女子生徒 2024-04-30 23:32:52 |
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いいもなにもお前以外に誰が使うんだよ。
( やっぱ分かりやすい。と自分のことは棚上げに、こんな些細なことでここまで嬉しそうに顔を輝かせる彼女が可愛くて柔らかく微笑み。改めてお揃いを強請ってくる彼女の仕草や声色はとても甘く、漸く聴き慣れたはずの名前呼びにその甘さが加わればまた攻撃力は一段と高まって。どきりと胸が高鳴るのを誤魔化すように「っ、…はいはい喜んで。───じゃあ俺の用事も済んだことだしそろそろ昼飯にするか。」と、スマホで時間の確認を。お昼時にはまだ少し早いが、これくらいの時間ならどこの店もまだ混む前だろうしスムーズに昼ご飯を食べられるだろう。小さい紙袋とはいえ荷物は荷物。それ持つから、と声を掛ければ手を差し出して。 )
ふふ、はあい。
─── …ね、せんせーって普段外食するの?
( 未だゆるゆると緩んでしまう頬をそのままに、確かにちょっぴりお腹がすいてきた時間だと彼の言葉に元気よく返事をしてはそういえば大人の男の人ってこういう時どんなお店行くんだろ…と普段は女子高生らしくファーストフード多めなみきはちらりと彼を見上げて純粋な疑問を投げかけて。マグカップがふたつ入っただけの紙袋は決して重くないし全然持てるのだけれど、紳士に紙袋を持ってくれようとする彼にきゅん。とまた単純にときめいては「 ありがと!優しいとこもだいすき。 」と当然のように感謝と共に愛も投げかけて。ハイハイと流されるのを分かっていても好きだと思ったらすぐ伝えなければ気が済まないので、恥ずかしいなんて感情は二の次。伝えられなくて後悔はしたくないので、いつだってみきは自分の気持ち(恋心)に正直で。 )
んー…友達と飲みに行くくらいで滅多にしないかな、
行ってもラーメンとか。
……あ。言っとくけど、オシャレなレストランとか高級フレンチとか俺に期待すんなよ。
( 彼女のように、当たり前に自分の気持ちを素直に伝えられるのは本当に美点だと思う。大人になればなるほど建前やらしがらみが多くなって気持ちを押し殺すことの方が当たり前になってくるもの。もちろん彼女と自分の間には今はまだどうしても超えられない壁があるためこちらから何かできる訳ではないので、こうして好きなだけ気持ちをぶつけてきてくれる彼女に感謝しつつも少しだけ羨ましかったりするのも事実なのだがそれは内緒で。彼女からの質問には少し考える素振りを見せるも、普段は惣菜弁当とごく稀にする自炊ばかり。外食は確かに楽だが、1人だとどうしても大手チェーンの牛丼屋であったりラーメン屋くらいの選択肢になってしまう。仲間内で行くのはだいたい居酒屋ばかりだし…と考えたところで、このクリスマスの雰囲気にピッタリなお洒落ランチを期待されているのではと態とらしくハッとすれば、渇いた笑いを浮かべながら"大人の男性"らしからぬ格好のつかない台詞を零して。ましてや異性とこうして休日にお出かけ(デート)なんて数年ぶり。「御影は何か食いたい物とか無いの?」と、とりあえず本日買い物に付き合ってくれた彼女のリクエストが何よりも先だと首を傾げて。 )
お、男の子のご飯って感じ…。
( ファーストフードやコーヒーチェーン店、ファミレスはよくあれどあまり友人とラーメン屋さんに行くことがない女子高生にとってはなんだか新鮮で、ちょっぴりそわそわした気持ちを感じながらも彼の普段の食生活にぽそりと一言。もちろんみきもラーメンは好きなので食べたくなったら食べに行くことはよくあるのでその気持ちは充分分かるのだけれど。だがしかしハッと何かに気がついたかなような反応の後に付け足された彼の言葉にぱち!と夕陽をまん丸にしては思わず吹き出してしまいながら「 大丈夫だよー、自分で払えるレベルのお店しか行きませーん。 」とくすくす可笑しそうに笑いながらふるふると首を振って。最もそういうところは大人のお姉さんとお兄さんが行くところなのでこんなチンチクリンが言っても1人浮いてしまう未来しか見えないので。それから彼に食べたいもののリクエストを聞かれればうーん…と悩ましげに首を傾げて考えること少し。パッと浮かんだ好物はなにだか彼に言うには子供っぽいような気がしてちょっぴり恥ずかしそうに「 ……オムライス…。 」と小さな声で正直に今食べたいものを答えて。オシャレなレストランでも、高級フレンチでもない、実に庶民的なメニューしか出てこない自分の子供舌には我ながら恥ずかしくなってしまうのだけれど。 )
男の子って歳でも無いけどな。
二郎系なんて食える気しねーもん、胃もたれと胸焼けする自信ある。
( 男の子、だなんて10歳近くも歳下の女子高生に言われてしまえば何だかむず痒くて苦笑いをすれば、実際若い子たちならペロリと食べてしまえるであろう流行りのガッツリ系は少々三十路の胃にはつらいので。そういう些細なところに案外年齢差を如実に感じたりするものなのだが、彼女の手作りを食べたことのある立場から言わせてもらえば味付けや量が余りにも自分に合いすぎていたので彼女とは食の好みの相違が無いのではと思っていたりもして。仮にもデート()だというのにまだ昼代を自分で出そうとしている彼女には悪いのだがもちろん払わせるつもりなんてこちらには毛頭無い。ただそれを先に言ってしまえば変に気を遣うのではと考えているので敢えて口にはしていないが。いつかフォーマルな服装で入るような店に彼女を連れて行ってあげたい気もするのだが、それはきっとまだまだ未来の話だろう。思い付いたものの何だか恥ずかしそうな様子で出してくれた答えは庶民の舌に馴染みのあるもの。背伸びして変わったような物でなく、素直に自身の食べたい物を教えてくれた彼女に何だかホッとしてくすくすと笑いながら「ん、りょーかい。オムライス…ってことは洋食か。えーっと確か……、──ちょっと歩いた先にオムライスが美味いって評判のカフェがあるみたいだから行ってみるか。」とスマホを取り出してぽちぽち検索を。彼女のリクエストが仮に中華であれ和食であれスムーズに店が決まるよう、実は先だって昼ご飯を食べられる店をいくつかピックアップしていて。 )
ふふ!
クラスの男の子たちがそれ美味しいって言ってたよ。みきもまだ食べたことないの。
( つい最近クラスの男の子たちが口にしていたラーメンの種類が出てくれば自分もいつか食べようと目論んでいる最中らしく特に胃もたれも胸焼けも感じぬままにヘラヘラも笑って。だってまだお皿いっぱいの天ぷらも何重にも巻かれて絞られた致死量の生クリームもぺろりと食べられてしまうので。女子高生は無敵なのだ。お店を調べてくれているのだろうかというにはあまりに早すぎるそのスピードにきょとん…と思わず瞳を丸くしては「 もしかして、…調べておいてくれたの? 」と気付きながらも男を立ててスルーするような良い女精神はまだ備わってないので思ったことをそのまま問いかけて。もしかしたら彼も、今日を楽しみにしてくれてたとか。そんな想いがじわじわと湧き上がればやっぱりみきの心はきゅんきゅんとときめいて暖かくなってしまい。やっぱりこの人のこういう優しいところが好き、と何度だって彼に恋に落ちてはにこ!と満面の笑顔を浮かべて「 ありがとう、司くん! 」とだいぶ慣れてきた名前呼びと共に感謝の気持ちを素直に伝えて。 )
まじかよ……さすが男子高校生だな…。
あれ結構量もあるって聞いたけど、さすがに御影はそんな食えないんじゃないか?
( やはり若い力というのは凄まじく、自分も学生時代ならワンチャン……と考えてはみたがもはや想像するだけでお腹がいっぱいになってしまいそうな悲しい大人が年齢を実感しただけに終わり。無謀にも挑戦した同い年の友人(更に少食気味)が小盛りを食べるのすら精一杯だったといつだかに聞いたことがある。若いとはいえ女子には少し敷居が高いのではないだろうかと苦笑いをひとつ。スマホをしまい早速歩き出そうとしたところ真っ直ぐ投げかけられた疑問にぴたりと動きを止めて。そうやって思ったことをすんなりと口にしてくれるところもまた彼女の魅力なのだが、やはり少しだけ格好がつかないなと眉を下げて。「ン………まあ、…ほら、店っていざ探すとなったら案外見つけるの手間取ったりするしな。時間勿体無いだろ。」と、彼女のきらきらとした笑顔に照れ臭さを覚えては、それを誤魔化すようにはいはいと返事をしながら再び歩みを進めて。 )
えー?
いっぱいお腹すかせていけば食べられるよ。
( いつもと変わらないような彼とのやり取りも、ここが外で私服同士だと言うだけでちょっぴりまた気持ちも変わってくる。彼が大好きだという気持ちは変わらないけれど。みきはくすくすと楽しそうに笑いながら言葉を返していけば、ふと歩いている最中に距離が近かったせいかふと手と手が触れてしまい思わずぴく、と、肩を跳ねさせては慌てて手を引っこめたりなんて一幕もあったりなかったり。再び歩み始めた彼は、きっとちょっぴり照れてるんだろうなぁなんで思わず頬が緩んでしまう。そんなところももちろん可愛くて大好きなのだけれど、あまりそういって指摘すると彼をいじめているようになってしまうので可愛い!は何とか心のうちに留め。「 オムライス楽しみだなぁ。 」なんてにこにこと楽しそうに既に歩き始めていた彼を追いかけるようにちょっぴりスキップのような軽い足取りでぴょん、と追いかけてはにこにこと機嫌良さそうに頬を弛め。 )
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