異常本丸調査室の日常(〆)

じゃあここで私のこと少し説明しようかな。

私は霊視、に近いものが出来るの。その関係で私の目を引くものってなにか”ある”ものを自然と拾っちゃうの。例えば、今日この廊下を通った刀剣の順番とか分かるわけ。
だから無意識的に厄介なものを選んでしまうってわけ。

それにどうせ全部回らないといけないから、どれから行っても問題ないの

なるほど、ならば本当になんでも良さそうだな。
少し考えさせてくれ。

うんうん、決まったら教えてね

それまでは、ちょっと地獄の始末書報告書祭り片付けてるから。

─様々な案件があるものだな…。

これは…【山姥切国広連続誘拐事件】？
写しを誘拐するとはどんな趣味をしてるんだ…。

おい、ここにはこんな変わった案件も多いんだな。

ええと、別紙記載の通り審神者が〇〇〇に傾倒しその結果発生した怪異が原因で該当本丸に汚染がっと、どの案件？

ああ、それか

その案件に関しては犯人も動機も不明でウチに回ってきたの、元は警邏科だったかな。犯人の目星、というか可能性として挙がってるのが審神者と怪異と要警戒変質刀剣男士だったかな。一番可能性が高いって言われてるのが要警戒変質刀剣男士だったんだけど、どうも違うみたいで調査依頼が此処に回された。すべての本丸に立ち入り調査できる権限を持ってるのが此処と監査部だからさ。

要警戒変質刀剣男士…？それは、どんなものなんだ？

んー、審神者たちの認識でいうなら都市伝説。普通とか違う、でも怪異でもない、そんな怖い刀剣男士が居る～っていう。

でも政府の認識でいうなら、実在している文字通り常に警戒し続ける必要のある変質を起こした刀剣男士たち。一応識別名がちゃんとあって一部を説明すると

粟田口の刀剣に異常なほどの執着を見せ審神者を弟たちのオモチャくらいにしか認識していない一期一振、彼の識別名は《グッドオールドブラザー》。

彼の美的感覚に沿う人間の体の中の美しい部分を奪いそれで構成された人形を作る大般若長光、識別名は《解体人形師》

主人に捨てられ保護を求めるふりをしてこちらの油断を誘い釣られた人間を殺す三日月宗近、識別名は《狂月》

政府が管理する初期刀の中に紛れ込み初期刀として本丸に赴き審神者が己を信じ切った瞬間に殺す蜂須賀虎徹、識別名は《トロイの刀》

他にも幾つかいるけどその事件の犯人候補として挙がったのが


己の写しを見掛けると優しい声で呼びかけて誘い出して釣られた写しを喰う山姥切長義、識別名は《セイレーン》

山姥切、長義…。そうか、確か山姥切長義は写しを疎んでいると聞いたことがある。写しを喰らい尽くせば自身こそが山姥切と知らしめることが出来るから…？だが、そんなことは間違っている。そんなのは山姥切長義じゃない…ただの化け物だ…。

会話がまともに成立しないからね、彼が何の目的で山姥切国広を喰うのかは分からない。私は解体人形師と一度だけ遭遇したことがあるけどあの時会話が成立したとは到底思えないしね、いやマジで怖いよ、絶対会わない方が良い。

で、そのセイレーンはまぁ特徴があって。喰った山姥切国広の一部が現場に残されるから、それが無い今回は多分違うだろうってことで犯人候補から外れた。

現状無力化に近い状態に持って行けたのはグッドオールドブラザーだけだから、セイレーンが犯人だった場合とても大変だっただろうからね。

ふむ、ならばそいつと会うことはなさそうだな。
だとしたら尚更犯人が誰か分からないな…。仮に何処かの審神者が誘拐して閉じ込めているとして、数多の本丸から探すのは骨が折れる。

まぁ怪異だったら今頃怪異討伐の連中が笑顔で突撃してるだろうし、多分審神者だろうね
さてこの状況、君ならどう推理して何処を調査しに行く？

何処かが分からないのが一番難しい。
俺ならば…最後の山姥切国広が消えたと言われる場所に向かいその犯人が出てくるのを待つ。運のいいことに俺も山姥切国広だからな。誘き寄せる餌にはなるだろう。

囮作戦？身体張るね

その経緯報告書にも記載されているように、最後の事件があったのは武蔵国の万屋街だ。

因みに武蔵国の万屋街は三番通りの和菓子屋の大福が絶品というレビューが呪具研の肥前忠弘から届いている。

俺ができることはなんでもやるつもりだ。

ならばそこに行ってみるか…。ついでにその大福も買えばいい。

よぉし、じゃあ大福と団子とケーキとシュークリームのために行こうか

因みに、政府職員の中でも職務上九割の政府関連施設及び全本丸に入れるパスを持ってるのが私たちだからIDカードをうっかり無くさないようにね。無くすと罰金と始末書と減俸になります。

そしてそのIDは同伴者一名まで連れて行けるから食う専門の肥前忠弘が他のサーバーの万屋街に行くために同伴者枠を狙ってくることがあるから気を付けてね、彼を連れて行くと食い倒れ旅になるから

あ、ああ…分かった、覚えておこう。

【武蔵国サーバー、万屋街】

さて、ここが万屋街だ。まず現場を見に行こうか。現場は確か、七番通りの辺りだったかな。

細心の注意を払って、危険は冒さないで

良い？何かあったら「先輩に聞いていいですか？」でこっちに回していいから、時々押し売りも出るからねここ

分かった。俺が危険に陥ったらあんたの護衛もできないからな。

…7番通りの方に向かおう。

因みに七番通りの定食屋のから揚げ定食が絶品で武蔵国万屋街で一番大きいから揚げを使っているという情報が警邏科の肥前くんから来た、ご丁寧に写真付きだ。同じ通りにある肉屋のメンチカツは肉感が強くてベストらしい、元々警邏科の案件なのでそっちの情報を聞きたくて連絡してるのに飯屋系統の情報しか送られてこない・・・・・・。同期だから連絡しやすくて連絡したんだけど、選択を誤ったかもしれない。

警邏科、警邏科、他に知り合いいたかな。山姥切国広くんは警邏科に知り合いいます？同期が配属されてるとか、研修で同じだった子が配属されたとか

から揚げ…それは気になるな。そこの肥前は食べる事が特に好きなんだろうな。

確か…山姥切長義、南泉一文字がいた気がするが…。研修時に少し同じ時間を過ごしただけだ。