アスティ 2024-06-05 12:58:40 |
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『死霊術師…?勘違いをしているようだな。ソイツらは確かに動く屍。だがそのカラクリはもっと原始的なものだ。…見るがいい、屍すら奴隷と化す呪われた種族の穢れた血を。ククッ、それを操る赤い瞳こそ、あの方が授けてくれた呪法。…堕天使とは不思議なものだ。なぁ、小娘』
("死霊術"という言葉に反応した老人が、足元のトランクケースを蹴り飛ばすと、蝶番が歪み開いた箱から無数の"中身"が転がり。切断された数多の人体、最低限の止血処理を施されただけと思しきパーツが、ウゾウゾと這いずり互いに結合を繰り返す。生ある者としての尊厳など微塵もない物体と化したそれらは、次第にフレデリクの背丈を越える長身の男として蘇り、その赤黒い瞳が目を覚ましたイゾルデを眺めて。屍体を動かすのは吸血鬼の血、それを操る赤黒い瞳について堕天使という単語を発し、アスティをちらりと老人が眺めて)
「お父…さん…。」
『汚らわしい吸血鬼共、感動の再会は済んだか?…純血種同士を交配させるんだ。母体になるイゾルデの胴は傷つけないようダルマにしろ、ツェペッシュ』
(放心したように蘇った化物を眺めるイゾルデの呟きと、楽しそうにその化物に命令する老人の言葉。それらに激高したフレデリクが長剣に螺旋状の火炎に似た魔力を纏わせて老人に切りかかるも、その間に割って入ったイゾルデの父-ツェペッシュが素手で刃を握り止めると、反対の手でフレデリクの腹部から胸部を引き裂き。鮮やかな鮮血を吐き出すフレデリク、吸血種となった彼の回復力を持ってしてもその損傷の回復には数分は掛かるだろうか。フレデリクを無力化した赤黒い瞳が、イゾルデの姿を眺め)
アスティッ!
…どうやら死霊術の類ではなさそうだぜ。血が屍体を動かすなんて意味がわからねぇが、筋肉に命令を送るのは、やっぱり脳なんじゃねぇかな。
…頭をぶち抜いても死ななかったら、そんときは別の戦法考えるとするかね…!
(相棒としてアスティを信頼していても、ダメージを受けた彼女の姿に思わずその名を叫び。致命傷でないことに安堵すると、老人のおぞましい呟きから想定された眼前の動く屍への戦術を告げて)
──『血の盟約』──っ、もはやそこまで……!ソフィアールっ……!
(堕天使、穢れた血、老人が言葉の中に散りばめた自身にも馴染みのあるそれらの言葉、それらの点と点が線で結ばれていき一つの結論が導き出される。堕天使が自ら選んだ存在に力を分け与え、世に災厄を振り撒く最悪の儀式……純血の吸血鬼という上位種の亡骸にまで影響を及ぼすほどの強大な力を兼ね備えた堕天使など自分の知る限りたった一人しかいない。ずっと敬愛してきた彼女、何かボタンを掛け違っただけでいつかもしかしたら分かり合える日が来るかもしれないと、そんな淡い願いにも似た希望は完全に打ち砕かれる。もはや彼女の心は完全に邪に染まり世界そのものに弓引こうとしている。それが誤魔化しようのない現実であることは眼前の悪趣味な人形たちとそれを操る老人の存在が証明しており、脇腹の傷が痛むのも厭わず慟哭にも似た叫びをあげ、この先道を同じくすること叶わなくなった彼女への決別をして)
(痛い、苦しい、悲しい……一度に押し寄せる感情の荒波はやがて怒りに変わる。体内を巡る呪われた血、堕天使としての本能に逆らえず視界が真っ赤に染まり、怒りの感情はそのまま破壊衝動へ。眼前に存在し続けることで自分の想いを踏みにじり続ける悪辣な人形の存在が許せない、壊す……完膚なきまでに……。漆黒の闇よりも更に黒く、周囲の光を吸収し塗りつぶされていくように変化を見せる翼。もはや自我すら失いかけたその時、耳に届くすっかり耳慣れた、そばにいるだけで心が安らぐ相方の声に身体の変化は止まり平静を取り戻し)
っ……大丈夫、見失ってはいけない……怒りに、身を委ねてはいけない……私はそれでも、私のままで生きたいから……!
(自身に強く言い聞かせる言葉、堕天使のままであっても、その上で自分らしく思うままに相方とこの世界を旅をする……そんな想いが自身をなんとか踏みとどまらせ、冷静に相方の言葉を脳内で反芻するとその戦術を念頭に再びストーカーと対峙して)
……!そうだよね、そうくると思った。いくよ、奥の手!
(あからさまに攻め手を増やし、大鎌でストーカーの頭部を狙う。大振りの攻撃を繰り返すことで勝てる可能性を一つ見出し恐らく勝機に逸ったと思った事だろう、大鎌を姿勢を低くしてかわして懐へと飛び込んでマチェットで仕留めにかかってくるストーカーだが、この展開は既に折り込み済みであった。大鎌を振るう左の手とは逆の身体強化により強化した右手には透明な鉱石が嵌め込まれたナックル。そこに込めた魔力に呼応するように白い輝きを放ち始めるそれを必殺の一撃がこちらに届くよりほんの少し早くカウンター気味に顎へと叩き込めば、激しい光の衝撃波がストーカーの脳天を突き破って)
『私の母親は貴様らのような吸血鬼に喰い物にされてねぇ。その屍が父親を喰い殺しながら朽ちていく映像が、今も瞼の裏に焼きついている。…だがいい気分だ、この糞みたいな世界に貴様らの呪われた血が造り出す災厄を解き放てるのだから…!』
「アナタの言うとおり、私たちは呪われた種族なのかもしれないね。だから今までも、これからも暗闇で生きてく。…それでも私はこの世界が好き。それを見せてくれた大好きな人と、まだ旅を続けたいの。だから、アナタたちの思い通りにはさせないよ。」
(ちらりとフレデリクを見たイゾルデが言葉を投げ終えると、華奢な身体を小さく痙攣させ禍々しい雰囲気を醸し出し。眠たげな表情は鳴りを潜め、代わりに見せた竜族を思わせる冷酷な瞳に闘争本能を濃く滲ませて。闇に溶けるように跳躍し落下しながらツェペッシュに掴みかかると、か細い首を大きな手で締め上げられながらも、相手の鎖骨と肩の筋肉を噛みちぎり砕いた骨と肉片を吐き捨てて。長い時を経て再開した父と娘は、互いの生命活動を完全に止める為、血で血を洗う凄惨な殺し合いを始めて)
…!
アスティ、どうやらそっちは片付けたみてぇだな。へへ、先を越されたぜ。…死体は死体らしく、土に埋まって寝てろっつーの!!
(大振りの戦斧の攻撃を見切れば、カウンターに注意しながら巨体の懐に飛び込むと、大きな口の中に刃を突き入れそのまま浄化の炎を叩き込み脳組織を破壊して。頭部を粉砕され崩れ落ちたラヴクラフトとストーカーの身体が立ちあがろうともがき脚をバタつかせるも、脳が正しく機能しないソレらは不規則に痙攣し次第に動きを停止して)
アスティ、こっちも片付けたよ。大丈夫か?
しかし、素手でぶち抜くとは恐れ入ったぜ。
…おそらく、向こうももう決着が着くだろうぜ。
(アスティの側に駆け寄り脇腹の出血をやや心配そうに見遣り。そして闇の中で理性を捨て去ったイゾルデが屍体の操り人形を駆逐するのに、そう時間は掛からないだろうとも追加し。例えそれが彼女の肉親の亡骸だとしても)
……ぶっつけ本番だったから危ない橋を渡ることにはなったけどね、手痛い一撃ももらっちゃったし……でも今回の勝負私の勝ちは勝ちだね!
(所持者の魔力を吸収して拳に凝縮し、聖なる一撃として叩き込む光石拳。その威力のほどは購入時に聞いたカタログスペック上でしか知り得ず実戦における効果のほどは未知数であったがその一撃はどうやら無事にストーカーの脳を粉砕するに至ったらしい、屍体が再生する際に発せられる鼻をつくような臭気が周辺を漂い肉体の再生は成るも、脳だけは再生することが困難であるようで、相方の予想通り脳を損傷した人形はまるで死にかけの虫のように這いつくばってもがき、やがてそれらが動かなくなるのを確認すれば話しかけてきた相方の方へ向き直り。自身の傷口へと一度目をやってから相当量の血は滲んでいるが、そのダメージが見た目より大した事ないとアピールするようにピースをして。自身とは対照的に危なげなく勝利してみせた相方に向けて、勝ち方はどうあれ二人の間の決め事はあくまでどちらが早く敵を倒すかだから勝者は自分なんてそんな軽口を叩き、こちらの怪我を心配する相方の心配を払拭してやろうとして)
……貴女も自分の在り方を貫いて、居場所を護るために戦ってるんだね……
(理不尽にもその身に課せられた業を背負って向きあいながらも、決してそれに呑まれてしまうことなく自分にとっての大事な居場所……自身にとっての『世界』そのものを護るため戦うイゾルデの姿を自身の境遇に重ね見る、かつての肉親の亡骸との凄惨を極める戦い、状況だけを見れば今すぐにでも間に割って入りイゾルデを助けこの不毛な争いに終止符を打つべきだろう、しかし実際にはそうしないのは、この戦いが彼女にとっての信念を示すものでありそこに水を差すような真似を良しとしなかったからで。相方もそのことを肌で感じ、信念の強さの分だけ彼女が押し勝つ事を確信しているのだろうということを横目で見て感じながら戦いの行方を静観して)
(喰らった闇をエネルギーの糧とするように、その小さな身体に禍々しい殺意と暴力衝動を宿したイゾルデが長身ツェペッシュの命を少しずつ刈り取り。跳び回る標的を引き裂こうと振り下ろされた腕をかわし跳ねたイゾルデが相手の大きな肩に飛び乗ると、掴みかかろうと持ち上げられた右腕を力任せに捻り切り、落下しながらもぎ取った腕をツェペッシュの耳下に叩きつけ。鼻と耳から同時に多量の血を流した巨体がぐらつき、三半規管を強烈に揺さぶられ平衡感覚を失ったツェペッシュが膝をついて動きを鈍らせると、その瞬間を逃さずイゾルデの手刀が眼球を抉り、そのまま悍ましい怪力で頭蓋骨を砕きながら脳を掻き混ぜ破損させて)
『ば、バケモノめッ、地獄に堕ちろ!』
(ツェペッシュの動きが完全に停止したその刹那、イゾルデの背後に忍び寄った老人がダガーナイフを垂直に振り下ろすが、音無く駆け寄ったフレデリクがその刃を長剣で弾き。続けざまに灼熱の火炎を纏った剣先が老人の頭部を細切れにすると、その破片に引火した炎がそれらを瞬時に燃焼させて。放心したように佇むイゾルデが小さく呟いた言葉に優しい声でフレデリクが答えるも、交わされた言葉は風にさらわれ、ここからは聴き取ることはできず)
…終わったようだぜ。
あいつらは放っておけばすぐ治るだろうが、アスティはしっかり手当てだな。
あぁ、お前さんの勝ちだよ。何でも奢ってやるから、任せとけ!
(頭部の無い屍体は灰が崩れるようにその身体が朽ち果てていき、自身の肉体も弄っていたのだろう、最後に息絶えた老人の身体もそれに続いて。巻き込んでしまったことを謝罪するフレデリクを宥め、今夜はそれぞれ宿に戻ることとし、話を切り上げて)
アスティ、俺たちも戻ろうか。
…だいぶハデにやっちまったからな。面が割れないうちに、とりあえずここからトンズラしようぜっ…!
うん、そうだね……っとと……ごめん、少し血を流し過ぎたかな
(因縁の決着を見届け、先程までの激戦が嘘のように訪れる静寂と平穏。しかし、街からはそれほど大きく離れてはいない場所でこれだけの騒ぎを起こした以上、すぐに騒ぎを聞きつけた兵士なんかが駆けつけることだろう。またお尋ね者として追われる立場となるのは御免被りたいところ。傍の相方の顔を見上げ、笑顔で応じて歩き出そうとするがそれなりの量の出血と、戦いの終わった安心感で気が緩んだことで視界が軽く揺らぎ足元ふらつき相方に寄りかかると、苦笑い浮かべつつ謝罪を口にしてから慌てて身体を離して、大丈夫大丈夫と若干覚束ない足取りで歩き出して)
お、おい、無理するなって。へへ、いつもと逆だな。ま、俺はだいたい酔っ払ってるときだがね。
(よろけたアスティに気付くと、足取りが危うい彼女に肩を貸し。ゆっくりと常闇の世界を二人で歩き、宿へと向かって)
──翌日
ほんとにもう行っちまうのかよ。
『あぁ、ここでは色々な事があり過ぎたからね。ロゼ、アスティ、またどこかで会えることを願っているよ!』
「助けてくれて、ありがと。」
(翌朝すぐにここを発つことにしたというフレデレリクたちを見送って。昨日の戦闘を経て彼等の服装が変わっているが、絵画から浮き出てようなクラシカルな装いのテイストは変わっておらず。闇に消えていく二人の背中に別れを告げて)
アスティ、身体は大丈夫か?あんまり無理すんなよ。
さぁて、次は何しようかね。…食い物はあんまり期待できないんだよなぁ、この国は。
(昨夜、宿の主人に少し無理を言ってアスティの手当ができるエルフ達の都合をつけ簡易的な治療を施してもらっているが、完治するまではまだかかるだろうと少々過保護な声を掛け)
──また会えたら今度こそ一緒にお酒飲んでゆっくり話そうね、楽しみにしてるよ!
(結局殆ど交流が出来無いまま、別れることになったのを残念に思うが旅を続けていればきっとまた道が交わることもあるだろう、互いの旅の話しを肴に酒宴を愉しむのはその時まで持ち越しとしよう、いつかの約束のため夜通しでも語りきれないぐらいの楽しい旅の思い出話しを此方も用意しておこうと、そう心に誓って二人を満面の笑顔で見送り)
ふふ、ロゼったら心配性なんだから。しっかり止血もしてもらったしもうなんてことないよ……でも、少し安静にしておこうかな、しっかり完治させないと旅の再開を認めてくれなさそうだしね
(こちらは簡易的な手当てだけで大丈夫と言ったのだが、治療のため医術に長けたエルフの手配までしてくれた相方、そして治療が順調に進んでる今現在も身体の心配を重ね重ねしてくる有様、大袈裟だなぁと苦笑いを浮かべつつも本心ではその優しさを嬉しく思う自分がいて、当面はあまり無茶なことはしないようにして、体調を万全にすることを優先すると彼の想いを十分に汲み、そうしないと旅立たせてくれないでしょ?とイタズラっぽく口にして肩を竦めて)
でも、宿屋で寝てるだけっていうのも退屈だし……デートでもしてみる……?なんてね
(傷自体は一週間ぐらいあれば塞がるとのこと、あまり激しく動けば傷が開く恐れはあるが日常生活を送る分には支障はなく。昨晩は血液不足で身体全体が重く、一度ベッドに倒れ込んだ後は起き上がる気力もなかったが今日はすっかりいつもと変わらぬ調子で、一晩しっかり眠ったことで気力と体力に溢れていて。しかしだからといって依頼を受けたりなんかは出来ないため、どうしたものかと少しばかり思案した後で昨日フレデリクが口にしたワードを思い出したように口にすると、本当にしてみる?などと冗談めかしてはにかみ笑い、あくまで冗談といった風を装って見せているが内心の緊張を示すように、臍あたりの位置で組んだ両手の指もじもじ動かしながらチラリと横目で見上げるよう相方の表情窺っていて)
そりゃそうだって。それに砂漠の国から寝ても覚めても連戦だったからさ。たまにはゆっくりしようぜ。
ん、デートかい。それもいいかも…って、な、デート!?
(何が起こるかわからないこの旅、互いのコンディションだけはしっかり保っていきたいところ。そんな会話をしていれば、ふと相方の口から零れた単語に虚を突かれぽかんと口を開きつつ、先ほど別れた友人フレデリクの含んだ笑いが見えたような気がして)
よし、それじゃ昼に町の真ん中にある小さな噴水の辺りで待ち合わせな。遅刻すんなよっ!
(同じ宿に泊まっているので出掛けから行動を共にすることもできるが、デートってのは外で待ち合わせするもんだと謎の持論を呟きながら、のんびりと一人歩き出してひらひらと手を振り)
えっ……!?ちょ、ちょっと、本当に……って、行っちゃった……
(軽くあしらわれるか流されてしまうかとも思っていたのだが意外にもすんなりと、むしろとんとん拍子に話しが進んでいってしまうとデートだなんて自分から言い出したことだが逆にこちらの方が戸惑ってしまって。本気なのかとこちらから再度意思確認をする間もなくそそくさ外出準備を済ませて出て行ってしまった彼の背を見送れば、実際デートという名目で外出することなどこれまで生きてきた中で経験のない事であるため、どうしようと頬を染めて頭を抱えて。とはいえ、既に相方は出発した後であるため覚悟を決めるしかないと昼の待ち合わせ時間に合わせて身支度を進め)
ロゼ、待った……?
(デートということでやはりお洒落をした方がいいのだろうかと、昨日披露したエルフ風の衣装でという考えもあったのだが今日は普段通りの自分でと、いつもと変わらない服装で髪だけ一つに結い、薄く化粧だけして待ち合わせ場所へ。噴水のある広場にて佇む見慣れた背中見つけると小走りで駆け寄っていき、後は普段通り声をかけるだけというところで、普段通りって一体どんな感じだっただろうと考えてしまい足を止めて一度深呼吸、デートということを意識してしまっただけでこんなにも感情がグチャグチャになってしまうことに驚きながら、結局肩を背後から指先でトントンと叩いて控えめに微笑むという、普段の自分のイメージからはかけ離れた形での声かけとなって)
(肩を控えめに叩かれそちらに目を向けるといつもの距離感に相方の姿を見つけるも、なにやら表情が固いような…。少しアレンジされた髪型も相まって、思いの外意識してるなぁと小さく笑い)
よっ、傷は大丈夫か?あんまり無理して身体動かすなよ。
しっかし、着いたばかりの頃はずっと真っ暗だし少し気味悪いなと思ってたんだがな。慣れてくると案外綺麗に見えてくるもんだな。
(相変わらず広がる闇の世界、そこに薄ぼんやりと光るオレンジ色がイルミネーションのよう。まるで、何かのイベントで普段は出歩かない夜、外に出た子供の頃のような気分になり)
アスティ、昼はまだだろ?
この辺りで何か見たいものがあればソレを軽く見て、まずは昼飯食べようぜ。
(何か気になるものあるかい?と聞きつつ、アスティを促し歩き始め)
本当だよね、照明も独特で変わってるけど灯りは他では見た事ない感じで綺麗だし。……ただ、やっぱり時間の感覚は慣れないっていうか、変な感じかな?今朝目が覚めた時もまだ夜だと思って珍しく二度寝しちゃって……。ロゼはそういうの全然平気?
(普段と変わらない気取ったところや飾り気のない態度と表情で声をかけてくる相方にようやくこちらの緊張もほぐれてきて、口調なんかも段々といつもと変わらない調子に戻り始めて。特殊な植物の放つ薄ぼんやりした天然の光を照明がわりとしている独特な光景は幻想的なようでもあって、えもいわれぬ趣を感じている一方で、常闇の世界故にどうにも体内時計の感覚に若干の影響が出ているようなそんな気がすると、苦笑を浮かべて相方はその辺気になったり違和感はないかと話しを振り)
あ、うん、そのことなんだけどね。待ち合わせの時間まで少し時間があったから簡単に料理を用意して詰めてきたの。昨日も行ってきたんだけどここの最上部が展望台みたいになってて景色とか凄く綺麗だったんだ、もし良かったらそこで一緒に食べない?
(ここの料理にはあまり馴染めず食指が動かない様子の相方のため、集合時間までの空いた時間を活用して簡易的ではあるが所謂お弁当を用意してきており、それを昨日の散策でたまたま見つけた街並みを一望できる眺めの良い最上部の展望台で景色を楽しみながら一緒に食べるのはどうだろうと提案すれば、デートなのだからと手を繋ごうと手を差し伸べて)
んーそうだなぁ。睡眠は今んとこ大丈夫なんだが、感覚的にずっと夜動いてるみたいだし、夜行性の動物にでもなった気分だよ。
(このまま慣れてしまうと、この国を出たら深海から引っ張り上げられた深海魚みたいな気分になるのかもしんと大げさに言いながらも、幻想的な闇の光景を楽しんで)
…!気が利くな-!それじゃ、その展望台に行ってみるとしようぜ。
(至れり尽くせりな相方の計らいに感謝しつつ、少し照れながら差し出されたアスティの手を取り。頼もしい旅の相方の意外な一面…相棒としての側面から今まで意識的にそういった面を見ようとしていなかったのかもしれない、彼女の歳相応の女性的な振る舞いに、柄にもなく急に緊張してしまい繋いだ手をややぎこちなく動かしながら歩き)
ふふ、殆どハシゴ移動だからあんまり手を繋ぐ意味はないかも……でも、いいよね?だってデートだし、ね
(目的の展望台を目指しての移動はこの国の構造上必然的にハシゴ移動がメインとなり、せっかく手を繋いだのもすぐに離すことになってしまい。あるいは手を繋ぐ意味そのものがあまりないかもとハシゴを登っていきながら身も蓋も無いことを口にしてしまうが、これは誰がなんと言おうとデートなのだ、つまりは理屈ではなくそういうものとして楽しまなければ損だと先程までの余裕なく動揺していた様子はすっかり鳴りをひそめて先に頂上へと至るハシゴを登りきったところで、後から登ってくる相方へ向けてクスリといたずらっ子のような笑みを向けながら手を差し伸べると、小首をゆるりと傾げて改めて自らこれがそういうイベントなのだということを強調するように述べて)
(すっかりいつもの調子を取り戻したような相方に促されハシゴを登り、差し伸べられた手を取りながらも、向けられた悪戯っぽい表情に逆に何かを掴まれたような。砂漠の国でのパーティともまた違った不思議な距離感に少しばかり動揺しながらも、いっそのことそれを楽しんでやろうとし)
あぁ、そうだな…っ。はぐれないように繋いでくれると助かるよ。
(照れくささを感じながらもアスティの言葉に同意し、触れる手の平の確かな体温を都度都度感じながら、展望台を目指して登っていき)
結構高いところまで来たな。そろそろ着く頃かい?
うん、もう頂上だよ。ほらこっちへ来て下を見て、凄く綺麗でしょ?
(最後のハシゴを登りきれば改めて、相方の自分のものより一回り大きく頼もしく、力強いその手を物理的にだけでなく心の結びつきをより感じようと握りしめて。繋ぎ合う手からまるで体温が一つに混じり合い溶け合っていくようなそんな感覚に薄ら頬を赤らめながら無邪気に笑いつつ、やや強引にぐいぐいと相方の手を引いて歩みを進めれば周囲を木製の柵に囲われた円形の床の上、ベンチが置かれ、そこに座って街並みを一望することもできる小さな展望台へと案内をして。幸いにも先客は他に誰もおらず相方と繋いだ手はそのままに、眼下に広がる辺り一面にオレンジの明かりの灯った美しくもロマンチックなようでもある、そんな景色へと視線を投げかけて。相方にも是非とも見せてあげたいと思っていた光景……豪快なようでいて実は楽器が得意であったり、旅先でもその地域ごとの特徴なんかを感じ取って楽しむ繊細な感性も少なからず併せ持つ、そんな彼の目にはここからの景色はどんな風に映っているだろうと口角を上げた笑みを浮かべながら、傍らで顔を見上げるようにしてその反応を窺っていて)
おいおい、そんなに引っ張らんでも付いていくってば。
へぇ、確かに幻想的でいいもんだな。…不安定な感じというかなんというか、そういう揺らぎみたいのが刹那的な綺麗さを作ってるのかもな。
(小さな展望台から見下ろす常闇の町をぼんやりと照らす淡いオレンジ色の光。決して強く光り輝くようなものではないが、その儚げな柔らかい光になんとも言えない美しさを感じ素直にそれを口にして。完璧で一分の隙もないような完成されたものより面白みがあり、再現するのが難しいくらい絶妙なバランスで成り立っていたこの旅の色々な出来事も、ある意味似通った面白さがある気がするよと独り言のように呟き)
連れてきてくれて、ありがとな。
(その心遣いに感謝を述べ、なんだか想像以上にデートっぽいことしているなぁと改めて感じて)
……ふふ、なんだか詩的でロマンチックな表現だね。お礼を言うのは私の方だよ、こちらこそ今日は付き合ってくれてありがとう
(見える景色から受けた印象を雅趣な言葉選びで表現した相方、途端に目に映る世界がより輝きを増して見えてしまうのはきっと自分がこの場、この状況の雰囲気に完全にあてられてしまっているせいだという自覚をして我ながら呆れてしまうが、相方とのデートと敢えて定義づけした特別な時間に惑溺していく己自身の心に抗うことは能わず、やはり自分はとっくに彼のことが……そんな胸の奥芽生えた確信めいた感情には思わず蓋をして誤魔化すように努めて明るく笑って振る舞いながらも決定的な表現は避けるようにする。彼はあくまでも旅の相方だ、もしもそんなポジションすらも失ってしまうような事になったらと思うとこれ以上彼の心に深く踏み込むことは憚られてしまって、こんなにも女々しく考えてしまう自分自身に驚くと同時に情けなく惨めな気持ちが芽生えるがそれらの負の感情を必死に頭の片隅へ追いやり、眼前の景色へと再び目を向けると傍らの彼にありがとうと感謝の気持ちのみを伝えて)
ロゼ、お弁当食べよっか?これはね、前の砂漠の街で買った中身の温度を一定に保つ魔道具なんだ。これさえあれば出来立てホカホカのお料理を楽しめるはずだよ
(これ以上は膨らむ想いを抑えきれない、そう悟った己は気持ちを切り替えようと荷物の中から正方形の平たい大きめの箱を二つ取り出せば、なんの変哲もなく見えるそれらの箱についての説明を交えつつベンチの上に並べて置き蓋をパカっと開けて。片側の箱には輪切りにしたバゲットの間に食材を挟んだバゲットサンド、もう片方の箱には限られた材料でも極力彩りなんかも考えられたおかずが詰まっており、説明通りおかずの方からは作り立てであることを示すかのような湯気が立ち上り)
(色々な思いを巡らせているようなアスティの雰囲気は、なんだか今まで気が付かなかった一面を見たよう。近過ぎて気が付かなかったのかもしれない彼女に対する何らかの感情を自身が抱いていることを意識させられたことを認めながらも、それを深追いすることはせず。相方の明るい声に促されれば、砂漠の国で熱心に吟味していた魔道具とお手製の料理が披露され)
おおー、こんなに準備してきてくれたのか。怪我してるのにすまんな。さっそく冷めないうちにいただくとするよ。冷やすだけじゃなくてこういう使い方もできるんだな。
(いただきますと呟き、二人でのんびり食事を始めて。菜食主体の食事に慣れ始めた身体が目覚めるような美味さに自然と顔が綻び。これは俗に言う胃袋を掴まれるというヤツなのだろうかとふと考えて)
気にしないで。ロゼここでの食事楽しめてないみたいだし少しでも美味しいもの食べてしっかり栄養つけておかないとね?旅は身体が資本なんだから……って、怪我してる私が言うことじゃないけど
(ベンチの真ん中に広げた弁当を挟んで隣り合って座る相方と一緒に食事を楽しむ。相方とは日頃から寝食を共にしている間柄だが今日は普段のお腹を満たす為のものとは異なり心までも満たされていくようで、こちらの怪我に対するささやかな気遣いすらも嬉しく感じて顔を綻ばせると、相方の為に手作りの美味しい料理をなんて軽く自画自賛。身体が資本なんてもっともらしい事を言ってる張本人が怪我人では締まらないなとおどけてみせて)
ここ、ソースついてたよ。……なんだか穏やかだね、旅を始める前はこんな風に誰かとこんな優しい時間を過ごせるなんて思ってもみなかったなぁ
(相方の口元にバゲットサンドのソースが付着しているのを見つければ、荷物の中からハンカチを取り出して口元をサッと拭ってやったりしながらもゆっくり食事を進めて。やがてどちらの弁当箱も中身が綺麗に空になればご馳走様と口にして片付けを済ませて、小さく一つ息を吐いて伸びをしてから瞳を細めると自分の旅立ちの経緯を考えれば今こうして心穏やかに幸せと思える時間を享受出来ているのは奇跡に近いと、柔らかな口調で幸せ噛み締めるようしみじみ呟いて)
(なんだかどっちが年上かわからないようなやりとりをしながらのんびり食事を終え、ごちそうさまと呟き改めて食事のお礼をして)
そうだなぁ。こうやってたまにはのんびりぐーたらしながら、旅をするのが気楽でいいわな。
(フレデリク達の一件で思わぬいざこざに巻き込まれてしまったが、この常闇にゆらゆらと浮かぶ幻想的な光と穏やかな街並み、それらが相まってとてもリラックスできるところだと今更ながら感じて。宿を取ると比較的のんびりぐーたらしていることも多いのだが、そこにはあえて触れず)
さぁて、満腹になったことだし、どうする?買い物でもするかい?
いいね、そうしよう。特に欲しいものが無くても一緒にお店を見て歩くだけでも楽しいよね
(昨日の自由時間でめぼしい場所はある程度回ってはいるが、それでも全てを網羅した訳ではなく、何より相方と一緒なら見え方も感じ方もまた違ってくるはず。特に入り用なものも現状では思いつかなくても実際に店を見て回れば物欲が湧いてくるということもあるかもしれないし、そうでなくても目的もなくブラブラするのも二人でならきっと楽しいだろうと笑顔でその提案を受け入れ、ベンチから勢いをつけて軽く跳ねるように立ち上がりお尻を軽く手で払って)
それにしても、ここに住んでたらハシゴの上り下りだけで足腰結構鍛えられそうだよね。……あ、見て、ガラス細工の食器だって!綺麗だね、何か買っちゃおうか?
(相変わらず移動はハシゴがメインで、これだけ日頃からハシゴを利用していればさぞ足腰が強くなるだろうなと、率直に思った事をそのまま口にしてとりとめもない話題を振ったりしつつ、通路脇の店なんかを時に足を止めたりしながら眺めてウィンドウショッピングを楽しんでいれば、見るからに穏やかな感じの風貌の老ドワーフが営む店に目が止まって。そこには色とりどりのガラス製の食器類や、置き物なんかが陳列されており、それら全てが店主の手作りであるようで。どれもが精巧な出来の品々に目を奪われ、色違いのペアのグラスなんかもあるのを見ては相方を振り返って反応を窺って)
ん、食器ねぇ。どれどれ。
(寡黙で職人気質なイメージのドワーフが営む食器屋に興味を惹かれたアスティに促され、それらを眺めて。確かに彼女が言うようにどれもしっかりした精密さを感じ、なおかつ繊細な雰囲気も相まって目を引く。それらと同じくらい、自身では気にも止めなかったであろうこういった類の店に興味を示した彼女の女性らしさのようなものを改めて感じて)
ペアのグラス、良いんじゃねぇか?俺はショットグラスみたいなものが欲しいなぁ。
(アスティの視線を肯定するように穏やかに頷きつつ、自身は精密である程度丈夫そうな、小さなショットグラスを手に取って眺めて。旅のお供の酒をちょいと飲むには良さそうだ)
可愛いグラスだね、こういうのって強めのお酒を中に注いで二人で飲み比べとかするんでしょ?
(いくつか並んだ中から相方がピックアップしたそれは一般的なグラスと比べて小さめなそれで、自分ではそういった飲み方を試したことはなく、使途も当然それだけではないだろうが酒場なんかで主に荒くれ者や、見栄っ張りな若者なんかが意地の張り合いからアルコールの度数が明らかに高い酒を飲み比べたりしているのを見た事があるためそういった記憶と印象が強く結びついていて)
……そうでなくても旅先で静かに二人で乾杯するにも丁度よさそうな感じで、そこまで嵩張らなさそうだし……うん、私もこれが気に入ったよ、これに決めちゃおう
(イメージはどうあれ、実際に二人で使用する場面を想像してみることにする。二人で焚き火なんかを囲んで揺れる炎を眺めつつ嗜む事を目的として注がれた少量の酒を静かに酌み交わす……そんな風景が脳裏をよぎり、相方となら特に素敵な時間を過ごせそうだと心の底から感じれば、ほぼ即決で相方の選んだそれの購入を決めて満面の笑みを浮かべて)
飲み比べはどうかわからないが、少し強めのヤツを少量飲むモノだな。ま、お前さんも知っての通り俺はそんなに酒強くないから、こういうのが合ってるかなってさ。
(早々に酔い潰れ引き摺られて帰った記憶…正確には残念ながら記憶はないのだが、後から補完したそれらの出来事を思い出して苦笑し)
それにこういう物って用途もそうだが、それに纏わる思い出みたいな物が宿るというか。手に取って感じたことや、その当時の出来事や考えたことなんかを後から思い出すことがあったりして、面白いなって思うんだよ。へへ、それじゃコイツを貰うしようかね。
(常闇の国で小さなグラスを二人で眺めた出来事、その日触れた相方の手の暖かさをいつか懐かしむ時が来るのだろうかと、ぼんやりと考えながら思ったことを口走って。どうやらアスティも気に入った様子、それなら決まりだとドワーフの店主にそのグラス二つの購入を告げて)
ふふ、そうだよねわかるよ。思い出の品ってそういうものだから……でも、暫くは後になって振り返るだけの思い出にはしたくないかな、これにまつわる楽しい思い出もいっぱい増やしていこうね
(購入したそれをしげしげ眺め、相方の言わんとすることに理解を示して頷くと荷物の中に丁寧にしまい込んで。思い出を振り返るなんて言うと少しばかり感傷に浸ってしまいそうにもなるが、思い出は紡いでいくことも出来る、永遠に続くものなどこの世にはなく、いつかは必ず終わりが来る旅だがそれまでにどれだけ彼と心通わせかけがえのない時間を過ごせるか、それは今後の自分たち次第で、願わくばこの先も末永く二人で旅先で笑い合ってこのグラスを手にして酒を酌み交わせる、そんな日々を積み重ねていきたいと微笑んで)
ロゼ、今日は本当にありがとう。デートなんて、私はこういうの初めてだったからどうなる事かと思ったけど、すごく楽しかったよ。……明日からも、変わらず旅の相方としてよろしくね
(デートの正解というものがどうなのか、自分ではあまりよくわからないが、一緒に綺麗な景色を眺め食事をして、お揃いのグラスまで購入した。それは実に充実した時間で、誰がなんと言おうと自分の中では最高のデートだったと断言することが出来て。突拍子もない自身の申し出に付き合ってくれた相方への感謝の気持ちと、ほのかな恋心……デートの締めくくりとしては些かささやかではあるがそれでも今の自分たちの関係的にはこれぐらいが丁度いいと、目の前に歩み寄って軽く伸び上がって頬に軽く触れるだけの口付けをして、明日からも大事な旅の相方として一緒に歩んでいこうと、頬を僅かに上気させてはにかみ笑いを浮かべ願いを口にして)
こっちこそありが……ああ、そうだなっ。明日もきっと色んなことがあるんだろうぜ。こちらこそよろしく頼むよ。
(思いがけないアスティの行動に驚き一瞬言葉を失うも、その後向けられた彼女の優しい笑みに自然と穏やかな気持ちになり、明日からの冒険に思いを馳せて。のんびりと宿へと歩きながら、なんとなく彼女の唇が触れた自身の頬に指先で触れると、滞在期間はさほど長くは無かったが色々なことがあった常闇の国、この幻想的な柔らかい光とそこでの出来事は、生涯忘れることはないだろうとぼんやり考え)
さぁて、次の目的地を決めようかね。そろそろ体に日の光を思い出させてやらねぇと、ほんとに俺たち夜行性の生き物になっちまうぜ。
(体内時計が随分と狂っているのではないかと、だらしなく欠伸をしながらアスティを眺め明日からの行く先を相談し始めて)
そうだね、ここの景色は素敵だったけどそろそろ日の光が恋しいよ。次の行き先は宿に戻ってからゆっくり地図でも眺めながら……!あなたはっ……
(久しく日の光を浴びずにいたことで、改めて普段頭上に燦然と輝いていた、あって当たり前の温かな光のその有り難みを実感させられるのと同時に、ここでの生活に完全に順応するのは自分には難しそうだと苦笑いを浮かべ。次の目的地についてはこれまでとは違い漠然とした案すらもないが、それならそれで地図を眺めながら二人で行き先について話し合って決めるのも一興、宿に帰ってからの新しい楽しみが出来たと胸を躍らせていると眼前には銀色の髪をした一見すれば人間と見紛うほどの精巧な少女の人形、ソリスが立っていて)
『ご機嫌麗しゅうございます、アスティ様ロズウェル様。先日のガイアシザー討伐の折は大変お世話になりました!』
(普段一緒に行動していると思われるアルバスの姿は目の届く範囲には見当たらず、彼女一人のようで。こちらへ向けて恭しくお辞儀をすると礼儀正しく挨拶をしてきて)
私達に何か用……?
(何故彼女がここにいるのか、偶然の可能性も勿論あるが後をつけられていたと考える方が自然だろう、目的は現状ではわからないが得体の知れない正体不明の気味悪さを感じる二人組のその片割れが突然目の前に現れたことに、先程までの浮ついた気持ちは完全になりをひそめ、警戒心をあらわにして見据えて)
『……マスターのご命令です、アスティ様……ご容赦くださいませ。……ロズウェル様、マスターが貴方様と個人的にお話しがしたいそうです、要求を聞き入れてくださればアスティ様は解放するとお約束します、勿論聞き入れて頂けますね?』
(アスティと対峙したソリスは素早く手を前に突き出せば袖口に仕込まれていた小さなボウガンを放ち、そこから放たれた矢が肩にヒットした瞬間脱力し倒れ込みそうになったアスティを抱き止めると、その首元にボウガンの鏃の先端を向けながら目の前の彼へと抵抗をしないよう牽制しつつ自らの要求を伝えて)
…よう、珍しく一人でお散歩かい。どっちかってーと、ご主人様は明るいお天道様の下よりこういう仄暗い場所の方が似合う気がするけどなぁ。
(ソリスの姿を確認すると、やや強張ったアスティの様子に気付きわざとらしく軽口を叩き。そのままアスティとソリスのやりとりを眺めるも、不意をつくような一撃を肩口にもらい崩れ落ちたアスティ、ただの矢ではないことは明白)
ッ!!…てめぇら、何企んでやがる…?
(穿ち焔の柄に手をやるも、アスティを人質に取られたこの状況で強硬手段に出ることはできず、その機械仕掛けの瞳を睨みながら問うて。睨み合いを続けながら、攻撃をするでもなく逃げるでもなく、その様子はソリスが投げた要求を不本意ながらも聞き入れようとしていることを暗に告げて)
ロ……ゼ……ごめ……
(襲いくる強烈な眠気、力が入らず全く言うことを聞かない身体に微かに残る意識で、まんまと人質として取られてしまうという失態を演じたことを相方に向けて言葉を振り絞って謝罪しようとするが、途中で力尽きて完全に昏倒してしまい)
『その質問への答えはマスターがお持ちです。……出立の準備が済み次第、西側の出口までお越しください』
(最初に出会った時の口数の多さからすれば嘘のように表に出す感情は薄く、一切余分な事を話さずにまるで機械的に主命だけを果たさんとしている様子が見て取れて。その一方で宿屋に置いたままの荷物などがあるだろうと、その辺の配慮は欠かさなかったりと人質をとって行動を強制する悪辣さとはアンバランスなようでもあって)
(人質としての利用価値を鑑みると一次的な昏倒だとわかっていながらも、意識を失う相方を見遣り腸が煮え返り)
…アスティに少しでも妙なことしてみろ、稼動させたままバラバラに分解してやる。
(悪態を付きながらソリスに背を向けて宿へと向かい。魔力を原動力として動く人形に対し脅しなどまったく意味はないだろうが、言わずにはいられずに吐き捨てた自身の行動にも苛立ち。乱暴に荷物をまとめながら、つい先ほど購入したグラスをちらりと眺めれば怒りと不安が入り混じり苦々しい表情を浮かべて。それでも…ここで逆上しては向こうの思う壺、意識を落ち着かせて宿を後にして)
…よう、待たせたな。
(西側の出口へと二人分の荷物を背負い現れ。念のため、闇に包まれた周囲にアルバスが潜んでいないかをちらりと探りながら、ソリスに声を掛けて)
お待ちしておりました。……ご安心ください私のマスターは闇討ちなどは致しませんので、さあどうぞこちらへ
(待ち合わせ場所へと逃げることなく現れた相手、人質をとっているのだから当然だが、本当に彼は打算も何もなくこの堕天使のこと大事に想っているのだなと、疑っていたわけではないが主人から聞いていた堕天使という存在の悍ましさを考えれば驚くべきことだが、態度には出さず。周辺を気にする様子を見せる相手の振る舞いに意図を理解し、不意打ちで人質をとったりと十分に卑劣な手段を講じた後では信用はないだろうが、とにかくこの場にアルバスは居ない事を重ねて伝えるとアスティを軽々肩に乗せ担いだまま踵を返し森の奥へ歩き出し)
これから向かうのはマスターの生まれ故郷のその跡地……そこでマスターはお待ちです……堕天使によって刻み付けられた同じ痛みと苦しみを知るロズウェル様を……
(少しずつ周辺に深く茂っていた木々が次第に減っていき、久方振りに夕刻時を告げるオレンジの陽の光が彼女たちの身を照らす。堕天使と関係があるとされる災禍の楔と呼ばれる大いなる暴の力、それによる惨劇の地が目的地であることを伝えると改めて彼の過去については粗方調べがついていることを示すように話し、歩みを更に進めていくと元はアルバスの故郷へと繋がる街道があったのだろう、剥き出しの土の上に無造作に伸びた雑草という荒れ果て、荒廃した景色が広がっていて)
…そのようだな。
(砂漠の国で見た彼女の飾らない性格、魔力で動く人形とわかっていてもその印象は悪くはなかったが、相方を人質に取り選択肢を与えない交渉の進め方に自身の単純な認識を忌々しく重い。それでも、主人が傍に居ないというのは本当なのだろうと、周囲への警戒を緩め)
……お前…クソっ
(ソリスが呟いた言葉から、自身の忌まわしい記憶を擽るようなアルバスの物言いを思い出して。大方自身の過去は主人からインプットされているのだろう、小さく悪態をつくと、脳が忘れていた陽光の明るさに眩しさを感じ、手の平でその沈み行く太陽の光を遮りながら苦々しい表情を浮かべ荒れ果てた地をゆっくりと歩いていき)
(互いに無言のまま荒廃した土地を進んでゆくと、やがて砂漠でも見たような、楔が打ち込まれたことを示す深く抉れた大地が見えてくる。深穴の周辺には倒壊した木造の建物の残骸などが散乱しており、そこそこ栄えた街であったことを示すように大きな建物の痕跡も点在しているが、今では見る影もなく)
マスター、ロズウェル様をお連れしました
(深穴から僅かに離れた街外れ、そこには屋根や壁がボロボロにはなっているものの、爆心地から外れていたおかげか他の建物よりは比較的しっかり形の残った教会だったであろう建物が佇んでいて。ソリスはその建物の裏側へと周りこめば、そこに存在する背が高く朽ちて葉が落ちた木の下に佇む真紅のロングコートの背中へと、自身に課せられた責を全うしたことを伝えて)
『ご苦労……。よく来たなロズウェル。歓迎するぞ、息災であったようで何よりだ』
(アルバスはゆっくりこちらを振り返ると短く自身の魔導人形を労い、相手の方を見やれば、あまり感情の込もらない抑揚のない口調でそう語りかける。彼の足元の木の根元には表面に何か文字らしきものが刻まれた丸い石、その側には真新しい白い花束が添えられており、それが何者かの墓標であることを示していて)
(ソリスに連れられ辿り着いたのは朽ちた教会を思わせる寂れた建物。彼女が声を掛けた男の後姿に目をやりながらも、ちらりと男の足元の墓石を見遣り)
何が歓迎だ。さっさと要件を言えよ。…返答次第で叩っ切るぜ。
(刀の柄に手をやりながら低く落ち着いた声で言葉を投げ。2対1、かつ先日のガイアシザー戦で見せたアルバスの戦闘スタイルとその身のこなし、仮にサシでやったとしてもその結果はわからない。研ぎ澄まされた神経がささくれ立つような感覚を得ながらも、アルバスからは殺気、いや、一戦を交える気すら感じられないようでやや混乱すると、それは次第に苛立ちに変わり)
てめぇ、みっともなく人質まで取って何しでかそうとしてんだ。答えやがれ!
(やや語気を荒げ吐き捨てて)
何故お前はよりにもよってこの娘と行動を共にする、お前にとって堕天使は忌むべき仇ではないのか?後悔、憎しみ、怒り……お前を苛み続ける深い傷は、この呪われた血を持つ存在によって刻み付けられたものだろう
(腹立たしげに声を荒げる相手とは対照的に、落ち着き払った態度でソリスが抱える堕天使の少女一瞥してから、相手からの質問には答えようとはせず、堕天使は相手にとっても大切なものを奪い去った許し難い憎むべき存在ではないのかと逆に一方的に質問を投げ返し)
ロズウェル、俺はお前と戦うつもりはない。……むしろ良い同志になれると思っているのだ、俺とお前が手を組み、そしてソリスの力があれば必ずや天界の驕り高ぶった聖者の皮を被った獣どもを一掃できる……今度は奴らに教え込んでやろうではないか、奪われる者の痛みを…!苦しみを…!
(静かに、しかし次第に膨らんでいくのは負の感情。絶大な権力と発言権を持つセレスティアル家の統べる天界を堕とす……そんな驚くべき計画を目論み、そしてその計画の一端を彼にも担わせようと言う。これまでの落ち着き払っていた態度が嘘のように目を見開いてギラつかせ狂気に満ちた表情浮かべて両手を広げて声をあげる様子は、妄執に取り憑かれた狂気の復讐者そのもので。そんなアルバスの様子を横目で見るソリスはただ黙って静かに瞳を伏せて)
…天界を…だと?
(堕天使に対して何かしらの思惑があるのだろうと踏んでいたが、その野望の大きさに思わず声を出して。自身のトラウマを刺激するような言葉が呼び覚ますのは、あの惨劇と妹の亡骸。しかしながらそれらと同時に浮かぶのは短くも充実した旅を共にした相方の優しげな面影)
確かにお前の言うとおり、奪われた痛みも苦しみも忘れることはないだろう。あれを引き起こした元凶の息の根を止めない限りはあの世に行けねぇと思ってる。…だがな、それと天界をどうこうしようってのは、また別の話だろうに。
(かつてアスティが話した彼女とセレスティアル家に纏わる過去。モルドールと滅びの山での様々な出来事が、昨日のように脳裏をよぎり。ふとソリスの憂いを帯びた機械仕掛けの瞳に気付くも、その意図は読み取れず)
天使など皆、二面性を持つ獣だ……。この地『エルマナ』はな、かつて天使を崇拝していた土地だ。俺たちは物心がつく頃からずっと来る日も来る日も奴らに感謝の祈りを捧げ、生きてきたのだ……天使こそが世に調和と安寧を齎す聖なる存在であると、そう信じて疑わなかった……!だが、その結果がこのザマだ……!堕ちた同胞が地上で何をしようが奴らは素知らぬふり、それが邪悪以外のなんだというのだ!?……故に奴らは等しく罰を受けるべきなのだ
(天使全てが悪ではない、憎むべき仇は別にいるのだから天界そのものを堕とすのは筋違いである……相手の言い分を最後まで聞いた上で、改めてこの土地がどういった場所であったのかを語るアルバスの投げかけた視線の先の古びた教会、割れたステンドグラスに描かれるのは辛うじて天使モチーフのものであるのがわかり、かつての信仰こそが天使そのものへの憎悪に繋がっている事を示していて)
憎むことでしか救われない思いはある。ならば憎めばいい、誰かに遠慮することはない。お前にはその資格がある……だが、憎むばかりでは自分を毒するだけだ。それを然るべき相手に受け止めて貰わねばならない。そうして世の中の痛みは正しく循環していくべきなのだ。さもなくば……報われない魂が生まれ……それはやがて、亡霊となり己を苛み続けるだろう……お前にも身に覚えがあるのではないのか?
(先程までの狂気的な振る舞いから一転、まるで聖職者が信者へと教えを説き、導くように口にする。相手が砂漠で見た過去の呪いにも似た記憶を体現した何か、あの夜のことまでは流石にアルバスも知り得ないようだがそれでもそれに近しい経験をしたことがある、そんなことを匂わせるようにそう語りかけては、ソリスの元へと歩み寄る)
ソリス、そいつをこっちに寄越せ……なんだ、その目は……道具のくせに言うことを聞けないのか?
『……承知いたしましたマスター……』
(アルバスはソリスの前に立つと、彼女の抱えているアスティをこちらへ受け渡すよう命令する。伏せていた顔を上げアルバスを見やるソリスは悲しみか罪悪感か、はたまたその両方の感情が綯交ぜになったような瞳を一瞬揺らがせ、僅かばかりの沈黙……しかし、最後にはその命令を聞き入れたソリスはアルバスの両腕にアスティを委ねて)
自分を毒するだけ、かい。あぁ、それは理解しているよ。ただ、そいつとどうやって付き合っていくか、俺はまだ答えを出せていないんだよ。
(荒廃したこの地とその顛末が導く成れの果てを語り、心の内側に入り込んでくるかのようなアルバスの声を聴き入りながらも、アルバスの動作にはっとして)
…ソリス、お前にだって考えがあるんだろう!言ったらいいじゃねぇか、機械だろうが人形だろうが関係ねぇだろ!
(ソリスの瞳の動きを見遣り少し声を荒げるがその言葉はソリスには届かなかったのだろう。アルバスに支えられダラリと腕を投げ出したアスティの姿に腸が煮え)
…アルバス、そいつをこの場でどうしようって魂胆かは知らんがな。これ以上アスティに何かしてみろ、刺し違えてでもこの場でお前の首を刎ねるぜ。
(声のトーンを下げながらも、毅然たる態度で言い放ち)
……交渉は決裂のようだな、残念だ
『マスター……!ここで血を流すべきではありません……、ここは……あの方の墓前です……!』
(何故こうもこの堕天使の娘の肩を持つのか、理解に苦しむといった様子で、これ以上の交渉は無意味であると悟ればアスティのこめかみに銃口を押し当て、差し違えてでもと言い放つ相手のことなど歯牙にもかけていない様子で引き金に手をやる。しかし、そんなアルバスの凶行を止めるべくソリスが脇から走り込んできたかと思うとその手を掴んで銃口をアスティの頭から引き離し、アルバスの背後にある墓標へと目線を投げかけてから、哀願するようにその冷酷な表情浮かべた顔を見上げ)
……!また、その目か……!紛い物のその目を俺に向けるな……!お前のような人形に彼女の何がわかる……!
『マスター……うぅ……』
(ソリスから先程と同じように作り物とは思えない感情のこもった目を向けられた瞬間、アルバスはまるで我を忘れたように彼を前に人質をとっていることで一時的に優位に立っている立場であるということすら忘れたように激昂しソリスを思いっきり殴りつけて大きな隙を晒して)
止めろっ!!
(アスティに突きつけられた銃口、引き金を引こうとする指先、全てがゆっくり見えて。こんなところで終わっちまうのか、そんなわけないだろう、ゆっくり見える光景と真逆に数多の感情が溢れて。それを打ち破ったのはソリスの悲痛な声。この場で最も情緒的な色を含んだ声は、皮肉にも魔導人形である彼女の口から発せられ)
…アルバス、てめぇ…!
(投げかけられた言葉に感情を昂らせソリスを殴りつけたアルバス、その光景が再び怒りに火をつければ、穿ち焔を抜き払った身体は飛ぶようにアルバスへと距離を詰め刃を払い。それでも、脳裏に浮かんだソリスの悲しげな瞳がそうさせるのか、彼の首筋に叩き込まれようとするのは、逆さにした刀の峰)
ぐっ……貴様……!
(彼のような手練れを前にしては一瞬の隙が命取り、怒りに身を任せた行動で失態を演じたアルバスはその一撃をなんとか回避しようと試みるが刀の峰による打撃は避けきれずに肩口に吸い込まれ、骨を砕き。ダラリと腕が垂れ下がり両手で支えていたアスティの身体が地面にドサっと落下し、思惑をめちゃくちゃにしてくれた相手に向けて憎々しげな目を向けて)
罪の所在を知りながら死者の無念を晴らそうともしない……あまりに怠惰!貴様のような者こそが最も唾棄すべき人間だ。貴様だけはこの場で……!
『マスター……!無茶です、そのような傷で……!どうしても……ロズウェル様と相いれぬとおっしゃるのでしたら、私が戦います……ご命令を!』
(もはや、理屈ではなく本能で彼を相いれぬ存在と認識したアルバスは勝算も何もかもかなぐり捨ててただ、感情任せに拳銃を彼へと向けるが、片腕の自由を奪われた状態で勝てるような相手ではない、そんな狂気とも取れる主人の行いを咎めるのはソリスであり、あんな酷い仕打ちを受けた後だというのに二人の間に立ちはだかると何よりまず主人の身を案じ、眼前の敵の始末を命じるように毅然と言い放ち)
……っ……もう良い……この場はこれまでだ、退くぞ
(強い覚悟に満ちたソリスの口調と眼差し、それを見たアルバスはハッと目を見開いたかと思えばビックリするぐらい一気に気持ちを落ち着けて沈静化し、自分たちの戦略的敗北を素直に受け入れると地面に倒れたアスティへ拳銃向けて牽制しつつそのままその場を去って行って)
(屹然としたソリスの振る舞いと、機械仕掛けの人形とは到底思えない瞳の色を見遣り、無言でそのやりとりを眺めて。自身が彼等へ刃を向けるのと、おそらく本質はきっと似たもの。それであれば、覚悟を決めたソリスを言葉で止めるのは不可能だろう)
―
…アスティ、おい、しっかりしろ!
くそっ、なんだってこんなことに・・。
(その後彼等の姿が見えなくなると、アスティの元へ駆け寄りその身体を抱き起こし揺らして。医術は愚か、応急処置の知見すらない自身の体たらくを悔やみ。物理的な損傷ならともかく、意識を失った状態のアスティには穿ち焔の治癒の力を当てにするわけにもいかず)
……っ……う、ん……ロゼ……?私、どうなって……
(受けた矢に使われていた毒は単純に強烈な眠気を誘う類の物であったようでしばらく経って、昏睡状態から目を覚ませば記憶の混濁や肉体的なダメージ等はなく、気を失う直前の状況も明瞭に覚えていたため眼前にある見慣れた相方の顔を見て一度瞬き、それか周囲に目をやれば見知らぬ周辺の景色、そして自分が意識を失う根本的な原因となった元凶の姿もない事など様々な疑問が押し寄せ、少し混乱している様子を見せながらもゆっくりと起き上がり)
……?ロゼ、見て……!これって……
(相方の腕の中で目を覚まして起き上がったすぐそば、そこに置かれた丸い石と花束に目線がいき、何気なくその墓標らしき石に刻まれた文字に目を向けると驚愕したように目を見開き、相方の袖を慌てて引き、そこに刻まれた文字へと注意を向けさせる。そこに書かれた死者を弔う言葉自体は何もおかしな事はなかったのだが問題はそこに眠る人物を示す名前で『愛する想い出と共に安らかに"ソリス・ミルフィオール"』あの魔導人形と同じ名前、それが単なる偶然かそれとも……考えるまでもないだろう、まだ状況は理解出来ていないが、自身が気を失う直前までの状況を考えれば恐らくこの地は彼らにとっての何らかの因縁の地、そこに同名の人物の墓標がある事は間違いなく意味があるのだろうと神妙な表情を浮かべ)
アスティっ!…大丈夫そうみてぇだな、よかった。何、ちょこっと昼寝してただけさ。気にすんなって。
(意識を取り戻した相方の様子に気付き、はっとしてその瞳を覗き込んで。少し状況が飲み込めないといった様子だが、次第に持ち前の頭の回転の速さで頭の中を整理しているよう。彼女が見つけた墓標の文言にチラリと目をやると、立ち去った彼らのことを考え)
…どうやらあいつらにはあいつらなりの事情ってもんがあるようだぜ。
(荒れ果てた周囲の様子をぐるりと眺めると、アスティが気を失っていた間にアルバスが吐き捨てるように語った『エルマナ』に関する話の要点を伝えて)
そうだったんだ……それで堕天使の私にあそこまで執着を……
(相方からの話を聞けばそこでようやくアルバスからのただならぬ執着、その根源にあるものを理解して。大きすぎる憎悪はやがて大きな野心に、共通の敵を追うもの同士手を取り合うことも出来たかもしれないが、その復讐心の強さ故にそれは叶わぬものになってしまったようだ。完全な決裂した今次にこの道が交わる時、こちらも覚悟を決めなければならないだろう、いつか来るあの二人と雌雄を決する日へ思いを馳せ暗澹たる思い抱いて)
……ロゼ、ありがとね。そんな事情を聞かされて……ロゼだって本当は心穏やかじゃなかったよね、復讐の道を選んだとしても仕方のないことだったと思う、それでも今も私と一緒に居てくれて……本当にありがとう
(詳細なやり取りの内容まではわからない、しかし二人の間には確かに交渉があったのだ。相方の抱える事情を考えればその秤はどちらに傾いたとしてもおかしくはなかっただろう、しかしその上で自分との旅を選んでくれた相方には感謝の気持ちが何より一番にやってきて沈んでしまいそうになった気持ちを振り払うように笑顔で感謝の想いを口にして)
さてと……いつまでもこうしていても仕方ないよね、もう少しこの近辺を調べてみよう、何かあの兵器のこととか"あの人"に関する何かがわかるかもしれない
(一目で凄惨な出来事があったとわかるこの土地、しかしここがとある堕天使による攻撃を受けたということは、もしかしたら何か痕跡などが残っているかもしれないと考え周辺の調査を提案して)
どことは言わないけど某所のルーシエンと一文字違いのエルフの子あなただよね
掛け持ちを咎めたい訳じゃないし、多少はこっちを優先してくれていたのはわかるけど、それでも忙しいなんて言いながらそっちには返事出来るんだって少しガッカリしちゃった
楽しくなかった?相性が合わなかった?それならしょうがないと思うよ。私も独りよがりな展開を沢山しちゃってた自覚はあるしね……でも、それならそうと素直に言ってお別れしてくれた方がずっと良かった、待ちに待たされて挙句こんな想いはしたくなかったなぁ……
楽しくてハイペースでお返事しちゃって……なんて話してた頃が懐かしく思えるね、でももうあの頃の気持ちは残ってないんだ……こういうことがあると信じたくても信じられなくなっちゃうよ……もうこんな想いはしたくないから、だから本当はまだまだ二人で冒険を続けたかったけど……さようなら……今までありがとう、大好きだったよ……
まず不快な思いをさせてしまってごめんね。
掛け持ちに対しては指摘の通り、ただ私生活が忙しくなったのも事実でこの趣味にかける物理的な時間が減ったり、疲労からか文章や展開が思いつかないなってことでレスペが減ったけど、それはどちらも同じで、あからさまな優先度を付けたつもりはなかったよ。
とはいえ、一本に絞っていればもう少し見え方も違ったかもしれないし、そもそも一対一というカテゴリはそういった要素もあるのかもしれないから、そこは素直にこちらの配慮不足だったなと感じるので謝るよ。
こちらこそ、長いことやりとりをしてくれてありがとう。
あなたの今後が素晴らしいものであることを願っているよ。
悲しいけど受け入れなくちゃね…
旅はまだまだ続けたいからまた改めて一緒に旅をしてくれる人を募集するね
ここまでの設定は全てリセットで初めから物語を紡げる人を募集するよ
私……また一人になっちゃった……二人で冒険していた頃に戻りたい……私からお別れしておいて勝手な事言ってるのもわかっているし、もう戻れないのはわかってるけど……でも、やっぱり二人での旅はとても楽しくて特別な時間だったんだって、今になって改めて思うんだ……勝手な事ばかり言ってごめんね
いつまでもここでの事を引きずっていても迷惑なだけだよね……もうきっと私への気持ちは冷めてしまってここには無いはずなのにね……だからここで弱音を吐き出すのはこれが最後、またどこかで会えたらなんて、言わないけど……ありがとう、そして今度こそ本当にさよなら
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