蟲は維持がとても手間な呪術です。年に一度誰かを殺さないといけないなど制約が多い分強いんですね。今回注目するのは‘殺したい相手がいない場合には家族を犠牲にしなければならない’の部分です。例えば、家族が居ない場合どうするのか。その辺の人間でもいいかもしれないですけど、審神者が実行する際にはリスクが大きすぎます。でも、審神者なら用意出来て誰にも怪しまれない存在が居るでしょう？

ただまぁ、この審神者は金蚕蟲を嫁がせた側なのか嫁がれた側なのかによって変わってくるかもしれないですね。

例えば、金蚕蟲を知らない審神者は金蚕蟲を押し付けられたことすら知らず、必死に迫りくる死から逃れようとしていたのかも。
金蚕蟲を他者に押し付けようと必死だったのかも。

金蚕蟲を生み出してしまったのかも。


刀剣男士同士で金蚕蟲って作れるんでしょうかね？？

【まもなく鎮痛剤の効果が消えそうだ！！】

この気配…もしかして、金蚕蟲になった刀剣男士か？贄を差し出されたと勘違いしたのか…？

この部屋で審神者は刀剣同士を共喰いさせ、金蚕蟲を作り閉じ込めた？そして呪いから逃げるためにこいつらも本丸も捨て自分だけ利益を得て逃げたと言うことか…？人間風情が…！

とにかく、こいつを止めて…いや、止めたところでどうなる…？
箱の場所は分かった、この部屋自体が箱になっている。だがこれでは持ち運びはできない…。悩んでいても埒が開かない！とにかく、何かしらの方法でこいつと財宝などをこの部屋に詰め込めばなんとかなるはずだ！

【山姥切国広は思考を放棄した！】

本丸の、座標を変えて、あのバカ審神者を、最初の本丸に戻して本丸ごと封じれば誓約を破った審神者は金蚕蟲に呑まれる。主を失えば、金蚕蟲も滅びる。箱に、全部を納めたら早々に本丸を出て、どんな手を使ってもあの審神者を最初の本丸に戻せば。

因果応報、ね。薬研先生あのバカに連絡したいから携帯を・・・・・・。え？だめ？暴れられたら困るから？？？？？でもこれ職務上すごく大事で、あ、ちょ、その鎮痛座はもうごめん、せめて、でｎ


【鎮痛剤がログインしました】

はぁ、はぁ…ここの審神者、本当に何がしたかったんだ…呪物商人でも始めるつもりだったのか…！
俺は引越し業者でも廃品回収業者でもないんだぞ…！

…だが、とにかく同位体の本体と、棚にあった呪物は全て入れたはずだ。
資料も写真に収めたし、証拠は残る…。

医務室の薬研先生のお言葉「いいや、今回打ったのは鎮静剤のほうだ。暴れられたら困るからな」

やり残したことは…無いはずだが、これで本当に合っているのだろうか…。
とにかく、鍵をかけて…。よし、これでいいだろう。


…まて、これを運ぶなんて無理だ。どこかに持ち運びできるようなスイッチでもあるんだろうか…？

紅葉傘の教室～本丸編～

本丸は基本埋め込み式の座標を使っているので建造物の移動を個人で行うのは不可能です、何かの事情があって「離を動かしたい」「蔵の位置を調整したい」など建造物を動かしたいときは担当職員経由できちんと政府に申請してくださいね。

ですが例外も存在します、例えばよくあるのが料理が好きな刀剣男士が自分たちで屋外に石窯と雨よけの小屋を作ってしまったとかですね。これは建造物ですが政府が関与していないため埋め込み座標になっていませんので自由に動かせます。これらにも後からでもいいのできちんと政府に申請の義務がありますよ。

つまり、政府が作る建造物は埋め込み座標で固定しているため動かせませんが、本丸の住人だけで作ったものは座標固定がされていません。

ですが、座標固定されている建造物に繋げて作った場合、例としては茶室や地下室ですね。これらは例え個人で作っても座標固定されている建造物の一部とみなされ自動で座標固定されますよ。

…特に無さそうだな。これ以上長居する必要も無さそうだ、一度政府に戻って情報を整理するか…。

……動き過ぎたか？酷く疲れたな…。部屋の冷蔵庫に疲労回復用の団子は残ってただろうか…。なければ最悪、本科の部屋にでも行って貰うとしよう。