伏見静 2024-05-20 07:55:48 |
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(貴方の言葉を聞いた大和川は手斧を片手に「…ああ、せめて足を引っ張らないように努力するよ。」その後─お手柔らかに頼むよ、と付け加えながら、少しばかり冗談めかして微笑んだ。伏見は貴方の溢した提案の言葉にごくあっさりとした調子で頷き、「…ええ、大和川警視は…我々の大事な管理官ですからねえ。…死なれても困ります。」相変わらず素直では無いが、言葉の節々に心配しているような色を帯びた声を上げる。大和川はそんな伏見の様子に笑みを深くし、右頬の火傷痕に指先で触れながら─「…ふふ、ご丁寧にどうも。……まあ、守られる程の価値は…もう無いのだけれどね。」最後の言葉は聞こえない程にごく小さく、ぼそりと付け加えた。また始まった、と言わんばかりの伏見の目線から逃げるように大和川は車のキーを手に取り、貴方と伏見を先導するように公用車へと向かう。そのまま運転席へと乗り込み、キーを挿して─勢い良くエンジンを吹かした。大きく振動する車体に小さな溜息を一つ、車を発進させる─その間、伏見は大和川から渡された資料を読み込んでいたらしい。"特定の物品について"と銘打たれたページには小さな雛人形のような写真が貼り付けられており、『解析の結果、この人形には人間の肉片、毛髪、皮膚が使用されていることが判明した』やら、『人形の底部に【白□工□□】(□部分は解読不能)の刻印あり』やらと─かなり不穏な内容が所狭しと綴られていた。資料を読む伏見はファイル内のとある一文を指差しながら、貴方へとページを見せつける。─その一文には『怪異は被害者、及び被害者の周辺人物に擬態する習性を持つと考えられる』と記載されていた。「…はあ…面倒ですねえ。…信用するな、と言う事でしょうかあ?」貴方に向けたのか、はたまた独り言か─伏見はそんな言葉を漏らしつつ、車外をぼんやりと見つめていて)
(お褒め頂き光栄です…!女性がゴツめの武器を持っているのが好きでして…!)
(大和川警視の言葉に「それは俺の台詞です」と思わず苦笑する。足を引っ張らないか心配なのはむしろ自分の方だ。何せ今日配属されたばかりの新人なのだから。貴方が彼女を心配する言葉に何度も頷いて同意すると、火傷の痕に指を這わせた様子に気遣わしげに眉を下げた。何を呟いたかは聞き取れなかったものの、仕草からして例の事件が心に残っていることは明白で──缶コーヒーを手にしたままなことも忘れて慌てて大和川警視の後を追い、車に滑り込んでからハッと自分が何を持ってきたかに気付き。恥ずかしさを誤魔化すように、後で飲もうと適当なところにしまうと提示された書類の一文を読み──「これは……厄介ですね。場合によっては知り合いでも、本物と見分けがつかないかも──」そこまで呟いて、全身に走った悪寒に顔をしかめ。一度大和川警視の運転する後ろ姿に視線をやってから、車外を眺める貴方に向けて声を落として「……これ、死人にも化けたりすると思いますか」と相談を投げ掛け。もし、死人にも化けるなら──当たらないで欲しい嫌な予感が脳裏を占める。大和川警視に関わる人間を自分は三人しか知らないが、もし死人にも化けるなら動揺は避けられないかもしれない。「杞憂であれば、いいですが」小さく呟きを漏らし、大和川警視に気付かれぬよう表情をすぐに戻すと祈るように膝上で手を組んで)
(/わかります…!女性用に洗練された武器を扱う女性も好きですが、それはそれとして荒々しい武器や重量武器を軽々と扱ってる女性も好き…!)
(伏見は貴方の問いに普段通りの所作で肩を竦め、「…さあ?少なくとも死人に擬態する、とは書いてませんねえ。確認されていないだけかもしれませんけど。」と曖昧な返答を返すに留まる。暫しの間、少々気まずい雰囲気が車内に漂っていたものの─着いたよ、と大和川の上げた声で、その雰囲気は断ち切られた。貴方を待つ様子も無く伏見が日本刀を手に取ると先に車を降り、通報者が待つ場所へと足を踏み入れる。その後を追い、大和川も手斧を腰に提げながらキーを抜いて車を降り、伏見の背中を追った。─今回、三人が呼び出された立派な日本家屋─の玄関から、随分と血色の悪い顔をした、着物姿の女性が顔を見せる。女性は貴方と伏見を見た後、大和川に視線を移し─右頬にべたりと残る火傷痕に少しだけ動揺したような様子を見せるものの、どうぞこちらに、と貴方達三人を屋内へ招き入れた。女性は貴方達を大きな座敷のような和室に通した後、お茶を淹れて参ります、とだけ言い残して部屋を出ていってしまう。大和川は室内を一瞥した後、「…少し外すよ…これで怪異が釣れると良いんだが。」と苦笑いを一つ、「私は雛人形を探すから、暫く戻らない。もし私がすぐに戻ってきたら─"そいつ"は偽物だと思ってくれ。」とだけ言い残して座布団から腰を上げると─今しがたの女性と同じように、部屋を出ていった。貴方と共に部屋に取り残された伏見は─妙に静まり返った屋内を億劫そうに見回し、日本刀をいつでも抜けるように─左手を柄に添える。「……面倒臭い」小さなぼやきを一つ、言葉にはしないが貴方の護符を一瞥し─気を抜くな、と言わんばかりに貴方を無言で見つめ)
(分かって頂けますか…!)
(貴方の変わらない様子に、事前に憶測を立てても仕方ないかと気を抜いて細く息をつく。遅れぬようにして車を降りると、大和川警視の後を歩く形で目的の建物に近付くと、近年ではあまり見なくなった立派な外観におおと声を漏らしそうになって口をつぐんだ。玄関から現れた女性に、着物の物珍しさよりも先に血色の悪さが気にかかり。案内された先で座布団に腰を下ろして懐から護符を取り出すと、引き留める間もなく行ってしまった大和川警視に呆然と襖を見つめて──貴方の言葉にハッと視線を向けて。「…前もって提案した通り、大和川警視には狂骨をつけます」警戒を促す視線に頷きを返して護符の一枚を抜き取り、右手で五芒星を切る。文字が浮かび上がり寄り集まると、額に二本の角らしき尖りを持ち、青白いぼろ布の羽織を纏った人間大の骸骨へと変貌して──これは家人に見られやしないか、大丈夫か、という一抹の不安を抱えながらも「大和川さんについて、彼女を護ってほしい。頼む」と声をかけ。ゆらりと姿がブレるとそのまま消えてしまった狂骨に驚き、護符に視線を落として文字が戻っていないことを確認し、あれで大丈夫なのかと戸惑いの視線を貴方に向けて)
(/はい…!そして、背後の中の狂骨さんイメージはこんな感じです。全体的に青白く淡く光っててボロボロの骸骨さん…!)
(貴方の変わらない様子に、事前に憶測を立てても仕方ないかと気を抜いて細く息をつく。遅れぬようにして車を降りると、大和川警視の後を歩く形で目的の建物に近付くと、近年ではあまり見なくなった立派な外観におおと声を漏らしそうになって口をつぐんだ。玄関から現れた女性に、着物の物珍しさよりも先に血色の悪さが気にかかり。案内された先で座布団に腰を下ろして懐から護符を取り出すと、引き留める間もなく行ってしまった大和川警視に呆然と襖を見つめて──貴方の言葉にハッと視線を向けて。「…前もって提案した通り、大和川警視には狂骨をつけます」警戒を促す視線に頷きを返して護符の一枚を抜き取り、右手で五芒星を切る。文字が浮かび上がり寄り集まると、額に二本の角らしき尖りを持ち、青白いぼろ布の羽織を纏った人間大の骸骨へと変貌して──これは家人に見られやしないか、大丈夫か、という一抹の不安を抱えながらも「大和川さんについて、彼女を護ってほしい。頼む」と声をかけ。ゆらりと姿がブレるとそのまま消えてしまった狂骨に驚き、護符に視線を落として文字が戻っていないことを確認し、あれで大丈夫なのかと戸惑いの視線を貴方に向けて)
(/はい…!そして、背後の中の狂骨さんイメージはこんな感じです。全体的に青白く淡く光っててボロボロの骸骨さん…!)
(ぼんやりと狂骨を眺めた伏見は─貴方の視線にゆったりとした瞬きだけを返し、部屋を区切る、見事な水墨画が描かれた襖の方へ視線を移した。程無くしてがら、と襖が開く音を立て─今しがた茶を淹れに行った女性が、三人分の茶が入った湯呑みを乗せた盆を片手に戻ってくる。もう一人のお連れ様は、と問い掛けながら部屋の中を見回し、大和川が居ないことを少々不審に思っているようではあったが─どうぞ、と頭を下げながら湯呑みを貴方と伏見の目の前へ置いた。女性は着物の長ったらしい裾を器用に捌き、座布団の上へと姿勢良く正座して─"よくお越し下さいました"そう述べつつ、深々と礼をする。ひっつめにされた黒髪は酷く乱れ、頬は異様な程に生白く痩せ細っている─如何にも怪異に悩まされている、と言わんばかりの風体であった。伏見は女性の礼にも「…はあ、」といつも通りの生返事を返すばかりで、左手を日本刀の柄から離す様子は少しも無い。女性は疲れ果てたような溜息を一つ、怪異について語り始めた─話を簡潔にまとめると、"父が骨董市で見つけた雛人形がうちに来てから、次々に娘やら女のお手伝いやらが居なくなってしまった"、"先日孫娘が失踪して、いよいよこの家に残っている女は自分ひとりになってしまった"─とのこと。彼女の縋るような目線が貴方と伏見に注がれ、"どうか、娘達を─"その言葉を言い終わるか否か、襖が再び開いた。「やあ」この部屋の重々しい空気には不釣り合いな程に明るい声を伴い、半分ほど開いた襖から顔を見せたのは─大和川。普段通り、いや普段以上に穏やかな笑みを浮かべている以外は─右頬にべたりと残る火傷痕も、腰に提げている柄の赤い手斧も、一房だけ垂れている前髪も。何一つ、普段の彼女と変わった様子は無かった。部屋の中へ足を踏み入れた大和川は伏見の左隣へ腰を下ろし、「…伏見、急に席を外して悪かったね。」それ以上は何を言うでもなく─話を促すかのように、にこやかな笑みを湛えたまま女性を静かに見据えている。伏見はその声にぱちり、と瞬きを一つしただけで静かに黙り込み、口元に手を当てて咳き込んだ。─が、目前の女性には大和川のことなど判る筈も無く─今までどちらにいらっしゃったんです、と驚いたような声を上げるだけ。大和川も「ああ、いえ…例の雛人形を探していまして。勝手に歩き回ってしまって…すみません。」ばつの悪そうな表情を浮かべて軽く頭を下げた。端から見れば、それはごく普通のやり取りに過ぎない─その中に潜む、微かな違和感に目を瞑れば、であるが。伏見は警戒を怠る様子も無く話に耳を傾け、それとなく貴方の方へ視線を向け)
(いえ、お気になさらず…!)
(女性が戻ってきても護符は出したままにしておこうと、左手に持ったまま差し出された湯呑みに口をつけ、女性の話に相づちを打って怪異の話を聞いていく。これまでの情報と照らし合わせても差異が無いことを内心で確認して、真剣な様子の女性にこちらも真剣な眼差しを返していると──突然意識の外で開いた襖にビクッと肩を揺らして。見れば大和川警視が帰ってきただけで、そう驚くようなことじゃない──本当に?書類に記されていた『擬態する習性を持つ』の文字が弛緩しかけた脳内で踊る。知らず護符を持つ指に力が籠り、咳き込む貴方に大丈夫かと視線を向けつつも大和川警視と女性が言葉を交わすのを耳で拾って。特に問題のない会話に思えるが、疑いの念が微かな違和感を強く訴える……貴方と視線が交差すると”警戒はしています”と言いたげに頷き、それから大和川警視に目を向けて。「警視、貴女が出ていってから……、鬼骨を差し向けたのですが。問題はありませんでしたか」敢えて狂骨と言わずに鬼骨と呼び、軽く引っかけられないか試す。本物の大和川警視ならば鬼骨ではなく狂骨だということを知っているはずだが、はてさて──問いを投げ掛けながらも膝の上では利き手に結界の護符が移動しており、人差し指と中指は揃えていつでも五芒を切れるようにして。足にも油断なく力は込め、状況が動けば即座に反応できるように。屋敷の中で一度狂骨という名称を出してしまってる以上、怪異に聞かれているかもしれないことを考えるとこの問いは正体を看破する一手としては不適切かもしれない。そもそも問いなど関係なく警視についているはずの狂骨にその場で姿を現せと命じれば良いだけなのだが、見えてしまえば女性を不用意に怯えさせてしまうからと最終手段に回して)
(大和川は貴方の問い掛けにゆらりと顔を上げ、「鬼骨は来ていないよ…狂骨なら来たけれどね。まあ、結局雛人形も見つからなかったし…これは無駄足かな。」普段の彼女と何ら変わり無い、穏やかかつ明朗な声で答えながら─何処か困ったように微笑む。だが、伏見は─全てを見透かすような黒い瞳でじっ、と大和川を見つめた後、徐ろに手斧の鋭く磨かれた刃へと手を伸ばした。大和川は驚愕の表情と共に伏見の手を掴み、「危ないだろう、急に何をするんだ…!」と伏見へ叱責の声を飛ばす。途端、目にも止まらぬ早さで抜刀された鋼の刃が大和川の目前に突き付けられた。刃を突き付けたまま、伏見は"大和川"へと問う。「……知ってると思いますが…その手斧、物理的には何も切れないんですよねえ。……あなた…"誰ですかあ?"」その問いが切っ掛けだったかのように─大和川の顔から、一切の表情が欠落した。だがその後すぐに穏やかな微笑が浮かび、唇をぴったりと合わせたままだと言うのに─抑揚を著しく欠いてはいるものの、幼い女児だと思われる声で"あはははっ"と笑う、不気味な声が部屋中に響き渡る。伏見は─目前で繰り広げられる異様な光景を見て気絶してしまったらしい女性を部屋の隅に追いやり、自身の携帯を貴方へと放り投げた。開かれたままのメッセージアプリには「怪異発現確認」「殲滅許可」と─本物の大和川から発信されたと思われる、シンプル極まりないメッセージが残されている。目前に突き付けられている刃の先端が額を掠め、血が流れるのすら気に留めずにゆらりと立ち上がった大和川を見据えたまま、貴方の方を見もせずに「…大和川警視は…恐らく無事ですよお。…躊躇わない事ですねえ。」と、半ば独り言のような呟きを零し)
(引っ掛からないか、或いは本人か──大和川警視の返答を聞いて思考を巡らせ、ふと彼女が口にした「見つからなかった」「無駄足」の単語が引っ掛かった。戻ってきた速さ、女性が大和川さんの出歩きを知らなかった点を考えても、家中を隈無く捜索したとは言い難い。それなのに無駄足と判断するのは早計ではないのか──?やはり狂骨がついているかどうかで判断するべきだったかと唇を引き結び、貴方の行動にも驚かず状況の変化に座布団から立ち上がって見守る。部屋中に満ちた笑い声に肌が粟立つのを感じながらも投げ渡された携帯の画面を素早く確認し、貴方の気を散らしてしまわぬよう返すのを後回しにすると五芒を切って。発動するは結界の札、隅に気絶したままの女性に危険が及ばぬように横たわる身体の二の腕に貼り付け──「すみません、緊急事態なので」気絶している相手に触れることへの謝罪する余裕は持っていて。残る霊縛の護符を利き手に回し、大和川警視の姿をした怪異の挙動を鋭い目付きで注意深く見つめ。「…躊躇はしませんが」知人の姿を相手にするのは経験がなく、不意を突かれれば反射で動きが鈍るやも──と続く懸念の言葉は飲み込む。わざわざ怪異に自分の弱味を見せることはない。代わりに「最悪の場合、狂骨を呼び戻します。そうなる前に殲滅していただけると信じてます」と告げると、いつでも護符を発動できるよう指を立てたまま身構えて)
(/>70の最後辺りの台詞が表現が足りず他人任せに取れてしまうので修正文を載せます…!)
(引っ掛からないか、或いは本人か──大和川警視の返答を聞いて思考を巡らせ、ふと彼女が口にした「見つからなかった」「無駄足」の単語が引っ掛かった。戻ってきた速さ、女性が大和川さんの出歩きを知らなかった点を考えても、家中を隈無く捜索したとは言い難い。それなのに無駄足と判断するのは早計ではないのか──?やはり狂骨がついているかどうかで判断するべきだったかと唇を引き結び、貴方の行動にも驚かず状況の変化に座布団から立ち上がって見守る。部屋中に満ちた笑い声に肌が粟立つのを感じながらも投げ渡された携帯の画面を素早く確認し、貴方の気を散らしてしまわぬよう返すのを後回しにすると五芒を切って。発動するは結界の札、隅に気絶したままの女性に危険が及ばぬように横たわる身体の二の腕に貼り付け──「すみません、緊急事態なので」気絶している相手に謝罪する余裕は持っていて。残る霊縛の護符を利き手に回し、大和川警視の姿をした怪異の挙動を鋭い目付きで注意深く見つめ。「…躊躇はしませんが」知人の姿を相手にするのは経験がなく、不意を突かれれば反射で動きが鈍るやも──と続く懸念の言葉は飲み込む。わざわざ怪異に自分の弱味を見せることはない。代わりに「俺はサポートに徹しますが最悪の場合、狂骨を呼び戻します。そうなる前に殲滅していただけると信じています」と貴方の殲滅能力への信頼を声に滲ませ、自分も精一杯の補佐をしようといつでも五芒を切れるよう指を立てたまま身構えて)
(「はあ、お好きにどうぞ。」伏見は女性に結界札を貼る貴方の様子を横目に、刃を"大和川"へ突き付けたまま─相も変わらず、何とも気の無い生返事だけを返す。"ふしみ"─最早異常性を隠そうともしない、幼い女児の声が唇を動かさぬままに伏見の名を呼んだ。姿形が成人女性である大和川を模しているものである以上、その姿からまだ未就学児と思われる女児の声が漏れる姿は─あまりに異質。伏見はさして躊躇う様子もなく、近付いてくる"大和川"の脳天をかち割る様に刃を振り下ろす─が。その刃は、途中で何かに怯んだかのようにぴたりと止まってしまう。普段は気怠げな伏見の表情が微かに歪み─「……面倒臭い」低い声で呟かれた愚痴が、唇から溢れ落ちた。それに釣られるかのように─"みんないっしょだよ"、"もうおみずはいやだ"、どんな意味を持つのかすら分からぬ言葉が"大和川"の口から次々に溢れ、一歩、また一歩と伏見に近付いてくる。伏見は以前そうしたように─「赦し給え」と呟きながら指先を刀の峰に滑らせ、刃全体に青白い炎を纏わせた。そのまま"大和川"を袈裟斬りに斬り付けたものの、炎は怪異の肉体を少々燃やした程度で燃え尽きてしまう。流石の伏見も一歩後退り、溜息を吐いたところで─ひゅん、と空を切る音と共に─怪異の額に、何かが突き刺さった。それは柄が赤く、鋭く磨かれた刃を持った─手斧。「…やあ、残念だったね。」目前の怪異と全く同じ声が貴方達の背後から響いて)
(貴方に一歩一歩近付く怪異に向け、霊縛の護符を手にしたまま星を切る。少しでも弱ればいいという思いから発動した護符は文字こそ光を帯びたものの、以前目にした時のように札から浮かび上がって糸となるには至らず──やはり明らかな効力を発揮するには貼り付けねば駄目らしい。怪異の意識が貴方に向いているままなのを良いことにじりじりと摺り足で畳の上を移動して、札を怪異に貼り付けられるチャンスを伺う。もし貼り付けに失敗すれば怪異は弱らず、自身は下手すると狂骨以外の切り札を失うのだ。貴方の炎を纏った斬撃があまり効いていない様子に眉間に皺を寄せる。”もうおみずはいやだ”──何のことかはわからないが、先程怪異はそう言った。水に関係する何かが怪異にはあって、それが貴方の炎が効果的ではない原因になっているのか。はたまた単純に怪異がタフなだけか……どうしたものかと考え込む前に怪異に見覚えのある手斧が突き刺さり、ビクリと一瞬身体が強張る。見知った相手に武器が刺さる光景にうすら寒い思いを感じ、けれど聞こえた本物の大和川警視の声に気を引き締めると護符を構えたまま走り出す。怪異が攻撃を受けた今がチャンスだと一息に距離を詰め、反撃を警戒するように怪異の挙動をつぶさに観察しながら横合いから二の腕へと護符を持った手を伸ばし──貼り付いたら距離を取ろうと脚に力をこめて)
(/貼り付けてそのまま距離を取るところまで描写すると怪異の取れる行動範囲が狭まってしまうかなと悩みどころです。前回は怪異の攻撃直後だったとはいえ貼り付けの成否を確認せず距離を取る、といった感じで距離を取ったのを確定させてしまったので、今回は怪異が行動を取れる余地を残してみました。やりづらくないといいのですが、如何でしょう……?)
(伏見は警戒するように刃を構えたままじとり、とした目線で背後の大和川を見つめて─「…少し遅くありませんかあ?大和川警視。」と、当て擦りのような声色で嫌味を吐き出す。大和川はそんな嫌味も慣れているのだろう、普段通りの笑顔で"すまないね"と答えるばかりで─軽々と受け流し、額に手斧が刺さった"大和川"に向き直って苦笑いを浮かべつつ─「…本当に私と同じだな…自分に自分の武器が刺さっている光景なんて、初めて見たよ。」と、聞きようによっては呑気にも聞こえる言葉を溢した。額に斧が突き刺さったままの"大和川"は貴方の接近にも気付いていないのか、ゆらゆらと不安定に揺れながら─"むらにかえろうよ"、"さみしくないようにしてもらったんだよ"と─相も変わらず意味の分からぬ言葉を呟き、貴方達へと一歩ずつ迫ってくる。大和川は手だけで伏見に"下がれ"と指示を飛ばした後、その怪異と真っ直ぐに向き合って─指先で右頬の火傷痕に触れた。「…全く、煩わしいな。……所在は判っているのに殺せない、とは厄介なものだ。」端から聞けば、彼女の目前に居る"大和川"と同じように意味の分からぬ言葉を口にしたかと思えば─ごおっ、と何かの燃える音が、彼女の顔─丁度、右頬に残る火傷の痕辺りから響く。彼女の指先には紫色やら薄水色をした無数の炎─"鬼火"がちろちろと揺れていた。それらは彼女の─若干色素の薄い、茶色の瞳に反射して揺らめきながら空を漂っている。伏見は特に何に言及するでも無く刃を鞘に収め、大和川の動向を黙って見守っていたが─ふと、口を開いては「………怪異が調査員に"憑い"てしまうと、その怪異は"調査不可"になるんですよねえ。殺せば更に被害が広がる可能性もありますし。」誰に言うでもなく呟いた後、指先に鬼火を宿す大和川を─普段の感情の読めない瞳では無く、少しばかりの同情を込めたような眼差しで見つめた。─当の大和川は一瞬だけ瞳を伏せ、微かに微笑んだだけで─自身と同じ顔をした怪異を見据え、「…私の火は…"狐火"とは比べ物にならないぞ。何せ、"二人分"だからな。」とだけ言い残した後、貴方の方を向かぬままに"使え"と声を上げて)
(返信が遅れてしまい、すみません…!ご配慮痛み入ります…大和川警視の能力も公開してみました…!大和川警視はかつての相棒を殺した"鬼火の怪異"に取り憑かれているものの、怪異調査規定によって死ぬことは許されない…復讐相手は眼の前、何なら自分自身の中に存在するのに、規定のせいで自身の死をもって相棒への手向けとすることもできない、悲しい人…なのですが、どうでしょう…?少々重いですかね…?)
(指示と同時に怪異に護符を押し付け、手の内より青白い文字が溢れ出るのを”貼り付いた”と判断して飛び退く。トッ、トッ、トッ、と体格の良い成人男性が体重をかけて移動しているにしては軽い足音を畳の上に残して貴方の側まで後退すると、護符から伸びた糸が怪異を取り巻くのを油断なく見つめたまま息を整え。「色々と聞きたい事はありますが、御無事で何よりです」とどちらに向けるでもなく呟くと先程耳に届いた音の数々──怪異と接敵している状況で二人の会話を理解するのは難しく、断片を音として記憶するに留めていた──を反芻する。大和川警視が鬼火の怪異に憑かれているというのも気になるが、彼女が口にした”狐火”という言葉も気にかかる。護身にと白紙のままの狂骨の護符を利き手に持ち替えながら横目で貴方に視線をやり、納刀しているのを確認すると身体に入れていた力を抜いて。次いで大和川警視を見つめると、ギュッと唇を引き結ぶ。相棒の仇を殲滅できないどころか、身の内に巣食われる──名状しがたい苦痛だろう。気持ちはわかるなどと軽々しく口にできるものではない。しようとも思わないが。代わりに「……大変な職場ですね、本当に」と溜め息混じりにしみじみと溢して)
(/大丈夫です!リアルをお大事に…!そして、大和川警視~~!!かっこよくて悲しい……!つらい…!しかしそういった過去が彼女をより魅力的に魅せていて大変美味しゅうございます…!重いなんてとんでもない、大好物ですとも…!救いあれとは軽々しく申せませんが、せめて幸あれ……!!
そしてお名前から薄々思っておりましたが、狐火ということは伏見様はお稲荷様にご縁が……?背後は名前が設定と関係しているキャラがはちゃめちゃに好きなのでそわそわしてしまいます!
実は大狼も狼と大神の二種類の意味をこめてまして……!過去に遭遇した神様は大神どころか廃れて無名なので名前とは関係がない、ということにしていますが、名前の関係で神様との御縁ができやすいくらいの影響はあったりするといいな~という願望があります(?)
(伏見は貴方の声に呼応するような溜息を一つ漏らした後、「…全くですねえ。上司はあれですし、人手も禄に足りてませんし。」とだけ返答を返す。普段は憎まれ口を垂れるものの─やはり大和川のことは信頼しているのか、左手が刀の柄に掛かることはなく─くあ、と漏れ出す、呑気極まりない欠伸を抑える手に使われていた。─一方の大和川と言えば、霊縛の護符が正常に作動したのを確認して穏やかに微笑みつつも─鋭い視線を"大和川"へ向けたまま、自身からそちらに向けて一歩踏み出す。怪異の指先が彼女に触れるよりも早く、額に突き刺さっていた手斧を抜いたかと思えば─その傷口へと指、正確には彼女自身の指先で燃える、紫色の炎を捩じ込んだ。ごおっ、と音を立てて燃え盛る"鬼火"は─伏見の刃に宿る炎とは桁違いの威力で、怪異を燃やし尽くそうと試みる。怪異の影響で多少勢いが弱まってはいるものの─その都度にまた、新たな火種が空気中に燃え上がっては─青やら紫やらの光を放った。「……伏見!雛人形は蔵にある、私が"これ"の相手をしている間に確保しろ!」声を張り上げた大和川が最後まで言い切るか否か、既に伏見は─普段の億劫かつ面倒そうな立ち振る舞いからは想像が付かない程の速さで、部屋の入口辺りへと滑り込んでいる。木目も見えぬ程美しく磨き上げられた木造の廊下は、ポリエステル生地の靴下では滑ってまともに歩けない筈─なのだが。伏見はそんな事など歯牙にも掛けない足取りで玄関先まで走り、靴も引っ掛けずに引き戸を開ける直前─貴方の方へ軽く目配せした。そのまま引き戸をがらがら、と開け、周辺に砂利が敷き詰められた石畳を飛ぶようにして蔵へと向かう。玄関の引き戸と同じ、少しばかり建付けの悪い扉をがたがたと引き開ければそこには、資料通りの小さな雛人形─お内裏様は無く、唇を薄く開いたお雛様だけのもの─がちょこん、と行儀良く座っていた。その傍には小袋がいくつか添えられており、そのどれもが革紐で固く口を縛られている。その人形をまじまじと眺めた伏見は収めていた刃を抜き、「……はあ…これ、本当にうちの仕事の範疇ですかねえ。」と─普段通り、じとりとした眼差しを向けながら面倒そうにぼやいて)
(お気遣い、痛み入ります…!お気に召して頂けましたか…!良かったです…大和川警視は一応サブキャラ扱いなのに少々重くしすぎたかな、と反省しておりましたので…。いずれ羽賀の秘密も公開…するかもしれません…!思い付けば…!
そうですね…一応苗字の「伏見」も伏見稲荷大社から頂いておりますので、関係性はあります…!"狐火"関連はどちらかと言えば伏見の刀、ですかね…実は伏見の刀、怪異を素材に作られているんです…。以前伏見がファイルを読んでいた『黒鉄の神』が刀の素体で、『狐火の怪異』が刃に炎を付与する力となっておりまして…
そうなんですね…!神様関連もかなり登場する予定ですので、ご安心(?)を…!)
(大和川警視が進み出たことで起こった戦況の変化、怪異を圧倒するということそれ自体は喜ばしいものだが──頭に刺さった手斧を引き抜く、傷口を炎で燃やす、という光景には「うわ…」と小さく声を漏らし。血が吹き出ない分、現実味はないが思うことがないわけではない。ただそれは相手の姿が見知った人間ゆえの思いであり、彼女の殲滅スタイルには不思議と違和感がないのも事実で。強い女性だと感心すると同時に鋭く放たれた貴方への指示にどうするべきか一瞬思案し──「狂骨、護衛続行」短く狂骨に”大和川警視の護衛を続けろ”と命じ、ゆらり現れた青白いぼろ布を見ることなく貴方の後を追って。部屋を出た直後、引き戸を開ける貴方の目配せを受けて──意図こそ汲み取れなかったものの、戻れと指示がないのであれば同行するのがバディだろうと滑る廊下を渡り。靴を急いで履いたところで、貴方の靴が残っているのを見咎め咄嗟に拾い上げて蔵へと走り。右手に狂骨の護符を、左手に貴方の靴を引っ提げたまま後から蔵に入ると、内部の空気に嫌なものを感じて眉間に皺を寄せながらも貴方のぼやきを耳敏く拾い上げ、「─というと?」と短く聞き返し。貴方の刃の邪魔にならぬよう、入り口近くで足を止めて)
(/羽賀さんの秘密…!楽しみにしています!なるほど、伏見様の刀が……怪異を素体にしてるとなると曰く付きそのものでかっこいいですね……!!
神様関連やったー!通常の霊とか怪異も好きですが、楽しみに待ってます!)
(「…前提として我々が相手する"怪異"は…神しかり妖怪しかり、元々"在った"モノなんですよお。人の悪意だとか、恨みだとか、そういうモノは関係なくて…ただ、彼らは元々"そう在るべくして在る"だけなんですよねえ。」伏見は貴方の方を振り向かぬまま、そこまで話した所で一旦言葉を切り─普段通りの億劫そうな態度で、鞘から抜き放った刃の切っ先を雛人形へと向ける。─だがまあ、当然と言うべきか─雛人形は動く様子すら見せず、先程からそうであったようにただ薄く口を開き─こういった人形特有の、ある種の不気味さを感じさせる程穏やかに微笑んでいるだけだった。その様子を見た伏見の眉間にぎゅう、と不機嫌な皺が寄り、小さな舌打ちと共に刃を下げる。「ですが、これは…"在る"モノじゃない。"在ってはいけないもの"と言い換えても良いかもしれませんねえ。」要するに、と前置きして再び言葉を切った途端─がたがた、と蔵全体が─まるで軽い地震でも起きたかのように、微かに震え始めた。だが引き戸越しに外の様子を観察しても、庭の木々やら何やらには揺れ一つ見られない─それどころか、呑気に鳥の鳴き声などが聞こえてくる始末。雛人形と真っ直ぐに向き合ったままの伏見は─「これは、"怪異"じゃない。明らかに何者かの"悪意"で作られたモノです。……こんなモノ、我々の手には負えないんですよ」彼にしては珍しく、真剣な口調でそう吐き捨てた。─その答えが正解だ、とでも言うかのように─蔵の揺れはぴたりと静まり返り、その代わりに貴方が持っていたままだった伏見の携帯が、明らかに尋常でない程に震え始める。『どこにいるの』『電話に出て』『寂しくないよ』『いっしょにいこう』─送信者も、送信時間にも規則性が無く、支離滅裂なそのメッセージは一貫して─貴方と伏見の居場所を特定しようとしているようだった。「…厄介ですねえ、全く。」だが伏見の声は普段通り、欠伸を噛み殺したように呑気で間延びしたもので─今ここでこの人形を斬り捨てたところで無駄だと判断したのか、雛人形に突き付けていた刃を下ろす。大和川警視に賭けるしかありませんねえ、と小さく呟いた後、雛人形の横に添えられている小袋に手を伸ばしては露骨に表情を歪め)
(了解しました…!怪異を使った刀ってカッコいいですよね、ありがとうございます…!)
(「つまり──怨霊の類いなどではなく、自然現象の一環。活動の延長で人間に害をなすものであって、害をなすことそれそのものが目的でないものが通常の怪異である──と?」貴方の言葉を理解できたか自信がなく、言葉を置き換えて聞き直し。怨霊、悪霊、はたまた悪神……害をなすものは総じて怪異と思っていただけに貴方の話は寝耳に水で。人の恨みや悪意は関係ない──となると、怨霊といったものは怪異に分類されないのか、それとも生者の思惑が介在しなければ怪異なのか──気にはかかるが、安全を確保してからの方が良いだろう。貴方が”怪異ではない”と言い切った瞬間に収まった揺れとに安堵の息を吐くより早く、懐で預かった携帯が揺れる。大和川警視からじゃない──あからさまに鳴り続ける携帯を懐から出し、険しい表情で眺め。反応を返さなければ問題はなさそうだと、白紙のままの護符と合わせて持ったまま雛人形に視線をやって。「……貴方の話を総合するに、犬神のようなものですか。それは」犬神──最も代表的なのは犬を首だけ出る形で地に埋め、届きそうで届かぬ位置に餌を置いて飢えさせ、飢餓が極限に到った瞬間に首を切り、飛んで獲物に食らい付いた首を奉りあげる呪。元々在ったものではなく、人の手によって作られたもので類似するものを考えた時に真っ先に浮かんだのがそれだった。依然として鳴り続ける携帯を片手に刃を下ろした貴方の近くまで歩み寄ると、まずは帰りに履けるようにと靴を置いて)
(伏見は足元に揃えられた靴を一瞥し、貴方へ小さく頭を下げながらも─手にしていた小袋の革紐を結び直す。「…まあ、そんなものですかねえ。」それよりも見て下さいよお、と呑気にも聞こえる声を掛けた後、革紐が緩んでいる小袋の中身を貴方に見せつける─小袋の中には酷く縺れて絡み合っている所為で黒い塊のようになった、恐らくは人間のものと思われる毛髪、そして雛人形─と言っても、伏見の傍でちょこんと座っているものよりは可愛らしい造形をした、小さな頭部だけが収められていた。今、現在進行形で起こっている異常性を抜きにして見れば─人形の首だけが袋の中に入っている、というのは少々不気味ではあるが、何の変哲も無い光景のはずなのだが。資料で読んだ情報を合わせると、あまり気持ちの良いものでは無いのは確かだった。「…この人形、人の毛髪や皮膚が使われてるそうですよお。」伏見はそうぼそり、と呟いた後に小袋の口を締め直し、雛人形の傍にきちんと置き直す。その間も伏見の携帯は貴方の手の中で静かに震え続け、何者かからの電話もメッセージも止む様子がなかった。─一方、大和川は己と寸分違わず同じ顔をした怪異と睨み合う形で対峙していたが─戦況は一進一退、といった所。確かに燃えているはずなのに、その怪異には怯む様子が一切見られなかった。それどころか女児の声でわんわんと泣きじゃくり、"いっしょにいこう"などと宣いながら彼女へと手を伸ばしてくる。彼女の指先に燃える"鬼火"の勢いに衰えは見られないが、これも時間の問題だ─ならば。大和川は手斧の柄を握り締め、薪割りの要領で─怪異の脳天にその刃を思い切り突き刺した。パキン、と想定以上に軽い音を立て、手斧が脳天に突き刺さった怪異はふらふらと揺れて─"いたい"とだけ言い残して─すう、と溶けるように消えてしまう。ごとん、獲物を見失った手斧が畳の床に落ちた。彼女は知らぬ間に詰めていた息を吐き、伏見達へメッセージを送信する。─そうして貴方の持つ携帯に、一つだけ意味を成したメッセージが送信されてきた─"無事か"伏見は目敏くそのメッセージに目を通し、雛人形をがしりと鷲掴んだ。「…何とかしてくれたみたいですねえ。…じゃあ"コレ"の後始末は、神仏課に任せるとしましょうかあ。」袋はお願いしますねえ、と呑気な声を掛けながら靴を履き、蔵の外へ出て行こうと)
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