女子生徒 2024-04-30 23:32:52 |
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…ナイショ。
もしかしたら本当に"みき"って書いてたかもよ?
( 名前呼びを貰ってなお本来の正解まで聞き出そうとする彼女のなんと欲張りなことか。普段は何につけても甘めの判定を求めてくる彼女が、こんな時ばかりはその判定を受け入れようとしないのは負けず嫌い以外の何物でもないだろう。教えてほしそうにこちらを振り向く彼女に意地悪な笑顔を向けた後んべ、と舌を出して。呼ばないと言った割に再び名前を口にはしたが、これはあくまでクイズの正解(かもしれないもの)を答えているだけなので自分の中ではノーカンで。体のラインが出るほどタイトなチャイナ服を纏った状態で抱きつかれてしまえば彼女の柔らかさを直に感じてしまうのは仕方のない事で。先ほどまでは散々スリットの際どい部分──肌ではなくチョーカーではあるが──に触れてその甘い反応を楽しんでいたものだが、相手から迫られると両手を上げてしまうのはもはや反射のようなもの。「っ──、……あーはいはい。可愛いは余計だけどありがとな。」と溜息混じりに礼を述べては、生地の薄さゆえにお互いの鼓動が温かく混ざり合う心地よさに少しだけ身を委ねて。 )
!!
…えへへ。みき、せんせーの優しいとこだいす、…あ!…“好き”、とか!?……なーんて、そんなわけないか。
( どうやら素直には教えてくれないようで、もっと画数多い文字だったと反論する前に好きな人から紡がれたのは二度目の自分の名前。呼ばれた訳ではないけれど、みきからしたらこれも呼ばれたカウントに入るのでやっぱり甘々な彼にニコニコキラキラと瞳を輝かせた直後。ちょうど彼に告げようとした言葉がまさに彼の提示したヒントにピッタリ当てはまる!と気がついて回答したものの、あっさりと自らそんな訳が無いとその奇跡を投げ捨ててしまえば呆れたように笑いながらまた彼の胸にぽす、と背中を預けて。例え悪戯のゲームだとしても、彼がそんな思ってもいないことを書くわけが無いなんてちょっぴり悲しい諦めなのだけれど。決して抱き返すわけでも無く、でもだからといって離れろと無理やり体を引き剥がす訳でもない。だけど此方に少し此方に身を委ねてくれているのは当然みきにも伝わっていて、みきはふにゃりと笑いながら「 ふふふ。ヤキモチ妬いてくれたの嬉しい。みきはせんせーしか見えてないからだいじょーぶだよ。 」と彼に囁くように柔らかく言葉を紡ぐも、彼しか見えていないのがむしろ今心配要素なのだということは無自覚。だって今は自分の好い人がなんとも可愛らしいヤキモチを妬いてくれたのだから、それどころでは無いので。 )
、…………んー?
( クイズ中は掠りもしなかったのについにドンピシャで正解を当てた彼女は、あっさりとその解答を投げ捨ててしまったようで。もちろんそれを正解だと言えるわけもなければ、嘘を吐くのも違うのでこちらの答えは否定でも肯定でもなくどこまでも狡いもので首をこてりと傾げて終わり。相変わらず変なところで自信がないのか鈍感なのか、自分から正解を手放して再びこちらに凭れかかる彼女が何だか可笑しくて薄く微笑みながら、その正解を口にするためいつか隔たりが無くなる日に思いを馳せて。柔らかい笑みを携えながら、自信満々な言葉を紡ぐ彼女は本当に言葉通り真っ直ぐ自分の想い人しか見えていないのだろう。「そこに関しては心配してないっつーか、する必要が無さすぎて逆に困ってるというか…。」と乾いた笑いを零せば、彼女が自分以外に目を向けないことに無自覚ながらも自信を持ってしまうのは日頃彼女から伝えられる好意のせいとも言えるしおかげとも言える。しかしやはり何度考えても、特に何をしたわけでもないはずなのだがここまで熱烈に好かれているという事実には未だに頭を捻るものがあるのも事実で。 )
好きなんてせんせーに言われたらきっと心臓爆発しちゃうもん、自己PRのとき心臓大変だったんだからぁ。
( まさか自分がドンピシャの正解を叩き出しているとは思わず、もうお手上げだと言うように考えることを放棄しては億が一にでも彼にそんなことを言われてしまったら心臓がどうにかなってしまうと冗談半分に笑って( けれど心臓はほんとうにどうにかなってしまいそうにはなる )。自己PRのあの一シーンで一体どれだけの女子生徒がみきの立場を自身に置き換える想像をしたことだろう、それだけ格好良かったのだから仕方ないのだけれど、終わった今となればちょっぴり独り占めしたかったなの気持ちもあるのはまた事実。バッチリみきに愛されている自覚のある彼の言葉に満足気に表情を綻ばせたものの「 ??こまる……? 」とふとひっかかった箇所にはこてりと首を傾げて。いっつも好き好き言いすぎてしつこいのかな、でも好きだから許して欲しいな…なんて気遣ってるんだか気遣っていないんだか絶妙なラインを行ったり来たりしながらもやっぱり困る理由は分からずに大人しく彼の答えを待って。 )
自己PR……あぁ、…いやでもお前のことだから騒がしくなるんじゃねーかなと思ってたんだけどなぁ。
( 彼女の言葉にはた、と昨日のコンテストを思い出せば、引いたお題がお題だったのもあって確かに言葉に出した例の二文字。演技となるとやはり意識して棒読みになってしまうのは分かっていたので素の状態で臨んだのだが、こうして笑って済ませられているのならば彼女の中であれはしっかり演技として刻まれている様子。こっちから可愛いだとか、相手を褒めるようなことを言えば過剰なほど食い付いて騒がしくなる彼女が、演技だと思っているからこそなのかは分からないが驚くほど静かに自分の告白を受け入れていたことがやけに印象強くて。言葉の意味を理解できないというように首を傾げる彼女はきっとまったくの見当違いな推理を繰り広げていることだろう。「だって俺、未だに何でお前がそこまで好いてくれてるのか自分自身よく分かってねーもん。歳だって離れてるし、…そもそも好意を伝えられても今はそれに応えて付き合ってやることも出来ないし。」と、眉を下げて笑みを零しながらも何処か申し訳なさそうな声色でぽつりと返して。 )
だ、だって…まさかあんなに演技上手だと思わなくて、…。
びっくりして、真っ白になっちゃったの……。
( 恥ずかしそうにぽぽぽ、と頬を染めながら視線を落とせば、自己PRの時の演技とは思えない彼の自然な演技を思い出してはまた頬を染めて。最も、後ろから見ている彼からは真っ赤な耳が丸見えなのだけれど残念ながらみきはそれには気付いておらずただただあの時を思い出して致死量のときめきに胸を痛めていて。だって王子様みたいだったし、ちゅうされたし、好きって言われたし。どれか一つだけだったらきゃあきゃあはしゃげたのにまさかの3つ全部一緒にだったので色んなものがオーバーヒートしてしまったのだともそもそ返して。どこか申し訳なさそうな、みきに困っているというよりは自分自身に困っているような、そんな彼の言葉と表情にきょとんと瞳を丸くしたかと思えばみきはぱっと花が咲くように笑って。「 好きにきっかけはあっても、これ!っていう理由なんてないよう。歳が近いから好き、とか付き合えないから嫌い、とかそういうの関係なくみきはせんせーが好きだもん。……だから、そんな顔しないで? 」彼の両頬にそっと手を添えては真っ直ぐにダークブラウンを見つめながら首を傾げて。 )
──演技、ね 。
…そういやお前の対応も良かったもんな、あそこがいちばん盛り上がったんじゃないか?
( 口をついて出た言葉は音にもならないようなとても小さな呟きで。それにしても頑なにこちらを向かないということは、きっと耳以上に彼女の顔は真っ赤に染まっているのだろう。しかし残念ながら顔と違って無防備に晒されたままの耳は綺麗に赤く染まってしまっているのがよく見えるので、何となく無意識に手を伸ばしてはその小さな耳をつん、と指先でつつきながら自分の"演技"に対する彼女の返答の際に客席から割れんばかりの歓声があがったことを思い出して。こちらに向けられた朗らかな笑顔と、頬を包む柔らかな手の感触の心地良い温かさにどこかホッと気持ちが落ち着く気がして。「…ん、さんきゅ。……でもこっちとしては、華の女子高生の青春を費やされてることにちょっとだけ引け目ってもんを感じることもあるんですよ。」真っ直ぐにこちらを見つめる夕陽色に吸い込まれるように顔が近付けば額同士をこつんと当て、彼女の優しさに甘えてばかりの現状を不甲斐なく思うも下手に動けない現状に自嘲気味な笑みを零して。 )
みきのは演技じゃないんだけどね。
でも、結果的に盛り上がってよかったあ。
( 完璧にセットされた彼のカッコ良さを見ることなくこうして背中を預けて喋っていれば不思議といつも通り(いつもはこんなに距離は近くないけれどみきとしてはラッキーなので)に感じてとても落ち着いて、けれどそんな無防備な状態のままにふと耳に感じた彼の指先の感触にぴく。と反応こそすれどなんとか声にはならず。それから続けてあの時の自分の反応を思い返せば、あれは間違いなく演技でなくただのいつもの自分だったとへにゃへにゃ笑い。ただただ大好きな人にオーバーヒートするくらいときめいて、でもどうしても彼からの“好き”に返事をしたくて。全く周りが見える余裕のなかったあの場で抱きつかなかったのはほぼほぼ奇跡と言えるほど2人だけの世界に感じていたのは恐らくみきだけではないはずだとちらりと彼をふりかえって。元気出たかな、なんてじっと彼を見つめていればだんだんゆっくりとそのお顔が近付いてきて、好きな人がゆっくりと顔を近づけて来たらどんな状況だろうと期待してしまうのは乙女の脳なので“まさか…!”とそわそわして目をぎゅ!と瞑ったものの残念ながら触れたのは唇ではなく額同士。ちょっぴり残念な気持ちを抱えつつも、近過ぎて顔が見えないけれどやっぱりまだ彼は本調子ではないような気がして。みきはすり、と額同士を擦り合わせては「 みきは女子高生を卒業しても華の女子大生で次は華の社会人になるつもりなのでだいじょーぶでーす。 」と、大人が振り返るよりも現役の女子高生は引け目を感じるどころか実にプラス思考、更に言ってしまえば華の女子大生期間も華の社会人期間も彼に費やすつもりなのでたかが3年ごときで引け目を感じられてしまうと困ってしまうのだ、最低向こう6年は見て欲しい。 )
、……っはは!あれ素の反応かよ。
ナイスアドリブって思ったのになぁ。
( 彼女の答えにきょとんと一拍。彼女の反応を良いアシストとして受けたのは自分だけだったようだと知れば可笑しそうに破顔して。…ということはお互い知らず知らずのうちに心からの告白劇を繰り広げていたらしいのだが、それに気付いたのはどうやら自分だけのようで。もしもこの先自分と彼女との間に何の障害も無くなったときに想いを伝えることになったとして、コンテストでの一幕は何だか先にクイズの正解を見てしまったような気分になってしまう。とはいえ今はまだそれでいい、彼女にしっかり演技だと思わせられたならば結果としては上々以外の何物でもないので。声に出しての反応が無いのをいいことに、彼女が振り返ってもなお赤く染まった小さな耳をふにふにと弄びながらそんな事を考えて。こうして額が触れ合うことでお互いの考えている事が筒抜けになるのでは。なんてどこか空想じみたことを考えていたものの、何かを感じ取ったのか彼女からの優しさ溢れる台詞に目を丸くして。「───ふ、それだけ華の期間長いなら確かに少しくらいなら大丈夫そうかもな。」と笑みを零せば、とりあえずは華の女子高生の時間は甘んじて費やされようと。まさか彼女がその先まですでにスケジュールを組んで発言しているとはまったく思っていないわけだが。 )
そ、そんなアドリブできるくらいなら山田くんの時にもうやってるもん…。
( 振り返ってもなおふにふにと彼の指に弄ばれている耳に時たま小さく肩を跳ねさせたりとちょっぴり意識を持っていかれつつも、彼の演技のように上手にそんなことができるのであれば先ずそもそも山田のPRの時にできていたと恥ずかしそうに唇をとがらせ。彼がどんな気持ちであの自己PRを行ったかなんて当たり前のようにみきは分からないまま、自分は本当にときめいて自然に出てきた言葉なのにどこか余裕そうに見える彼にみきの夕陽色の瞳はちょっぴと不満そうで。 漸く彼の声が柔らかいものに変わったと分かれば安心したようにふわりと笑っては「 そうだよ、だからせんせーはそんなこと考えずにたくさんみきに愛されてくださーい。 」と無事に彼の許可(?)も得られたことだしこれからも遠慮なく華の女子高生期間を彼に費やしていくのだとまた改めて決意。他の女子高生のように彼ピとデートや手を繋いで下校や甘い青春のワンシーンはなかなか得られないけれど、こちとら彼を好きになった時点でその覚悟は出来ているしむしろ今は想像していた何倍も幸せなのでそれで良いのだとその笑顔はとても朗らかで。 )
────それはダメ。
( 不満そうな夕陽色と共にぽそぽそと呟かれた言葉に対して出たのはほとんど反射的なもので。それまで耳輪の部分を優しく弄っていただけの指が一瞬動きを止めれば、そのまま少し手を下げて耳朶から彼女の首筋までするりと指を滑らせて。コンテストでの彼女の返答は確か"大好き"だったはず。その場合例えアドリブだとしても、友愛ではなく愛情としての"大好き"を返す先は彼女のことを一途に想っていた相手になるわけで。柔らかい笑顔とは反対に口ぶりは確固たる自信に溢れているように聞こえる。いい大人が女子高生に愛されろだなんて、その響きは何とも甘美な毒のよう。懐いてくれるのはもちろん嬉しいのだが、普通の女子高生が送るはずの青春を送らせてやる事ができないという後ろめたさが付随するのは仕方がない。しかしそれでも良いと、飽きる事なく真っ直ぐな好意をひたすらに向けてくれる彼女がただただ愛おしくて。「はいはい。お手柔らかにお願いしまーす。」と諦めたような手振りと笑いを零しながらもその声色は満更でもなさそうで。 )
っん、!
─── っ、…だ、だめ……?
( ふにふにとした耳への柔らかい刺激にそろそろ慣れ始めた頃、ピタリとその動きが止まったかと思うが早いか次に彼の指先が弄んだのは全くノーガードだった首元。びく!と肩を跳ねさせ更には先程まで我慢できていた声まで漏らしてしまえば、その行動の理由と咄嗟の否定の理由が結びつかずにみきの瞳には困惑と疑問が混ざり。今彼の手が触れている首の部分にまるで心臓があるようにどきどきと熱くなるのを感じつつ“ダメ”の理由を模索するも、山田がそれを嫌だと言うのならまだしも彼が拒否する理由だけはどうしても分からずに ─── 彼の手が首元にあるのも頭が回らない大きな原因の一つではあるけれど ─── みきはただただ答えを待つように彼を見上げて。すっかりいつも通りの彼の言葉は諦めたような口ぶりだけど彼限定のエスパーは決して満更ではないと思っているのは丸わかり。みきはするりと彼から手を離せば、にこ!といたずらっ子の笑顔を浮かべつつ「 ふふふ、やーだ。 」なんてノー手加減の宣言。だって毎日顔を合わせることのできるこの高校生の期間のうちに彼をメロメロにしなきゃいけないのだから、お手柔らかになんてしている場合ではないので。みきに何かを返せなくて困るんじゃなくて、みきに愛されすぎて困って欲しいのだとその夕陽は蠱惑的にキラキラ輝いて。 )
───…!
あ、いやほらアレだ。山田は真剣だったのに、それに返すのがアドリブでの台詞ってのも失礼だろ?
( 大きく跳ねた肩と漏れ出た甘い声にハッとすれば、ほんのりと熱の込もった白い首筋から漸く手を離し。こちらを見上げてくる夕陽色を真っ直ぐに見返す事ができず、行き場を無くした手を誤魔化すように自分の頭をぽり、と掻いては自分でも咄嗟に出た否定の言葉に驚きつつ、どうにか不自然にならないような理由を見つけては口早にそれを述べて。仮に彼女の返答がアドリブだとしても、やはり"大好き"だなんて台詞をそう易々と他の男に投げかけているシーンは見たくないだなんて──。そんな気持ちは最もらしい理由を盾に心の奥深くにしっかりとしまって。こちらの願いも虚しくはっきりと拒否されれば、そのいたずらっ子のような笑顔と口調に溜息混じりの笑いが零れ。彼女の思惑は知らずとも、いつもよりも何処か挑戦的な色を見せるその瞳がその気持ちを隠さず伝えてきているようで。…もちろんやられっぱなしなんて性に合わないのでやり返す事にはなるのだろうが。そうこうしていれば、気付けばこうして隠れて話をすること暫く。「…さ、そろそろ行くか。一応は宣伝を頼まれてるわけだしな。」と、さすがにいつまでも同じ所にいては宣伝()にならないと漸くその重い腰を上げて。 )
そ、そうなの…、?
でも、真剣にってなったらごめんなさいってなっちゃうのに…
( 彼の言葉にぱちぱちと不思議そうに瞬きをすれば、でもそんなこと言ったら彼と自分も演技と真剣なのに…と不思議そうに首を傾げて。それに真剣にとなってしまえばみんなの前で断ることになるのだからそちらの方が気の毒だ、と言いたげにバカ正直に彼の言い訳に流されて。2人っきりのちょっぴりいつもよりも甘い時間は残念ながら終わり、彼の言葉に“まだ二人っきりがいい”と瞳は不満げだけれどそうわがままを言う訳には行かないので渋々それに従いかけたものの「 はぁい。……あ、待って。 」とぴたりと止めては自身の太ももに巻いてあるレースチョーカーを外してそのまま自身の手首に巻き付けて。「 ─── これならせんせー贔屓になる? 」と悪戯っぽい笑顔を浮かべれば何も巻かれていないつるんとした太ももをぺち、と叩き。 )
それは………ま、もうコンテストも終わったわけだし結果的には良かったんじゃないか?
( 山田のPRタイムでは言葉を失いながらも、最終的にはその鈍感さにより別の意味で盛り上げた彼女には今となっては何処か安堵してしまう気持ちがあるのは事実(とはいえさすがに山田には同情の意を向けるが)。彼女が下手にアドリブのスキルを持っていなくて良かったという思いと、言葉通り大衆の面前でごめんなさいと頭を下げられる山田の姿を見てしまうのも居た堪れないのでそればかりは彼女の鈍感な部分に少しだけ救いを感じてみたりもして。二つ返事で…というには少しばかり後を引くような彼女の反応は予想通り。しかし引き止められるとは思わず疑問符を浮かべながら彼女の行動をただ見ていればそれは予想外のもので。自分が漏らしたほんの少しのヤキモチを気にかけてくれたのか悪戯っぽくも何とも可愛らしい笑みを浮かべる彼女に目を丸くさせて。「──っ…、…あー、うん。なるなる。どーも。」と、自分の幼稚な嫉妬心を浮き彫りにされた気がしては気恥ずかしそうに視線を逸らして。…本音を言えば、チョーカーが無くなったとてスリットから覗く生足の魅力が無くなるわけではないので複雑ではあるのだが。しかしわざわざ"贔屓"してくれたらしい彼女のいじらしさに一層の愛おしさを感じて。 )
???
そっか…。
( こて…とやはり彼の言葉には首を傾げつつもそれ以上なにか言及することもなく、確かにまぁもうコンテストは終わったしあれだけ盛り上がった(むしろ今もまだ優勝パワーは尾を引いている)ので良いのだろうと自分を納得させて。きっと自分の立場と彼の立場が逆になれば“演技でもやだ、他の子に好きって言わないで“と馬鹿正直にわがままを言うのだろうけれどそれはその時になってみなければ分からない話。どうやらみきなりの“贔屓”は功を奏したのか、彼の返事に嬉しそうににこ!と笑顔を浮かべれば「 良かった!他には何かせんせー限定の贔屓のところある? 」と、宣伝として人前で練り歩く前に彼にしか見せない箇所はあるかとくるくるその場で回って見せて。普段滅多にこうして嫉妬心(みきはそれに気が付いていないけれど)を見せてくれることのない彼がこうして独占しようとしてくれているのが嬉しいのかその表情はちょっぴり嬉しそうで。 )
他って言われてもそりゃ──、……あー…まあ大丈夫じゃないか?
……強いて言うならそうやって派手に動くような事が無ければ。
( 今年のコンテストは知らないところで話が進んでしまっての参加だったとはいえありがたいことに優勝できたのは事実。☆先生のように殿堂入りとまではいかなくていいので、来年も開催されるであろうコンテストでは前年の優勝者は参加権剥奪とかしてくんねーかななんて思ったりしてみて。そうすれば自分も彼女も比較的落ち着いた心持ちで文化祭を楽しめるはずだろう、きっと。贔屓の場所を選べとでも言うようにその場で華麗に回る彼女は、その提案によって更に此方の独占欲が刺激される事など微塵も考えていないのだろう。本音を言えばこんなに愛らしくて何処か妖艶的にも感じる衣装を纏った彼女を誰の目にも晒したくない。しかしいくら何でもそこまで独占は出来ないし言える関係でも無いので、それならばせめてちらちら覗く生足だけには気をつけて頂きたい所存。タイトなチャイナ服とはいえこうしてくるりと回ればスカートはスリットの部分からふわりと広がるし、それによって何とも刺激的な一瞬が生まれてしまうのできっとお年頃の男子たちの目はそちらに向いてしまうだろう。無防備にちらつかせられる足から視線を逸らしては、こんな指摘もセクハラになるのではという思いもありながら(散々チョーカー越しに太ももを弄ったあとで言うのも何だが)ぽつりと呟いて。 )
…………それだけ?
( 思っていたよりもなんとも単純な彼の回答にきょとん、と夕陽色をまんまるにしてはこてりと首を傾げて一言。何がダメなんだろう、と彼の目の前ならいいかと自分の格好を見下ろしてちょっぴり回ってみたりするけれど特に何か変なところ等も特にないのでみきにはやっぱり分からなくて。けれど思っていたよりも簡単な贔屓だったのでもちろん断る訳もなく(そもそも自分から聞いたので何を言われても二つ返事で了承してしまうだろうけど「 じゃあ今日は大人しくしてるね! 」とニコニコキラキラ元気にお返事を。いつもは自分ばかりああしてたくさんのわがままを言ってしまっている分、こうしてたまにぽろりと出る彼のちいちゃなわがままはどうしようもなく愛おしくて可愛く感じてしまうのでふんるんと楽しそうなまま「 いこ、! 」と人通りのある方向へと歩き出して。 )
そっ……、!
……はあ、…今日だけじゃなくて普段からおとなしくしてくれれば先生としては大いに助かるんだけどなー。
( それだけ、なんて色々と我慢しているこちらの頑張りをいとも簡単に剥ぎ取ってきそうな台詞に思わず声が出てしまうもすぐさま良い笑顔と共に了承の意を受け取ればぐっと飲み込み、代わりに何だか久しぶりな気がする軽口を。彼女の目線からはくるりと回っても自分の格好がどうにかなっている様は見えにくいのだろうが、その確認するための回転でさえ自分の方からはしっかりとスリットが仕事をしているのが見えてしまうのでとても心臓に悪い。そんなこちらの心境など微塵も知らない様子の彼女は、大人として情けなくなる小さな独占欲すらも無邪気に受け入れてくれたようで。あちこちから笑い声や話し声が賑やかに聞こえてくる廊下へと再び歩き出せばまたすぐさま四方八方から声を掛けられ、宣伝としては大成功なのだが元の服に着替えられるのはまだ当分後になりそうだなと諦めたような溜息を吐きながらも隣の彼女が楽しそうならばとりあえずはそれで良い。 )
普段暴れてるみたいに言わないでくださぁーい。
( 少しだけ久しぶりのような気がするいつもの彼のような軽口にへらりと笑って答えては、さっきみたいなヤキモチ妬きの彼もとっても可愛いけれどやっぱりいつもの彼も好きだなぁなんて結局はどんな彼でも愛せてしまうのでいつだって彼にメロメロなのは間違いなく。ひとたび人通りの多い廊下に出れば先程の二人っきりの甘ったるい空間はどこへやら、友人から全く知らない後輩や先輩にまで耐えず声をかけられ驚きながらもみきは楽しそうに後夜祭を楽しんでおり。『 えーっ先生かっこいいじゃん! 』『 私たちとも写真撮ってください! 』『 え、待って私も撮りたい! 』やはりいつもと雰囲気の違う彼にきゃあきゃあと色めき経つのは女子生徒たち。もちろん優勝コンビの相手であるみきがいることによって遠慮する生徒も多いのだけれどもちろんそんなことお構い無しな生徒だってたくさんいる訳で、めろめろと黄色い声を上げながらするりと彼に腕を組んだり距離が近かったりとみきとしてはとてももやもやするけれど自分も写真対応に追われてしまいどうすることもできず。やっぱり教室の中だけで着てもらえば…ううん、みきの前でだけ着てもらえば良かった!と先程の彼と同じような独占欲が心の中にもくもく湧き上がっては無意識に左手の薬指をきゅ。と握って。 )
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