アスティ 2024-06-05 12:58:40 |
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…お、すまんな、間一髪避けられたんでボーっとしてたぜ。
(なんとか危険を回避して一息ついていると、自身の胸の中から抜け出したそうなアスティとなんだか微妙な空気感に気付き、回した腕を離して。依然として油断はできない状況に、寝起きの身体のコンディションを整えるように首を左右に傾けながら)
さてと、一旦あのトゲトゲはやり過ごしたし、奥に進んでみようぜ。…もう一発来たら、同じ要領でかわしゃいい。
(ほんの少しだけ顔を赤くしたアスティの様子にん?っと気を引かれるも、鉄球が転がり落ちてきた先の様子が気になり相方を促して)
ううん気にしないで、それじゃあ十分に用心して先に進もう
(自分を助けるため合理的な判断のもとの行動であったことを十分に理解していながら、むしろ変に意識してしまったのは自分の方であったため気にしないように相方に非がないことを伝え、平静を取り戻すと頬を両手で軽く叩いて気合い入れ直すと鉄球が転がってきた方向へ歩き始めて)
なんだか進む程に砂煙が濃くなってる気がする…あんまり吸い込むと不味いかも…
(先へ進めば進む程に辺りに立ち込めている砂煙はより濃くなっていき、視界が悪いのはもちろんだが何よりあまり吸い込み過ぎると呼吸器がやられてしまいそうだと腕で口元を覆い隠しながら進んでいき、やがて進行方向に地面から大量の砂が激しく巻き上がり壁のようになっている地点に突き当たり)
うっ……これじゃあ流石に奥に進めないよ……何か仕掛けか、他に進めそうな道はないかな?
(砂がまるで間欠泉のように巻き上がる地点、見るからに大量の砂が質量を伴っているのがわかるそこを生身で進むのは自殺行為で、煙る視界の中で目を瞬かせながら周囲の様子を探り)
(鉄球をやり過ごしたと思ったら今度は大量の砂によるトラップが行く手を阻む。いずれも物理的に攻略するのは現実的でないような出鱈目な質量を伴った罠)
アスティ、さっきのといいこれといい、真っ向勝負でどうにかなるような類じゃねえ…何かこう、魔力とか知恵みたいな、何かしらの取っ掛かりがあるんじゃねえか?
(我々が囚われているのは"パズル"であり、何か解法のパターンやロジカルなアルゴリズムのようなものがあるのではないか。…といっても、いきなり壁をぶち抜いた自分が行ってもあまり説得力がないのも事実であり)
うん、そうだよね。そっちの方面からのアプローチを試してみよう!
(力ではなく知恵が問われている、この場所の性質からして言われてみればそれもそうだと納得がいき。それは普段ならもう少し落ち着いて考えれば自力でも辿り着けそうな結論だったが、やはりあまりにも想定外の事態に巻き込まれたことによって少なからず動揺し、思考の柔軟さが失われていたことを痛感すると同時に、相方の一言に思考が一気にクリアになったのを感じ大きく一つ深呼吸。これまでは一人でなんでもどうにかしてきた自分、無意識下で相方の存在に甘えてしまっているのを自覚するが、それこそがきっと仲間というものであり、頼ってしまうことに負い目を感じるのでなく自分には自分の出来ること、得意分野で力になればいいと自らに言い聞かせ改めて冷静に周囲を見回して)
………やっぱり、私の記憶が確かならこの壁の模様は全部あのパズルが箱の状態の時のパーツの並びと同じ…だと思う。…つまり、なにかしらの手段で動かしてパズルを完成させる仕掛けがどこかにあるんじゃないかな?……あっ、ロゼ見て!ここの床だけ色が違うよ、動かせたりしないかな……っ、重い~……!
(構造をしっかり把握してから寝る前に集中して取り組んだパズルのパーツの構成を思い出す。その記憶と壁の模様とが少しずつ噛み合っていき、ここから抜け出す道筋は大きなパズルそのものであるこの空間を完成させることで見出せると大胆な仮説を立て、自分たちの立っている石畳の床、その中に一箇所だけ明らかに色味が違い若干浮き上がった場所を見つけ、そちらへ移動すれば手をかけ持ち上げようとするも思った以上に重く、手をプルプル震わせて)
へへ、さすがだぜ。
しかし俺たちが居るここ自体がパズルってことかよ。…一箇所切っちまったけど、まぁなんとかなるか。
ん、確かに色が…。よし、まかせろっ
(さっそく頭をフル回転させてこの迷宮を攻略する糸口らしきものを掴んだ相方を賞賛しながら、促された先の床を周りと見比べてみて。確かに不自然に色が周りと異なる部分を見つけて)
っん~!腰がグキってなったら後は頼んだぜっ~
(想像以上の重さに若干たじろぐも、二人で強力し何とかその石畳を動かし)
ふう~…なんとかどかせたね。…ふふ、やっぱり仕掛けがあった!この部分をこう動かすと…わっ、本当に動いた!?
(重たい石畳の床を端にどけると、息つく間もなくすぐにその下にあるものを確認すると、そこにはパズルのピースの並びの一部が描かれたパネルがあり、考えが正しければそれを動かせば連動してこの空間も動くのではないかと推測し、完成系をイメージして記憶を頼りにパネルを操作すると、ゴゴゴと音を立てて砂の巻き上がっていた床のある空間が縦に回転して地面の中に消えていき、かわりに奥へと続く道が現れて。まさかとは思ったが本当にパズルの要領で道が開けるとは…と驚き目を丸くして)
っ…!ロゼ、あれ…!…‥マズいっ……ロゼ、私の後ろへ…!『聖蝕・壁』!
(奥へと続く道は横に広がった空間になっており、その先、奥の方になにやら金色の輝きを放つ何者かが激しい羽音を立てて飛んでいるのが見えて。それはまるで巨大な甲虫のような見た目をしており『ピギィーッ』と甲高い声を発したかと思うとまるでそれを合図としたようにその金色の甲虫を守るように色以外は同じ見た目をした真っ黒に黒光りする巨大な甲虫が複数現れ、ズラッと横に隊列を組んで並び、一斉に地面から巨大な棘付き鉄球を掘り出したかと思うと後ろの脚で転がすように高速でこちらへ突進攻撃を仕掛けてきて。それを見てすぐに堕天使化し、触腕を前方に一極集中させ横に広がる壁のように展開すれば持ち前の柔軟さによって複数の鉄球攻撃は一旦触腕の壁に沈み込み、四方に弾き返され威力を殺すことに成功して)
(まるで思考を並列化されプログラムされたような一斉攻撃に目を見張り、一瞬行動が遅れるもアスティが放った防御壁がそれらを無力化して。出遅れたことをやや恥じながら、仕返しに前方へ躍り出ると黒光りする甲虫の群に斬撃を叩き込む)
アスティ、あの色が違う虫野郎、怪しいぜ!
くそっ、さすがに届かんっ
(手前の何匹かを瞬間的に切り捨てるも、やや奥に居る金色のソレには届かず。僅かにアスティに視線を投げ、追撃の意を無言で伝えて)
ナイスだよ、ロゼ。後は私に任せて…頭下げて!返すよ、これ…!はああぁ!
(敵側の攻撃の第一陣をやり過ごし、そのタイミングを見計らって前線に我先にと切り込み、鉄球を操る甲虫を素早く複数斬り捨てた相方の動きを称賛し。活路は開かれた、それならばそのチャンスを活かし、恐らくは甲虫の群れを指揮していると思われる敵の親玉を潰すのは自分の役目だと相方の意向を汲み取ると大鎌から発生させた触腕で持ち主のなくなった鉄球を複数纏めて絡め取り、縦一列に繋ぎ。相方へとそう注意を促してから先端部分に鉄球が数珠繋ぎになって取り付けられ、まるで長い金棒のようになった大鎌を手にする腕へと身体強化を集中させそのままそれをハンマー投げの要領で横に大回転して振り回すと、ピンボールのように壁で反射し、その勢いで再びこちらへ突っ込んでくる甲虫の残党ごとリーダー格の金色の甲虫を粉砕して)
おわっ、へへ、さっすが!
(相方の声と同時に身体を落とすようにしゃがみ込むと、ぶん回された大鎌の破壊力を唖然として見つめて。親玉を含む残党を木っ端微塵に吹き飛ばしたようで、ゆっくりと起き上がり周囲を見渡して)
全部片付けたみてーだな…。しかし、トラップや敵、この迷宮を作ったヤツはなかなかの曲者だなぁ。よし、気合入れていくぜ。
(立ちはだかる門番のような甲虫達を撃破し、奥へと続く道をゆっくりと進んでいき)
そうだね、絶対二人でここから生きて脱出しよう!
(過剰にも思える防衛線、明らかにこの場所の中枢に近づいていっている証だろうと確信を抱き、この先更なる危険が待っているであろうことが予測されるが二人で無事にここを脱出しようと改めて決意表明し、意気揚々と相方の横を歩き)
…!行き止まり…?…じゃない!ロゼ、これって…
(しばらく進むと通路が途切れ、そこは切り立った崖のようになっており。下は底が見えず落ちればまず助からないことは火を見るより明らかで、ここまで来て行き止まりだなんて他の道があったのを見落としただろうかと、考えながら視線巡らすと下に何もない空中にヒラヒラ揺れる布が浮遊しているのを見つけ、それはまさに相方が話していた空飛ぶ絨毯のようで。罠や仕掛けが大量に張り巡らされていたここまでの道中を考えると不安しかないが、これに乗るより他ないだろうかと相方に意思を確認するべく目配せして)
あったり前だぜっ、パズルの中から出られずお陀仏なんてたまるかよ!
(たどり着いた先は無情にもこれ以上進むことができないような絶壁の崖、しかし行く手を妨害する魔物の配置からしても、決して今来たルートが間違いだったとは思えず)
…とうとうこの目で拝むことができたって訳だな。空飛ぶ絨毯ってヤツだぜきっと!…そしてアスティ、どうやらもうコイツに賭けるしかなさそうよ。
(二人が歩いた通路の奥から小さく、しかし確実にその音を大きくして迫り来るなにか。その息遣いを感じるまでソレが近づけば、数多の大蛇の胴体を腰から下に生やし、憎悪と殺意が滲む表情を浮かべる鬼女のようなおぞましい姿の魔物が地を這いずりながら迫り。崖を背後に戦うのはあまりにも不利。一か八かの選択を、相方に告げて)
…オッケー、こうなれば一蓮托生…!3、2、1、行くよ…!
(果たして本当にこの布一枚に大人二人を運んで飛行するだけの力があるのかについては疑問を呈したいところだが、背後から迫る見るからに只者でないとわかる魔物を迎え打つのにこの場、条件はあまりにも不利と言わざるを得ず、先程の戦闘で若干無茶をしたことからまだ体力が戻っておらず万全の体制での迎撃とはいかないだろう。諸々の事情を込みで考えた末に相方の選択が最善であると判断し、こうなれば死ぬも生きるも共にとタイミングを計るようにカウントダウンし、魔物に追いつかれる寸前、合図を出すと同時に跳躍し空飛ぶ絨毯へと飛び乗り)
ほ、本当に飛んでる…!?凄い、どんどん上に上がってくよ!
(飛び乗った瞬間、足元の深く沈み込むような感覚に一瞬そのまま落ちるイメージが頭をよぎるがそれは現実のものとはならず、絨毯はヒラヒラした頼りない見た目とは裏腹に安定した挙動で、下から恨めしそうに見上げる蛇女置き去りにして、吹き抜けのように上に伸びる通路を一気に上昇していき、まるで夢のような光景と展開に声を弾ませて)
へへ、やったなっ
(同じタイミングで飛び乗った絨毯から、おぞましい魔物の姿がどんどん小さくなっていく様を眺めて。どちらかがバランスを崩しても良いように自然とアスティに手を握りれば、触れた掌から自然と相方の体温を感じて)
…やっぱり伝説級の魔法具は出来が違うねぇ。
しかし、いったいどんだけ広いんだろうな。
(どんどん高度を上げる絨毯の行く先、頭上を見上げて感想を零して。魔力で閉じ込められた迷宮、物理的な広さを持っているわけではないハズだが、五感で感じる空間の巨大さに驚き)
一流の魔法使いはごく普通の民家すらも思うがままに迷宮に変えてしまうって聞いたことがあるよ、条件さえ揃えれば空間を歪めて広げて見せる事も容易いって…古い魔道具みたいだったしそういう高度な魔法が使われてる可能性はあるんじゃないかな?
(かつて優秀な宮廷魔術師であった自らの師より聞いたことのある話の受け売りだが、高度な魔法を用いて条件さえ満たせれば実際よりも広く複雑に見える空間を閉じられた空間の内部に作り出すことは可能であり、この場所についてもそういった類の力を用いて作られていると考えれば十分にここの異常な広さに対する説明がつくと相方の疑問へと答えて)
…っそうだよね、このまま何もなく目的地に到着なんて美味しい話しがあるわけないよね…ロゼ、正念場だよ…!
(際限なく登っていく絨毯、しかし何事にも無限ということはありえないし必ず終着点があるもので、改めて上を見てギョッと目を見開き。高く上に見える天井、そこには何かの発射口のような穴が開いており、そこから大量の矢の先端が顔を出しているのがわかって。このまま上に登っていく自分たちの身体を絨毯ごと蜂の巣にせんとする仕掛け、逃げ道はないのかと探せば絨毯が登っていく先に一箇所横穴が開いているのを見つけあそこに飛び移ればあるいはと考えたが、一つの問題があって)
……あそこの穴に飛び込もう。でも…この絨毯があの横穴付近に到達する前に矢が発射されたらお終い、だから私が壁を作るから矢を防いでいるうちにロゼは先に飛び移って。…大丈夫、私だってむざむざこんな場所で死ぬつもりはないから、ロゼが飛び移ったのを確認したらすぐに追いかけるよ!
(光明は見えたが律儀に自分たちが横穴に飛び込む猶予を与えてくれるとは考えにくい、そうなれば一時的にでも矢の雨を防ぐ手立てを考える必要があり、それを実現するため自身の聖蝕を用いるのがこの場では最善という考えを示し。相方の手を握る手に力を込めると、この作戦は自分が相方の為に犠牲になるというものではないと自分を信じるよう強調して、考えている時間はないよと言わんばかりに微笑みを浮かべて)
(やはりと言うべきか、そう容易くゴールに辿りつかせてくれる気はなさそうで、鈍い光を放つ数多の鏃に貫かれればあっと言う間に全身の血を失うだろうことが容易に想像できて。もはや考える時間すら残されていない。繋いだ手を素早く握り返すと、それを離して)
あったり前だぜ。上手く遣って退けろよっ!
(彼女と歩んだ旅路は短いもの、それでもアスティが口にした言葉を信じ身体を動かすことに一片の迷いもなく、岸壁の暗い穴に身体を投げ出し、その勢いで転がり身体をあちこちぶつけながら叫んで)
アスティっ!急げっ!!
『聖蝕・壁』…!
(天より放たれる無数の矢、その全てを防ぐため得物を両手で真っ直ぐ上に掲げ、そこから発生させた触腕をより広範囲にと意識して、まるでドーム状の傘のような形状で展開。ぶつかる矢の勢いにバリバリ砕けるような物音を立てて。薄く広がった触腕の盾は広範囲を守るため薄く防御性能を犠牲にしているが、それがたった一枚でなく何層にも重なっており、例え一枚が砕けようと次、それが砕ければそのまた次と、多段の備えが施されており相方が飛び移る時間を稼いで)
っ……あ……!?
(どうやらあの仕掛けは矢を放ち切った後はしばらく次弾を装填するのに時間がかかるらしい、攻撃が完全に止んだのを確認した後防壁を解いて相方を追いかけようとしたその時、足の設置面の感覚がなくなったのを感じる。その時、先程まで足場として機能していた絨毯が突然浮力を完全に失ったのだと気づくが、既に身体は重力に従って落下をはじめていて。しかし、ここで冒険を終わらせる訳にはいかない、相方との約束もある…そんな想いが身体を突き動かし咄嗟の判断で手にした大鎌空中で振り回すと、壁面に突き刺して、かなり下の方まで落ちてしまったが落下をなんとか止めて。しかし、相方の目には下方の自分の姿を確認するまでは自分が完全に落下してしまったように見えたであろうことは想像に難くないだろう)
(岸壁から身を乗り出して重力の加速を伴い落下する相方の姿をなすすべなく眺めて。縋るように伸ばした腕が虚しく空を切り)
アスティっ!!
(彼女の姿が見えなくなり焦燥感が後悔の波に変わり。自分が残るべきじゃなかったのか、同じタイミングで飛び移るべきだったのだ、次々と沸き起こるああしていればという考え。自身の性格に似つかわしくない思考に支配されかけて、悪態をつき岸壁を強く叩いて)
アスティっ!、返事をしろったらっ!!
(震えそうになる情けない自身の声に鞭打つよう、大声を上げて)
ロゼっ…下、下!下を見て…!ごめん、少し手を貸してもらえないかな…?
(悲痛にも聞こえる叫び、これは相方にとんでもなく心配をかけてしまったなと罪悪感でいっぱいになり、ひとまず一刻も早く自身の無事を伝えようと壁に深く突き刺さった大鎌の持ち手の部分を両手で持ち、身体支えながら下方から声をあげて自身の所在を伝え。ここまでの大事になり心配をかけさせた後ろめたさを感じつつも、この状況下で自力で上に這い上がるのは困難であるため相方に助けを求めて)
…あんまり気乗りしないかもしれないけど、これを掴んで引っ張り上げてくれる?見た目はこんなだけど害はないから
(自身の持つ闇の性質を具現化させた赤黒くひんやりした触腕、ロープのように束ねたものを下から相方のいる崖の方へと伸ばし、それを掴んで引っ張り上げてくれるようにお願いをすると相方が了承して掴んでくれたタイミングでこちらも腕にしっかり絡める準備をして)
(虚無感に打ちひしがれた思考に響く相方の声。はっとして下を覗き込むと、確かにアスティの存在を感じて。湧き上がる嬉しさが通り過ぎると、取り乱した自身の行動を酷く恥ずかしく感じ)
バカっ、無事なら早く返事しろってんだっ。…大丈夫、今引っ張り上げるから。
…しかし、よくあのトラップを防いだな。…どこか怪我してないか?
(理不尽に怒りながらこの際その見てくれや手触りなどは全く気にせずに、急いで相方を引っ張り上げると、同じ空間に座り込んで。なぜか気恥ずかしさからアスティの顔を直視できず、そっぽを向きながら話しかけて)
あ、うん、平気!身体はなんともないよ。…ごめんね、沢山心配かけたよね、ロゼ…怒ってる?
(ひとまず身体の方は壁に鎌を突き刺した勢いで壁に身体がぶつかった際に出来た本当に軽い擦り傷程度のもので、行動に支障の出るようなものは全くなく大丈夫と両手広げて笑顔でアピールし。何故か先程から顔を合わせようとしてくれない相方、口調も少しばかり荒かったことから自分が無茶をしたことに対してまだ怒っているのだと思い、眉尻下げて上目で見ながら改めて自らのしでかした失態について詫びて)
…いや、アスティが怒られる謂れは全くないんだ。ほんとに落ちちまったのかと思って、随分と取り乱してたな、悪かった。
それにしても、ほんとに大したもんだよ。
(自身の態度から相方にいらぬ心配をかけさせてしまっていることに気づき謝り。命懸けで活路を見出し、こちらのフォローまでしてくれたアスティになんたる仕打ちかと反省しながら、向き直って穏やかに微笑み掛け、立ち上がり)
よし、それじゃ脱出の続きと行こうかね!ここから通路に繋がってるのかな?
うん、そうだね!随分上の方に来たし流石にいくら広いと言っても限度はありそうだけど…あっ、あれ見て…!
(相方の見立て通り、横穴はそのまま奥へと続く通路となっていて、ここまででかなりの距離を移動していることからどんなに魔法で空間を広げて見せたとしてもそろそろ限界が来るはずで。そのまま通路を道なりに進んでいくと大きな部屋のような空間に辿り着き、その隅に大量の白骨死体が積み重なり山のようになっているのが見えてそちらを指さし)
これは…私たちと同じ、ここに閉じ込められた人たちなのかな…?ロゼ、ここには何かあるよ……!!
(一見何もないように見えるただの広い空間、しかしこの大量の死体の数は明らかに普通ではない、つまりここまで辿り着きながら無念のまま命を落とした者たちが数えきれないほどいるということに他ならず、相方に注意を促したその時、自分たちが先程通り抜けたこの部屋の入り口が地面からせり上がってきた分厚い石壁によって封じられ、上から成人の男性よりも一回り大きな肢体を持つ何者かが降り立ってきて)
『知恵と勇気を持つ者よ、よくぞここまで辿り着いた…その手腕、実に見事なり。しかし力はいかがなものか?我が試してやろう、汝らの力、我に示せ。我は冥府の王アヌビス。いざ参る!』
(天より降り立ったその者はまるでジャッカルの頭部を模した黒いマスクを被っていて、全体的に成人男性を一回り大きくしたような筋骨隆々のゴツい人型をしており、両手には地面に届くほどの長さの白銀の鉤爪がついていて。まさに王の名に相応しく堂々たる立ち振る舞いと風格を見せつける、自らを冥府の王と名乗ったその存在は鉤爪を振り翳しこちらへと襲いかかってきて)
…ッ!
(一見してそこいらの魔物とは格が違いそうな雰囲気、名乗るや否や鋭利な鉤爪による一撃を繰り出してくる相手の軌道に立ちはだかり、その初手を刀で受け流して。速度、重さ、共にかなりのもの。間髪居れずに薙ぎ払われる反対の腕の一撃、辛うじて後ろに飛ぶが後一息遅けれ骨ごと切断されていたであろう見事な切れ味)
アスティ…、わかってると思うが、ハンパじゃねぇぜ。
(自身の思考を整理し戦術を組み立てながら、そんなことは百も承知であろうアスティに短く呟いて。今のところ両手の鉤爪による前衛的な戦闘スタイル、しかし魔法や術などの攻撃がある可能性を考えながら、薄っすらと刀身に青白い炎を纏わせて)
『良き技の冴え、実に見事なり。ならばこれは如何か』
(挨拶がわりの両の腕による連撃、それを受け流すことすら叶わず散っていった者はあの白骨の山の中に数多いるのだろう、アヌビスは感心したように声を発すると、鉤爪を真っ直ぐこちらへ向けるよう両腕を前に突き出しその間から灼熱の火炎を吐き出して)
くっ…『聖蝕・壁』…!ごめん、ロゼ…長くは持たない…なんとか隙を突いて切り込んで…!
(襲いかかる高温の炎、それを防ぐべく触腕の壁を展開するが硬度と柔軟さ、双方の性質を併せ持ち様々な攻撃に対応可能なそれも純粋なエネルギーを用いての攻撃には弱く炎攻撃を前に何層にも展開したそれはあっという間に外壁からボロボロと炭化して崩れていき、なんとか食い止められている間に相方に切り込んでもらい、吐き出され続ける炎を止めてもらうしかない。体格が明らかに違うあの敵に再度の接近戦を強いる作戦を強行せざるを得ない自分の不甲斐なさに申し訳なさそうに瞳伏せながらもそう嘆願して)
ッ!
(アスティの防御壁に遮られた灼熱の火炎が無慈悲に触腕を焼き尽くすのも時間の問題。返事をする代わりに低い姿勢で前方へ疾走し、火炎を放つために突き出した冥王の両腕に向けて鋭く刃を叩きいれる。想定どおり鉤詰めで簡単に防がれるが、それにより一瞬、炎の勢いが揺らぎ。防御壁を維持する必要がなければ、相方がその瞬間に何かしらの攻撃を叩き込んでくれると信じて、高く跳躍し真上から垂直に構えた刃をアヌビスの首筋に突き入れて。さぁ、その鉤爪で防ぐなり攻撃するなりして、その土手っ腹を晒しやがれと心の中で叫び。体勢の自由が効かない空中でその攻撃を防ぐことは難しいだろうが、一瞬でも無防備な胴体をアスティに晒させることさえできればいい。今度はこっちが身体を張る番なのだから)
『良い…実に良い…血湧き肉躍る立ち合いのこの久しき感覚…我を愉しませる武人がよもや矮小なる人の子であろうとは恐れ入った…だが、それもここまで…さらばだ強者よ』
(激しくぶつかる刃同士が激しく火花を散らす、この空間の絶対の王として君臨してきたアヌビスにとってここまで自身に食い下がってきた存在は初めてであったのかもしれない、しかもそれが生身の人間であることに最大級の賛辞を送り、惜しむように口にしながら相方の思惑通り必殺の一撃を叩き込もうと右の腕を振りかぶり)
そう、ロゼは強くて頼りになるんだよ…だって私の相棒だもん
(相方がその身を挺して稼いだ時間、それはこちらが反撃の準備を整えるには十分過ぎるほどで、大鎌を構え地面を蹴って加速して真っ向からアヌビスへと突撃して。よもや近接戦闘を同時に仕掛けてくるとは予期していなかったのだろう判断が遅れ防御体制を取ろうとするアヌビスの左腕の肘から先を大鎌の刃で斬り飛ばし、返す刃で胴体を狙うが、それは相方への反撃を諦めたアヌビスが後方へ飛び退いたことで浅く斬りつける程度になってしまい)
『ぬう…二対一とはいえ我が戦場でここまで遅れをとろうとは……むっ?これは…』
(敵対する存在の人数など物の数ではない、そんな矜持があるのだろう不覚をとった己の未熟さを恥じながら失った左腕を右手で押さえるアヌビスは身体の異変に気づき、自らの首から下を見るとその身体には、こちらの大鎌から伸びた触腕がロープのように絡みついていて)
『聖蝕・縛』…気をつけて、それはよく燃えるよ
(見るからに戦慣れしているアヌビス、隙を突いた程度で簡単にトドメを刺せるとは思っておらず、第二の布石として鎌での斬りつけに意識を向けさせた上で大鎌から伸ばした触腕でその身体を拘束させていて、当然あれだけの膂力をもつアヌビスを完全に封じることなど不可能だが、狙いは拘束ではなくエネルギーによる攻撃をよく通す性質を利用することであり、相方にも聞こえるようにそう説明口調で告げると彼の手の穿ち焔を一瞥して)
アスティ、十分だぜっ。人間と堕天使を舐めんなよっ!!
(こちらの意図通りの急襲、さらにその一歩先を行く炎の媒介を意図した拘束。見事な援護射撃にニヤリと小さく笑みを浮かべると着地のタイミングで地面を蹴り穿ち焔で弧を描くように切り裂く。その刀身に纏わせた浄化の炎が青白く燃え、彼女の触腕を伝いアヌビスの?にその勢炎を叩き込んで)
『くく……ふはははは……!冥府の王たる我がよもや浄化の炎に焼かれ朽ちようとは……!汝らほどの強者と相見えるは至上の喜び……冥土への良き土産となったわ……』
(激しく燃え広がる浄化の炎に巻かれアヌビスの身体は崩壊を始めて、最期の瞬間まで潔くこの戦いの勝者を称えながら真っ白な灰のみを残して消滅して)
なんとかなったね……後は、この仕掛けを解いて……出来た!
(ここまで怒涛のごとく押し寄せた仕掛けの数々を潜り抜け、流石にもうヘトヘトだったが、ここを脱出するという目的はまだ達せられておらず、よく見ればこの部屋の壁に先程の床にあったようなパズルの仕掛けがある事に気づけば、もう一踏ん張りと疲れ切った身体に鞭打ってパズルを再び記憶を頼りに完成させると壁だった場所に小さな石室が現れて、その中から手のひらサイズの真っ黒な小さな蛇が飛び出してきて、その場から逃げ出そうとして)
ロゼ…!あれがきっと魔導核……と、蛇は苦手なんだったね
(小型ながら異様な気配、恐らくあれがこの空間を作り出している根源たる存在だと察すれば相方に逃さず仕留めるよう言いかけて、相方が無類の蛇嫌いであったことを思い出し、鋭利に尖らせた触腕伸ばし突き刺し仕留めると、激しい地鳴りと共に視界いっぱいに真っ白な光が満ちて、気がつけば宿屋のベッドの上におり、枕元にあったパズルは真っ二つに割れていて)
うへ… まぁ苦手は苦手だが、最後の詰めくらいならいくらでもやっつけるぜ。んでも、ありがとな。
(この広大な迷宮を創り出した核、その意外にも小さな体躯を眺めながらその息の根と共に眼前の空間が歪みんでいき。…柔らかいベッドとシーツの感触。薄らと目に開けて宿の個室の天井を眺めると、小さく安堵し圧倒的な迷宮の出来事を脳裏に浮かべながら、腕を被せて瞳を閉じて、ふと隣のベッドの相方の息遣いを感じて、呟いて)
…お前さんが相棒で良かったよ。お疲れさん。
ふふ、それはこっちのセリフだよ…やっぱり私にはロゼがいないとダメだなぁ…
(疲労感はあるはずなのに、ひと時の小さな大冒険、その中で見た相方の頼もしい姿を思い返すと、高揚感と僅かばかりの気恥ずかしさのせいで眠れそうになく、本当に直近の自分はどうしてしまったのだろうと、こそばゆささえ感じる気持ち誤魔化すように布団で目元まで覆いながら、鈴を転がすように笑ってそう答えて)
(そんな安息のひと時、それに水を差すような気配が宿屋の階段を上がってこの部屋の前に立ち止まったのを感じる、外から鍵を静かに開錠する音が耳に届くと、それに続いて聞き覚えのある老人の声が聞こえてきて)
『ヒヒヒ…さぁて、バカな獲物共がそろそろくたばった頃か…』
(少しずつ近づく足音、一段一段階段を登りその物音が止むと、金属音が小さく響き。アスティに目配せし、物言わぬ屍を装いながらベッドで気配を殺し、侵入者の気配を感じ取って。下卑た笑みを浮かべた怪しげな骨董屋の店主の顔をちらりと盗み見ると、どう料理してやろうかと仄暗い欲望の炎がちりちりと燻り出すのを感じて。だが、このパズルを廻る冒険譚の締めくくりは、相方に任せようと思いなおし、小さく手を上げて、落とし前をどうつけさせるのか、その判断を委ねて。少しだけ老人の末路に哀れみを感じながら、この居心地の良い宿を出禁にならない程度でにしてくれよ、と苦笑し)
こんばんは。ふふふ…どうしたの?そんな狐に抓まれたような顔をして…もしかして堕天使を見るのは初めて…?
(いつの間にか部屋の入り口、骨董屋の主人の背後に立っており、異様な気配を察知してギョッとして振り返る老人に向け、微かに入り込む月の光に反射して輝く真紅の瞳をギラギラ輝かせながら、普段とは違う妖艶な気配を纏いつつにじり寄り)
素敵な呪いをありがとう…堕天使は受けた呪いをそのまま倍にして相手に返す力があるの…次は貴方があの迷宮で彷徨うとこ見てみたいな
(当然そんな力などないが口から出まかせでそう脅し文句を口にしつつ耳元顔寄せて囁くと触腕で顔を撫でて)
『ひ、ひいぃぃぃぃ!お、お許しをおぉぉぉ……っ』
(よもやあの空間から生還する者がいるとは思っていなかったのだろう、しかも敵に回したのがこれまた得体の知れない堕天使という存在だと知った老人は完全に気が触れ、部屋を飛び出したかと思うと階段から何かが転げ落ちるような音がして)
(そんな物音を聞きながらベッド上の相方の方を見やり、これって私が悪いのかな?とでも言いたげな苦笑いのような表情浮かべながら肩を竦めて)
(階段を転げ落ちる救いのない物音を聴きながら、肩を竦める相方のなんとも言えない表情を見て声を上げて笑い)
んー、まぁ急いで帰ろうとして足でも滑らせたんだろうぜ。良い医者が見つかるといいな。
(まだ息があればな、っと小さく呟き、再びごろんとベッドに寝そべり。射し込む細い月光が、まだ外は夜の闇が続いていることを示して)
ま、でっかいカニをやっつけるのに、いい準備運動になったか?…ちょいとオーバースペックだったかもしれんがな。
それじゃ、もう一眠りするとしようかね~
うん、そうしよう…おやすみなさい…
(今回の一件の黒幕も再起不能に追い込み、今度こそはゆっくりと休めそうだと、既に体力的に限界近かったため襲いくる眠気にすんなり身を委ねると、程なくして小さな寝息を立て始めて)
──3日後。
ロゼ、準備できた?参加者は時間までに正面ゲート前に集まるようにって話だったよね
(最初こそ予定外のトラブルに見舞われたが、そのあとは恙無く砂漠の国での滞在を十分に満喫し、いよいよここでの滞在における最後の一大イベントである蟹漁祭の日を迎え、目標地点には定時出発の砂上を進む船で向かうとだけ聞かされており、そろそろ予定時刻が迫れば相方へと旅支度は出来たか尋ねて)
***
勝手に日付スキップしちゃったけどもしやり残したこととかあったら内容変えるから言ってね!
うん、そうしよう…おやすみなさい…
(今回の一件の黒幕も再起不能に追い込み、今度こそはゆっくりと休めそうだと、既に体力的に限界近かったため襲いくる眠気にすんなり身を委ねると、程なくして小さな寝息を立て始めて)
──次の日。
ふわぁ……もう太陽があんなに……流石にちょっと寝過ぎちゃった。……あれ、ロゼ?どこか出掛けてるのかな?
(窓からの陽光に顔が照らされ、その眩しさに手で目元を覆い隠すようにしながら身体をゆっくり起こし、太陽の位置からしてもう昼過ぎだろうということがわかり、いくら疲れていたとはいえこんなにゆっくり寝たのは久しぶりだなと欠伸しながらもぬけの殻の隣のベッドを見れば、相方は先に起きて、一人でお酒でも飲んでるか散策してるしてるのだろうかと考えつつ、ここまでなんだかんだで気の休まる時間はあまりなかったし、いくら旅の相方とはいえ互いに一人の時間だって大切だということは理解しているため、あまり深く気にすることなく、大人しく室内でのんびり窓際のテーブルに座って街並みを眺めていて)
***
という訳で、改めてお返事はこっちにお願いね!
(思いの外すっきり目覚めた翌日、まだ布団の中で寝息を立てている相方に声を掛けるのはやめ、のんびり散策に出かける。アスティが仕入れてきた情報のとおり街が蟹漁祭に関する話題で賑わっているのを感じて。ふと、自分たちのような他所者、しかもそれなりに腕が立ちそうな連中の立ち話に興味を惹かれて少しだけ聞き耳を立て…前夜祭…酒…。にやりと不適な笑みを浮かべ、そそくさとその場を後にして)
アスティ!いい知らせがあるぜっ、起きろって…あ、もう起きてたか、おはよ…昼だけど。
(のんびりとくつろぐ相方に声を掛け、先ほど仕入れてきたとっておきの情報を伝えて。蟹漁祭の前夜、参加者を労う目的で開かれる宴。なかなか盛大なイベントらしく、もちろんそこには大量の酒も振る舞われるとか…。少々お堅い雰囲気な可能性もあるが、参加者の半数は自分達と同じ冒険者。なかなか面白そうであり、やはり数多の酒に思いを馳せながらアスティの反応を伺って)
おかえりロゼ。…それで、良い知らせって!?……
(耳慣れた足音、部屋の前で止まりドアが開き中へと軽い足取りで入ってきた相方の方見れば、見るからに何か良いことがあったとわかる。かくして、その見立ては当たっていたようでグッドニュースを持ち帰ってきたという、相方の様子から掛け値なしに良い話なのだろうと期待に胸を膨らませつつその内容に興味を示して黙って耳を傾けて)
ふふっ、ロゼらしいね!せっかくだから参加してみてもいいんだけど…パーティ、なんだよね…?場合によってはドレスコードがあるかも?
(相方の話しに聞き入って、前夜祭と銘打っているが少し畏まった場である可能性を示唆され、それは即ちパーティなのでは?と、かつて王宮にいた頃に何度か参加したことのある、あの煌びやかな空間を思い浮かべて、もしもそうであるなら相応の服装、周りの人の気分を害さず雰囲気を壊さないための配慮が必要になるであろうことを自身と相方の服装を見つつ語って)
ドレスコード…なるほど、な。
(すっかりお酒のことばかり考えていたが、服装、しかもドレスコードの有無などまったく考えておらず、ぽかーんとしながらアスティの呟いた単語を鸚鵡のように繰り返して。いつもの服装で行く気満々だったため、ややたじろぎ)
これはこれで動き易くていいんだがなぁ。それじゃアスティ、各々ちょろっと衣装の準備でもするかね。
(きっとアスティはささっと卒なくいい感じに準備すると思うが、かつてモルドールの一件で必要に迫られて正装をした際、アレがダメ、コレがダメとルーシエンに悪戯気味に揶揄われた記憶がふと蘇り、ぐぬぬ…と一人表情を曇らせて)
うん、そうしよっか。ロゼ、楽しみにしてるね?
(普段の相方の姿から、失礼ながらフォーマルな衣装に身を包み、ビシッとキメた姿というのがイマイチ想像出来ないというのが本音で。しかし、自分の中の相方はキメる時はしっかりキメる男、きっと今回もカッコいいところを見せてくれるだろうと相方の内心の負の感情には気づかないまま、期待を込めてそう言い放ちウインクして)
えっと、用意を済ませたら会場に現地集合でいいかな?
(今から衣装を用意するとなると、もし時間が押せばパーティの開始時間ギリギリになるであろうことを考え、ここへ一度戻るよりは会場付近で落ち合う方が現実的だろうかと相方へと方針を確認して)
おう、りょーかいだ。それじゃ、陽が沈む頃にまた現地でな!
(そうと決まれば早速行動。落ち合う段取りをざっくり確認し合うと、散策の手荷物などを軽く整えて。ふと鏡に映った自分自身を見遣ると、少なくともこのだらしない無精髭は剃らないとなぁ…と苦笑しながら、所持金を懐に入れぼちぼち宿屋を後にして)
──夕暮れ時
アスティ、まだ来てないみてぇだな…。
(会場の入り口付近で落ち着かない面持ちであたりをキョロキョロ見渡して。無精髭を綺麗に落とし何年かぶりに眉を整え、短めの髪をナナメ後ろに流すように撫で付けると、やや色白の肌が相まって実年齢より少しだけ年下に見える自分自身に落ち着かず。漆黒のタキシードを着込み、首筋に異物感を齎すシャツの小さなカラーと蝶ネクタイを撫でると、リーフ模様があしらわれたアンティーク調のカフスボタンが光り。その装いに一際異彩を放つ穿ち焔。これだけは置いてくるわけにはいかぬと、まるで心の拠り所にするかのように腰のそれに触れ、相方の姿を探して)
…!ごめん、ロゼ。遅くなっちゃって…っ
(幸運なことに今日は前夜祭ということもあって、街中の服屋では商機を逃すまいと前夜祭参加者向けの衣装の用意から髪のセットまで請け負ってくれていて。王宮でのパーティではあまり着飾り自分を綺麗に見せることには無頓着、ドレスの選定なんかも付き人任せだったが今日はなんとなく相方に良いところを見せたいという気持ちがずっと頭の片隅にあり、ついついドレス選びにも熱が入ってしまって、気がつけば集合予定時間にギリギリ間に合うかどうかという時間になってしまい。待ち合わせ場所まで出来るだけ急ぎ駆けつけると、見慣れた背中の面影を背負ったタキシード姿の美丈夫が待ち人探すかのように辺りを見回しているのを見つけ、見目よい立ち姿には似つかわしくない物騒な腰の得物に相方である事を確信すると側まで駆け寄り、声をかけて)
っ………見違えちゃった…ロゼ素敵だよ、カッコいい!
(こちらを振り返る相方、トレードマークの無精髭が無いだけでだいぶ印象が変わり、より精悍さが際立って見えるその顔立ちに見惚れハッと息を呑み言葉を失ってしまう。普段とは違う、慣れない服装になんとなく本人は収まりが悪そうな顔をしているが、そんな事など気にならないぐらいに心の琴線に触れ、頬に微かな熱感を感じながらシンプルに飾らない言葉で、そう賛辞を送り)
えっと……私はどうかな……?ドレス自分で選んだのは初めてなんだ、変じゃないかな…?
(自身が選んだのはビスチェ風の、レースのついたスカートが広がったふんわりしたシルエットのドレス。色は悩んだが、ありのままの自分、相方が受け入れてくれた堕天使としての自分を象徴する黒色で。髪は高めの位置で一つに纏め、白い花飾りのついたヘッドドレス、胸元にも真っ白な花のコサージュがあしらわれていて。少し小走りでここまで来たため、服装に乱れや汚れがない事を改めて確認するよう視線下に落とし、再び顔を上げると相方と真っ直ぐに目を合わすのは気恥ずかしく少し目線横に流しつつ、こういう時自分から感想を聞きにいくのは無理矢理に褒め言葉を引き出すようであまりよろしくないとは思いつつ、気まずさに耐えかねてそう尋ねて)
…。おぉ、流石だな、凄く似合ってるよ。やっぱり、本物は違うなぁ。完全に王女と家来だぜこりゃ。…それじゃ、前夜祭とやらを楽しむとしようか。…どうか足元にお気をつけくださいませ。
(気恥ずかしそうな面持ちでも、やっぱり別格の雰囲気を醸し出すアスティ、その姿に改めて惚れ惚れし一瞬黙してしまうも、すぐに率直な感想を述べて。ようやく自分の格好にも慣れてきたところ、ふと片膝をついてアスティの手を取りちょっぴり気障ったらしく目配せすると、立ち上がってゆっくり彼女の手を引いて前夜祭の会場へと進んでいき)
へぇ、なかなか賑わってるなぁ。さて、酒はどこかな?
(国の関係者と思しき人々、そして翌日からの祭に参加するのであろう腕自慢達を眺めながらも、一番のお目当てである銘酒の類を探して)
この感じ…なんだか懐かしいなぁ……ご機嫌よう
(中までまるで本物の付き人のようにエスコートしてくれた相方、紳士的な振る舞いに戸惑いを感じたのも束の間、会場へ入るや否やお酒を求めてフラフラとその場を離れて、パーティ会場を彷徨う相方の姿を尻目に、苦笑浮かべつつもやはりこの方が相方らしいなと、変わらぬ内面に少し安心する部分もあって。人で賑わうパーティ会場を一人歩けば、王宮で行われたパーティの記憶が否応無しに思い起こされ、しみじみ呟き。様々な種族や人種の集まる会場とはいえ天使はやはり物珍しいようで男女問わず声をかけられ、普段とは違うパーティ会場に相応しい立ち振る舞いとよそ行きの笑顔で挨拶を交わして)
…!
(声をかけてくれた人々と談笑しつつ、勧められた酒の入ったグラス左手に、相方も今頃色んなお酒を楽しんでる頃だろうかと酔い潰れたりしないといいけどなんて心配をしていると、不意に背後に何やらヒヤリとした突き刺すような殺気にも似た異様な気配を感じハッとして振り返ると、スーツに身を包んだ髭面の男性が銀色の髪をした女性を傍に控えさせ佇み、こちらを見ていて)
『これは珍しい…天使の冒険者か』
(静かに落ち着き払った口調でこちらに声をかけてくる男性からは先程感じたような不穏な気配は感じられなくなっており、さっきのは自分の気のせいだったのだろうかと、感じた違和感の出所が分からず言い知れぬ不安を感じるが、こんな人が大勢いる中で何か仕掛けてくるはずも無いだろうと一旦心を落ち着けて他の会場にいる大勢と変わらぬ対応をして)
えぇっ、この25年ものもタダでもらっちゃっていいのか!?いや~なんだか悪いなぁ、くひひっ
(高価なものや珍しいもの、いろんなお酒をあれやこれや楽しみながら、グラスを勧めてくれるお姉さん達に愛想を振りまき。毎年来よう…としみじみ考えながら、ふと相方の存在を思い出して。なんだかんだで目立つ種族、それに加えて今日はいつにも増して別嬪さんな彼女に悪い虫でも付くやもしれぬと、その姿を探して)
よぉ、アスティ、楽しんでるか?ん、知り合いか?
(何となく気になる視線をアスティに投げる男を見やり、相方の傍に寄り言葉を挟んで。さっそく悪い虫…と思いきや、長い銀髪の女性を連れ落ち着いた振る舞い、そのような輩とはまた異なりそう。長身ゆえ見下ろすような視線、その佇まいにかなりのやり手だろうと想像して)
あ、ロゼ…ううん、初めて会った人
(2、3言葉を交わし、湧き上がる感情は怯えに似た何か。決して人相が特別悪いわけではない、立ち姿も整っていてガラが悪い輩とも違う、だというのに男の双眸にはどこか底知れぬ暗さが見える気がして、やはり先程背中に感じたような敵意や殺気は見えないが、今までに感じたことのないような得体の知れない不安を感じ、冷たい汗が背中を伝うような感覚覚えたその時、耳慣れた声が聞こえ振り返れば相方の姿があり、心底ホッとしたような表情で歩み寄るとそう答えて)
『連れが居たのか、これは失敬。…俺はこれで失礼する。行くぞソリス』
「はい、マスター」
(相方が来た途端にいきなりこちらへの関心を無くしたかのように男は踵を返し、そんな彼にソリスと呼ばれた人型はここで初めて口を開くと一切の異論も唱えずに頷きそのまま付き従い、こちらににこやかに手を振りそのまま二人揃って目の前から去っていき)
(普段と異なるアスティの様子と、掴みどころがない二人の振る舞い、それらを冷静に観察し、その後姿に一瞥をくれ)
…なんだか不気味な連中だな。それにしても、一人にしちまってすまんな。つい酒に目が眩んで…へへ、色々珍しいのを飲んできたぜっ。
(気を取り直して明るい口調で相方に声を掛け、これからは一緒に回ろうと手を取って。引き続き酒を飲んだり食べ物を摘んだりと、至れり尽くせりの豪華な宴を存分に楽しみ)
はぁ…限界まで飲んで食ったよ…。アスティ、明日起きられなかったら引っ叩いて起こしてくれ~…。
あっ、ちょっと…もう、ロゼったら…二日酔いで動けないんて言っても知らないよ?……──帰ろっか
(楽しい空間、美味しい料理や酒肴とくればお酒が進むのは必定、国を挙げての祭りの前夜祭だけあって数多くのお酒が集まっており、それを全制覇する勢いの相方の後について、こちらもそこそこに酒と料理を楽しんでいくと、やがて完全に出来上がってしまってフラフラと酩酊状態の相方を慌てて抱き止めて。パーティの雰囲気にあてられる気持ちはわかるが、明日もあるんだからお優しく咎めるように口にしながら、暫くそのままの体勢で背中に回す手にほんの少し力を込めて瞳を閉じて。それから少しして身体離し柔らかく微笑むと、足元覚束ない相方へと肩を貸し、身体支えながら二人でパーティ会場を後にして)
あぁ…また…飲み過ぎた……
(アスティに肩を借り、千鳥足でよろよろと月明かりに照らされた道を行く。正装してもこの体たらく、ちょっぴり身なりを整えたくらいでは、人間そう簡単に中身は変わらないなぁとぼんやり考えていると、ようやく宿の前について)
アスティ、何度目かもうわからんが、今日もありがとな…。
ところでな、その…。ん、綺麗だよ。本当に。
(本当は落ち合ったときに言いたかったが、小恥ずかしくて言い出せなかった言葉を、今日の最後、記憶を失う前に呟き。なんとか崩れ落ちる前に階段を上がりベッドに倒れ込むと、早々ぐーぐーいびきをかいて)
……もう、ズルいよ
(宿屋に戻って、それぞれが自分のベッドで横になって休もうかというタイミングで、ここにきて唐突に投下された相方の言葉による爆弾。しかし、それを口にした相方はと言えば、こちら側からそれについて何かを伝えたりリアクションをとる間も無くあっという間に深い眠りに落ちていて、その結果やり場を無くした感情が内心で渦巻く自分だけが取り残される形となり、ベッドひとつ分のスペースで隔てられた先にある隣のベッド上にてこちらの気も知らず呑気にも寝息立てる相方の寝顔を見てから、天井へと視線移して仰向けになり、一方的に言いたいこと言って寝た相方への意趣返しのように、こちらからもズルいよと一方的に悪態をついて呟けば、ドキドキと高鳴る胸、火照る頬の熱にもう暫く自分は眠れそうにないなとそんな風に考えているうちに夜は更けていって)
……んん、朝かぁ……ロゼ、起きて。早く起きて支度しないと船に乗り遅れるよ
(いつの間に眠ってしまったのだろう、日の登り始めぐらいの早朝の時間帯に目が開き。午前中には祭りの参加者を乗せた砂上船にて作戦地点まで向かうことになっており、余裕を持って支度するなら今からでも早過ぎるということはなく、ベッドから降りて相方のベッドの傍へ移動すればその身体をゆさゆさと優しく揺さぶって起こそうとして)
ん… へへ、アスティ、流石にこれ以上は飲めないぜ…
(夢の中、巨大なジョッキになみなみ溢れそうな酒を飲みながら、潜在意識に擦り込まれているのか踊り子アスティから追加のコップを手渡され思わず呟いて。なんだか優しい声が少しずつ意識を覚醒させ…)
ハッ…おう、おはよ。…そうか、いよいよ蟹漁祭だな!
(やや重い身体で目覚めるも、楽しみなイベントに声は明るく。残った酒気を吹き飛ばすように冷水で顔を洗い、もはや記憶もなく乱雑に脱ぎ捨てられた昨夜の衣装を軽く整理してから、馴染んだいつもの動きやすい服装にささっと着替えて)
ふふ、おはよう。お酒の影響は…大丈夫そうかな?ちゃんと動けそうで安心したよ!
(完全に熟睡してるように見えたが、こちらの呼びかけに抵抗なくすんなり目を覚ました相方、パッと見前日のお酒の影響を引きずっているようには見えず、せっかくの祭りを存分に楽しめないという事態は避けられそうで安堵し。いつものスタイルにこちらも着替えるとキャスケットを被ると相方の方を見やり出発しようかと視線で合図を送り)
砂上船ってどんな感じなんだろうね?船は前に乗ったけど砂の上を進む船なんて想像もつかないよ
(出発の為に正面ゲートを目指しながら、巨大な甲殻類というのも勿論気になるが、作戦地点への移動に使われるという砂上船にまず関心を示し、未だ見ぬそれについて相方に話しを振って)
砂の海を走る船…。確かに想像もつかねぇなぁ。案外、魔法を動力にして動くとか不思議なものかもしれんねぇ。いずれにせよ船酔いがないといいなっ
(ペガサスにも乗ったことのあるアスティでも想像がつかない乗り物、そういうものに出会う旅の醍醐味に心が踊るのを感じて。集合場所への道すがら、ちらほら参加者と思しき冒険者のような装いの連中を目にすればふと昨日の二人組をなんとなく思い出し。あの時感じた唯ならぬ雰囲気、外部から参加する腕利きの類だろうと考えて)
お、そろそろ集合場所の正面ゲートかな
(それとなく集まった連中の顔ぶれをチラ見するも、どうやら自分が見知った顔はないようで)
船酔いは…あれはちょっと勘弁してほしいなぁ……と、見るからにそれっぽい人たちが集まってるし間違いは無さそう!
(初めて乗った船で味わった嫌な感覚、相方の言葉で思い出し渋い顔をしながらそう言葉を交わしていれば、やがてたどり着いたのは一際人で賑わう場所で。そこに集まっているのは見るからに冒険者たちであるのがわかり、大小様々な得物を手にした、見るからに力自慢な者や片や魔術などの搦め手を得意としそうな者など千差万別で。これだけの人数が集まって撃退に注力するほどの獲物とは果たして…と、ますます興味が膨らんできて)
『勇気ある冒険者諸君!よくぞ集まってくれた!私こそがこの蟹漁祭の主催にして最高責任者のダグラスである!まず、出発の前に蟹漁祭について知らない者も中にはおるだろう、そこで!私が蟹漁祭について直々に説明してくれよう、心して聞くが良い』
(やがてゲートの手前、そこに用意されたお立ち台、そこに金色の鎧に身を包んだやたら偉そうで不遜な態度の男が立ち蟹漁祭の概要を話し始めて。ダグラスと名乗った男の話の内容を要約すると、数年に一度周期で砂漠の国を何故か襲撃してくる巨大な甲殻類を国内の腕利きの猛者と外部から招いた冒険者たち総出で追い払うのがこの蟹漁祭であり、『漁』と銘打ちながらなんとこれまでの歴史の中でその巨大甲殻類について国に被害が出ないよう進行方向を変えさせるのが精一杯で過去に一度たりとも討伐には至っていないという事実が告げられて、そんなとてつもなく大掛かりな小競り合いこそがこの祭りの真相であるようで。祭りの歴史についてのご高説の後、続けて冒険者を何班かに分けて役割分担をして事に当たることを話す。まずは魔法に長けた者たちによって編成される足止め部隊、砂上船の大筒や弩砲による兵器を用いる援護射撃部隊、そして前線で適宜攻撃、陽動を行う前線部隊の大きく分けて三つがあると説明があり、それぞれの部隊の中でもいくつかの班に別れて波状攻撃を仕掛けることになっているようで)
へぇ…一回もやっつけたことないのかよ。アスティ、それなりに手強いかもしれねえ、気を抜かずにいこうぜ。…しっかし、偉そうなヤツだなっ…
(説明を聴きながら、男への失礼な感想は最後に小声で耳打ちするように相方に伝えて。自分たちの戦闘スタイルから役割は前線部隊への配属が濃厚だろうと考えながら、傭兵として旅をした数年前の出来事を少しだけ懐かしく思い出し集まった腕自慢達をそれとなく眺めて)
…こういう国を挙げての大規模作戦なんかでは分かりやすい旗印があった方が色々都合がいいんだよ
(男に対しあまりにも真っ直ぐ豪速球な感想を漏らす相方に苦笑しつつもその意見について否定はしないが、フォローらしいフォローを入れようとしない辺り、実質的に肯定しているも同義で。話しを聞いていればどうやら彼はこの国の騎士団長らしい、人間性はどうあれ人同士を団結させ率いるにはわかりやすくネームバリューのしっかりした人物の方がいいと、王宮にいた頃の自身の経験則から話し、例えそれが軽い神輿だとしても…とは思っても口にはせず肩を竦めて)
ねえ、ロゼはどこの部隊がいい?足止めは魔法が使えないといけないから、必然的に私たちは援護か前線にはなりそうだけど…
(やはり巨大甲殻類の強大さを聞き、怖気付いた者もいるようで足止め、もしくは援護部隊がいいかなぁ…といった声がちらほら。前線に関しては最も危険なため志願した勇気ある者のみが送り込まれるとのこと、なんとなく相方ならどちらを選ぶかはわかってはいるが一応意思確認して)
ん、そりゃ前線部隊だろー。どんなのが出てくるのか近くで見てみたいしな。アスティ、ヤバそうだったら逃げようぜ。
(あっけらかんとして前線部隊を希望しながら、きっとさっきの偉そうなヤツも前線部隊でその良く通る声を張り上げるのだろうなぁと想像して。しかしながら、自分はともかく今のアスティは一見か弱い天使の姿であり前線を志願するとしたら堕天使の姿を見せる必要があるのだろうか。周りの目など気にしないが、ふとその辺りがなんとなく気になって、ちらっとアスティの表情を読み取ろうとその顔を覗き)
そうだよね、そうでなくちゃこのお祭りに参加する意味がないもん。生存は第一に、でも存分に楽しもうね
(こちらの期待を裏切らない頼もしい相方の言葉に、自身も同様にこの祭りに参加すると決めた時点で後方に控えて援護なんて役目に甘んじて、メインのターゲットの迫力や雄大さを体感出来ないなんて白ける展開だけはごめんだと、共に最前線へ赴く覚悟もやる気もあることを一切の迷いもなく示すも、それはある程度の安全マージンを積んだ上での話し、最悪の場合は共に退却も選択肢の一つとして頭の片隅に置きながらそのことを忘れないようにしようとサムズアップをしてみせて)
ん、どうしたの?何か気になることでもある?
(相方の何か物言いたげな目線に気づくと、流石に視線のみで意図を読み取ることは困難で、不思議そうにキョトンとしたような表情でその顔を見上げ小首傾げては何か他に心配事や思うところがあるのか尋ねて)
あ、悪い悪い、少しぼーっとしてたよ。前線組はなかなか激しそうだからな、初っ端から飛ばして行くんだろう。きっとお前さんの戦いっぷりに皆んなビビるぜ。
(一人物思いにふけっていると相方の不思議そうな視線と声に現実に戻り。どうやらアスティも前線部隊としての参画に異論はない様子。そうと決まればさっそく辺りを見回し周囲の連中の様子を眺めつつ、志願すべくダグラスを見遣り不躾に声を上げて)
隊長さんよ、その前線舞台ってのに志願したいんだが。俺たち二人だ、何か必要な手続きとかあるのかい?
『なにぃ?非力な天使の娘を連れて前線だと?やれやれ、ピクニック気分では困るのだがな…まあ、良かろう。せいぜい私の威光に傷をつけんよう励むが良い。前線部隊志願者はあの船に乗り込み、待て』
(相方からの不躾な物言いに、ダグラスは目に見えて怪訝そうな顔でこちらを見やり。佇まいからして戦い慣れしており腕の立ちそうな相方はともかくとして、やはりパッと見では前線に立って戦えるようには見えない天使であるこちらを見ながら明らかに侮るような口調で言いつつ尊大な態度で、ゲートの外、砂上にある左右に水車のような外輪つきの船を指差し、乗り込み待つよう指示して)
…ロゼ、船乗ろっか。これだけの船が並ぶと壮観だね!
(ダグラスの態度に多少思うところはあったが、表には出さずに相方に乗船を促して。自分たちの乗る船の他にも大筒や弩砲が積まれた船が複数停泊しており、さしずめ砂上の大船団ともいうべき様相に声を弾ませて)
あぁん? …そうかい。それじゃ行くか。
(ダグラスの態度に思わず食ってかかろうとした矢先、大人な反応で何事もなかったようにスルーしたアスティの振る舞いに言葉を引っ込めて。開始早々に揉め事を起こすのはよろしくない、自身の浅はかさを反省し)
これだけ勇ましい連中が集まると、なんだか海賊か何かみてぇだなぁ。
(アスティが思わず声をあげるくらい壮大な眺め、改めてかなり大掛かりな作戦の一部として動いていることを認識させて)
ふふ、そうだね!こういう時はこう言うんだよね?野郎ども出航の準備だ帆を上げ、錨を上げろー!ヨーソロー!って
(確かに砂上か海上かの違いこそあれど、この光景はまさに物語などに描かれる海賊の大船団そのものだと瞳を輝かせ。こういった場面での船長と船員のお約束の掛け合いを再現して、楽しげにおどけてみせて)
『まさかお前たちも前線部隊志願とは…このような形でまた会うとは奇妙な縁だな』
「もう、マスターはいつも態度が重々し過ぎます!こんなんだから初対面の人に暗くて怖そうな人だって、警戒されちゃうんですからね」
(そんなやり取りをしていれば、続けて船に乗り込んで来たのは昨日のパーティ会場で顔を合わせた男女の冒険者コンビで、その二人を見た途端昨日の記憶が蘇り身構えそうになったその時、昨日は静かに側に控えて口数少なく大人しくしていた女性が、一転して騒がしくそう捲し立てるように男性の態度を咎めて)
(ヨーホー!と相方と海賊ごっこに興じていると、なにやら聞き覚えのある声に呼びかけられてそちらに目を向けて。昨夜、アスティを意味ありげに眺めていた長身の男とその従者と思われる女性。やや場の空気がピリついたかと思うと、良いタイミングで女性が発した言葉が緩衝材のようになり)
…おたくらも前線組かい。あぁ、少しの間よろしく頼むぜ。…。
(寡黙な男と対照的な従者の女性、長い銀髪とやや人工的な滑らかな肌。見れば関節の形状やその瞳から人を精巧に模造した人形の類だとこのとき初めて気がついて)
『ああ…よろしく頼む。俺はアルバス、この騒がしいのはソリスだ』
「騒がしいは余計ですよマスター。せっかくフォローしてあげたのに、失礼しちゃいますね。ぷんすか」
(アルバスと名乗った男は、自身の紹介のされ方が気に入らなかったようでまるで本当に感情のある人間のように憤慨するソリスに聞こえないふりをして適当にあしらいつつ握手を求めるよう手を差し出してきて)
私はアスティ、こっちは相棒のロゼだよ。よろしくね
(ソリスとのやり取りを見てすっかり毒気が抜かれてしまい、確かに今こうして対峙してみると、確かに彼女の言う通り最初のイメージに強く引っ張られ過ぎていただけなのかも、と思い直し。ともあれ今回は共闘関係にあるのだからと握手に応じてこちらも名乗り、相方をただの仲間ではなく相棒であると強調して紹介し)
(なんだか二人の夫婦漫才のようなやりとりを面白おかしく見ていると、昨日感じた不気味さは鳴りを潜めていて自身思い過ごしだったのかもしれないと感じ。そして旅の相棒として紹介されることにも違和感はなくアスティに続けて握手に応じて)
随分と手強い相手って話じゃねぇか。お互い上手いこと協力して蟹だか海老だかをとっちめてやろうぜ。…おたくも前線部隊ってわけだ。所謂、前衛的な戦いができる、という理解で間違いないかい?
(そういえばアスティと組んでから大掛かりなパーティ戦は未経験。アルバスとソリスがどのような戦闘スタイルなのか今のところ不明だが、同じ前線部隊として共闘する手前、自然と彼らのスタンスに興味を持って)
『まあな…得物はこいつだが近接戦闘の心得もある』
「マスターの武器は私の作った特別製なんです、こんな小さな弾ですが色々な効果のものが……」
『…あんまりベラベラ喋るな。戦いが始まれば嫌でもわかることだ』
(ロゼからの投げかけにロングコートの内の二丁の拳銃を見せるアルバス、武器の性質から中~遠距離特化かと思えば近接戦闘もこなせる旨を口にして、実際自ら進んで前線に出張ってくる以上はその言葉に一切の偽りがないのであろうことを示しており。どうやらただの拳銃ではなさそうなソレ、自分が作り上げたと豪語し、見た目には普通の銃弾のように見えるそれを手に能力の一端を得意げに語ろうとするソリスだがそれはアルバスにより制されてしまって)
なるほど、秘密って訳だね。あっ、そろそろ出発するみたい!
(一時的な協力関係にあるとは言え、同業者は今回のように味方になることもあれば商売敵となることもある、手の内を敢えて全部晒すメリットがないのは重々承知であるため、後はアルバスの言う通り実際に目で見て判断するのが良いだろうと納得して。やがて、他にも数十名の前線部隊志願者が乗り込んでくれば、全体に集まった人数からすれば明らかに少ないがこれで全員のようで出発の号令がかかり)
(なんだかこちらの思いつきのような質問により主人に窘められることとなったソリスを少し気の毒に思い、こちらの意図が通じるかどうかわからないが、悪戯を指摘された子供のような表情を浮かべて苦笑いしてソリスに小さく目配せして。剣を使う自分やアスティとはまた異なる戦闘スタイル、それもどうやらギミックがあるよう)
あぁ、確かにそうだな。実戦を楽しみにしているよ。ん、いよいよ出発かい。
(アスティに促され会話を打ち切ると、これから前線部隊として過酷な戦いを共にする顔ぶれを見遣り)
ロゼ、甲板へいこう!
(程なくして動き出した砂上船、周りの冒険者たちが戦前の独特の緊張感に包まれ重苦しい雰囲気漂う中、相方へと甲板からの景色が見てみたいなんて、緊張感のかけらもなくこの場の雰囲気にそぐわない発言しては袖をくいくいと引いて)
──一方その頃、大船団旗艦内部にて
『何ぃ!?ガイアシザーの動きがおかしいだと!?…いつもより侵攻ルートが違い凶暴化までしているとは…ええぃ…!やむを得ん、出撃は取り消し……って、前線部隊の船は既に出航した後ではないか!…これはマズいことになった…』
(観測隊より大船団旗艦の艦長であるダグラスに風雲急を告げる報告が入る。その内容は本作戦のターゲットである巨大な甲殻類ガイアシザーの挙動がおかしいというもので。このイレギュラーだらけの緊急事態の中で正式な戦闘訓練を受けている者の方が少ない冒険者たちがガイアシザーに接敵するのはあまりにも高リスクであり、出撃は取りやめにするべきとの声が周囲から上がりダグラスはその声に従い断腸の思いで祭りの中止を宣言するも、元々先遣隊として目標地点へと先に向かい後続部隊と合流することになっていた前線部隊を乗せた船は既に出航した後で。連絡手段すらないこの状況にダグラスは冷や汗を流し)
(相方に促され甲板に出ると陽光と風に一瞬目を細めるも、広大な砂漠を進む光景に圧倒され。アスティのキャスケットが飛ばされないように気をつけなと身振りで合図しながら、眼下の砂の海を眺め)
へへ、流石に砂漠だから魚はいねぇなぁ。…中央大陸に渡る前にこうして甲板から海を眺めたのがずいぶん昔のことに思えるよ。でかい魚がいたの、覚えてるか?…さぁて、今回の敵の巨大蟹をさがそうかね~
(相方に聞きたかったのは本当は魚ではなくそのやりとり。二人の過去を互いに知る前の関係を、何故だか懐かしく感じて尋ねるも今は前線部隊として作戦に参画中。あんまり感傷に浸ってるときではないと思い直し、本部の緊迫した状況など露知らず、手を額に当ててのんびりターゲットを探して)
覚えてるよ、それ見て出てきた感想が美味しそうなんて、食い意地張ってるみたいでなんだか今になって少し恥ずかしくなってきちゃうけど…思えば遠くまで…っ…!な、何…!?
(砂を掻き分けて進む船の速度は思っていた以上に速く、風に煽られ飛んでいきそうになるキャスケットを両手で慌てて押さえ相方に感謝の意を伝えるようにニッと悪戯っ子のような笑みを向けて、海で見た大きな魚、それを見た時に感じた感想まで明確に思い出すことが出来れば、食にそれなりに貪欲なのは誤魔化しようのない事実ではあるが、とはいえもう少し気の利いた感想は言えなかったものかとあの時の自分を省みて少し恥ずかしくなり、苦笑浮かべ目線遠くに向けて。不意に思い起こされた懐かしい記憶に少しばかり感傷的になりかけた思考は、辺り一帯に響く地響きにより中断させられれば少し離れた地点の砂の地面が大きく隆起していく様子を視認して)
…!あれがターゲットの……!…っ…すごい砂煙りで視界が…!
(砂の海から浮上してきたそれは、長い6本の足と一対の巨大な鎌のような形状をした長く鋭い鋏を持ち、全身を真っ赤な鉱石のようなものに覆われた全長は40m近くありそうな大きな蟹のような姿をした魔物で。鋏をドスドスと砂地に叩きつけてみせれば砂で周囲がまるで砂嵐のように巻き上がり、その激しさに思わず顔を背けて)
『いよいよお出ましか…だが、聞いていた話とは様子が違うようだが…?』
「そうですよね、明確な敵意を向けられない限りあまり攻撃性は高くないと聞いています」
(騒ぎを聞きつけた前線部隊の冒険者たちがゾロゾロと甲板に集まってきて、本作戦に向けて下調べは十分にしてきたらしいアルバスとソリスはガイアシザーの様子に違和感を覚えたようでそう漏らして)
…ッ! …あれかい。想像以上にでけぇな・・。
(砂の海から姿を現した巨体、想像を超えるその大きさにまず圧倒され。質量から想像される圧倒的な破壊力だけでもかなりのものだろうと、アレとの対峙を脳内でシミュレートしながら舌を巻き。その様子を冷静に観察し懸念点を話すアルバスとソリスのペア、その会話の内容がなんとなく聞こえて)
昼寝から起こされて怒り狂ってる…ってわけでもなさそうかい?
(アスティを含め3人に向かって軽口を叩きつつも、自慢の鋭い鋏でぶち抜く対象を求めるように砂の大地を突き刺す巨体を観察して)
『さてな…直接問いただしてみるか?生憎と魔物語はサッパリだがな…始めろ、ソリス』
「かしこまりました、マスター。物質の構成を完了…ファイア!」
(ロゼからの疑問、それに対する答えは持ち合わせてはいないようでアルバスは皮肉めいた物言いで小さく肩を竦めると、傍のソリスへと攻撃の指示を出して。それを受けてソリスは両手を広げ手のひらを真下へ向けて魔力を集中させると、自身を中心とした両翼にそれぞれ3門ずつ、魔力によって生成されたものとわかる淡い光を纏った固定式の大筒が生成され一斉射撃。それらは寸分狂わずガイアシザーへと着弾し怯ませて)
今のは魔道具…!でも、これでこっちの攻撃が全く通用しない訳じゃないのはわかったね、行こうロゼ!最初からとばしてていくよ!
(原理は不明だがソリスは瞬時に大筒型の魔道具を生成し、攻撃を試みたのだと理解して、魔力によって生成された大筒による攻撃は確かに効果が確認出来た、強大な敵だがキチンとダメージは通ることをこの目で確認し、大砲の直撃を受けた部位の赤い鉱石がボロボロ崩れているのがわかり。こちらも出し惜しみは無しだと堕天使の力を解放して、周囲の冒険者たちが堕天使という異質な存在にざわつくのを尻目に大鎌構えて船の甲板を飛び降りて)
(処理が自動化されたシステムのように無駄なく攻撃態勢を整え先制の攻撃魔法を放ったソリスに小さく口笛を吹いて、その流れるような動きを賞賛し)
あぁ、お互い油断すんなよッ
(ソリスの先制攻撃に触発されたように甲板から躍り出て攻撃対象へと突き進むアスティの後を追いながら、抜刀した刃に青白い炎を纏わせ。砂に足を取られる厄介な地形、それを鑑みて間合いを取ることを意識しながら、見上げるように巨体を眺め対象への距離を詰め)
ロゼ、あの巨体を支える脚にはかなりの重量がかかってるはずだから、攻め続ければチャンスを作れるかもしれない、連携して一本狙うよ!
(すぐに追いかけてきてくれた相方と足並みを揃えると、巨体ゆえに小回りが効かないであろうこと、そして甲殻類特有の細く長い足、あの中の一本でも傷を負わせることが出来れば転倒ないし、移動をかなり制限出来るのではないかと推測して横目で視線送りながらそう語りかけて)
『……援護してやる』
「お任せください」
(堕天使化したこちらの姿を見たアルバスは一瞬の沈黙の後、意図を汲んだように二丁の拳銃を構えるとガイアシザーの右側前方の脚へ向けて引き金を引き、光るワイヤーのようなものが放たれれば脚に突き刺さりそのまま身体ごと真っ直ぐ飛んでいき、張り付いてもう片方の拳銃で接射、小爆発を起こしその爆風で離脱して。そこに追い討ちをかけるようにソリスは大量のマスケット銃を生成、それらを一発撃っては放棄、撃っては放棄を繰り返し間髪入れず攻撃を繰り出すとガイアシザーは右前脚に集中するダメージに軽くよろめくような動作を見せて)
おお、任せとけっ!だが、アレの一撃をもらっちまうとタダじゃ済まなそうだな。
(桁違いの破壊力がありそうな鋏を警戒しながらアスティに促された対象の脚を見やると、その直後アルバスの急襲とそれを後方から支援するソリスの連携攻撃を目にし。他人の手柄に乗っかるような形となり少し癪だが、その銃撃が浴びせた火力に対象が僅かによろめいた好機を逃すわけはなく、ダメージが見える脚に青白い炎を纏った刃を叩き入れながら、相方の攻撃に備え即時に反応できるよう神経を集中させて)
ロゼ!私が気を引くから、一発大きいのお見舞いしちゃって!よろしくね!
(アルバスとソリスの連携攻撃によって害され、怒りを燃やすガイアシザーは足元付近の自分たちに敵意を向け鋏を振り翳してきて。そんな鋏による攻撃を引きつけるよう身体強化で高めた走力を以ってわざと真正面を横切るように移動して、かくしてこちらに意識を向けたガイアシザーは鋏を振り上げ攻撃を仕掛けてきて)
っ…ふ、『聖蝕・跳』!
(地面ごと抉るように横薙ぎで振り回される巨大な鋏。伸ばしたしなやかな触腕で地面叩きその弾みで上空へ飛び上がり回避を試みると下を通り過ぎる鋏の上に降り立ち、再び同じ方法を用いて触腕で鋏を叩き跳躍、ガイアシザーの顔がこちらを向いた瞬間に大きく広く広げた触腕で視界を覆って)
りょーかい。ちょいと連携が足りなかったな、頼んだぜ!
(アルバス、ソリスペアに対してスタンドプレーが目立つ自身の行動をやや詫びつつ、アスティの動きに注意を引かれたガイアシザーの目線を確認し。必要最小限の動作で音なく飛び上がり穿ち焔を構えると、火力を上げた青白い炎が力強く燃える。一瞬、敵の懐を一気に切りつけたい衝動に駆られるがその硬さは未知数である為、やはりダメージを与えている脚を完全に破壊し機動力を殺すのが先だと、狙いを定め刃を振り下ろし)
へへっ、焼いて食ったら何人分だろうな、これ
(叩き切った長い脚を見ながら、本体へのダメージと意図した機動力の低下の度合いを探るように眺め)
ナイス連携!祝勝会はカニパーティで決まりだね
(穿ち焔の炎を纏った斬撃を受けて燃え上がる脚、なんとも香ばしい香りが辺りに立ちこめると集中攻撃を受けた箇所がガイアシザーの体重を支え切れずにポッキリ折れて、支えの一部を失ったことで身体が右側に大きく傾いで。確実に大きなダメージを与え、機動力を奪ったのが視覚的にわかれば相方に向けてウインクしてそう軽口を叩いて)
(脚を一本奪った自分たちの戦果を見て、他の前線部隊も手柄を上げろとばかりに我先にとガイアシザーへ向けて突撃を開始して。しかし、その時折れたガイアシザーの脚の断面からこぼれ落ちた、身体の表面を覆う赤い鉱石と同じ色の体液が地面に着弾した瞬間大爆発を起こし、突撃を仕掛けた前線部隊の大半が一瞬で消し飛んで)
なっ……何が起こったの……!?
『迂闊だったな…手負いの獣ほど注意して当たらなければならん…狩りの鉄則だ』
(激しい爆炎と砂煙りの後に残ったのは爆風の外側にいて辛うじて息のある怪我人と、様子見のため下がった自分と相方、そしてアルバスとソリスのコンビのみで。爆発により大きく窪んだ砂地、一気に形勢逆転といった様相に驚愕する自身の傍らでアルバスは眼前の地獄のような光景を特になんの感慨もなさそうに見やりながら冷静にそう呟き)
なんだっ!?
(相方とほぼ同時に叫び、爆発の衝撃に不意を付かれしゃがみ込んで顔を伏せてながら衝撃の正体を探ると、どうやら自身が切断したガイアシザーの脚が爆発したよう。鼓膜はなんとか大丈夫、隣を見るとアスティも驚きはしているが無事なようで安堵し)
…あいつ、屁でもねぇって顔してやがる。大したもんだぜ。しかしどう攻める?迂闊な攻撃は爆発を誘発するな。本体を一気に叩いて息の根止めるしかねぇか。
(平然と状況を見定めるアルバスに気付いて。攻め方を独り言のように呟きながら、相方の見解を尋ね)
ちょっと待って、もしかしたらあの体液を使った攻撃手段を持っている可能性もあるから接近戦は無謀だよ。でも、確かに困ったことになったね…直接攻撃ならなんとかダメージを与えられそうってところでこの展開は……そういえばそろそろ後続の支援部隊が到着する頃のはずだけど…
(遠距離からの攻撃で傷を負わせ、接近戦にて強烈な一撃を加えることでようやく脚を一本奪えた。しかし、あの爆発する体液を見た後ではまた同じ手を使って攻めるのも、不用意に接近するのすら多大なリスクがあり、逸る気持ちに理解を示しつつも相方を制止して。かと言って遠距離攻撃のみでも決定打にはならなそうなのは先程のソリスによる重火器による一斉砲撃に対するリアクションが証明しており、なるほど確かにこれでは討伐は困難な訳だと納得し。せめて援護をしてくれる後詰めの部隊が来てくれないことには勝ち筋を見出すのは中々に困難を極めそうで、思い出したように言及して)
「…先程からずっと見ていますが、それらしい姿は一切見えないですね」
(遠眼鏡型の魔道具手にして覗き込み自分たちが先程やってきた方向を見つつソリスは、本来ならこちらへとっくに向かっているはずの後続部隊らしき船影は見えないと、あるいは自分たち前線部隊は孤立無援の窮地に陥っている可能性を示唆して。そうしている間にガイアシザーはこちらをターゲットとみなし、脚を一本失ったことで緩慢な動作ながらこちらへと迫ってきていて)
……腹を括るしかないみたいだね、このまま船を破壊されたらどの道、砂漠のど真ん中に取り残された私たちに生きる道はない……討伐は無理でもせめて追い払う。ロゼ…生きるも死ぬも一緒だよ…!
(船はかなり長い距離を航行してきたため、既に砂漠の国からは大きく離れていることが容易に想像できて、もしガイアシザーにこれ以上暴れさせて帰りの足を無くすことになれば、食料や水分も必要最低限しか用意していない以上、どの道砂漠の真ん中で野垂れ死にするのは必定で。それならば危険を承知で戦う他ないと、相方へ向けて決死の覚悟でそう口にして)
あぁ、確かに爆死も野垂れ死にもゴメンだぜ。生憎まだ俺たちを葬り去るつもりのようだが、戦意を喪失させるくらいのダメージを与えてやる他なさそうだな。
(脚一本失ったくらいではどうということはなさそう、痛みに鈍感な生物なのかもしれない。しかしながら、むやみに接近戦を挑むのは飛んで火にいるなんとやらになりかねないのも事実。残った戦力である自身と相方、そしてアルバスとソリスのペアでなんとかする他ない)
おっさん、状況は見ての通りだ。お互いここでくたばるつもりはないだろ?…少しばかり協業といこうぜ。
(先ほどの短い戦闘できっとこちらの特性は十分把握しているだろうと、自身の得物である刀に再び青白い炎を浮かべて。即席の安っぽいチームプレーを狙うのではなく、互いのスタンドプレーが作り出す効果を最大限に利用しようと持ちかけて)
『是非も無い、か…ソリス、お前は残る魔力を次の一発に全て注ぎ込め』
「承知しました、マスター。後のことはお任せします」
(選択肢は無いのだろうとロゼの言葉に一つため息をついたアルバスはソリスにそう言い含めてから二丁拳銃構え、砂地をものともせずまるで接地面が砂の影響を受けずまるで浮いているかのような足取りでガイアシザーへと距離を詰めていき。するとガイアシザーは外敵を追い払おうと身体を震わせ、自らを覆う赤い鉱石を振り払うように周囲にばら撒き始めて。それらは地面に着弾すると赤みをより増していき時間差で爆発を起こして。その爆発の間を縫うようにアルバスは駆け抜けていき)
ロゼ、私たちも続くよ!さっきから見ていて気がついたんだけど、あの蟹は凶暴だけど一度敵視した存在がいるとそれ以外は目に入らなくなる質みたい、そこを突こう!
(戦いながら観察していて気付いたあの蟹の欠点、頭に血がのぼりやすい質なのか一度ターゲットを決めると執拗にその相手だけを狙い続け、状況判断能力も高くなさそうなのを感じ取り。そういった欠点を補うため周辺を無差別に爆破する能力を持っているのだろうと分析し、その見立て通り既にこちらには目もくれず砂の上を駆けるアルバスへ執拗に鋏を突き立てようとしていて狙うは死角だと相方へと伝えて)
私たちも一発大きいのかましちゃうよ『聖蝕・筒』!ロゼっ……!
(アルバスが稼いだ時間、そこに叩き込むのは二人の合わせ技だと相方へと合図を送り、自身は触腕を操り細く長い内側にうねりのある筒を作り出して。すると遮る物のない砂漠を吹く強い風はその筒の内側を渦巻くように吹き抜けていき、その風下にいるはガイアシザー。即席の巨大なガスバーナー、空洞を吹き抜ける風は炎の勢いをより強め対象を焼き尽くすことだろう)
(細かい段取りを相談することもなくこちらの意図を理解し行動に移すアルバスとソリス、囮となり砂の上を駆ける彼を串刺しにしようと巨大な鋏が幾度となく振り下ろされるもその速さを捉えきれないそれは虚しく砂に埋まり。アスティに促されこちらも臨戦体制に入りと刀を構え直して)
あぁ、こっちも負けてられねぇな。行くぜっ!
(火薬のような爆撃を操るガイアシザーに火力にものを言わせた攻撃がどの程度有効かわからないが、やるっきゃないと腹を括り。穿ち焔を受け継いでから初めて全力を注ぎ込んだ浄化の炎が燃え盛り、それはアスティが起こした風の酸素を得てさらに勢いを増す。アルバスを突き殺そうと躍起になるガイアシザーの斜めから一気に距離を詰め、硬質な殻をバターのように切り裂くことだけをイメージし刃を薙ぎ払って)
『ここまでの火力とはな…俺まで焼く気か…』
(渦巻く風に煽られ燃え上がる炎は火炎の渦のようになりその威力をそのまま乗せた斬撃がガイアシザーを襲い、得物の大きさからは考えもつかない程のその驚くべき火炎の勢いと熱気にアルバスは僅かに目を見開くと距離をとって)
「錬成完了…ありったけ打ち込みます…!」
(炎に包まれ悲鳴あげるガイアシザー、それに対して照準向けるは一撃に心血を注ぐべしと機を窺っていたソリスで。15メートルほどの長さはあろうかという、先端に返しのついた矢の装填された弩砲に自ら乗り込み狙いを澄ませて放ち、それはガイアシザーの本体上部に突き刺さり、その上矢には火薬が内蔵されていたらしく発破するという徹底ぶりで)
やった…!流石にここまですれば……!?嘘……っ……
「マスター…こんな時ですがすみません…休眠モードに入ります……」
『…どうやら年貢の納め時のようだな…』
(爆炎に呑まれ姿が見えなくなったガイアシザー、出し惜しみ無しのこのパーティにおける最大火力を叩き込み、確かな手応えもあった。討伐は厳しくともこれ以上こちらを追撃する余力はもうないはず、そんな考えを嘲笑うかのように晴れていく煙の中に煌々と黄色い光が輝き、それが怒りに燃えるガイアシザーの眼光であるのがわかり、動きは鈍るどころか速度が上がっているようにも見えて、どうやら向こうはこれからが本領発揮といったところ、加えてアルバスとソリスペアもソリスの機能停止により戦力は激減しており、相方も穿ち焔の最大火力を放ったばかりとあって、いよいよもって打つ手なしの状況に追い込まれて)
おいおい、マジかよ。なんつーカニだ。
(軽口を叩きながらも状況は最悪、このまま真っ向からやりあっても叩き潰されるのが関の山。そもそも相手の硬い殻に致命傷を与えられる術がなくなっている以上、正攻法での戦いは成り立たない)
アスティ、一旦退く他ないと思うが何か策はあるか?
(砂上船にちらりと目をやるも、少なくとも自身は操縦の仕方などまったくわからず。壊滅的な打撃を受けた前線部隊に果たしてそれを動かせるのだろうかという懸念はあり、退くにしてもそのフィジビリティには懐疑的で)
っ……悔しいけどここは引こう……
(何もかもがうまく行くわけじゃない、当然わかっているつもりでいたが、それでもここまでの長い旅路の中で相方と共にどんな困難も乗り越えてきて、きっと今回も…という思いもあって。それ故に味方が到着しないという想定外の事態にあり本来なら大規模作戦で追い払うのがやっとの敵であったとはいえ、万策尽きて退却する他ない状況にまで追い詰められた現実に悔しそうに歯噛みして撤退の判断をして)
『……!これは……っ、伏せろ!死にたくなければな』
な、何を…!
(船をこの人員で動かせるかはわからない、しかしなんとかするしかないと船に乗り込もうとするこちらに向けて何やら切羽詰まった様子で警告を送るアルバスに何事かと思い動揺しつつ、言う通りにして身体を砂地に伏せて)
あれは…歪み…!?
(身体を伏せたまま上を見れば空がヴンッと音を立てて丸くその空間だけが切り取られたように真っ黒な空間が広がる。まるで空にもう一つ真っ黒な太陽が現れたような光景。所持する歪みを検知する水晶が激しく輝き、あれが巨大な歪みであると理解すると同時に、真っ黒な歪みから大規模な魔術を思わせる紫色の魔法陣が展開されその中心から金色をした表面に見慣れぬ淡く輝く紫色の文字が刻まれた先端の尖った杭のようなものが暴れるガイアシザーへと発射され。そしてそれがガイアシザーのすぐ真上に到達した瞬間、それは金色の閃光を放ってガイアシザーの全身を丸ごと飲み込むほどの大規模な爆発を起こし、離れた場所にいるこちらまで激しい熱風が襲ってくれば身体を伏せたまま耐え忍んで。やがて晴れる砂埃、刮目して爆心地見やればそこに居たはずのガイアシザーの姿は跡形もなく砂地がその地点のみ深穴のように大きく深く抉れてしまっていて)
な、なんだよアレ!?
(珍しく少しだけ声を荒げたアルバスの様子に気づかないくらい眼前に現れた真っ黒い歪みに驚愕すると、その歪みから放たれる閃光と爆炎に息を呑み。底が見えないほど深く大地を抉った破壊力に背筋が冷え)
アルバス、あんた今のが何なのか知ってるのか…?
(爆音で膜が張ったみたいにおかしくなった聴覚がようやく元に戻ってきて。アスティもどうやら無事な様子を確認すると、少しだけ冷静になった思考が先ほどアルバスが発した言葉を思い出し浮かんだ疑問を素直に口にして)
『災禍の楔…俺はアレをそう呼んでいる…7年前、あの異常な量の魔力を内包した光によって俺の故郷は…』
(投げかけられた問いに正式な名称は知らないながらも、便宜上の呼称を口にして。それが純然たる膨大な魔力の集合体であり、人の居住地を一つ丸々破壊するほどの規模の破壊力を内包したものであるということを示唆するように7年前にアルバス自身の故郷を襲った悲劇を憎々しげに語り、拳を強く握って)
『同様にアレの被害を受けた地域は非公式ながら何例か確認されている…ギルドの連中も嗅ぎ回っているが尻尾を掴めずにいるようだな。だが、ロズウェル…貴様には面白いことを教えてやる…アレに刻まれた文字は…"聖呪語"堕天使共が禁術を行使する時に用いる言語だ』
(話しながらロゼへ向けて一歩、また一歩と歩み寄るアルバス、すれ違いざまにまるで彼が何者であるか全て知っているかのような口ぶりで一つの事実を口にして、同時に彼の相方でもある少し離れた場所で身体の砂を払うアスティの方を一瞥してから感情の見通せない暗く濁った目を向けて)
ロゼ……?
(なにやら少し離れた場所でアルバスと話し込む相方、少し近寄り難い雰囲気をアルバスから感じてすぐには声をかけず身体の砂を払ったりするフリをしながら様子を窺っていたが、次第に雰囲気が重苦しいものになっていけば耐えかねて相方の袖を引いて声をかけて)
災禍の…楔…
(アルバスが語った彼の故郷を奪った出来事に共鳴するかのように自身の過去が脳裏をよぎり心臓が早鐘を打って。そして呟かれた"堕天使"という単語に驚愕しながら彼の底の知れない瞳を呆然と眺めて)
…アルバス、お前…。
(相方との旅路で知った二人の堕天使に纏わる出来事、それを知るのは当人たちと自分だけだと錯覚していたのだと、眼前の男の意味深な口ぶりからそう気付かされて。深みに嵌りかけた思考を引っ張ってくれたのは、アスティに袖を引かれる弱弱しい感触。はっとして彼女の不安げな表情を見やり)
アスティ、どうやらカニの餌になるのだけは避けられたらしいぜ。…色々と話したいこともあるが、まずは生還が先だな。俺たちで船を動かすか救助を待つか、二つの線で考えながら何とかしようぜ
そうだよね、砂の上じゃ流石に漕いで……っていうのは無理だしどうすればいいかなー?
(こちらを振り返った相方の表情は若干のぎこちなさはあったものの概ねいつも通りで、安心感からこちらも表情を綻ばせて。相方と神妙な表情で言葉を交わしていたアルバスのことは気がかりだったが、当の彼はといえば既にこちらには関心を無くした様子で先程の爆発でまきあがった砂に埋もれた機能停止状態のソリスの首根っこを掴み引っ張り上げているのが見えて。再び相方の方へと目線戻すと帰る手段について話し合い、船とはいえ水上ではないため以前のように漕いで進むのは無理か、なんてことを口にしながら意見を交わし)
うーん…このまま待つ他なさそうだね……あっ、見て!あれってもしかして、あの騎士団長の乗ってた船じゃない!?
(ああでもない、こうでもないと言葉を交わししばらく時が経つもこれといった名案が浮かばず、一応アルバスにも投げかけてみるも『コイツが目を覚ますまで待て』の一言のみで。どうやらソリスならなんとかなる見立てはあるようだがそれ以外の打つ手はないようで、いつ目覚めるかなど具体的な言及はなかったがこのまま待つしかないかと思い、何気なく周辺に何もない砂漠の風景眺めていると遠目に何かが砂煙りを上げながらこちらへと向かってくるのが見えて、それが大船団の中央にあった一番立派な作りの砂上船、旗艦であることに気づき)
中央大陸目指して二人してオールを漕いだのがなんだか随分昔に感じられるなぁ。…ん、あの偉そうなヤツの船かい。
(アスティと話していると少しばかり毛羽立った心が幾分マシになっていくのを感じて。それに輪をかけて子猫のように主人に引っ掴まれるソリスの様子を見て笑っていると、アスティに促されこちらに向かってくる遠くの砂煙を認識して)
おぉーいッ、ここだ~!…すっかり忘れてたが、援軍が全然来なかったな。クソ、あの偉そうな隊長にたっぷり高い酒を振舞ってもらうように文句言ってやるぜ。
(自身が大きく見えるように目一杯身体を伸ばして手を大きく振って。ほぼ壊滅状態となってしまった前線部隊だが、それ相応の報酬の類を受け取らねばと企み)
『おお…よくぞ無事であったな、それでガイアシザーはどこへ行ったのだ?』
(一直線にこちらへとやってきた船が停泊し、スロープより降りてきたダグラスは相変わらず胸を張り偉そうにしながらも、無事に生き残りがいた事を喜び。ガイアシザーの姿形も見えない事に疑問を感じたようで遠くを見渡すように視界を巡らせていて)
討伐されたよ、やったのは私たちじゃないけどね…そんな事より、どうして援軍が滞ったのかの説明が欲しいかな。おかげで生き残りは私たちだけ…事と次第によっては…
『す、すまなかったと思っている…!仕方が無かったのだ、出発前にガイアシザーが異常に活性化しているという報告が入ってやむを得ずだな…』
(不本意な決着ではあったがガイアシザーの討伐は成ったという事実に変わりはなく、それをありのまま伝えると瞳をスッと細めてここに生き残った全員の気持ちを代弁するように毅然とした態度でダグラスを問い詰めて。するとダグラスは思い切り狼狽えながら後続部隊の出撃が遅れた理由を答え、バツが悪そうに目を逸らして)
「なるほどな…恐らくガイアシザーはアレが自身に向けられていることを既に察知し、それ故に凶暴化した…あれは怯えからくる防衛行動だ」
(ダグラスの話しの内容と目の前で起きた出来事、アルバスはそこから総合的に判断して一つの推論を口にすると、得心がいったようでそのままひと足先に船へと乗り込んでいって)
よくぞ無事でって…こっちはほんと死ぬかと思ったぜまったく。
(アスティに問い詰められ漏らした言葉尻から、ガイアシザーの不穏な動きを認識しながらも前線部隊をぶつけたのだと理解して。思うところはあるがその辺りも含めて自己責任なイベントだと思うことにして。アルバスが話した閃光と堕天使の下りについては気になるところだが、今は相方共々無事にこのトラブルを乗り越えられたことに安堵して)
アスティ、俺たちもとりあえず船乗ろうぜ。…戻ったらたっぷり報酬の話をふっかけても良いかもしれねぇなぁ。
(やや下卑た笑みを浮かべながら、相方を促しアルバスに続いてスロープへと進み)
うんうん、なんと言っても王国の騎士団長様だしね、沢山せしめちゃおう。結果はどうあれ今回は私たちの手柄だもん、正当な報酬の支払いが無かったとあっては国の沽券に関わる大問題だよ
(今回ばかりは擁護のしようもなく、そもそも人格者とはとても呼べないダグラスの小物っぽさすら覚える言い訳の数々は流石に腹に据えかねているようで相方の言う通りしっかり貰うものはもらってやろうと、こちらもイタズラっぽく笑い小さく肩竦めると皮肉たっぷりな言葉を並べ立てて)
まあ…ロゼも私も、現物よりは大宴会とかの方が、結局楽しいし嬉しいっていうのはあるけどね
(しっかり責任はとらせてやろうという私怨混じりの思考はありつつも、なんだかんだ自分たちは期せずして支援を受けながらの旅となっており、資金源にそこまで困っていないのも事実で、基本的にお祭り騒ぎが好き…と、くれば国を挙げての大宴会を期待しようかなんてノリ良く上機嫌にそう話して片目閉じて)
…そういえば…例の歪みについてはちゃんと報告をあげておいた方がよさそうだよね
(半分本気、半分冗談で相方と共にまたも大きな困難を潜り抜けた喜びを分かち合うその一方、頭の片隅にはちゃんと先程見た真っ暗な空間の広がる歪みに関連する情報はその情報を欲している人物へと抜かりなく届けようと相方にだけ聞こえるよう小声でそうヒソヒソ話しかけ)
おお、いいねぇ。ガイアシザー討伐祝いってことで、またパーッと飲み食いしたいぜ。…まぁ、厳密にはやっつけたのは俺たちじゃないけどな。。
ん、そうだな。きっとガリオスのおっさんもこの件に対しては、いろいろとありそうだしなぁ。ギルド経由で報告を上げる感じかい?
(すっかり忘れていた、とまでは言わないが、アスティに小声で話し掛けられてふとガリオスの顔を思い浮かべて。この目で確かに見た空間の歪み、そしてアルバスが語った事柄をどこまで盛り込むかは、別途アスティに相談しようと考えて)
よし、大体生き残りは乗船したな。怪我人もいるんだ、そろそろ船を出してくれよ、ダグラスさんよぉ!
(参加の時と同じように、再び不躾にダグラスに声を掛けて)
(相方によるトゲのある物言いに、ダグラスは見るからに顔を真っ赤にして怒りに打ち震えていて。しかし、実際今回の祭りはガイアシザーの討伐が成ったという一点を除けば類を見ない程の犠牲者を出し、あわや前線部隊全滅という事態に陥り、とても成功とは言えない結果に終わっていて。その責を彼はこれから問われることになるだろう、そんな状況で更にトラブルの種を蒔くべきではないと考えるだけの頭はあるようで、悔しそうにしながら黙って渋々船を出航させて)
うん、そのつもりだよ。ギルドに報告書を提出すれば良いって話だったよね…とりあえず、例の歪みの件だけはちゃんと伝えておこうかなって
(動き出した船の船室、相方からの問いかけに答えながら羊皮紙とペンを荷物から取り出して早速報告書の記入を始めて。元は王族、それも第一王女ということもあってこういった執務の類いには慣れっこでサラサラと軽快にペンを走らせ。歪みの件だけという言葉には、それ以外の原因や由来の不確かな物については今回の報告では触れないことを言外に示しており、それを証明するように書かれている内容は観測地点、時間帯、形状やサイズなどの客観的に見ても疑問を呈しようがない確定した情報のみで、そこから現れた謎の兵器やそれによって超大型の魔物が跡形もなく消し飛んだなどといったことには一切触れておらず)
…それよりもロゼは身体はなんともないの?今回は結構ソレ使ったよね
(そう言えば、と手元の羊皮紙から顔を上げて思い出したように彼の腰の得物とその顔を交互に見比べながら問いかけ。今回は様子見や出し惜しみはほぼ無しで、内側に込められた浄化の炎の力を最大限行使していた様子は自身もよく見ていたため、身体の方に何か悪い影響が出ていないかを案じて。むしろあれだけの力を扱ってそれでいてなんともないということであれば、自身の力の残滓と彼自身の相性が特別良く、適合した結果最適化されているのではないかと憶測混じりに感じていて)
へぇ、慣れたもんだなぁ。
(報告書をまとめるアスティのこなれた様子に関心し、思わず声を上げて。ちらりと見えるその内容は事実をベースに憶測や不確定要素を排除したシンプルなもの。なるほど、と納得し報告書のまとめはアスティに任せて)
ん、そうだな、確かに全身的な疲労というか、そういった類のものは感じるよ。それでもだいぶこなれてきたというか。あとはもう少し効率良くコイツを使えるよう、実戦あるのみかな。
(何度かの実戦を経て少しずつ身体の一部のようになってきた穿ち焔。それでも、一流のバイオリン奏者が弓の先端まで腕の延長のように操るようにはいかず)
さぁて、この祝勝会が終わったらいよいよ砂漠の国ともお別れか。次はそろそろ涼しいところに行きたいなぁ。
(ガリオスの依頼を受けている身ではあるが、まるで気まま旅を地で行くような言葉を発して)
あれだけの火力を引き出してそれだけで済んでるのは凄いことだよ、当時の私でもあれだけの力を問題なく出せるようになるまでは修行を何度もさせられたしね…ロゼも案外自覚が無いだけで私に近い素質を持っているのかも…それか基礎体力がものすごいか
(疲労感はあるというその言葉に嘘はなさそうだが、表面上はそうは見えないのを見るに、そこまで肉体に大きな影響が及んでいないのは間違いなさそうで。仮にもガイアシザークラスの魔物にダメージを与える程の大火力、それを放って表面上でも平然と振る舞える人間がこの世に何人いるだろうと考えた時に、彼自身武技一辺倒で学んで来なかっただけで何かしらの特別な素質を持ち合わせているのではないかとそんな仮説を立てるが、単純に持ち前の体力でゴリ押している可能性も考えられる為判断に困るところで)
そうだね、砂はもうこりごりだけど…国自体はいいところだったし居心地も良かったから少し名残惜しいね。涼しい場所っていうと…そういえば、ちょっと面白い話しを聞いたんだけど…この砂漠から南下した先に高い木々に覆われた大森林があるんだって、そこには陽の光が全く届かない明けない夜の国があるって話だよ
(思えば砂まみれになった思い出ばかりだったが、その中にもなんだかんだで沢山の楽しい思い出があり、国自体もとても素敵な場所であった。そこを離れることに一抹の寂しさ覚えつつも次の旅の行き先について考える上で一つの案としてとある変わった国について語り)
名前は不穏な感じだけど別に怖い魔族が住んでるとかそういう感じじゃなくて、驚いた事にドワーフとエルフが生活圏を共にして独自の文化を築いてるんだって
(名前だけ聞けばいかにも陰鬱で不穏な場所を想像してしまいそうだが、実際にはそういった後ろ暗い事情とは無縁であり内情も明らかになっているちゃんとした国らしいと言葉を続けた上で、不仲であることが当たり前とされる二つの種族が手を取り合って暮らす国であることを興味深そうに話して)
ま、飯食って酒飲んで寝れば疲労なんてあっという間に吹っ飛ぶだろうよ。
そうだな、なんだかんだで過ごしやすくて良いとこだったよなぁ。…店の食べ物は少し独自なのもあったけどな。
へぇ、ドワーフとエルフがねぇ。なかなか面白そうだし、次はそこに行ってみようぜ!昼間も暗いっつーと、朝から酒飲んでも良さそうだな、へへへ
(陽光を遮る森の中の常闇の国、というとひどく陰鬱な想像をしてしまうがどうやらそうではないよう。本来相性が悪いことが多いそれらの種族が共生しているというくらいだからきっと旅のよそ者、それも人や天使という異種族にも友好的な気がして何やら楽しそうな旅の予感に明るく賛同して)
ふふ、そうだね!ドワーフ謹製のお酒も楽しめるかもしれないし、楽しみだね
(合法的に昼間から飲んだくれることができるなんて、なんとも相方らしい着眼点にクスクスと可笑しそうに笑いながら賛同して、手先が器用でもの作りに長けたドワーフの酒造技術についてはそれなりに広く知られており、酒を嗜む者なら一度は楽しんでみたい逸品に出会える可能性があるとくれば、酒好きの相方でなくとも期待に胸が膨らんで)
(やがて船は砂漠の国のゲートへと到着し、外では後続部隊として祭りへと参加予定だった冒険者たちが出迎えて。その人混みの一番前に立つ威厳を感じさせる高貴な身なりをした初老の男性が前に進み出ると、船から真っ先に降りようとスロープを歩くダグラスを睨みつけて)
「ダグラス、これはどうした事だ?」
『へ、陛下!?何故このような場所へ…!?』
「先に質問をしているのはワシの方だ。まあよい、弁明があるなら後でじっくり聞かせてもらうとしよう…連れていけ」
(男性を見た途端スロープより危うく転落しそうになるほどの勢いで狼狽えるダグラス、その態度と発言から国王が直々にここまで出張ってきたのだということがわかり、とんでもない不祥事を起こした自覚があるダグラスは顔が真っ青になっていて。そんなダグラスへと冷やかな言葉と目線をなげかけた国王は側に控える兵士たちに命じて彼を連行して)
「勇敢なる戦士たちよ、ワシは国王アンドルフ。大方の事情はここに残った者たちより聞いた、此の度は我が配下の失態により其方らを危険に晒し、心より申し訳なく思う…よくぞ生きて戻ってくれた。ダグラスには然るべき処分を下す、ガイアシザー討伐の褒賞も用意しよう、ここはワシに免じてどうか怒りを抑えて欲しい」
(連行されるダグラスのことなど一切気にも留めず、生き残った前線部隊の前に立つ国王アンドルフは、一国の王でありながら自らの部下の失態を恥じ、その責を一身に背負い、冒険者に過ぎない自分たちに向けて頭を深く下げて謝罪をして。ダグラスの上に立つ者とはとても思えない心意気を示したその姿に不満をこぼす者はこの場には誰もおらず、後日恩賞も兼ねた大規模な酒宴が開催される運びとなって)
ほーん…、国王様はしっかりしてるんだなぁ。ま、こんな厳しい環境でまともな国として栄えているんだし、当然といえば当然かねぇ
(見ていて少しだけ気の毒になるほどダグラスとの格の違いを見せつける国王アンドルフの毅然とした立ち振る舞いの関心し、やや無礼とも取れるストレートな感想を呟き)
さぁて、盛大な宴を楽しみにしつつこの国を出る準備をぼちぼちしようかね。
(しばし世話になった宿を目指しながら、宴までの過ごし方を考えて。僅かばかり心を通わせたアイツら(駱駝)に、餞別の品として質の良い干草を食わせてやろうと妄想して)
それじゃあ私は国を出る前にいくつか気になった魔道具を買っておこうかな
(この国でやり残したことや後悔するようなことはないようにと改めて考えを巡らせば、旅の必需品というほどのものではないがいくつか旅先で役に立ちそうであったり、冒険を豊かにしてくれそうなものなど、いくつか自分で目星をつけていた品を国を出る前に購入しておこうと、こちらはこちらで思った事を口にして)
(そして、互いに思い思いに、新たな旅立ちに向けた準備をしつつこの国で過ごす最後の時間を堪能すれば、滞在の最終日として定めた日の前夜に王宮で開催される蟹漁祭の参加者たちを労う盛大な酒宴に参加して)
『そなたらが、前線部隊の主要メンバーとして、かのガイアシザーと戦ったのだろう?大したものだ、このまま我が国の将として国防の要地を任せたいほどだ』
お褒めに預かり光栄です。ですが私たちは根無し草、気ままな旅を続ける方が性に合ってますので。…ね、ロゼ?
(前線部隊でほぼ無傷で生還した自分たちへ向けてアンドルフからの最大級の賛辞、国防の要などという大それた役目を任せたいと、まるで英雄扱いかの如く評価に対して恭しくお辞儀をすると畏まりつつも丁重にお断りし。既に飲酒が進んでそれなりに出来上がっている様子の隣の相方の方を見てニッと笑い。そういえばと思い周囲見渡せばガイアシザー戦で自分たちと共に戦果を挙げ、アンドルフが自分たちに対するのと同じぐらい関心を示しそうなアルバス&ソリスのペアはこの酒宴の席には確認出来ず)
へへ、相棒の言うとおり俺たちはどこかに腰を落ち着けたらきっと退屈しちまうんでね。でもこの国は気に入ったよ、またいつか立ち寄れたらいいなと思ってるよ。
(賛辞を受けあくまで自然体で返答し、アスティとそれとなく視線を合わせて。きっと自分が慣れない畏まった振る舞いをしたところで、眼前の老人にはその滑稽な付け焼刃は全く持って意味を成さないだろうと苦笑し。アルバスとソリスの姿が見えないことに少しばかり違和感を得たが、和やかに進む酒席に興じ次第にその思いは薄れていって)
…さてと、そろそろお暇しようかね。アスティ、大丈夫そうかい?
(気付けばだいぶ長いこと話し込み、酒も進んで。そろそろ頃合かというところで念のためアスティに尋ね)
『待て。明日、この国を発つのだろう?ならば砂の海の外まで我が国の船で送り届けさせてもらおう。勇気ある友の旅立ち、せめてそれぐらいはさせてもらえないか?』
…だって、ロゼどうする?
(宴もたけなわ、暇を告げる相方の言葉に乗じて返事をするよりも先に口を挟んできたのはアンドルフで。彼には言葉を交わす中で次の目的地や出発が明日である事を伝えてあったため、そんな自分たちのため最後に砂上船にて砂漠の外までの送迎を申し出てきて、正直こちらとしては再び砂漠を長い距離移動せずに済むため文字通り渡りに船な提案であるが、念の為相方にも意見を求めるように振り返って尋ねて)
おお、助かるねぇ。アスティ、お言葉甘えて送ってもらうことにしようぜ!駱駝を使うよりだいぶ短い時間で砂漠を抜けられそうだ。
(宴会からの送りなんて至れり尽くせりだが、ガイアシザー討伐では命を掛けて戦い生還したのだからそれくらいの礼は受けてもよいのかもしれないと、相方に乗り気で返事をし)
…アスティ、そういうわけだから明日寝坊しちゃカッコ悪いからさ、起きられなかったら引っ叩いてでも起こしてくれよ…っ
(明朝の心配事に対する予防策をこそこそと小声で相方に相談して)
最悪ロープをくくりつけてでも連れて行くから安心してね
(例の如くというべきか、朝起きれなかった時のフォローをお願いする相方を振り返ると仕方ないなぁと言わんばかりに苦笑浮かべつつ、対応も手慣れた物で雑な扱いも辞さないと冗談まじりに軽口を叩き、アンドルフへ向き直るとこちらの意思は固まったことを伝えては、最後に暇を告げて会場を後にして)
ロゼ、早く早く…!こんな日に限って二人揃って寝坊しちゃうなんて…もう…
(翌日、長期間世話になった宿屋を出て船の出航予定地として指定された国の西門へと駆け足で向かう。宴会の後、本来なら早くに休むつもりだったがこの国での滞在における思い出話に花が咲き眠りについたのは予定よりもずっと遅い時間になってしまって。その結果二人揃って出発予定時刻ギリギリに目を覚ますという失態を演じ、荷物を急ぎ纏めて宿屋を出て。寝起きでやや乱れ気味な髪を整えながら足を動かせば相方を急かして)
ははは、やっぱり二人揃って夜更かしするとダメだな!んでも次はずっと夜の国だぜ、寝坊しても起こられないかも?
(まだ寝ぼけているのかというような、よくわからない謎の理論(?)口走りながら光の速さで荷物をまとめ、世話になった宿屋の主人に慌ただしく挨拶をし宿を後にして)
…はひー、寝起きで全力疾走はさすがに堪えるぜ、、、ん、アレかい、船ってのはッ
(まだ身体の半分は眠っているような状態で、相方に急かされ条件反射のように足を動かして。そうこうしているうちに指定の西門が見えてくると、自分たちに為に用意してくれた船らしきものが見えてきて、ようやく足を休められそうだともう一踏ん張りし)
ふぅ……そうみたい、待っててくれてよかったぁ……
(約束の場所へと辿り着くと、自分たち二人のためだけに用意されたとは思えないほどに大きく立派な船があり、他にそれらしいものは周囲に見当たらず、船の傍に立つ船頭らしき気の良さそうな男性がこちらに手を振るのを見ればどうやらあれで間違いは無さそうだと確信して。国王が申し出た送迎に遅刻するという非礼にも焦れずに待っていてくれたことにようやく安堵して膝に手をついて呼吸を整えて)
…本当にありがとう!王様によろしくね。…さてと、それじゃあ大森林目指して気張っていこう!
(船は砂をかき分け進み、あっという間に砂漠の最西端の荒地との境界線にまで辿り着き、船頭の話によればこの先真っ直ぐ行けば夜の国のある大森林に辿り着くとのことで、彼へとお礼を述べて大きく手を振って別れを告げれば相方の方へ向き直り満面の笑顔を浮かべると意気揚々と歩き出して)
なんだか二人で山歩きするのも久々だなぁ。心なしかだんだん陽の光が少なくなってきた気がするし、まぁ順調に大森林に向けて進んでるってことかねぇ
(砂漠の国の思い出を胸に荒地を二人して進んでいくと、少しずつ背の高い木々が目立ち始め次第に周囲はうっすらと陽光が射す湿った空気を淀ませた森へと変わっていき。ある程度歩いたところで休憩を取ろうと、倒木に二人して腰掛けながら軽食をつまんで)
ドワーフとエルフの国かぁ。…ルーシエンみたいのがいっぱい居たらうるさそうだなぁ。
…アスティ。
(目指す常闇の国をのんびり想像していると、ふと二人の周囲に不穏な空気…殺気を感じ小さく相方に告げて。薄暗い木々の間を縫うように移動する四つの赤黒い瞳を捕らえたその刹那、自身より頭一つ分は楽に大きな巨体が飛び込んでくると、巨大な戦斧の一撃が二人の間に叩き込まれ。飛び散る木片と砕けた岩石を避け後ろに飛びつつ、もう一つの小柄な黒い影が素早くアスティに向かって距離を詰めるのを認識し。それが両手に握った小振りのマチェットの刃が空気を切り裂きアスティに襲い掛かり)
もう一人居やがるッ、気をつけろ!
(刀を抜きながら、もう一体の人影への警戒を叫び)
っ…!
(隠しきれない殺気のこもった気配、相方より忠告受けるより僅かばかり速く二つある影のうち一方がこちらに襲い来るのを察知して。小柄ながら鋭利な動作で空気を裂くように唸りをあげて迫る刃の軌道を読み切って一手目を軽く後方へのステップを踏み最小限の動作で回避、眼前を掠める刃に前髪の先端部がはらりと地面に落ちて。相手は二刀の使い手、すぐさま二手目が来るのを予知し、瞬時に黒翼紅眼の姿へと変化し、先程よりも更に深くより確実に仕留めにくる必殺の一閃を強化された身体能力活かして後方への宙返りでやり過ごして、空中で自らの羽根を一枚引き抜くと魔力を込めて大鎌へと変化させそのまま姿勢を崩すことなく地面へと降り立つと同時に大鎌の先端より放った複数の触腕の先端尖らせ、あの素早い身のこなし対象の位置を確認してからでは遅いと判断し前方を無差別に刺し貫いて)
『聖蝕・棘』……!くっ…仕損じた……ロゼ、気をつけて…かなり手強いよ
(正確な位置の把握までは出来なかったとはいえ、それでも絶妙なタイミングで、出来る限り逃げ場を与えずに選択肢を潰すよう放った棘の雨だったがそのいずれもターゲットの肢体を捉えるには至らず。しかし敵方としても今の一撃は流石に予想外だったのだろう少し距離を置いて間合いを測ってこちらの隙を窺う相手から目を逸らすことなく注視しつつ、背中預ける相方へと思っていたより簡単な相手では無さそうだと、より一層の警戒を促し)
(アスティの俊敏な身のこなしと反撃に警戒したのか、二刀流を構えた姿勢を低くして無言で間合いを取る襲撃者の片割れ。長身のそれと同じく黒装束に身を包み、生気のない赤黒い瞳で相方と自身を観察して。やられっぱなしでたまるかと、撹乱の為の初手を繰り出した巨体に向けられた鋭い刃の一撃が呆気なく相手の左腕を切断するが、怯むことなく片手で掴んだ戦斧によるカウンターの一撃が繰り出され、それを飛び下がって躱し)
…気持ちわりぃ奴らだな、痛覚遮断の魔術でもキメてんのか?
『貴様ら、何と戦っている?…ほう、堕天使か。興味深いところだが、あいつらを逃すわけにはいかぬ。退くぞ、ラヴクラフト』
(気配なく現れたもう一人の男。声色とグレーの髪、そして顔に刻まれた深い皺がある程度の年齢を重ねていることを物語っていて。ラヴクラフトと呼ばれた巨体が自身の腕を拾い上げると、跳躍し大木に斧を叩き入れ。ワンテンポ遅れて倒れる大木が地響きに似た轟音を発する間に、三人の襲撃者は眼前から姿を消していて)
…アスティ、無事…だな。
なんだよアイツら。まさかドワーフとエルフの国の連中が侵入者に牽制…って感じじゃないよな。。
それなら私たちをほったらかしにしてこの場を去った理由が説明がつかないよ。加えてあの口振り…本当の狙いは私たちじゃないみたいだった
(こちらめがけて正確に切り倒された巨木、それの回避に一瞬気を取られた隙に正体不明の襲撃者たちの姿は既に影も形もなく行方をくらませていて。まるで魔物と見紛うような、異様な気配を持ち、キチンとこちらからの攻撃は通用するようだが、そのダメージすらものともせずにまるで与えられた役目を全うする為だけに行動する人形のように異質な存在。何の準備や知識も無しに立ち向かうのはあまりにも危険で得策とは言えないため、むしろあちらから退いてくれたのはこちらとしても好都合であったと言えて、周辺の危険が去ったのを確認してから戦闘態勢を解いて。普通に外部との国交のある真っ当な国であるという事前情報に加えて、仮に余所者への牽制や排除が目的ならば一切の通告や警告もしないのはなんとも妙で、ここまでの少ない情報から自身が彼らに向けて感じた印象と考察を相方に向けて口にして)
ん、確かにそうだな…。なんとも腹立たしい奴らだぜ。よくわからんとばっちりでまた襲われたら堪ったもんじゃないし、早いトコ大森林を目指そうぜ。
(思い返すと腹立たしさが込み上げてくるも、同時に薄気味悪さも感じて。あの体温を感じさせない二体もさることながら、アスティを見遣り"堕天使"と即座に判断したあの老人。蟹漁祭のアルバスといい、どこか不穏なものを感じながらもそれは内に秘め薄暗い森を二人して進んで)
あのジジイも口走ってたから少し気になったんだけど、堕天使って見る人が見ればすぐにわかるものなのかい?
そもそも天使って種族だって珍しいのに、さらに堕天使となるとだいぶレアっつーかなんというか。そういえばアルバスも知見があるようだったぜ。
(暗い森を進みながら、思い立ったこととそういえばアスティに伝えようとしていた蟹漁祭でのアルバスとのやりとりを思い出したように説明して。まっすぐ進みさえすれば、さほど時間は掛からず件の王国の入り口にたどり着くのだろうか。念のため周囲の警戒を怠ることなく、会話しながら進んでいき)
堕天使は皆紅眼と黒い翼を持っているから、それを知っている人なら一目で判別出来ても不思議じゃないよ。実物は見た事無くても噂程度に聞いた事のある人もあるだろうし…あ、でも他の魔物とか魔族に間違えられる事はあるかもしれないね
(ハーピィ種などのように脚が鉤爪になっていたりといった身体的な特徴を持たない純粋な人間のように見える身体に純白の翼を持つのが天使の特徴であるように、堕天使はその対となるように真っ黒な翼、それに加えて真紅の眼という特徴を持ち予備知識さえあれば見た目での判別は比較的容易であると相方の質問に答えて。しかし、その見た目にも悍ましい特徴や、基本的には残忍な性格を持ち合わせる者が多い事から何も知らない者からは魔族や魔物の類いとして見られるといったことも充分に考えられると補足を口にして)
…私はロゼの負担になってないかな…?私がそばにいることでこれからもきっとロゼを危険や人の悪意に曝すようなこともあると思う…どんな経緯で私が堕とされたのか、そんな事情は一切関係なく…堕天使とはつまりそういう存在なんだよ
(普段天使として偽装してはいるが、その状態ではあくまでも身体能力に優れた簡単な攻撃魔法が使えるだけの人間程度でしかなく、強敵との戦いではどうしても堕天使としての本性を見せる必要がある。しかし、それは蟹漁祭の時のように周辺に堕天使という存在を知る者がいた場合、どうしてもその正体を知られることになり、堕天使というだけで悪感情を向けられる可能性も高いことから、そんな自身と行動を共にする相方もそういった目で見られこれからもずっとそういった事は続くだろうと自嘲気味な笑みを浮かべながら現実を語り。アルバスの件に加えて今回の老人もそうだが堕天使である自分に対して向けられる目線は決して好意的なものでないことは間違いなく、相方として旅の仲間としてそばに居たい気持ちと、自分がそういった存在である事の申し訳なさの板挟みになって俯きがちに少し不安そうに呟きつつ、歩幅が少しずつ狭まっていき)
ほぉーん、なるほどねぇ。…ん?
(旅の相方として幾度となく共に死線を潜り抜け、いつしかその禍々しい姿を見ることも堕天使への畏怖を目にすることにも少し慣れっこになってしまっている自分に今更気付くも、どうやらアスティは複雑な思いがあるよう。少しだけ二人の距離が空いたことに気付いてくるっと振り返り)
どうした今更そんなこと言って。そんなん気にしてたら一緒に旅なんて出来ないっての。
アスティが居なかったら誰が俺の方向音痴を補正してくれるんだよ、それに俺は誰に背中を預けたらいいんだ?…今更別の誰かにそんなん任せられるかよ。ふ~、歩いてたら腹へってきたぜ。着いたらまずは腹ごしらえの店を探そうぜっ
(言いたいことだけ言うと、またくるっと前を向いて歩き出すも、左手を軽く上げて合図しおどけて見せて。薄暗さを増していく森だが、少しずつ覆い茂る木々が人工的に開けてきたような状態に変わりつつあることに気が付き、いよいよ目的地に近づいているのではないかと心が踊り足取りも軽くなって)
そうだよね、ロゼならきっとこんな私を理解した上で相棒として側にいさせてくれてるんだってそんな気はしてたんだ。でも、なんだか改めてロゼ自身の言葉で聞きたくなっちゃって…なんて…ありがとね
(そんなのは彼にしてみれば今更言われるまでもない事なのだろう、全て織り込み済みな上で自分を必要としてくれている、むしろそんなことに不安を覚えることの方が彼を信じきれていない証拠であり、情け無いやら申し訳ないやら…しかし、そういった負の感情すら全て払拭するぐらいに彼の言葉がとても嬉しくて、調子の良いことを言っているという自覚は持ちながら相方の隣に軽い足取りで並んでそんな軽口、そして心からの感謝とこれからよろしくという想いを込めた笑顔向けてほんの少し身体を寄せ、手が触れるか触れないかぐらいの距離を寄り添って歩き)
あ、ほらこれ。キノコが光ってるよ!こんなの見た事ないよ
(先程までの思い詰めた様子はどこへやら、すっかり普段通りの調子で大森林の中の夜の国を目指し、陽の光を感じられないぐらいに暗い道を進んでいき。しかし、よく考えたら本当に陽の光が届かないのなら何故自分たちは方向感覚も道も見失わず歩けているのか、淡く薄らと大森林一帯を照らしている光源か何かが存在していたりするのだろうか、そういった思考に耽りながら歩いていくととある地点を過ぎたあたりから道の脇が一際青白い光に包まれているのに気づき、その光の正体が何故か発光しているキノコ類であることを目視確認すると、キノコに並々ならぬ関心を見せた事のある彼であればこれにはきっと反応をするだろうと見越して先回りして、発光するキノコ指差しながら、きっとこの環境に適応した末に生まれた独自の種であろう発見にこちらもやや興奮気味にそう語りかけて)
(会話を経てなんだか足取りも軽くなったような相方の雰囲気に一安心すると、なんとも不思議な光るキノコについて指摘され。淡い光を放つ不思議なソレを眺めて)
おわっ、なんだか変わったもんがあるな……食えるのかなぁ・・・。
しかし、陽の光が射さない森ってことだし、こういう自然の光源を上手く利用した道になってるのかねぇ。
(キノコにアタりまくっている半生にドン引きされ採取を禁じられたやりとりを懐かしく思い出すと、さすがにストレートに食べてみようと提案するのは控えて。幻想的な青白い灯りを浮かべた森は、なんとも神秘的でまるで異世界をふわふわと歩いているようで、先ほど得体の知れない襲撃を受けささくれた心が落ち着いてくるように感じられ)
流石のロゼでもこれは食べてみたいとは思えないかな?食べて身体が同じ色に発光とかするようになっても困るもんね
(神秘的かつ妖しく発光するそれを見ての感想が食べられるのだろうかという疑問のみに留まると、キノコに関してはかなりのチャレンジャー気質な彼でも流石に積極的に食べてみたいとは思えないビジュアルなのかなと、そんな風に考え小さく笑みこぼすと同時に食べて食あたりを起こすという一般的にありうる危険性に加えてそんな嘘みたいな効果を憶測で冗談半分に口にしては肩を小さく竦めて)
だんだん生活圏っぽい感じになってきたね、方角的にも距離的にももうすぐだね
(木々の間の道が先程までに比べてしっかりと道らしく舗装されたものに変わり、道の脇の背の高い樹木の幹に大きな鬼灯を思わせる見た目でオレンジの輝きを放つ、これまた見たことのない植物が、頭上に等間隔に街灯がわりのように吊るされていて。しっかり他人の手が加わっているとわかるその光景に目的の国は近そうだと、改めてペンデュラムでの方角の確認と地図上の位置関係をチェックをした上でそう断じて。それから少し歩くと視界が開けて、広場のような場所に出ると、そこに立ち並ぶ高い木々の上から地面へと伸びる長い梯子、その先を見れば木製の住居が建てられており、木の板で作られた床で木の上の住居間を行き来出来るように繋がっているのがわかって。見上げるほど高い床の上を事前に聞いていた通りエルフとドワーフが行き来しているのが見えて)
おぉ、確かにエルフやドワーフみたいな連中が見えるな!よかった、このまま辿りつかなかったら光るキノコを主食にするハメになるかと焦ったぜ…
(アスティに方向を確認してもらいながら進んでいくと、見上げた先には噂どおりの他種族の共生する文化を思わせる光景が広がっていて。常闇の国を訪れる旅人には比較的友好的なのだろうか、ちらりとこちらの姿を眺めるエルフやドワーフも、特別警戒した様子はなく)
…よそ者に手厳しいってことはなさそうだし、アスティ、さっそく行ってみようぜ!
(自然を上手く利用した落ち着いた雰囲気、そこにはこちらを敵視するようなものは感じず、さっそくその先に進んでみようと相方を促して)
うん、そうしよう!上にはこの梯子を使って登るみたいだね
(背の高い木を最大限に活用して築かれたこれまでに見たこともないような国の形に驚き、早く全貌が見てみたいと好奇心が強く刺激されると相方から提案されるが早いか梯子を早くも登り始めていて)
上は結構高そうだね、ロゼはこういう高い場所は平気?
(梯子を登り切ると樹上を繋ぐ木の橋は意外に広い事がわかって、大都市というほどではないがそれなりの人数のエルフとドワーフが行き交っており、住居の他に様々な店なんかが何軒も立ち並んでおり、ここから更に上段もあるのが上に伸びる梯子から窺い知ることが出来て。あそこまで登るのはなかなか大変そうだという感想を率直に抱きつつ、そういえばと思い出したように相方へとそう質問をして)
ん、高いとこ?まぁ本能的な恐怖心とかはあるがなぁ…極端に高所恐怖症ってほどでもないぜ。…しかしまぁ、なかなかアップダウンが激しそうな国だなぁ。
(ひょいひょいっと梯子を登り終えて、上空、ならぬ梯子の更なる先を眺めて。飛行魔法くらいまで習得したエルフや、足腰丈夫なドワーフ達はさほど苦もなく移動できるのだろうか)
よし、まずは飯だぜ。…アスティ、偏見かもしれんがよ、エルフやドワーフの料理屋って、主食とか出てくるのかねぇ?なんつーか、葉っぱとか木の実とか食ってそうであんまり食に執着なさそうじゃねぇか?
(ちらほら見える雑貨屋やその他のお店の中にいくつか飲食店と思しきものを見つけるが、だいぶ偏屈な思い込みに近い心配事を小声で相方に囁いて。唯一エルフの知人であるルーシエンに至っては、甘いパイだのタルトだの、そんなんばっかり食ってたので参考にならぬ、と付け加えて)
でもまぁ、何かしら食えるものもあるだろ。よし、あのわりとメジャーっぽい(?)店に入ってみようぜ!
(なんとなく第一印象で旅人が立ち寄りそうな、小奇麗でそれなりに広さと賑わいもあるように見える飲食店を指差して)
確かに…特にエルフは動物の肉とか魚を一切口にしない派閥もあるって前に聞いた事があるよ
(相方の中のイメージもあながち間違いではないとわかる根拠となるエルフ族の一部の特性について伝聞で聞いた内容を口にして、とはいえこれは極端な例であり、ドワーフとの共生をしているここのエルフがどうかまでは定かではないため、確かに未知数だなと考えを巡らせつつ相方が指差した先にある飲食店を見やって)
あ、見て。あそこのグループが食べてるのお肉?だよ、みんなお酒とかと一緒に楽しんでるみたい
(店内へと入り、何気なく中に居る客が座るテーブルの上の料理へと目をやる。そこには皿に盛られたミンチ状になった獣肉らしきものを固めたものと木の実、野菜などを使っているであろうサラダ、そして泡立ったお酒のようなものが並んでおり、この分なら食事の質についての心配は杞憂で終わりそうだと考えつつ、席についてメニューを開いて)
…?お肉のメニューがない…?
(メニューにざっと目を通すが、先程のグループが食べていた肉を使ったと思われるメニューはどこにも見当たらず疑問符を浮かべ、立地ゆえか魚を用いたメニューもなく、唯一見覚えも聞き覚えもなく気になるものといえば『豆ミート風焼きのきのこソース』というメニューで)
…唯一それっぽいものが、、豆ミートだと…!?
他は、やっぱり葉っぱや根っこみたいのばっかじゃねーか、、、俺らは虫や草食動物じゃねーっつーの…
(低カロリー感満載の品目がこれでもかと記載された大きなメニューの冊子で顔を覆い隠し黙読するも、心の声が思わず出てしまって。同時になにやら隣のテーブルから聞こえる話声に気付き)
『見てごらん、変わったメニューばかりだよ。ふふ、郷に入っては郷に従え、と楽しむのも旅の醍醐味だと思うけど…。そうできない残念な輩も居るようだね』
(ケンカを売られたような物言い、パタンとメニューを閉じ睨みつけようと首をそちらに動かして。目に飛び込んできた勝気そうな笑みを浮かべた声の主の姿に驚き)
フレッド…!お前…
『ロゼ…?ロゼじゃないかっ!』
(端整な顔立ちをした金髪の青年と、少し眠そうな表情を浮かべた銀髪の少女、かつて共に戦った懐かしい顔との再会に思わず笑顔を浮かべて。簡単に二人との関係をアスティに説明し)
『こんなところで会うなんて、本当に驚いたよ。初めまして、天使のお嬢さん。僕はフレデリク、それとフィアンセのイゾルデだ。ロゼとは以前、一緒に戦ったことがあってね。ペラペラ~』
「…婚約した覚えはないけど」
(ぼそっと呟かれたイゾルデの言葉が埋もれるくらい、矢継ぎ早に言葉を投げ自己紹介を続けるフレデリクがアスティに握手を求めようと立ち上がりかけると、アスティをちらりと見たイゾルデが彼の袖を軽く掴み、引き止めて)
ロゼ、大人げないからやめておこうよ……って、え?知り合い?
(別テーブルより聞こえる少し嫌味にも聞こえる発言に、目に見えてイラッとしたのがわかる相方、気持ちはわからないでもなかったが流石にここでトラブルを起こすのは他の客の迷惑になると思い宥めようとしたが、こちらが止めるまでもなく矛を納めた相方の反応からしてどうやら声の主は知り合いだったようで。どんな間柄なのか掻い摘んで説明を受けると、大体の関係性を把握しては口数多く、こちらへと話しかけてきた金髪の青年の方へと視線投げかけ)
私はアスティ、ロゼは一緒に旅をしてる大事なパートナーなんだよ。よろしくね
(自己紹介を受けてこちらも名乗り、二人の間柄について聞くと別にそれに張り合うわけではないがなんとなく、こちらの関係性についても少しだけ特別感を出そうと考えれば、それぐらいの気持ちで日々相方とは向き合ってるつもりだが、若干勘違いされる可能性も無きにしも非ずな自己紹介を返し、満面の笑顔を向けて)
『大事な、、パートナーだって!? イゾルデ、聞いたかい?僕は嬉しくてたまらないよっ、ロゼ、君は以前、なにやら悩みを抱えていたようだからね。いや、いいんだ、誰だってそういうことはあるものさ。それがこんなに素敵なお嬢さんと仲睦まじく旅をしているだなんて…。アスティ、ロゼはきっと良い伴侶となるだろう。よし、ここは僕が奢るよ。』
「…おめでと」
(一言話す度に首をカクカクさせさらりと金髪を靡かせながら舞台俳優のように、なんなら背景に薔薇でも咲かせそうな勢いの奇行と妄想めいた思い込みをスルーしながらも、どうやら奢ってくれるらしいので先ほどの豆ミートのソレを注文し、アスティにも好きなの頼もうぜとメニューを渡して)
フレッド、お前らも砂漠の国経由で来たんだろ?しっかし、ここに来る前に変なジジイに襲われるし、ようやくのんびり飯食えるぜまったく。…結構美味いな、これ。
(きのこソースを絡めた焼きものを口に運べば、想像以上の美味さに先ほどの愚痴めいた感想を零した自身を恥じ。ぽろっと呟いた襲撃の話に食いついたフレデリクにその様子を問われ)
ん?なんか無口な二人組みとジジイだったぜ。…木偶の坊みたいのをラヴクラフト、とか呼んでたかな。
そういえばアスティはちっこいヤツと戦ってたよな?
(襲撃の様子を思い出しながら、断片的な記憶を口にして)
えっ!?ちょ、ちょっと待って、私そういうつもりじゃ……!
(迂闊なパートナー発言によって誤解のベクトルが向いた方向は、一切の誤魔化しや勘違いの生じようもなく、意図を瞬時に理解すると頬を朱に染めて、流石にこの誤解の方向性のまま話が進むと相方に迷惑がかかると思い訂正を試みようとしたが、どうにもそんな雰囲気ではなくなってしまい、相方は相方で特段何も気にしていないように見えてスルーを決め込んでいて、むしろ自分が気にしすぎなだけなのだろうかとも思い、気持ちを一旦落ち着けると手渡されたメニューから自身も相方と同じものとサラダを注文して)
う、うん、素早くてかなりの使い手だったよ。でも何より…意志のない人形って感じの印象を受けたかな、老人の目的遂行のためだけに動いてるように見えたよ。…そういえばあいつらを逃すわけにはいかないとも言ってたよね
(潰した豆をまるで肉に見立てたそれを、まだ僅かに残る動揺のせいであまり味のわからないままに口に運んでいると、話題は奇妙な二人組と老人の話しになり、こちらへと唐突に話しを振られると料理から顔を上げて、相方の問いかけにややワンテンポ遅れ気味に首肯し。襲撃を受けた当時の印象と自身の主観に基づく考えを話し、あの時はあまり気にも留めなかったがあれだけの手練れを率いて追撃を試みるのだから只事ではなさそうだと改めて考えて)
ん、なんだアスティ、緊張してんのかい?うるさくて変なヤツだが、まぁ悪い奴じゃないから安心しろって、ハハハ
(相方の動揺も露知らず、追加で頼んだサラダやらなんやらをムシャムシャ食べながら)
『ラヴクラフト…か。ロゼ、君たちは僕らと間違われてとばっちりを受けてしまったようだね。すまない』
(フレデリクが語る襲撃者の話。戦斧を操る巨体"ラヴクラフト"と二刀流の"ストーカー"、彼等を従える老人の名は不明だが、二人は何度か同じように襲撃されたことがあるという)
『アスティ、君の直感は正しいよ。アレは十中八九…屍体を動かしてる。そしてどうやらヤツらはイゾルデに執着しているみたいだ。…困ったものさ。イゾルデを愛しているのは僕だけで十分(略』
(死霊魔術──ネクロマンシーの類を仄めかすフレデリクに、ご飯が美味しくなくなるよ…とイゾルデが小言を言い、その後の惚気はナチュラルにスルーし)
『そうだね、せっかくの再会だ、辛気臭い話は終わりにしよう。ロゼ、アスティ、夜…といってもずっと夜の国だけれど。お酒でも一緒にどうだい?君たちの旅についてもっと聞かせて欲しいんだ』
(その後は適当に談笑しつつ料理を食べ終え、頃合かと立ち上がり)
ん、俺たちまだ着いたばかりなんだ。まずは宿を押さえて、時間があったら顔出すよ。ごちそーさん。
さぁて、アスティ、宿を探そうぜ。
(食事の礼をしてから、何はともあれまずは宿を押さえねばとアスティの様子を見つつ、促して)
動く屍体…なるほどそっか…死霊魔術──ネクロマンシー──…!ということはあれは撃ち漏らした訳じゃなかったんだ…
(世の理から外れた邪法とされる魔術の一つ、それによって操られていたのがあの不気味な二人組であったとするなら自身の聖蝕による無差別範囲攻撃にも平然としていたのにも合点がいって頷き。あれは当たらなかったのではなく、当てた上で目に見えるほどのダメージを与えるに至らなかったのだとそこで初めて理解し、顎先に手を当て神妙な表情で一人小さく呟き)
あ、うん。是非、喜んで!ロゼも久しぶりに知り合いに会えて積もる話もあるだろうしね!…よし、そうと決まったら、早く宿を見つけるよ。それからギルドがあるかもチェックしておかないと
(思考の沼に沈み込もうとしていたこちらの意識を引揚げるように提案をしてくるフレデリクの言葉に顔を上げると混じり気のない笑顔を浮かべ、是非にと乗り気で頷く。冒険とは自分の足で歩き目で見るのが一番だが、それでも冒険者を志した自分の原点はやはり、かつて何度も話して聞かされた冒険譚にあって、彼らがここに来るまでにどんな旅をしてきたのかについても強い関心を示し。相方は相方で久しぶりの旧知との再会で色々と積もる話しもあるだろうと考え、となればこの提案に乗らない手はないとややテンション高めに、早速宿を探すべく彼らへの一時的な別れの言葉もそこそこに相方と共に店を出て、ついでに物資などの補給を受けるためのギルドがあるかも確認しておこうと、今後の方針について話して)
(かつての同僚たちと別れアスティと二人して歩きながら宿を探して。良さげなところを押さえたらギルドの有無を聞いてみて、情報や物資の調達に繰り出そうという算段)
ふぁ~、噂通りの常闇の国だなぁ。時間的には日中なんだろうけど、なんだか眠くなっちまうよ。
エルフやドワーフで栄えてるってことは、面白い魔道具なんかもあるかもな。
(程よい満腹感も手伝って、歩きながら大きな欠伸をして。種族の多様性や光が射さないその特性など珍しい土地ではあるが、港町のように人の行き来は多くないだろうから宿はきっと混みあっていることはないだろうと、ちらほら見えてきた宿屋と思しき建物を眺めて)
アスティ、宿屋っぽいのも見えてきたぜ。…食事はきっとどこも似たり寄ったりだろうから、フィーリングで決めようかね。
まだ陽は高いはずなの本当、不思議な感じだよね、気持ちはわかるけど今から寝たら昼と夜が本当に分からなくなっちゃうから我慢だよ。それに二人との約束もあるしね
(改めて真上を見ればまるで傘のような形状の木々が遥か頭上で重なり合って周辺をドーム状に覆っているため、陽の光が一切届かないようになっているのがわかり、こんな環境故に身体が夜と錯覚して眠気がやってくるのもやむなしだが、ここでリズムが狂うと後に響くと思い相方の為を想ってそう忠告しては、二人との酒宴の約束のことも追加で付け加えて語り)
うんうん、ナイス判断!思ってたよりは大きな国って感じじゃないし選択肢もそう多くはなさそうだしね、あそこに決めちゃおっか。ギルドでの用件を済ませすまけ魔道具もじっくり見たいし、後は上まで登ってみたいかも
(時に論理的な思考より自身の直感を優先した方がいいこともある、特に未知の地を旅する時は得てしてその傾向が強いことはこれまでの経験から感じており、フィーリングでという相方のその判断を全面的に支持すると、真正面の宿屋らしき建物を見やり今回の滞在の拠点をあそこにしようと即決し。約束の酒宴が実施される夜まではまだまだ時間もあるため、この国で個人的にやりたい事、興味のあることを指折り挙げていき、上に伸びる梯子の先に思いを馳せつつ寝てる場合じゃないよと言わんばかりに相方へとウインクし)
あ、でも…あの死霊術師…一応私たちの顔は見られてるし、この近くに潜んでる可能性もあるからあんまり目立った行動はしないようにしようね
(観光の予定を話しつつ、この国に滞在する上で一点だけ気がかりな点について述べ。フレデリクの話しによれば狙いはあくまでもか彼のパートナーであるイゾルデであって自分たちではないということにはなっているが、何を考え目的としているのかの全貌が見えない存在に顔が割れているというのはそれなりにリスクもある、その点を踏まえた行動は心がけておいた方が良いと念には念を入れ相方へと自分の考えを伝えて)
はは、そうだな。せっかくだし上まで登ってみようかね。よし、それじゃあの宿に決めちまおうぜ。
…あぁ、確かに一応用心しといた方がいいかもな。夜あいつらに会ったら、もう少し詳しいことを聞いておくとするか。
(さっそく好奇心を刺激されまくっていそうなアスティの様子にこちらも眠気を追いやって。想像通り宿は比較的空いており、ささっと押さえつつドワーフの主人にギルドの話しなどを聞き。比較的背の低いがっしりした体格のドワーフが運営している宿だが、作りは一般的な規格と大差なく窮屈な思いをしたりすることはなさそう。荷物を部屋に置きやや身軽になると、さっそくギルドに顔を出してみるかいと相方に尋ね)
とりあえず、まずはギルドかな。その後は、夜まで各自散策とでもするかい?
うん、そうしよう。大事な用件は先に済ませておくに限るよね
(宿屋での宿泊手続きを済ませ外へと出ればまずは予め宿屋の主人に場所を聞いて確認済みギルドへと二人で向かい。旅先で思い通りにいくこともあればいかないこともある、必要な事は先に済ませておくべきだろうという考えから、相方の意見に賛同して頷き。ギルドへと赴き、窓口にいつも通り書面を見せて支援物資を受け取って)
…あちゃー、やっぱりアレは隠し通せなかったかぁ…報告書はちゃんと書けって牽制されちゃったよ
(物資を受け取った際に、ガリオスからのメッセージがあると手渡された手紙には砂漠での一件について書いた報告書にて敢えて省いた災禍の楔について既に把握している旨が書かれており、事実を偽りなく書くようにと釘を刺す内容で、流石にあれだけ大事になると隠し通すのは無茶だったようで、非公式とはいえ一応ギルドから報酬を受け取っての仕事であるためガリオスの言い分はもっともではあるのだが、悪びれず苦笑浮かべると相方の方を振り返り肩を竦めて)
うへー… まぁあんだけのことやってる連中の目を誤魔化そうってのはなかなか難しいのかもなぁ。
しかしお前さん…相変わらず肝が据わってんなぁ。
(未だ謎に包まれた不可解な現象、あのぞっとするような禍々しい歪みを思い浮かべ苦々しく顔を歪めて。あのときのアルバスの話ぶりも含めて、水面下で蠢いているのは自身が想像するよりずっと巨大なものなのだろう。それを理解しながらも、行動の軸がぶれることなく対等なやりとりを続けるアスティのタフさに笑って)
さぁて、それじゃ一旦荷物を宿に置いたら、夕方に…と言ってもずっと夜みたいだがね。自由行動の後に宿で合流してから飲みに出るとしようぜ。
(フレデリクが指定したのは町の中央にあるパブのような酒場。宿からそう遠くないため、のんびり宿でアスティと落ち合ってからの出発で良さそうだ)
これまでにもいくらでも危ない橋は渡ってきたからね、今更これぐらいで尻込みはしないよ。特に対等じゃない相手との交渉とか契約では相手の力量を見極めるのも大事だから、つまりこれも駆け引きだね
(立場上はギルドの息のかかった相手方が優位なのは理解しているが、だからこそ今後仮に相手方が何らかの理由でこちらに不平等な要求や指示を突きつけてきたとき付け入る隙があるかどうか探りを入れる駆け引きとしての意味合いもあったことを明かすも、この感じだとかなり強かで手強そうだけどと小さくため息こぼして)
ふふ、異議なし。…ロゼはここでの自由行動、何をするつもりでいるのかな?…なんて、プライベートにツッコむのは野暮かな?
(相方の提案したタイムスケジュールに一切の異論もなく頷いて。その後宿屋に受け取った支援物資を一度置きに戻り、再び宿屋を出ると別れる前にそういえば普段相方は自由時間をどんな事して過ごしてるのだろうと興味本位で聞いてみるも、パートナーとはいえあまり突っ込んだ事を聞くものじゃないかな、と自分で自分の発言を軽く戒めつつも、クスりと笑ってみせて)
ん?別にやましいことするわけじゃないし問題ないよ。…ちょっとコイツを見られそうな刀鍛冶が居ないか、のんびり町を見てみようかと思ってさ。
(アスティから受け継いだ穿ち焔。決して何か不具合が出ているわけではないが、道具のメンテナンスは不具合が出てからするのではなく、より良い状態を維持しその性能を引き出す為に行うべきではないかと持論を述べ。それにここは魔法の扱いに長けた種族が営む国。何も考えず感覚的に振り回しているこの得物に、違った角度からの見解を得られるのではないか、とも付け加えて)
ま、俺の技量が追っついてないのが一番アレなんだけどな、はは。
アスティはどうするんだい?やっぱり魔道具かね。ん、なんならまたびっくりさせてくれても俺は全然構わないぜ?
(アスティのこの後の過ごし方を聞きつつ、砂漠の国のドッキリを思い出してなぜかこちらが少し照れながらも冗談めかして言葉を投げ)
うーん、そんなことないと思うけど、ロゼって意外とストイックなのかな?…でもそれだけ大切にしてくれて嬉しいよ
(彼自身が思うほど技量が足りないとは思わない。彼のは決まった型に嵌まらない…少なくともこれまで自分が見た事のない型、所謂我流というものにカテゴライズされるものという見解だが、その技の冴えは剣術の心得がある己の目から見ても相当高い水準にあると言えて、少なくとも純粋な剣の技だけで競ったら自分に勝ち筋はないだろう。しかし、自身の託した穿ち焔に相応しい持ち主になるという相方の心意気、そしてメンテナンスに時間を費やすというその言葉に、自分の一部から作られたソレをこれだけ愛着を持って大切にしてくれる彼にはにかんだように笑いかけて)
私は魔道具探しと…この国の最上部を目指してみようかなって思ってるよ。…とりあえず、ここでサプライズをするよって馬鹿正直に答えたらそれって、端からサプライズ失敗じゃないかな?……ああいうの着て欲しいの?
(相方から逆に投げかけられた問いに遥か上に見える足場を指差し、目的はないがとりあえず登ってみるという、さながらそこに山があるから登るという登山家の常套句のようなことを口にして。相方からの何かを期待するかのような冗談混じりの言葉、しかしそれを認めても自分から口にしてもどちらにせよ語るに落ちてるのでは?と苦笑浮かべ、辺りをざっと見回しては左右にスリットの入ったマイクロミニ丈の生足が眩しい長身のエルフ美女を見つけそちらを一瞥した後相方へと向き直り、ニヤリと悪戯っぽく笑って)
なっ、ち、違う、そういう意味で言ったんじゃねーって。
んじゃ、また後でなっ。 …だいぶ高いところまであるようだが、勢い余って落っこちんなよ!
(まずい、この展開は完全に手のひらで転がされるパターンだと今までの経験から話題を変えて退散しようと試みるも、こちらの反応を楽しむように微笑む彼女が目を向けた際どい格好のエルフと、あんな格好をさせたがっていると思われる危険に、冗談とはわかっていてもしどろもどろし。やや強引に話を切り上げると、そそくさと明後日の方向に歩き始めて)
──鍛冶屋にて
…そうかい、ありがとよ。
(アスティと別れのんびり暗い町を歩き、雑貨屋で聞いた刀鍛冶を訪ねて。店の主人であるドワーフの老人が持ち込んだ得物を一目見るなり、やれることは何もないよと静かに呟いて。予想通り言葉に苦笑いしながら、油紙等を用いた最低限の手入れを頼みその工賃を払って)
使いこなすのは自分次第ってことかい。さてと、ちょっくら0次会といくかね
(フレデリク達と落ち合うパブとは別のこぢんまりとしたバーに足を運び。冒険者と思しき連中と軽く談笑し情報をそれとなく探って。めぼしいものはなかったが、一件、よそ者と思しき老人が町外れの墓地に向かって歩いていくのを見たという話が一つ。なにやら大きなトランクケースを引きずるようにして歩く様が不気味だったという。呑んだくれのドワーフ達に礼を言いバーを後にすると、のんびり宿屋へと歩いて行き)
…これで少しは戦力の補強になればいいけど
(相方と別れれば魔道具を取り扱っている店へとまず真っ先に向かい、店主のエルフの女性に戦闘用の魔道具について相談をする。場合によっては再びあの死霊術師と対峙することも考えられるため、今の自分の力の性質では足手纏いになる可能性が高くそれを補うためのものを買い求めて。流石は魔法に長けたエルフの営む店だけあって上質なものもいくつかあり、予算と相談しながら吟味して買い物を済ませ。その後は最上部の展望台と相方を喜ばせるちょっとした準備、充実した自由時間を過ごして宿屋へと戻ることにして)
あ、ロゼ!私もちょうど戻るところだったんだ……それより、ほら見て?どうかな、流石にあんな大胆なのは恥ずかしいから、これで我慢してくれる?
(宿屋へ戻る道中で見慣れた相方の後ろ姿見つけて駆け寄ると肩を指先で軽くトントン叩いて声をかけて。相方に声をかけ感想を求めるその出立ちは、ハーフアップにした髪に赤い花の髪飾り、黒いケープ、透けた薄ピンクのロングチュールスカートというどことなくエルフの魔法使いを思わせるファッションで、流石に先程見かけたエルフの女性のような際どい格好をする勇気はなかったんだけど、と苦笑を浮かべながら相方を見上げ)
(のんびり宿を目指して歩いていると、不意に肩を小さく叩かれて聞き慣れた声の方に向き直ると、一瞬アスティに似たエルフに話しかけられたのかと錯覚しキョトンとして)
お、おお、似合う!本当にエルフの魔法使い…いやもっとなんつーか高貴なものかと思ったぜ。なんたって王女だもんなぁ。…いつもありがとうよ。
(理知的で落ち着いた清楚な雰囲気と、いつもと違う髪型になんだか照れてしまい、次第に顔をナナメに向けながらも最後に小さな声で礼を言い。砂漠の国を目指す道中でふと口にした自身の一言が、アスティ七変化(?)のように続いている。なんだか毎回リクエストしているようで複雑な心境だが、なんだかんだで嬉しいのでそれを制することはせず)
そういえば刀鍛冶に行ってみたんだけどさ、やっぱりコイツは手を入れるところはないってさ。大したもんだぜ。アスティは何か掘り出し物でもあったかい?
(刀のコンディションは至って順調。となると、やはりこの力を引き出すのは自身の技量と精神力だと改めて言われちまったと苦笑し)
ふふ、私もなんだかんだその土地毎に合った格好をするのは楽しいから、それでロゼが喜んでくれるんなら一石二鳥だよね
(旅先では常に綺麗で居られるわけではないし冒険者に性別は関係ないとはいえ、なんだかんだ言っても女性としてお洒落には少なからず興味はあって自身の心境としても色んな衣装を身につけるのは満更でもなく、そんな自身の変化を見て喜びのリアクションをしてくれる人がいれば尚のこと嬉しい、何よりそれが他ならぬ彼であるなら…とそこまでは口にはしないが頬をわずかに染めながらはにかみ笑い浮かべ)
そっか、じゃあもっともっと頼りになる相棒になってね、期待してるよ!私もちょっとだけ、自分の欠点というか足りない部分を補う物を探して見つけてきたんだ。出来ればぶっつけ本番で強敵には使いたくないけど…その内披露することもあると思うよ
(現状でも文句のつけどころのないぐらい頼り甲斐のある相方だが、その上で更に強さに磨きをかける事に余念のない彼を頼もしく思い、そんな期待感を込めてにっこり笑いかけて。彼が更にその技を研ぎ澄ます決意を固めた傍ら、今回自分が探したのは戦闘に関連する魔道具、それも自分の弱点を補う為のものだと答えると同時に、それがあまりこれまでに使ったことのないタイプの代物である事を匂わせていて)
おー、任せとけ。
ん、欠点?アスティ、欠点なんてあるようには見えんがなぁ。ま、欠点かどうかは置いといて、珍しい魔道具なんかも揃ってただろうしな。お披露目を楽しみにしてるぜ。
さてと、それじゃぼちぼち飲みにいくとするかね。
(自由行動といいつつも、結局それぞれの過ごし方を互いに語りまるで一緒に行動してきたみたいな気分になり。一旦宿に戻り手荷物などを整え、フレデリク達と落ち合うパブへと向かい。バーでのやりとりから気持ち周囲に目を向けるも、それは杞憂に終わり)
──パブにて
『ロゼ、アスティ、ここだよ!』
(フレデリクに呼び止められそちらを眺めると、窓際の席で手を振る彼と、その横でこっくりこっくり舟を漕ぐイゾルデの姿を見つけて)
『この国には慣れたかい?僕はばっちりなんだが…。昨日ここに辿り着いてからイゾルデがずっと寝てなくてね。ほら、この国は常に暗いだろ?夜が好きな子だからね。でもさすがに限界が来たらしい。ふふ、本当に可愛(略
アスティとロゼはデートでもしてきたのかい?さ、一杯目の飲み物を選んで』
(野生のタヌキみてーだな、と適当に感想を述べ、惚気や脳内お花畑な発言はスルーしつつワインをボトルで頼み、相方にもメニューを見せて尋ね)
アスティ、何にする?
えっ!?…ううん、私たちは別行動だったよ。ロゼも私もあまり街では一緒に行動しないよね、お互いマイペースっていうか自由っていうのかな?
(デートという単語に思わず頬が赤らんで、僅かに動揺を見せたもののすぐに落ち着きを取り戻すと相方の方を横目でチラリ、デート云々はともかく一緒に旅をしている間柄だが滞在先ではそもそも一緒に行動はあまりしないなと、相方にも同意促すようそう語りかけ。自分たち的にはそれがスタンダードであり違和感も感じないが、何も知らない人が聞けば実は不仲を疑われそうでもあって)
ロゼは赤ワインにするの?それじゃあ私は白ワインにしようかな
(相方の手の中にあるメニューを軽く身体寄せるようにして覗き込むという不仲説が浮上しそうな発言のすぐ後とは思えないような親密そうなやり取りを見せつけ、相方の注文したワインの色と対になるそれを同じくボトルで注文することにして)
それにしても、夜が好きなんて聞くと昔に聞いた吸血鬼の伝承を思い出すよ
(注文したお酒を待つ間、フレデリクの隣で眠気に耐えかねているイゾルデの姿を視界の端に捉えつつ、夜が好きというのが果たして元来持つ性質によるものなのか単純に嗜好の問題なのかはわかりかねるが、夜行性の種族でも特にポピュラーかつ夜の支配者たる一族のことがまず真っ先に思い起こされて、深く考えずに何気なくそう口にして)
お、いいね。今日はしこたま飲むぜ~
(アスティとのやりとりを愉快そうに眺めるフレデリク、また妄想を炸裂させていそうだ。相方が呟いた言葉にフレデリクが反応して)
『なんだロゼ、話していないのかい?アスティ、君は本当に鋭いな。その通り、イゾルデは純血種の吸血鬼だ。ふふ、警戒することはないよ、優しい子だからね。長いこと旅をしていると、色々な種族との出会いがあるものだね。…アスティ、君だってそうだろう?』
(ニヤリと含みを持たせたようなフレデリクの物言い、初めて顔を合わせた際にイゾルデがアスティに見た何かを共有したのだろうか。堕天使ということまでは知り得ないはずだが、何かしら気になる部分を本能的な何かで察したのかもしれない。皆のお酒をまとめて注文し、店員の可愛らしいエルフに流し目を送ったフレデリクが続ける)
『モルドールの一件から5年ほどか、昨日のことのようだよ。僕らは今も変わらず旅をしている。イゾルデの親族…その多くは討たれてしまっているけれど。彼らを訪ねる長い旅路の最中さ。ロゼ、アスティ、二人は何を目指して旅をしているんだい?』
…!そうだね、違いない。それでもまさか純血種の吸血鬼にお目にかかれるなんて思いもしなかったよ
(まるで何か含みを持たせるような言い方、最近は前ほど積極的に自分の正体を隠そうと振る舞うのをやめているとはいえ、それでもこちらが堕天使である事をあっさり見抜いたようなその口ぶりにはやはり驚き、目を見開いて。しかし、そのことについて深く追及をしたり詮索をしようという気はないらしいということを雰囲気から察っすると肩に入りかけた力は抜けて、改めてフレデリクの横で眠るイゾルデを見やり。吸血鬼は純血種は多くが討たれ種の存続のため混血化が進み、今では僅かばかりの生き残りが各地でひっそり暮らすのみと聞く。そんな彼女の同胞たちとの邂逅を求める途方もない旅、それに付き従う彼もまた吸血鬼かそれに準ずる長命の種族なのだろうということを窺い知ることが出来て)
私はこの広い世界を自分の目で見て見聞を広げたいんだ、そしていつか冒険に憧れる誰かに少しの勇気を分け与えてあげれるような冒険譚を書き記したい、ロゼにはそれに付き合ってもらってるの
(自身の旅の目的、最初にフレデリクに話したのは以前から相方にも伝えている通り広い世界をこの目で見たいという内容で、そしてその先はまだ相方にも話していなかったもの。漠然としていた自分の夢の延長線上、世界を見てどうしたいのか更に具体性を持たせるような内容を語り。皮肉にも自分が天界を堕とされる原因となった一人の堕天使が、自分に広い世界への憧れを持たせたのと同じ道を歩もうとしていて)
(アスティがフレデリクに語った思いにハッとし、そのイメージがワンテンポ遅れて意識に染み渡ると、彼女らしい冒険の目的に自然と顔を綻ばせ。その様子を眺めたフレデリクが嬉しそうに笑い)
『ロゼ、君は本当に素晴らしいパートナーを得たようだな。決してアスティの手を離してはいけないよ。さ、お酒の準備ができたようだし、乾杯しよう。その冒険譚にこの一幕が綴られることを心から願うよ』
(テーブルに運ばれたワインとウイスキー、そして果実酒に手を伸ばそうとした瞬間。鋭い破壊音と共に窓ガラスがぶち破られシャワーのように砕けたガラスが飛び散り。素早く振るわれたマチェットがボトルを砕き、アスティの鼻先を掠める。テーブルの上で蹲踞の姿勢を取った"ストーカー"が赤黒い眼で挑発するようにアスティの青い眼を覗き込み。反撃に転じようと刀を抜きかけた刹那、二度目の破壊音が響き壁がぶち抜かれ、巨体"ラヴクラフト''が眠るイゾルデを抱き上げ闇へと走り去りると、ストーカーもそれを追い姿を消し)
『イゾルデッ!…エルフのお嬢さん、明日、必ずもう一度ここを訪れ謝罪する。今はこれで容赦願いたい。ロゼ、アスティ、すまないが日を改めよう。僕はイゾルデを取り返すっ』
(宝石が光る指輪をテーブルに置いたフレデリクが矢継ぎ早に言葉を発し、墓地の方向に消えた襲撃者達を追うべくその身をひるがえして走り去って)
…アスティ、せっかく付き合ってもらったのにすまねぇな。だが、あれはアイツらの問題だ、俺たちが手を貸す義理はねえ…。
(刀の柄から手を離し、無理矢理平静を装ったように苦々しい顔で相方に告げ)
そうだね、でもさ…このままやられっぱなしっていうのはあまりにも癪だよね、せっかくの楽しい酒宴を台無しにされちゃったわけだしね?ロゼだって面白くないんじゃないの?
(割れたボトルから頭にかぶった酒に濡れたまま僅かに掠めたマチェットによって浅く切れた鼻先、そこから滴り落ちる血を拭い、まるでこちらを侮るように眼前に迫ったあの忌々しい赤黒い瞳を思い出すと拳を強く握って。手を貸す義理はない、それはまるで自分を無理矢理納得させるための言い訳にしか聞こえず、それを指摘して)
それに…義理ならあるよ。友達を助けるのに何か理由は必要かな?…一目惚れがあるなら一日で出来る友情があっても良いと思わない?心は時間を越えていくんだよ
(ゆっくり席を立ち、テーブルに3人分注文したお酒の代金に多少色をつけて叩きつけると、小難しい理屈や建前を抜きにして友達を助けに行こうと改めて相方へと自身の意思を伝えると改めて、本当はどうしたいの?と言わんばかりに相方の方を見やり)
(アスティの率直な問いかけにはっとし、何度も共に死線をくぐり抜けた相方に本心を隠し、しかもまったく隠せていない浅はかな自身の振る舞いを恥じて)
アスティ、すまねぇ。
お前さんの言うとおりだ。こんなところまで来て厄介ごとに巻き込まれるのは癪だが、俺はあいつらの手助けがしたい。すまんが、ちょいと手伝ってくれると助かるぜ…!
(迷いを断ち切り、常闇の町を駆け墓地を目指して。僅かに刃を交えた薄気味悪い襲撃者は、手練れではあるがやってやれない相手ではない。それでも…)
…夜の吸血鬼ら相手に一戦交えようってんだから、何かしら考えがあるんだろうぜ。釈迦に説法かもしれんが、油断しないでいこう。
──町外れの墓地にて
(町から少し外れた森との境、オレンジ色の街灯が薄ぼんやりと寂しげな墓地を照らして。長剣を抜いたフレデリクがストーカーと対峙し、その先には眠るイゾルデを抱いたラヴクラフト、そして死霊術師と思しき老人が墓石に寄りかかりフレデリクに卑しい視線を投げる。老人の足元に無造作に置かれたやや大きめのトランクケースはバーで耳にした話のとおり)
『おや、いつぞやの堕天使の小娘じゃないか。…ふん、お前の執念が連れてきたとでも言いたげだな。…好きにしろ、ストーカー』
(こちらに気付いた老人がアスティを見遣り呟くと、一瞬背後に目を向けたフレデリクの頭上を跳躍して飛び越えたストーカーが、落下の加速を乗せてアスティに鋭く双剣の刃を突き入れ)
ふふ、元々平穏とは程遠い旅だもん、冒険は困難であればあるほど面白いんだよ…個人的にすっきりさせておきたい因縁もあるしね
(面倒に巻き込んでしまうことに少しばかり申し訳なさそうにする相方だが、ここまでの旅路で平穏に事が進んだことなどほとんどなかった事を思えば、どうも自分たちはそういった星の元に生まれたらしいと可笑しそうにくすくす笑いながら、自身としてもここで断ち切っておきたい因縁があると決して相方やフレデリク達のための戦いだけに留まらないことを口にして彼の地に急行して)
…そっか、全く感情のない人形って訳でもないんだね。次はどんな手で来るのかな?まさかスピードだけって事はないんだよね?
(初めて対峙した時に感じた無感情な人形という印象とは違う、まるで自身に執着を示すように向かってくるストーカーに、どうやら因縁を感じていたのは自分だけではないらしいと瞳を細め、臨戦態勢をとると素早い一撃を完全に見切って大鎌で弾いて。一度戦い見切っている相手だが、まだ底を見せているようには見えず、何より相方が言っていた通り予想だにしない隠し玉や搦手がある可能性というのが気がかりで、全く気を抜く事なく視界の中央でその姿を捉え続けていたかと思うと、弾き返され後方に飛び退いて地面に着地しようかというところを目掛けて大鎌を横回転させ投擲して)
…私ね、借りはキチンと返しておきたい質なんだ
(着地する足元を狙い投擲した大鎌、それのすぐ後を追いかけるよう地面を踏みしめて一気に加速、そして羽から生成する2本目の大鎌を両手で構え、それを上から下に向けて空中のストーカーめがけて縦振りで逃げ場と選択肢を奪うように振るうが、この程度では執念深いかの存在は仕留め切れないだろうとも踏んでおり、それ故にこれはこちらからのほんの挨拶がわりのつもりで)
(速度を上げたアスティの2本目の大鎌の追撃。その射程距離に入ったストーカーは逃げ切れないと踏んだのか、刃が直撃する寸前に自分自身の左肩から腹部に刃を入れ、ダラリと左腕を垂らすように上半身を歪に変形させ迫り来る刃をかわして。そのままぶら下げた左腕を鞭のようにしならせ、骨肉を飛び散らせながら握ったマチェットの刃先を再びアスティの眼前に突き入れるも、投擲された大鎌に引き裂かれた左足がバランスを崩し、その反撃は空を切り。やや距離を取った赤黒い眼がアスティを見遣りながら、屍体の切断面がぶくぶくと沸騰し、タンパク質を焦がすような悪臭を放ちながらくっつき、元の身体の形に戻り)
うげ、気持ち悪ぃヤツだな……、ッ!
(アスティの動きに1対2では分が悪いと感じたのか、巨体ラヴクラフトがイゾルデを放りこちらへの襲撃に加わり。力任せに振り回される巨大な戦斧を穿ち焔で受け流し、アスティから離れるように引きつけて)
お前の相手は俺だよ、屍体野郎…!
アスティ、そっちの二刀流は任せたぜ!へへ、先に片付けた方が一杯奢ってもらうってのはどうだい?
(相方に軽口を叩きつつ赤黒い眼の襲撃者二名とそれぞれ対峙しながら、さっさと死霊術師のジジイをやれ!とフレデリクに叫び)
……ふふ、いいね!後でどちらの獲物の方が弱かったとかそういうのは言いっこなしだからね
(奇想天外な攻め口、マチェットによる一撃はかわすまでもなく届かなかったその一方で飛び散ってきた腐肉はその顔面にべちゃりと直撃し、顔を思いっきり顰め手で拭えば相方の方をチラリと一瞥。内心では眼前の敵の並外れた再生能力と、それを活かした捨て身上等の攻めにどう対するべきか、流石に無敵ということは無いだろうがタネも仕掛けも分からない自分の方が現状では不利、ジリ貧になってしまう前に活路を見出さなくてはとそう思考を巡らせながらも相方の軽口に明るく答えて、大鎌を構え直し)
……やっぱり怪しいのは、術者と……っ……!
(決定打がない現状、安易な攻めは打たない。幸いにもスピードの面では互角か此方が僅かに上、聖蝕の防壁でのフォローも織り交ぜて防御に比重を置き、余分な力の消耗を抑えながら時折こちらからの反撃も試みるが、やはりその手足を幾度切り裂き、砕こうとすぐに再生してしまって。奴を仕留める決定的な何か、一番怪しいのは術者、そして彼が持ち歩く大きなトランクケース……そんな思考にほんの一瞬気を抜いたのが不味かった、こちらの隙を見逃さず放たれたストーカーの鋭いマチェットによる突きが向かってきて、間一髪横に身体をよじり急所は外すが脇腹を裂き、鮮血が地面にポタポタとシミを作って)
『死霊術師…?勘違いをしているようだな。ソイツらは確かに動く屍。だがそのカラクリはもっと原始的なものだ。…見るがいい、屍すら奴隷と化す呪われた種族の穢れた血を。ククッ、それを操る赤い瞳こそ、あの方が授けてくれた呪法。…堕天使とは不思議なものだ。なぁ、小娘』
("死霊術"という言葉に反応した老人が、足元のトランクケースを蹴り飛ばすと、蝶番が歪み開いた箱から無数の"中身"が転がり。切断された数多の人体、最低限の止血処理を施されただけと思しきパーツが、ウゾウゾと這いずり互いに結合を繰り返す。生ある者としての尊厳など微塵もない物体と化したそれらは、次第にフレデリクの背丈を越える長身の男として蘇り、その赤黒い瞳が目を覚ましたイゾルデを眺めて。屍体を動かすのは吸血鬼の血、それを操る赤黒い瞳について堕天使という単語を発し、アスティをちらりと老人が眺めて)
「お父…さん…。」
『汚らわしい吸血鬼共、感動の再会は済んだか?…純血種同士を交配させるんだ。母体になるイゾルデの胴は傷つけないようダルマにしろ、ツェペッシュ』
(放心したように蘇った化物を眺めるイゾルデの呟きと、楽しそうにその化物に命令する老人の言葉。それらに激高したフレデリクが長剣に螺旋状の火炎に似た魔力を纏わせて老人に切りかかるも、その間に割って入ったイゾルデの父-ツェペッシュが素手で刃を握り止めると、反対の手でフレデリクの腹部から胸部を引き裂き。鮮やかな鮮血を吐き出すフレデリク、吸血種となった彼の回復力を持ってしてもその損傷の回復には数分は掛かるだろうか。フレデリクを無力化した赤黒い瞳が、イゾルデの姿を眺め)
アスティッ!
…どうやら死霊術の類ではなさそうだぜ。血が屍体を動かすなんて意味がわからねぇが、筋肉に命令を送るのは、やっぱり脳なんじゃねぇかな。
…頭をぶち抜いても死ななかったら、そんときは別の戦法考えるとするかね…!
(相棒としてアスティを信頼していても、ダメージを受けた彼女の姿に思わずその名を叫び。致命傷でないことに安堵すると、老人のおぞましい呟きから想定された眼前の動く屍への戦術を告げて)
──『血の盟約』──っ、もはやそこまで……!ソフィアールっ……!
(堕天使、穢れた血、老人が言葉の中に散りばめた自身にも馴染みのあるそれらの言葉、それらの点と点が線で結ばれていき一つの結論が導き出される。堕天使が自ら選んだ存在に力を分け与え、世に災厄を振り撒く最悪の儀式……純血の吸血鬼という上位種の亡骸にまで影響を及ぼすほどの強大な力を兼ね備えた堕天使など自分の知る限りたった一人しかいない。ずっと敬愛してきた彼女、何かボタンを掛け違っただけでいつかもしかしたら分かり合える日が来るかもしれないと、そんな淡い願いにも似た希望は完全に打ち砕かれる。もはや彼女の心は完全に邪に染まり世界そのものに弓引こうとしている。それが誤魔化しようのない現実であることは眼前の悪趣味な人形たちとそれを操る老人の存在が証明しており、脇腹の傷が痛むのも厭わず慟哭にも似た叫びをあげ、この先道を同じくすること叶わなくなった彼女への決別をして)
(痛い、苦しい、悲しい……一度に押し寄せる感情の荒波はやがて怒りに変わる。体内を巡る呪われた血、堕天使としての本能に逆らえず視界が真っ赤に染まり、怒りの感情はそのまま破壊衝動へ。眼前に存在し続けることで自分の想いを踏みにじり続ける悪辣な人形の存在が許せない、壊す……完膚なきまでに……。漆黒の闇よりも更に黒く、周囲の光を吸収し塗りつぶされていくように変化を見せる翼。もはや自我すら失いかけたその時、耳に届くすっかり耳慣れた、そばにいるだけで心が安らぐ相方の声に身体の変化は止まり平静を取り戻し)
っ……大丈夫、見失ってはいけない……怒りに、身を委ねてはいけない……私はそれでも、私のままで生きたいから……!
(自身に強く言い聞かせる言葉、堕天使のままであっても、その上で自分らしく思うままに相方とこの世界を旅をする……そんな想いが自身をなんとか踏みとどまらせ、冷静に相方の言葉を脳内で反芻するとその戦術を念頭に再びストーカーと対峙して)
……!そうだよね、そうくると思った。いくよ、奥の手!
(あからさまに攻め手を増やし、大鎌でストーカーの頭部を狙う。大振りの攻撃を繰り返すことで勝てる可能性を一つ見出し恐らく勝機に逸ったと思った事だろう、大鎌を姿勢を低くしてかわして懐へと飛び込んでマチェットで仕留めにかかってくるストーカーだが、この展開は既に折り込み済みであった。大鎌を振るう左の手とは逆の身体強化により強化した右手には透明な鉱石が嵌め込まれたナックル。そこに込めた魔力に呼応するように白い輝きを放ち始めるそれを必殺の一撃がこちらに届くよりほんの少し早くカウンター気味に顎へと叩き込めば、激しい光の衝撃波がストーカーの脳天を突き破って)
『私の母親は貴様らのような吸血鬼に喰い物にされてねぇ。その屍が父親を喰い殺しながら朽ちていく映像が、今も瞼の裏に焼きついている。…だがいい気分だ、この糞みたいな世界に貴様らの呪われた血が造り出す災厄を解き放てるのだから…!』
「アナタの言うとおり、私たちは呪われた種族なのかもしれないね。だから今までも、これからも暗闇で生きてく。…それでも私はこの世界が好き。それを見せてくれた大好きな人と、まだ旅を続けたいの。だから、アナタたちの思い通りにはさせないよ。」
(ちらりとフレデリクを見たイゾルデが言葉を投げ終えると、華奢な身体を小さく痙攣させ禍々しい雰囲気を醸し出し。眠たげな表情は鳴りを潜め、代わりに見せた竜族を思わせる冷酷な瞳に闘争本能を濃く滲ませて。闇に溶けるように跳躍し落下しながらツェペッシュに掴みかかると、か細い首を大きな手で締め上げられながらも、相手の鎖骨と肩の筋肉を噛みちぎり砕いた骨と肉片を吐き捨てて。長い時を経て再開した父と娘は、互いの生命活動を完全に止める為、血で血を洗う凄惨な殺し合いを始めて)
…!
アスティ、どうやらそっちは片付けたみてぇだな。へへ、先を越されたぜ。…死体は死体らしく、土に埋まって寝てろっつーの!!
(大振りの戦斧の攻撃を見切れば、カウンターに注意しながら巨体の懐に飛び込むと、大きな口の中に刃を突き入れそのまま浄化の炎を叩き込み脳組織を破壊して。頭部を粉砕され崩れ落ちたラヴクラフトとストーカーの身体が立ちあがろうともがき脚をバタつかせるも、脳が正しく機能しないソレらは不規則に痙攣し次第に動きを停止して)
アスティ、こっちも片付けたよ。大丈夫か?
しかし、素手でぶち抜くとは恐れ入ったぜ。
…おそらく、向こうももう決着が着くだろうぜ。
(アスティの側に駆け寄り脇腹の出血をやや心配そうに見遣り。そして闇の中で理性を捨て去ったイゾルデが屍体の操り人形を駆逐するのに、そう時間は掛からないだろうとも追加し。例えそれが彼女の肉親の亡骸だとしても)
……ぶっつけ本番だったから危ない橋を渡ることにはなったけどね、手痛い一撃ももらっちゃったし……でも今回の勝負私の勝ちは勝ちだね!
(所持者の魔力を吸収して拳に凝縮し、聖なる一撃として叩き込む光石拳。その威力のほどは購入時に聞いたカタログスペック上でしか知り得ず実戦における効果のほどは未知数であったがその一撃はどうやら無事にストーカーの脳を粉砕するに至ったらしい、屍体が再生する際に発せられる鼻をつくような臭気が周辺を漂い肉体の再生は成るも、脳だけは再生することが困難であるようで、相方の予想通り脳を損傷した人形はまるで死にかけの虫のように這いつくばってもがき、やがてそれらが動かなくなるのを確認すれば話しかけてきた相方の方へ向き直り。自身の傷口へと一度目をやってから相当量の血は滲んでいるが、そのダメージが見た目より大した事ないとアピールするようにピースをして。自身とは対照的に危なげなく勝利してみせた相方に向けて、勝ち方はどうあれ二人の間の決め事はあくまでどちらが早く敵を倒すかだから勝者は自分なんてそんな軽口を叩き、こちらの怪我を心配する相方の心配を払拭してやろうとして)
……貴女も自分の在り方を貫いて、居場所を護るために戦ってるんだね……
(理不尽にもその身に課せられた業を背負って向きあいながらも、決してそれに呑まれてしまうことなく自分にとっての大事な居場所……自身にとっての『世界』そのものを護るため戦うイゾルデの姿を自身の境遇に重ね見る、かつての肉親の亡骸との凄惨を極める戦い、状況だけを見れば今すぐにでも間に割って入りイゾルデを助けこの不毛な争いに終止符を打つべきだろう、しかし実際にはそうしないのは、この戦いが彼女にとっての信念を示すものでありそこに水を差すような真似を良しとしなかったからで。相方もそのことを肌で感じ、信念の強さの分だけ彼女が押し勝つ事を確信しているのだろうということを横目で見て感じながら戦いの行方を静観して)
(喰らった闇をエネルギーの糧とするように、その小さな身体に禍々しい殺意と暴力衝動を宿したイゾルデが長身ツェペッシュの命を少しずつ刈り取り。跳び回る標的を引き裂こうと振り下ろされた腕をかわし跳ねたイゾルデが相手の大きな肩に飛び乗ると、掴みかかろうと持ち上げられた右腕を力任せに捻り切り、落下しながらもぎ取った腕をツェペッシュの耳下に叩きつけ。鼻と耳から同時に多量の血を流した巨体がぐらつき、三半規管を強烈に揺さぶられ平衡感覚を失ったツェペッシュが膝をついて動きを鈍らせると、その瞬間を逃さずイゾルデの手刀が眼球を抉り、そのまま悍ましい怪力で頭蓋骨を砕きながら脳を掻き混ぜ破損させて)
『ば、バケモノめッ、地獄に堕ちろ!』
(ツェペッシュの動きが完全に停止したその刹那、イゾルデの背後に忍び寄った老人がダガーナイフを垂直に振り下ろすが、音無く駆け寄ったフレデリクがその刃を長剣で弾き。続けざまに灼熱の火炎を纏った剣先が老人の頭部を細切れにすると、その破片に引火した炎がそれらを瞬時に燃焼させて。放心したように佇むイゾルデが小さく呟いた言葉に優しい声でフレデリクが答えるも、交わされた言葉は風にさらわれ、ここからは聴き取ることはできず)
…終わったようだぜ。
あいつらは放っておけばすぐ治るだろうが、アスティはしっかり手当てだな。
あぁ、お前さんの勝ちだよ。何でも奢ってやるから、任せとけ!
(頭部の無い屍体は灰が崩れるようにその身体が朽ち果てていき、自身の肉体も弄っていたのだろう、最後に息絶えた老人の身体もそれに続いて。巻き込んでしまったことを謝罪するフレデリクを宥め、今夜はそれぞれ宿に戻ることとし、話を切り上げて)
アスティ、俺たちも戻ろうか。
…だいぶハデにやっちまったからな。面が割れないうちに、とりあえずここからトンズラしようぜっ…!
うん、そうだね……っとと……ごめん、少し血を流し過ぎたかな
(因縁の決着を見届け、先程までの激戦が嘘のように訪れる静寂と平穏。しかし、街からはそれほど大きく離れてはいない場所でこれだけの騒ぎを起こした以上、すぐに騒ぎを聞きつけた兵士なんかが駆けつけることだろう。またお尋ね者として追われる立場となるのは御免被りたいところ。傍の相方の顔を見上げ、笑顔で応じて歩き出そうとするがそれなりの量の出血と、戦いの終わった安心感で気が緩んだことで視界が軽く揺らぎ足元ふらつき相方に寄りかかると、苦笑い浮かべつつ謝罪を口にしてから慌てて身体を離して、大丈夫大丈夫と若干覚束ない足取りで歩き出して)
お、おい、無理するなって。へへ、いつもと逆だな。ま、俺はだいたい酔っ払ってるときだがね。
(よろけたアスティに気付くと、足取りが危うい彼女に肩を貸し。ゆっくりと常闇の世界を二人で歩き、宿へと向かって)
──翌日
ほんとにもう行っちまうのかよ。
『あぁ、ここでは色々な事があり過ぎたからね。ロゼ、アスティ、またどこかで会えることを願っているよ!』
「助けてくれて、ありがと。」
(翌朝すぐにここを発つことにしたというフレデレリクたちを見送って。昨日の戦闘を経て彼等の服装が変わっているが、絵画から浮き出てようなクラシカルな装いのテイストは変わっておらず。闇に消えていく二人の背中に別れを告げて)
アスティ、身体は大丈夫か?あんまり無理すんなよ。
さぁて、次は何しようかね。…食い物はあんまり期待できないんだよなぁ、この国は。
(昨夜、宿の主人に少し無理を言ってアスティの手当ができるエルフ達の都合をつけ簡易的な治療を施してもらっているが、完治するまではまだかかるだろうと少々過保護な声を掛け)
──また会えたら今度こそ一緒にお酒飲んでゆっくり話そうね、楽しみにしてるよ!
(結局殆ど交流が出来無いまま、別れることになったのを残念に思うが旅を続けていればきっとまた道が交わることもあるだろう、互いの旅の話しを肴に酒宴を愉しむのはその時まで持ち越しとしよう、いつかの約束のため夜通しでも語りきれないぐらいの楽しい旅の思い出話しを此方も用意しておこうと、そう心に誓って二人を満面の笑顔で見送り)
ふふ、ロゼったら心配性なんだから。しっかり止血もしてもらったしもうなんてことないよ……でも、少し安静にしておこうかな、しっかり完治させないと旅の再開を認めてくれなさそうだしね
(こちらは簡易的な手当てだけで大丈夫と言ったのだが、治療のため医術に長けたエルフの手配までしてくれた相方、そして治療が順調に進んでる今現在も身体の心配を重ね重ねしてくる有様、大袈裟だなぁと苦笑いを浮かべつつも本心ではその優しさを嬉しく思う自分がいて、当面はあまり無茶なことはしないようにして、体調を万全にすることを優先すると彼の想いを十分に汲み、そうしないと旅立たせてくれないでしょ?とイタズラっぽく口にして肩を竦めて)
でも、宿屋で寝てるだけっていうのも退屈だし……デートでもしてみる……?なんてね
(傷自体は一週間ぐらいあれば塞がるとのこと、あまり激しく動けば傷が開く恐れはあるが日常生活を送る分には支障はなく。昨晩は血液不足で身体全体が重く、一度ベッドに倒れ込んだ後は起き上がる気力もなかったが今日はすっかりいつもと変わらぬ調子で、一晩しっかり眠ったことで気力と体力に溢れていて。しかしだからといって依頼を受けたりなんかは出来ないため、どうしたものかと少しばかり思案した後で昨日フレデリクが口にしたワードを思い出したように口にすると、本当にしてみる?などと冗談めかしてはにかみ笑い、あくまで冗談といった風を装って見せているが内心の緊張を示すように、臍あたりの位置で組んだ両手の指もじもじ動かしながらチラリと横目で見上げるよう相方の表情窺っていて)
そりゃそうだって。それに砂漠の国から寝ても覚めても連戦だったからさ。たまにはゆっくりしようぜ。
ん、デートかい。それもいいかも…って、な、デート!?
(何が起こるかわからないこの旅、互いのコンディションだけはしっかり保っていきたいところ。そんな会話をしていれば、ふと相方の口から零れた単語に虚を突かれぽかんと口を開きつつ、先ほど別れた友人フレデリクの含んだ笑いが見えたような気がして)
よし、それじゃ昼に町の真ん中にある小さな噴水の辺りで待ち合わせな。遅刻すんなよっ!
(同じ宿に泊まっているので出掛けから行動を共にすることもできるが、デートってのは外で待ち合わせするもんだと謎の持論を呟きながら、のんびりと一人歩き出してひらひらと手を振り)
えっ……!?ちょ、ちょっと、本当に……って、行っちゃった……
(軽くあしらわれるか流されてしまうかとも思っていたのだが意外にもすんなりと、むしろとんとん拍子に話しが進んでいってしまうとデートだなんて自分から言い出したことだが逆にこちらの方が戸惑ってしまって。本気なのかとこちらから再度意思確認をする間もなくそそくさ外出準備を済ませて出て行ってしまった彼の背を見送れば、実際デートという名目で外出することなどこれまで生きてきた中で経験のない事であるため、どうしようと頬を染めて頭を抱えて。とはいえ、既に相方は出発した後であるため覚悟を決めるしかないと昼の待ち合わせ時間に合わせて身支度を進め)
ロゼ、待った……?
(デートということでやはりお洒落をした方がいいのだろうかと、昨日披露したエルフ風の衣装でという考えもあったのだが今日は普段通りの自分でと、いつもと変わらない服装で髪だけ一つに結い、薄く化粧だけして待ち合わせ場所へ。噴水のある広場にて佇む見慣れた背中見つけると小走りで駆け寄っていき、後は普段通り声をかけるだけというところで、普段通りって一体どんな感じだっただろうと考えてしまい足を止めて一度深呼吸、デートということを意識してしまっただけでこんなにも感情がグチャグチャになってしまうことに驚きながら、結局肩を背後から指先でトントンと叩いて控えめに微笑むという、普段の自分のイメージからはかけ離れた形での声かけとなって)
(肩を控えめに叩かれそちらに目を向けるといつもの距離感に相方の姿を見つけるも、なにやら表情が固いような…。少しアレンジされた髪型も相まって、思いの外意識してるなぁと小さく笑い)
よっ、傷は大丈夫か?あんまり無理して身体動かすなよ。
しっかし、着いたばかりの頃はずっと真っ暗だし少し気味悪いなと思ってたんだがな。慣れてくると案外綺麗に見えてくるもんだな。
(相変わらず広がる闇の世界、そこに薄ぼんやりと光るオレンジ色がイルミネーションのよう。まるで、何かのイベントで普段は出歩かない夜、外に出た子供の頃のような気分になり)
アスティ、昼はまだだろ?
この辺りで何か見たいものがあればソレを軽く見て、まずは昼飯食べようぜ。
(何か気になるものあるかい?と聞きつつ、アスティを促し歩き始め)
本当だよね、照明も独特で変わってるけど灯りは他では見た事ない感じで綺麗だし。……ただ、やっぱり時間の感覚は慣れないっていうか、変な感じかな?今朝目が覚めた時もまだ夜だと思って珍しく二度寝しちゃって……。ロゼはそういうの全然平気?
(普段と変わらない気取ったところや飾り気のない態度と表情で声をかけてくる相方にようやくこちらの緊張もほぐれてきて、口調なんかも段々といつもと変わらない調子に戻り始めて。特殊な植物の放つ薄ぼんやりした天然の光を照明がわりとしている独特な光景は幻想的なようでもあって、えもいわれぬ趣を感じている一方で、常闇の世界故にどうにも体内時計の感覚に若干の影響が出ているようなそんな気がすると、苦笑を浮かべて相方はその辺気になったり違和感はないかと話しを振り)
あ、うん、そのことなんだけどね。待ち合わせの時間まで少し時間があったから簡単に料理を用意して詰めてきたの。昨日も行ってきたんだけどここの最上部が展望台みたいになってて景色とか凄く綺麗だったんだ、もし良かったらそこで一緒に食べない?
(ここの料理にはあまり馴染めず食指が動かない様子の相方のため、集合時間までの空いた時間を活用して簡易的ではあるが所謂お弁当を用意してきており、それを昨日の散策でたまたま見つけた街並みを一望できる眺めの良い最上部の展望台で景色を楽しみながら一緒に食べるのはどうだろうと提案すれば、デートなのだからと手を繋ごうと手を差し伸べて)
んーそうだなぁ。睡眠は今んとこ大丈夫なんだが、感覚的にずっと夜動いてるみたいだし、夜行性の動物にでもなった気分だよ。
(このまま慣れてしまうと、この国を出たら深海から引っ張り上げられた深海魚みたいな気分になるのかもしんと大げさに言いながらも、幻想的な闇の光景を楽しんで)
…!気が利くな-!それじゃ、その展望台に行ってみるとしようぜ。
(至れり尽くせりな相方の計らいに感謝しつつ、少し照れながら差し出されたアスティの手を取り。頼もしい旅の相方の意外な一面…相棒としての側面から今まで意識的にそういった面を見ようとしていなかったのかもしれない、彼女の歳相応の女性的な振る舞いに、柄にもなく急に緊張してしまい繋いだ手をややぎこちなく動かしながら歩き)
ふふ、殆どハシゴ移動だからあんまり手を繋ぐ意味はないかも……でも、いいよね?だってデートだし、ね
(目的の展望台を目指しての移動はこの国の構造上必然的にハシゴ移動がメインとなり、せっかく手を繋いだのもすぐに離すことになってしまい。あるいは手を繋ぐ意味そのものがあまりないかもとハシゴを登っていきながら身も蓋も無いことを口にしてしまうが、これは誰がなんと言おうとデートなのだ、つまりは理屈ではなくそういうものとして楽しまなければ損だと先程までの余裕なく動揺していた様子はすっかり鳴りをひそめて先に頂上へと至るハシゴを登りきったところで、後から登ってくる相方へ向けてクスリといたずらっ子のような笑みを向けながら手を差し伸べると、小首をゆるりと傾げて改めて自らこれがそういうイベントなのだということを強調するように述べて)
(すっかりいつもの調子を取り戻したような相方に促されハシゴを登り、差し伸べられた手を取りながらも、向けられた悪戯っぽい表情に逆に何かを掴まれたような。砂漠の国でのパーティともまた違った不思議な距離感に少しばかり動揺しながらも、いっそのことそれを楽しんでやろうとし)
あぁ、そうだな…っ。はぐれないように繋いでくれると助かるよ。
(照れくささを感じながらもアスティの言葉に同意し、触れる手の平の確かな体温を都度都度感じながら、展望台を目指して登っていき)
結構高いところまで来たな。そろそろ着く頃かい?
うん、もう頂上だよ。ほらこっちへ来て下を見て、凄く綺麗でしょ?
(最後のハシゴを登りきれば改めて、相方の自分のものより一回り大きく頼もしく、力強いその手を物理的にだけでなく心の結びつきをより感じようと握りしめて。繋ぎ合う手からまるで体温が一つに混じり合い溶け合っていくようなそんな感覚に薄ら頬を赤らめながら無邪気に笑いつつ、やや強引にぐいぐいと相方の手を引いて歩みを進めれば周囲を木製の柵に囲われた円形の床の上、ベンチが置かれ、そこに座って街並みを一望することもできる小さな展望台へと案内をして。幸いにも先客は他に誰もおらず相方と繋いだ手はそのままに、眼下に広がる辺り一面にオレンジの明かりの灯った美しくもロマンチックなようでもある、そんな景色へと視線を投げかけて。相方にも是非とも見せてあげたいと思っていた光景……豪快なようでいて実は楽器が得意であったり、旅先でもその地域ごとの特徴なんかを感じ取って楽しむ繊細な感性も少なからず併せ持つ、そんな彼の目にはここからの景色はどんな風に映っているだろうと口角を上げた笑みを浮かべながら、傍らで顔を見上げるようにしてその反応を窺っていて)
おいおい、そんなに引っ張らんでも付いていくってば。
へぇ、確かに幻想的でいいもんだな。…不安定な感じというかなんというか、そういう揺らぎみたいのが刹那的な綺麗さを作ってるのかもな。
(小さな展望台から見下ろす常闇の町をぼんやりと照らす淡いオレンジ色の光。決して強く光り輝くようなものではないが、その儚げな柔らかい光になんとも言えない美しさを感じ素直にそれを口にして。完璧で一分の隙もないような完成されたものより面白みがあり、再現するのが難しいくらい絶妙なバランスで成り立っていたこの旅の色々な出来事も、ある意味似通った面白さがある気がするよと独り言のように呟き)
連れてきてくれて、ありがとな。
(その心遣いに感謝を述べ、なんだか想像以上にデートっぽいことしているなぁと改めて感じて)
……ふふ、なんだか詩的でロマンチックな表現だね。お礼を言うのは私の方だよ、こちらこそ今日は付き合ってくれてありがとう
(見える景色から受けた印象を雅趣な言葉選びで表現した相方、途端に目に映る世界がより輝きを増して見えてしまうのはきっと自分がこの場、この状況の雰囲気に完全にあてられてしまっているせいだという自覚をして我ながら呆れてしまうが、相方とのデートと敢えて定義づけした特別な時間に惑溺していく己自身の心に抗うことは能わず、やはり自分はとっくに彼のことが……そんな胸の奥芽生えた確信めいた感情には思わず蓋をして誤魔化すように努めて明るく笑って振る舞いながらも決定的な表現は避けるようにする。彼はあくまでも旅の相方だ、もしもそんなポジションすらも失ってしまうような事になったらと思うとこれ以上彼の心に深く踏み込むことは憚られてしまって、こんなにも女々しく考えてしまう自分自身に驚くと同時に情けなく惨めな気持ちが芽生えるがそれらの負の感情を必死に頭の片隅へ追いやり、眼前の景色へと再び目を向けると傍らの彼にありがとうと感謝の気持ちのみを伝えて)
ロゼ、お弁当食べよっか?これはね、前の砂漠の街で買った中身の温度を一定に保つ魔道具なんだ。これさえあれば出来立てホカホカのお料理を楽しめるはずだよ
(これ以上は膨らむ想いを抑えきれない、そう悟った己は気持ちを切り替えようと荷物の中から正方形の平たい大きめの箱を二つ取り出せば、なんの変哲もなく見えるそれらの箱についての説明を交えつつベンチの上に並べて置き蓋をパカっと開けて。片側の箱には輪切りにしたバゲットの間に食材を挟んだバゲットサンド、もう片方の箱には限られた材料でも極力彩りなんかも考えられたおかずが詰まっており、説明通りおかずの方からは作り立てであることを示すかのような湯気が立ち上り)
(色々な思いを巡らせているようなアスティの雰囲気は、なんだか今まで気が付かなかった一面を見たよう。近過ぎて気が付かなかったのかもしれない彼女に対する何らかの感情を自身が抱いていることを意識させられたことを認めながらも、それを深追いすることはせず。相方の明るい声に促されれば、砂漠の国で熱心に吟味していた魔道具とお手製の料理が披露され)
おおー、こんなに準備してきてくれたのか。怪我してるのにすまんな。さっそく冷めないうちにいただくとするよ。冷やすだけじゃなくてこういう使い方もできるんだな。
(いただきますと呟き、二人でのんびり食事を始めて。菜食主体の食事に慣れ始めた身体が目覚めるような美味さに自然と顔が綻び。これは俗に言う胃袋を掴まれるというヤツなのだろうかとふと考えて)
気にしないで。ロゼここでの食事楽しめてないみたいだし少しでも美味しいもの食べてしっかり栄養つけておかないとね?旅は身体が資本なんだから……って、怪我してる私が言うことじゃないけど
(ベンチの真ん中に広げた弁当を挟んで隣り合って座る相方と一緒に食事を楽しむ。相方とは日頃から寝食を共にしている間柄だが今日は普段のお腹を満たす為のものとは異なり心までも満たされていくようで、こちらの怪我に対するささやかな気遣いすらも嬉しく感じて顔を綻ばせると、相方の為に手作りの美味しい料理をなんて軽く自画自賛。身体が資本なんてもっともらしい事を言ってる張本人が怪我人では締まらないなとおどけてみせて)
ここ、ソースついてたよ。……なんだか穏やかだね、旅を始める前はこんな風に誰かとこんな優しい時間を過ごせるなんて思ってもみなかったなぁ
(相方の口元にバゲットサンドのソースが付着しているのを見つければ、荷物の中からハンカチを取り出して口元をサッと拭ってやったりしながらもゆっくり食事を進めて。やがてどちらの弁当箱も中身が綺麗に空になればご馳走様と口にして片付けを済ませて、小さく一つ息を吐いて伸びをしてから瞳を細めると自分の旅立ちの経緯を考えれば今こうして心穏やかに幸せと思える時間を享受出来ているのは奇跡に近いと、柔らかな口調で幸せ噛み締めるようしみじみ呟いて)
(なんだかどっちが年上かわからないようなやりとりをしながらのんびり食事を終え、ごちそうさまと呟き改めて食事のお礼をして)
そうだなぁ。こうやってたまにはのんびりぐーたらしながら、旅をするのが気楽でいいわな。
(フレデリク達の一件で思わぬいざこざに巻き込まれてしまったが、この常闇にゆらゆらと浮かぶ幻想的な光と穏やかな街並み、それらが相まってとてもリラックスできるところだと今更ながら感じて。宿を取ると比較的のんびりぐーたらしていることも多いのだが、そこにはあえて触れず)
さぁて、満腹になったことだし、どうする?買い物でもするかい?
いいね、そうしよう。特に欲しいものが無くても一緒にお店を見て歩くだけでも楽しいよね
(昨日の自由時間でめぼしい場所はある程度回ってはいるが、それでも全てを網羅した訳ではなく、何より相方と一緒なら見え方も感じ方もまた違ってくるはず。特に入り用なものも現状では思いつかなくても実際に店を見て回れば物欲が湧いてくるということもあるかもしれないし、そうでなくても目的もなくブラブラするのも二人でならきっと楽しいだろうと笑顔でその提案を受け入れ、ベンチから勢いをつけて軽く跳ねるように立ち上がりお尻を軽く手で払って)
それにしても、ここに住んでたらハシゴの上り下りだけで足腰結構鍛えられそうだよね。……あ、見て、ガラス細工の食器だって!綺麗だね、何か買っちゃおうか?
(相変わらず移動はハシゴがメインで、これだけ日頃からハシゴを利用していればさぞ足腰が強くなるだろうなと、率直に思った事をそのまま口にしてとりとめもない話題を振ったりしつつ、通路脇の店なんかを時に足を止めたりしながら眺めてウィンドウショッピングを楽しんでいれば、見るからに穏やかな感じの風貌の老ドワーフが営む店に目が止まって。そこには色とりどりのガラス製の食器類や、置き物なんかが陳列されており、それら全てが店主の手作りであるようで。どれもが精巧な出来の品々に目を奪われ、色違いのペアのグラスなんかもあるのを見ては相方を振り返って反応を窺って)
ん、食器ねぇ。どれどれ。
(寡黙で職人気質なイメージのドワーフが営む食器屋に興味を惹かれたアスティに促され、それらを眺めて。確かに彼女が言うようにどれもしっかりした精密さを感じ、なおかつ繊細な雰囲気も相まって目を引く。それらと同じくらい、自身では気にも止めなかったであろうこういった類の店に興味を示した彼女の女性らしさのようなものを改めて感じて)
ペアのグラス、良いんじゃねぇか?俺はショットグラスみたいなものが欲しいなぁ。
(アスティの視線を肯定するように穏やかに頷きつつ、自身は精密である程度丈夫そうな、小さなショットグラスを手に取って眺めて。旅のお供の酒をちょいと飲むには良さそうだ)
可愛いグラスだね、こういうのって強めのお酒を中に注いで二人で飲み比べとかするんでしょ?
(いくつか並んだ中から相方がピックアップしたそれは一般的なグラスと比べて小さめなそれで、自分ではそういった飲み方を試したことはなく、使途も当然それだけではないだろうが酒場なんかで主に荒くれ者や、見栄っ張りな若者なんかが意地の張り合いからアルコールの度数が明らかに高い酒を飲み比べたりしているのを見た事があるためそういった記憶と印象が強く結びついていて)
……そうでなくても旅先で静かに二人で乾杯するにも丁度よさそうな感じで、そこまで嵩張らなさそうだし……うん、私もこれが気に入ったよ、これに決めちゃおう
(イメージはどうあれ、実際に二人で使用する場面を想像してみることにする。二人で焚き火なんかを囲んで揺れる炎を眺めつつ嗜む事を目的として注がれた少量の酒を静かに酌み交わす……そんな風景が脳裏をよぎり、相方となら特に素敵な時間を過ごせそうだと心の底から感じれば、ほぼ即決で相方の選んだそれの購入を決めて満面の笑みを浮かべて)
飲み比べはどうかわからないが、少し強めのヤツを少量飲むモノだな。ま、お前さんも知っての通り俺はそんなに酒強くないから、こういうのが合ってるかなってさ。
(早々に酔い潰れ引き摺られて帰った記憶…正確には残念ながら記憶はないのだが、後から補完したそれらの出来事を思い出して苦笑し)
それにこういう物って用途もそうだが、それに纏わる思い出みたいな物が宿るというか。手に取って感じたことや、その当時の出来事や考えたことなんかを後から思い出すことがあったりして、面白いなって思うんだよ。へへ、それじゃコイツを貰うしようかね。
(常闇の国で小さなグラスを二人で眺めた出来事、その日触れた相方の手の暖かさをいつか懐かしむ時が来るのだろうかと、ぼんやりと考えながら思ったことを口走って。どうやらアスティも気に入った様子、それなら決まりだとドワーフの店主にそのグラス二つの購入を告げて)
ふふ、そうだよねわかるよ。思い出の品ってそういうものだから……でも、暫くは後になって振り返るだけの思い出にはしたくないかな、これにまつわる楽しい思い出もいっぱい増やしていこうね
(購入したそれをしげしげ眺め、相方の言わんとすることに理解を示して頷くと荷物の中に丁寧にしまい込んで。思い出を振り返るなんて言うと少しばかり感傷に浸ってしまいそうにもなるが、思い出は紡いでいくことも出来る、永遠に続くものなどこの世にはなく、いつかは必ず終わりが来る旅だがそれまでにどれだけ彼と心通わせかけがえのない時間を過ごせるか、それは今後の自分たち次第で、願わくばこの先も末永く二人で旅先で笑い合ってこのグラスを手にして酒を酌み交わせる、そんな日々を積み重ねていきたいと微笑んで)
ロゼ、今日は本当にありがとう。デートなんて、私はこういうの初めてだったからどうなる事かと思ったけど、すごく楽しかったよ。……明日からも、変わらず旅の相方としてよろしくね
(デートの正解というものがどうなのか、自分ではあまりよくわからないが、一緒に綺麗な景色を眺め食事をして、お揃いのグラスまで購入した。それは実に充実した時間で、誰がなんと言おうと自分の中では最高のデートだったと断言することが出来て。突拍子もない自身の申し出に付き合ってくれた相方への感謝の気持ちと、ほのかな恋心……デートの締めくくりとしては些かささやかではあるがそれでも今の自分たちの関係的にはこれぐらいが丁度いいと、目の前に歩み寄って軽く伸び上がって頬に軽く触れるだけの口付けをして、明日からも大事な旅の相方として一緒に歩んでいこうと、頬を僅かに上気させてはにかみ笑いを浮かべ願いを口にして)
こっちこそありが……ああ、そうだなっ。明日もきっと色んなことがあるんだろうぜ。こちらこそよろしく頼むよ。
(思いがけないアスティの行動に驚き一瞬言葉を失うも、その後向けられた彼女の優しい笑みに自然と穏やかな気持ちになり、明日からの冒険に思いを馳せて。のんびりと宿へと歩きながら、なんとなく彼女の唇が触れた自身の頬に指先で触れると、滞在期間はさほど長くは無かったが色々なことがあった常闇の国、この幻想的な柔らかい光とそこでの出来事は、生涯忘れることはないだろうとぼんやり考え)
さぁて、次の目的地を決めようかね。そろそろ体に日の光を思い出させてやらねぇと、ほんとに俺たち夜行性の生き物になっちまうぜ。
(体内時計が随分と狂っているのではないかと、だらしなく欠伸をしながらアスティを眺め明日からの行く先を相談し始めて)
そうだね、ここの景色は素敵だったけどそろそろ日の光が恋しいよ。次の行き先は宿に戻ってからゆっくり地図でも眺めながら……!あなたはっ……
(久しく日の光を浴びずにいたことで、改めて普段頭上に燦然と輝いていた、あって当たり前の温かな光のその有り難みを実感させられるのと同時に、ここでの生活に完全に順応するのは自分には難しそうだと苦笑いを浮かべ。次の目的地についてはこれまでとは違い漠然とした案すらもないが、それならそれで地図を眺めながら二人で行き先について話し合って決めるのも一興、宿に帰ってからの新しい楽しみが出来たと胸を躍らせていると眼前には銀色の髪をした一見すれば人間と見紛うほどの精巧な少女の人形、ソリスが立っていて)
『ご機嫌麗しゅうございます、アスティ様ロズウェル様。先日のガイアシザー討伐の折は大変お世話になりました!』
(普段一緒に行動していると思われるアルバスの姿は目の届く範囲には見当たらず、彼女一人のようで。こちらへ向けて恭しくお辞儀をすると礼儀正しく挨拶をしてきて)
私達に何か用……?
(何故彼女がここにいるのか、偶然の可能性も勿論あるが後をつけられていたと考える方が自然だろう、目的は現状ではわからないが得体の知れない正体不明の気味悪さを感じる二人組のその片割れが突然目の前に現れたことに、先程までの浮ついた気持ちは完全になりをひそめ、警戒心をあらわにして見据えて)
『……マスターのご命令です、アスティ様……ご容赦くださいませ。……ロズウェル様、マスターが貴方様と個人的にお話しがしたいそうです、要求を聞き入れてくださればアスティ様は解放するとお約束します、勿論聞き入れて頂けますね?』
(アスティと対峙したソリスは素早く手を前に突き出せば袖口に仕込まれていた小さなボウガンを放ち、そこから放たれた矢が肩にヒットした瞬間脱力し倒れ込みそうになったアスティを抱き止めると、その首元にボウガンの鏃の先端を向けながら目の前の彼へと抵抗をしないよう牽制しつつ自らの要求を伝えて)
…よう、珍しく一人でお散歩かい。どっちかってーと、ご主人様は明るいお天道様の下よりこういう仄暗い場所の方が似合う気がするけどなぁ。
(ソリスの姿を確認すると、やや強張ったアスティの様子に気付きわざとらしく軽口を叩き。そのままアスティとソリスのやりとりを眺めるも、不意をつくような一撃を肩口にもらい崩れ落ちたアスティ、ただの矢ではないことは明白)
ッ!!…てめぇら、何企んでやがる…?
(穿ち焔の柄に手をやるも、アスティを人質に取られたこの状況で強硬手段に出ることはできず、その機械仕掛けの瞳を睨みながら問うて。睨み合いを続けながら、攻撃をするでもなく逃げるでもなく、その様子はソリスが投げた要求を不本意ながらも聞き入れようとしていることを暗に告げて)
ロ……ゼ……ごめ……
(襲いくる強烈な眠気、力が入らず全く言うことを聞かない身体に微かに残る意識で、まんまと人質として取られてしまうという失態を演じたことを相方に向けて言葉を振り絞って謝罪しようとするが、途中で力尽きて完全に昏倒してしまい)
『その質問への答えはマスターがお持ちです。……出立の準備が済み次第、西側の出口までお越しください』
(最初に出会った時の口数の多さからすれば嘘のように表に出す感情は薄く、一切余分な事を話さずにまるで機械的に主命だけを果たさんとしている様子が見て取れて。その一方で宿屋に置いたままの荷物などがあるだろうと、その辺の配慮は欠かさなかったりと人質をとって行動を強制する悪辣さとはアンバランスなようでもあって)
(人質としての利用価値を鑑みると一次的な昏倒だとわかっていながらも、意識を失う相方を見遣り腸が煮え返り)
…アスティに少しでも妙なことしてみろ、稼動させたままバラバラに分解してやる。
(悪態を付きながらソリスに背を向けて宿へと向かい。魔力を原動力として動く人形に対し脅しなどまったく意味はないだろうが、言わずにはいられずに吐き捨てた自身の行動にも苛立ち。乱暴に荷物をまとめながら、つい先ほど購入したグラスをちらりと眺めれば怒りと不安が入り混じり苦々しい表情を浮かべて。それでも…ここで逆上しては向こうの思う壺、意識を落ち着かせて宿を後にして)
…よう、待たせたな。
(西側の出口へと二人分の荷物を背負い現れ。念のため、闇に包まれた周囲にアルバスが潜んでいないかをちらりと探りながら、ソリスに声を掛けて)
お待ちしておりました。……ご安心ください私のマスターは闇討ちなどは致しませんので、さあどうぞこちらへ
(待ち合わせ場所へと逃げることなく現れた相手、人質をとっているのだから当然だが、本当に彼は打算も何もなくこの堕天使のこと大事に想っているのだなと、疑っていたわけではないが主人から聞いていた堕天使という存在の悍ましさを考えれば驚くべきことだが、態度には出さず。周辺を気にする様子を見せる相手の振る舞いに意図を理解し、不意打ちで人質をとったりと十分に卑劣な手段を講じた後では信用はないだろうが、とにかくこの場にアルバスは居ない事を重ねて伝えるとアスティを軽々肩に乗せ担いだまま踵を返し森の奥へ歩き出し)
これから向かうのはマスターの生まれ故郷のその跡地……そこでマスターはお待ちです……堕天使によって刻み付けられた同じ痛みと苦しみを知るロズウェル様を……
(少しずつ周辺に深く茂っていた木々が次第に減っていき、久方振りに夕刻時を告げるオレンジの陽の光が彼女たちの身を照らす。堕天使と関係があるとされる災禍の楔と呼ばれる大いなる暴の力、それによる惨劇の地が目的地であることを伝えると改めて彼の過去については粗方調べがついていることを示すように話し、歩みを更に進めていくと元はアルバスの故郷へと繋がる街道があったのだろう、剥き出しの土の上に無造作に伸びた雑草という荒れ果て、荒廃した景色が広がっていて)
…そのようだな。
(砂漠の国で見た彼女の飾らない性格、魔力で動く人形とわかっていてもその印象は悪くはなかったが、相方を人質に取り選択肢を与えない交渉の進め方に自身の単純な認識を忌々しく重い。それでも、主人が傍に居ないというのは本当なのだろうと、周囲への警戒を緩め)
……お前…クソっ
(ソリスが呟いた言葉から、自身の忌まわしい記憶を擽るようなアルバスの物言いを思い出して。大方自身の過去は主人からインプットされているのだろう、小さく悪態をつくと、脳が忘れていた陽光の明るさに眩しさを感じ、手の平でその沈み行く太陽の光を遮りながら苦々しい表情を浮かべ荒れ果てた地をゆっくりと歩いていき)
(互いに無言のまま荒廃した土地を進んでゆくと、やがて砂漠でも見たような、楔が打ち込まれたことを示す深く抉れた大地が見えてくる。深穴の周辺には倒壊した木造の建物の残骸などが散乱しており、そこそこ栄えた街であったことを示すように大きな建物の痕跡も点在しているが、今では見る影もなく)
マスター、ロズウェル様をお連れしました
(深穴から僅かに離れた街外れ、そこには屋根や壁がボロボロにはなっているものの、爆心地から外れていたおかげか他の建物よりは比較的しっかり形の残った教会だったであろう建物が佇んでいて。ソリスはその建物の裏側へと周りこめば、そこに存在する背が高く朽ちて葉が落ちた木の下に佇む真紅のロングコートの背中へと、自身に課せられた責を全うしたことを伝えて)
『ご苦労……。よく来たなロズウェル。歓迎するぞ、息災であったようで何よりだ』
(アルバスはゆっくりこちらを振り返ると短く自身の魔導人形を労い、相手の方を見やれば、あまり感情の込もらない抑揚のない口調でそう語りかける。彼の足元の木の根元には表面に何か文字らしきものが刻まれた丸い石、その側には真新しい白い花束が添えられており、それが何者かの墓標であることを示していて)
(ソリスに連れられ辿り着いたのは朽ちた教会を思わせる寂れた建物。彼女が声を掛けた男の後姿に目をやりながらも、ちらりと男の足元の墓石を見遣り)
何が歓迎だ。さっさと要件を言えよ。…返答次第で叩っ切るぜ。
(刀の柄に手をやりながら低く落ち着いた声で言葉を投げ。2対1、かつ先日のガイアシザー戦で見せたアルバスの戦闘スタイルとその身のこなし、仮にサシでやったとしてもその結果はわからない。研ぎ澄まされた神経がささくれ立つような感覚を得ながらも、アルバスからは殺気、いや、一戦を交える気すら感じられないようでやや混乱すると、それは次第に苛立ちに変わり)
てめぇ、みっともなく人質まで取って何しでかそうとしてんだ。答えやがれ!
(やや語気を荒げ吐き捨てて)
何故お前はよりにもよってこの娘と行動を共にする、お前にとって堕天使は忌むべき仇ではないのか?後悔、憎しみ、怒り……お前を苛み続ける深い傷は、この呪われた血を持つ存在によって刻み付けられたものだろう
(腹立たしげに声を荒げる相手とは対照的に、落ち着き払った態度でソリスが抱える堕天使の少女一瞥してから、相手からの質問には答えようとはせず、堕天使は相手にとっても大切なものを奪い去った許し難い憎むべき存在ではないのかと逆に一方的に質問を投げ返し)
ロズウェル、俺はお前と戦うつもりはない。……むしろ良い同志になれると思っているのだ、俺とお前が手を組み、そしてソリスの力があれば必ずや天界の驕り高ぶった聖者の皮を被った獣どもを一掃できる……今度は奴らに教え込んでやろうではないか、奪われる者の痛みを…!苦しみを…!
(静かに、しかし次第に膨らんでいくのは負の感情。絶大な権力と発言権を持つセレスティアル家の統べる天界を堕とす……そんな驚くべき計画を目論み、そしてその計画の一端を彼にも担わせようと言う。これまでの落ち着き払っていた態度が嘘のように目を見開いてギラつかせ狂気に満ちた表情浮かべて両手を広げて声をあげる様子は、妄執に取り憑かれた狂気の復讐者そのもので。そんなアルバスの様子を横目で見るソリスはただ黙って静かに瞳を伏せて)
…天界を…だと?
(堕天使に対して何かしらの思惑があるのだろうと踏んでいたが、その野望の大きさに思わず声を出して。自身のトラウマを刺激するような言葉が呼び覚ますのは、あの惨劇と妹の亡骸。しかしながらそれらと同時に浮かぶのは短くも充実した旅を共にした相方の優しげな面影)
確かにお前の言うとおり、奪われた痛みも苦しみも忘れることはないだろう。あれを引き起こした元凶の息の根を止めない限りはあの世に行けねぇと思ってる。…だがな、それと天界をどうこうしようってのは、また別の話だろうに。
(かつてアスティが話した彼女とセレスティアル家に纏わる過去。モルドールと滅びの山での様々な出来事が、昨日のように脳裏をよぎり。ふとソリスの憂いを帯びた機械仕掛けの瞳に気付くも、その意図は読み取れず)
天使など皆、二面性を持つ獣だ……。この地『エルマナ』はな、かつて天使を崇拝していた土地だ。俺たちは物心がつく頃からずっと来る日も来る日も奴らに感謝の祈りを捧げ、生きてきたのだ……天使こそが世に調和と安寧を齎す聖なる存在であると、そう信じて疑わなかった……!だが、その結果がこのザマだ……!堕ちた同胞が地上で何をしようが奴らは素知らぬふり、それが邪悪以外のなんだというのだ!?……故に奴らは等しく罰を受けるべきなのだ
(天使全てが悪ではない、憎むべき仇は別にいるのだから天界そのものを堕とすのは筋違いである……相手の言い分を最後まで聞いた上で、改めてこの土地がどういった場所であったのかを語るアルバスの投げかけた視線の先の古びた教会、割れたステンドグラスに描かれるのは辛うじて天使モチーフのものであるのがわかり、かつての信仰こそが天使そのものへの憎悪に繋がっている事を示していて)
憎むことでしか救われない思いはある。ならば憎めばいい、誰かに遠慮することはない。お前にはその資格がある……だが、憎むばかりでは自分を毒するだけだ。それを然るべき相手に受け止めて貰わねばならない。そうして世の中の痛みは正しく循環していくべきなのだ。さもなくば……報われない魂が生まれ……それはやがて、亡霊となり己を苛み続けるだろう……お前にも身に覚えがあるのではないのか?
(先程までの狂気的な振る舞いから一転、まるで聖職者が信者へと教えを説き、導くように口にする。相手が砂漠で見た過去の呪いにも似た記憶を体現した何か、あの夜のことまでは流石にアルバスも知り得ないようだがそれでもそれに近しい経験をしたことがある、そんなことを匂わせるようにそう語りかけては、ソリスの元へと歩み寄る)
ソリス、そいつをこっちに寄越せ……なんだ、その目は……道具のくせに言うことを聞けないのか?
『……承知いたしましたマスター……』
(アルバスはソリスの前に立つと、彼女の抱えているアスティをこちらへ受け渡すよう命令する。伏せていた顔を上げアルバスを見やるソリスは悲しみか罪悪感か、はたまたその両方の感情が綯交ぜになったような瞳を一瞬揺らがせ、僅かばかりの沈黙……しかし、最後にはその命令を聞き入れたソリスはアルバスの両腕にアスティを委ねて)
自分を毒するだけ、かい。あぁ、それは理解しているよ。ただ、そいつとどうやって付き合っていくか、俺はまだ答えを出せていないんだよ。
(荒廃したこの地とその顛末が導く成れの果てを語り、心の内側に入り込んでくるかのようなアルバスの声を聴き入りながらも、アルバスの動作にはっとして)
…ソリス、お前にだって考えがあるんだろう!言ったらいいじゃねぇか、機械だろうが人形だろうが関係ねぇだろ!
(ソリスの瞳の動きを見遣り少し声を荒げるがその言葉はソリスには届かなかったのだろう。アルバスに支えられダラリと腕を投げ出したアスティの姿に腸が煮え)
…アルバス、そいつをこの場でどうしようって魂胆かは知らんがな。これ以上アスティに何かしてみろ、刺し違えてでもこの場でお前の首を刎ねるぜ。
(声のトーンを下げながらも、毅然たる態度で言い放ち)
……交渉は決裂のようだな、残念だ
『マスター……!ここで血を流すべきではありません……、ここは……あの方の墓前です……!』
(何故こうもこの堕天使の娘の肩を持つのか、理解に苦しむといった様子で、これ以上の交渉は無意味であると悟ればアスティのこめかみに銃口を押し当て、差し違えてでもと言い放つ相手のことなど歯牙にもかけていない様子で引き金に手をやる。しかし、そんなアルバスの凶行を止めるべくソリスが脇から走り込んできたかと思うとその手を掴んで銃口をアスティの頭から引き離し、アルバスの背後にある墓標へと目線を投げかけてから、哀願するようにその冷酷な表情浮かべた顔を見上げ)
……!また、その目か……!紛い物のその目を俺に向けるな……!お前のような人形に彼女の何がわかる……!
『マスター……うぅ……』
(ソリスから先程と同じように作り物とは思えない感情のこもった目を向けられた瞬間、アルバスはまるで我を忘れたように彼を前に人質をとっていることで一時的に優位に立っている立場であるということすら忘れたように激昂しソリスを思いっきり殴りつけて大きな隙を晒して)
止めろっ!!
(アスティに突きつけられた銃口、引き金を引こうとする指先、全てがゆっくり見えて。こんなところで終わっちまうのか、そんなわけないだろう、ゆっくり見える光景と真逆に数多の感情が溢れて。それを打ち破ったのはソリスの悲痛な声。この場で最も情緒的な色を含んだ声は、皮肉にも魔導人形である彼女の口から発せられ)
…アルバス、てめぇ…!
(投げかけられた言葉に感情を昂らせソリスを殴りつけたアルバス、その光景が再び怒りに火をつければ、穿ち焔を抜き払った身体は飛ぶようにアルバスへと距離を詰め刃を払い。それでも、脳裏に浮かんだソリスの悲しげな瞳がそうさせるのか、彼の首筋に叩き込まれようとするのは、逆さにした刀の峰)
ぐっ……貴様……!
(彼のような手練れを前にしては一瞬の隙が命取り、怒りに身を任せた行動で失態を演じたアルバスはその一撃をなんとか回避しようと試みるが刀の峰による打撃は避けきれずに肩口に吸い込まれ、骨を砕き。ダラリと腕が垂れ下がり両手で支えていたアスティの身体が地面にドサっと落下し、思惑をめちゃくちゃにしてくれた相手に向けて憎々しげな目を向けて)
罪の所在を知りながら死者の無念を晴らそうともしない……あまりに怠惰!貴様のような者こそが最も唾棄すべき人間だ。貴様だけはこの場で……!
『マスター……!無茶です、そのような傷で……!どうしても……ロズウェル様と相いれぬとおっしゃるのでしたら、私が戦います……ご命令を!』
(もはや、理屈ではなく本能で彼を相いれぬ存在と認識したアルバスは勝算も何もかもかなぐり捨ててただ、感情任せに拳銃を彼へと向けるが、片腕の自由を奪われた状態で勝てるような相手ではない、そんな狂気とも取れる主人の行いを咎めるのはソリスであり、あんな酷い仕打ちを受けた後だというのに二人の間に立ちはだかると何よりまず主人の身を案じ、眼前の敵の始末を命じるように毅然と言い放ち)
……っ……もう良い……この場はこれまでだ、退くぞ
(強い覚悟に満ちたソリスの口調と眼差し、それを見たアルバスはハッと目を見開いたかと思えばビックリするぐらい一気に気持ちを落ち着けて沈静化し、自分たちの戦略的敗北を素直に受け入れると地面に倒れたアスティへ拳銃向けて牽制しつつそのままその場を去って行って)
(屹然としたソリスの振る舞いと、機械仕掛けの人形とは到底思えない瞳の色を見遣り、無言でそのやりとりを眺めて。自身が彼等へ刃を向けるのと、おそらく本質はきっと似たもの。それであれば、覚悟を決めたソリスを言葉で止めるのは不可能だろう)
―
…アスティ、おい、しっかりしろ!
くそっ、なんだってこんなことに・・。
(その後彼等の姿が見えなくなると、アスティの元へ駆け寄りその身体を抱き起こし揺らして。医術は愚か、応急処置の知見すらない自身の体たらくを悔やみ。物理的な損傷ならともかく、意識を失った状態のアスティには穿ち焔の治癒の力を当てにするわけにもいかず)
……っ……う、ん……ロゼ……?私、どうなって……
(受けた矢に使われていた毒は単純に強烈な眠気を誘う類の物であったようでしばらく経って、昏睡状態から目を覚ませば記憶の混濁や肉体的なダメージ等はなく、気を失う直前の状況も明瞭に覚えていたため眼前にある見慣れた相方の顔を見て一度瞬き、それか周囲に目をやれば見知らぬ周辺の景色、そして自分が意識を失う根本的な原因となった元凶の姿もない事など様々な疑問が押し寄せ、少し混乱している様子を見せながらもゆっくりと起き上がり)
……?ロゼ、見て……!これって……
(相方の腕の中で目を覚まして起き上がったすぐそば、そこに置かれた丸い石と花束に目線がいき、何気なくその墓標らしき石に刻まれた文字に目を向けると驚愕したように目を見開き、相方の袖を慌てて引き、そこに刻まれた文字へと注意を向けさせる。そこに書かれた死者を弔う言葉自体は何もおかしな事はなかったのだが問題はそこに眠る人物を示す名前で『愛する想い出と共に安らかに"ソリス・ミルフィオール"』あの魔導人形と同じ名前、それが単なる偶然かそれとも……考えるまでもないだろう、まだ状況は理解出来ていないが、自身が気を失う直前までの状況を考えれば恐らくこの地は彼らにとっての何らかの因縁の地、そこに同名の人物の墓標がある事は間違いなく意味があるのだろうと神妙な表情を浮かべ)
アスティっ!…大丈夫そうみてぇだな、よかった。何、ちょこっと昼寝してただけさ。気にすんなって。
(意識を取り戻した相方の様子に気付き、はっとしてその瞳を覗き込んで。少し状況が飲み込めないといった様子だが、次第に持ち前の頭の回転の速さで頭の中を整理しているよう。彼女が見つけた墓標の文言にチラリと目をやると、立ち去った彼らのことを考え)
…どうやらあいつらにはあいつらなりの事情ってもんがあるようだぜ。
(荒れ果てた周囲の様子をぐるりと眺めると、アスティが気を失っていた間にアルバスが吐き捨てるように語った『エルマナ』に関する話の要点を伝えて)
そうだったんだ……それで堕天使の私にあそこまで執着を……
(相方からの話を聞けばそこでようやくアルバスからのただならぬ執着、その根源にあるものを理解して。大きすぎる憎悪はやがて大きな野心に、共通の敵を追うもの同士手を取り合うことも出来たかもしれないが、その復讐心の強さ故にそれは叶わぬものになってしまったようだ。完全な決裂した今次にこの道が交わる時、こちらも覚悟を決めなければならないだろう、いつか来るあの二人と雌雄を決する日へ思いを馳せ暗澹たる思い抱いて)
……ロゼ、ありがとね。そんな事情を聞かされて……ロゼだって本当は心穏やかじゃなかったよね、復讐の道を選んだとしても仕方のないことだったと思う、それでも今も私と一緒に居てくれて……本当にありがとう
(詳細なやり取りの内容まではわからない、しかし二人の間には確かに交渉があったのだ。相方の抱える事情を考えればその秤はどちらに傾いたとしてもおかしくはなかっただろう、しかしその上で自分との旅を選んでくれた相方には感謝の気持ちが何より一番にやってきて沈んでしまいそうになった気持ちを振り払うように笑顔で感謝の想いを口にして)
さてと……いつまでもこうしていても仕方ないよね、もう少しこの近辺を調べてみよう、何かあの兵器のこととか"あの人"に関する何かがわかるかもしれない
(一目で凄惨な出来事があったとわかるこの土地、しかしここがとある堕天使による攻撃を受けたということは、もしかしたら何か痕跡などが残っているかもしれないと考え周辺の調査を提案して)
どことは言わないけど某所のルーシエンと一文字違いのエルフの子あなただよね
掛け持ちを咎めたい訳じゃないし、多少はこっちを優先してくれていたのはわかるけど、それでも忙しいなんて言いながらそっちには返事出来るんだって少しガッカリしちゃった
楽しくなかった?相性が合わなかった?それならしょうがないと思うよ。私も独りよがりな展開を沢山しちゃってた自覚はあるしね……でも、それならそうと素直に言ってお別れしてくれた方がずっと良かった、待ちに待たされて挙句こんな想いはしたくなかったなぁ……
楽しくてハイペースでお返事しちゃって……なんて話してた頃が懐かしく思えるね、でももうあの頃の気持ちは残ってないんだ……こういうことがあると信じたくても信じられなくなっちゃうよ……もうこんな想いはしたくないから、だから本当はまだまだ二人で冒険を続けたかったけど……さようなら……今までありがとう、大好きだったよ……
まず不快な思いをさせてしまってごめんね。
掛け持ちに対しては指摘の通り、ただ私生活が忙しくなったのも事実でこの趣味にかける物理的な時間が減ったり、疲労からか文章や展開が思いつかないなってことでレスペが減ったけど、それはどちらも同じで、あからさまな優先度を付けたつもりはなかったよ。
とはいえ、一本に絞っていればもう少し見え方も違ったかもしれないし、そもそも一対一というカテゴリはそういった要素もあるのかもしれないから、そこは素直にこちらの配慮不足だったなと感じるので謝るよ。
こちらこそ、長いことやりとりをしてくれてありがとう。
あなたの今後が素晴らしいものであることを願っているよ。
悲しいけど受け入れなくちゃね…
旅はまだまだ続けたいからまた改めて一緒に旅をしてくれる人を募集するね
ここまでの設定は全てリセットで初めから物語を紡げる人を募集するよ
私……また一人になっちゃった……二人で冒険していた頃に戻りたい……私からお別れしておいて勝手な事言ってるのもわかっているし、もう戻れないのはわかってるけど……でも、やっぱり二人での旅はとても楽しくて特別な時間だったんだって、今になって改めて思うんだ……勝手な事ばかり言ってごめんね
いつまでもここでの事を引きずっていても迷惑なだけだよね……もうきっと私への気持ちは冷めてしまってここには無いはずなのにね……だからここで弱音を吐き出すのはこれが最後、またどこかで会えたらなんて、言わないけど……ありがとう、そして今度こそ本当にさよなら
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