女子生徒 2024-04-30 23:32:52 |
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うーん…まあ可愛らしいとは思うけど……、
なんか一癖ありそうなんだよなぁ……。
( 確かに見た目だけでいえば整っていたしきっと男子にもさぞかしモテるのだろう(それに関しては目の前の彼女だってそうなのだが)。しかし不自然なほどの甘え上手さにあまり好ましくないものを感じてしまうのは自分が彼女たちよりも歳を重ねているせいなのかは分からないが、どこか苦々しい顔を浮かべながら首を傾げて。続け様に彼女から告げられる"えまちゃん情報"に「年上彼氏って……お前らの年頃はどうして同年代にあんまり目を向けないんだ…?」と肩を竦めて。年上に憧れるお年頃なのは分からなくもないが、彼女を筆頭に自分の周りには年上に夢を抱きがちな生徒が多いような気がしては小さく溜息を吐いて。…しかし彼女が戻ってきてからというもの、その瞳がいつまで経ってもこちらを見ないのが何だか気になる。「………そんな事より、お前は何でむくれてんの。」とただひたすら地面だけを見つめ続ける彼女の顔を覗き込むようにして声をかけて。 )
!
…あのね、何にも、言い返せなかったの。
( やはり同年代の山田や司会の先輩とは違いさすがは年上で、彼がえまの外面に流されていないのが唯一の救い。だがしかしそのままえまのことを悪く言うような嫌な子にはどうしてもなりたくないしなれないのがみきの性分で、どう返そうかと思い悩んでいるうちにふと彼に顔を覗きこまれれば少しだけバツの悪そうな顔をしたあとに小さな小さな声でぽつりと一言。それから涙を拭いたせいで少しだけ黒い線が滲んでしまった左手の薬指を彼にも見えるように見せては 「 みき、この線すっごく大切でお守りみたいなのに、えまちゃんにこんな落書きじゃ手が汚れちゃうから早く消えればいいですねって言われた時、なんにも言い返せなかったの。それがね、すごく悔しいし、嫌だったの。 」と自分と揃いの場所にあるであろう彼の薬指の黒い線を見るように彼の手元に目線を移して。本当はそれだけではなくて、えまが彼のことを好きかもしれないというのがいちばん不安なことなのだけれど、誰かを好きになるのは自由だし制限する権限もない。なにより誰かの恋愛感情を自分の憶測でその当人に伝えることは誰かを好きになる気持ちが痛いほどよくわかるみきにはできなくて。 )
……あー…なるほどな……。
( ぽつりぽつりと。自分が言われて嫌だった事を言っているだけなのに、それを告げ口のように言葉にしている今の状態も彼女を苦しませている要因のひとつなのだろう(そもそもこちらが聞き出そうとしているので告げ口でも何でも無いのだが)。しかしその内容は思いもよらないもので、きっと田中が彼女に対してそんな風に棘のある言い方をしたのは自分が先に揃いの線を見せてしまったから。ろくに話したこともなければついさっき初めて名前を覚えた生徒があからさまに好意を寄せてくるなんて裏があるとしか思えないし、その悪意を自分のいちばん近い所にいる彼女にわざわざぶつけたのにも驚いて。…とはいえあながち言っていることに間違いはなく、確かにこれはただ指に落書きされただけの黒い線に他ならない。あの時は不安と不満を漏らす彼女を宥めるためにお互いの指に描いたつもりだったのだが、想像以上に彼女の中では大切なものに昇華してしまっていたようで。こちらに見せるよう広げられた彼女の左手にそっと触れては「…まあ確かにお前の手を汚したことは事実だしなぁ…。つーかむしろ言い返さない方が大人だろ、お前は悔しいって言うけど俺はすごいと思うよ。」と、一部が滲んでしまった線を優しく指でなぞって彼女に本音のフォローを入れつつも、こんな線1本で特別を演出した気になっていた自分の浅はかさには心の内で溜息を漏らして。 )
!
よ、汚れてないもん。…せんせーが、みきの為に書いてくれた大事なやつだもん。
( まるで壊れ物に触れるようにそっと優しく薬指に触れてくれた指先はやっぱり暖かくて、そのまま彼の指が黒い線を撫でるように滑ってはびくりと思わず反応してしまい。触れている部分から彼の優しさが伝わってくるようでみきの瞳にはまたじわりと涙が滲んでしまったけれどそれを誤魔化すようにふるふると首を振って決して手を汚された訳では無いとすぐに否定を。他の誰かが落書きだなんだと言おうと自分にとっては彼が書いてくれた特別なものだし、“汚した”というのであれば自分が彼の薬指に書いてしまった線のことだろう。予約とは名ばかりの子供の口約束にもならない彼の薬指に嵌められた黒い指輪は、自分の我儘によって無理やり書かせてもらったに近いもの。「 …洗ったら、消えちゃうけど。…特別なものだもん。 」彼の心境は分からないけれど、少なくともみきにとっては救いであり特別な予約。みきはきゅう、と寂しそうに眉を下げては涙のいっぱい溜まった夕陽色で彼を見上げて。 )
はは、線1本で大袈裟だなお前は。
まあそこまで言ってもらえるなら悪い気はしないけどさ。
……じゃあ俺のこれも特別に大事な物ってことで。
( 彼女の否定はきっと本音なのだろうがどこまでも優しく、その言葉に自然と口角が上がれば薬指をなぞっていた手は彼女の頭へと移動させてそのまま軽くひと撫で。お互いがどんな気持ちで相手の指に線を引いたかなんて本人にしか知り得ないが、描かれた側の気持ちなら自分も分かる。同じことを返すように、彼女に見えやすく自分の左手を上げてみせてはその薬指に描かれた黒い線を目線で示して。しかし彼女の言う通り、油性とはいえ洗ってしまえばいつかは消えるもの。今にも涙が零れ落ちそうな瞳でこちらを見上げてくる彼女に、それならちゃんと形として残る"本物"を。なんて軽々しく言うことなんて出来るはずもなく。…ただもし許されるのであれば、線1本が特別として弱いのならば少しだけ付加してもいいのかもしれない。彼女の頭を撫でていた手を再びその左手に添えれば滲んだ線にほんの少し唇が触れるだけの、本日3度目の口付けを。「──これでただの落書きから昇格…ってことになんねーかな、さすがに。」と少しだけはにかむような笑みを浮かべながら、時すでにではあるが今更周りをきょろ、と見回して。 )
!!
─── … な、る。…っ、昇格する…!
( 彼も自分と同じように思ってくれていたらいいななんて自分で勝手に思っていたのだけれど、彼はみきが思っていた以上にみきの気持ちに向き合ってくれており揃いの薬指の黒い線は意味までもが同じになっていき。それだけでも飛び上がるほど嬉しいし幸せなのに、優しく頭を撫でてくれる手がみきの左手にまた移ったと思えば黒い線に落とされたのは本日3回目の口付け。彼の唇が薬指に触れた途端ぴく、とみきの体は勝手に跳ねて大きく見開かれた瞳からはとうとう涙がぽろりと零れ落ちて。じんわりと桃色に染った頬をそのままに何度もこくこくと頷いては、誰もいないと彼が判断したのをいいことにそのままぽすりと彼に一度だけ、一瞬だけ抱き着いて。だいすき、と言葉にはしないものの彼に抱きついた体にはその感情だけがいっぱい満ちており、ふと彼から体を離しては「 …………みきも、昇格させたい。 」と彼の左手をそっと手に取れば小さな声でわがままをひとつ。 )
──えっ。
…っ、…んー………、
( 舞台の上での演技じみたものでなく、自分でも不思議なほど自然と出た口付け。この行動はさすがにお互いの関係上いかがなものかという所ではあるのだが、驚いたように見開かれた夕陽色から落ちた涙が悲しさや不安からくるネガティブなものでなければ自分のした事に後悔はしていないのが本音で。年下とはいえ彼女よりも幾分か男慣れしてそうな1年生はその自信から彼女を煽っていったのだろう。そこまで明確な悪意に彼女が晒される事になってしまったのは、元を辿ればきっと自分がコンテストに出場したからで。廊下で男性から声をかけられて怯えていたのとはまた別の不安が彼女を襲ったのだろうかと考えれば、その小さな我儘を断るには心が痛んでしまう気がして。まさかの申し出につい声が出たものの、ひとしきり悩んでは「…分かった。お前がしたいなら好きにしていいよ。」と溜息混じりに笑って。自分がした時は何ともなかったが、されるとなると(ましてや異性に)無性に気恥ずかしくなってしまいそうなのだが。 )
!
……えへへ。
( 口でも頬でもないけれど、ハグよりも何よりもきっとハードルの高いキスを許可をしてくれた彼の返事にぱぁあ!と瞳を輝かせては心底嬉しそうにふわりと微笑んで。それから小さな両手で大切そうにだいすきな彼のだいすきな手を包んでは愛おしそうに薬指の線をそっとなぞっては、「 ─── …せんせーが、みきのことを好きになってくれますように。 」と小さな願いをぽつりと呟いた後にちゅ、と柔らかな唇を黒い線に落として。それからどこか熱に蕩けたような夕陽と彼のダークブラウンを絡めればやる前は嬉しそうにふわふわにこにこと微笑んでいたのにいざやってみると思っていたよりもずっとずっと恥ずかしかったのか一気に頬に熱が集まってくるのを感じてはぱっと彼の手を離して「 しょ、昇格のおまじないおしまい! 」と両手で真っ赤になった頬を隠しながら恥ずかしそうに顔を逸らして。 )
…っ、
( こんなのテストのご褒美枠にしたって特大すぎるな、なんて考えていれば、彼女の呟いたささやかな願い事が耳に届いた後指に落とされた柔らかな感触。先ほどの彼女のようにぴくりと小さく肩を跳ねさせたものの、それは驚きというより想像以上に柔らかな彼女の唇が擽ったかったからで。愛情の色に満ちた夕陽色の瞳と目が合えば、その瞬間から段々と彼女の顔が赤く染まっていくのが何だか面白くて。慌てた様子で恥ずかしそうに顔を逸らす彼女を見ていれば、される側の恥じらいよりも少しばかりの悪戯心が首をもたげてきてしまう。「……お前がしたいって言ったんだけど。そんな反応されたら俺まで恥ずかしくなるじゃん。」と、隠そうとしている顔をわざと覗くように首を傾げながらくすりと笑みを浮かべて。 )
だ、だって……。
人の手にちゅうしたの初めてだし、…恥ずかしい…。
( 必死に隠そうとした顔は残念ながら意地悪な笑顔の彼に覗かれてしまい、眉をキュ、と下げながら羞恥で潤んだ瞳で彼を見つめて。誰かさんが寝ている時にほっぺにちゅうはしました、とはもちろん言えるはずもなく、彼の意識がある時にするのとない時にするのだとこんなにも恥ずかしさが違うんだとまたひとつ大人になっては、せんせーはなんで恥ずかしくないんだろう、とどこか平然としていていつも通りに見える彼の様子をちらりと盗み見て。自分はされる時もすごく照れてしまったし自分からした時もこんな有様なのに、大人だ…とちょっぴり年齢差を改めて感じたり感じなかったり。「 …せんせーは、恥ずかしくなさそう。ずるい。 」と自分ばかりが翻弄されている様な気がして赤くなった頬をぷく、と小さく膨らませてはいつか彼がたじたじになっちゃうようなことができるくらいお姉さんになろう、なんてこっそり決意して。 )
、……ふーん。
俺が初めてかー。
( どこまでも初心な彼女の反応にどこか満足げな笑みを浮かべ、手でこれなら他のところだとどうなるんだろうなんて考えも一瞬頭を過ったりして。──もちろんすでに頬にはされた後だというのは知らないのでそこに関しては呑気と言わざるを得ないのだが──。恥ずかしそうに、しかし少しだけ悔しそうに頬を膨らませる彼女にずるいなんて指摘を受ければ「ま、俺は大人ですから。」なんて余裕綽々といったような返事を。しかし本音を言えば、もちろん手や額などキスを落とす事に関しては特に照れるようなことは無いのだがいかんせん相手が相手。生徒だから、"御影 みき"という個人だから、もしくはそのどちらも。恥ずかしさというよりは背徳感に近いようなものが心に少しだけ浮かび上がったりはするのだがそれは内緒で。 )
?
……そうだよぉ、こうやって予約するのも初めてだし、男の人にぎゅってしてもらうのも手にちゅうしたのもせんせーがはじめて。
( どこか満足気に見えるような彼の様子にきょとん、と不思議そうに瞳を丸くしたものの間違いなくハグもキスも異性で血縁者以外では彼が初めてだと答えて。そもそも彼以外の異性にこういった身体的接触をしたいとも思わないしされたら恐怖や嫌悪、驚きが買ってしまうだろう。こうして恥ずかしいと頬を染めるのもぽやぽやと頭がのぼせるような感覚になるのも間違いなく彼だけで。まさに余裕綽々といった様子の彼から大人だからとご最もな言葉が帰ってくれば「 みきばっかりどきどきしてる…。 」と不満げにぽそり。否、彼も“ある意味”ドキドキしている─── もしくはひやひやしているとも言う ─── のだろうけれどそれとこれとは話が別で。けれど自分が彼の年齢になったとしてもこんなに余裕な様子でこれらを受け入れているのが想像できるかと言われたら決して出来ないので、こうして彼と沢山触れ合って慣れていきたいなぁなんて我儘は決して彼には言えないのだけれど。 )
…わ、分かった分かった。
なんか…俺の中の良心的なやつが微妙にダメージ受けてる気がするからちょっとストップ……。
( あれもこれも初めて、なんて言われてしまえば喜んでしまうのは男の悲しい性なのか。しかし頭を抱えるべきは彼女の初めての対象が"先生"であること。初めてを挙げられれば挙げられるほど、そわそわと嬉しく思う気持ちと同時に彼女が"生徒"であるが故にどうしても居た堪れない思いも湧き上がってきてしまい。もちろん生半可な気持ちで彼女の初めてを貰った(言い方は少しアレだが)わけではなく、お互いの間に壁が無くなったその時にまだこうして彼女が隣にいてくれるのであればきちんと向き合うつもりではあるのだが、それを口にするべきタイミングが今では無いのは明らかなので。小さな声で不満を漏らす彼女の言い分は分からなくもないが、こればっかりは年齢の違い、人生経験の差としか言いようがないだろう。「そんなむくれなくてもその内慣れるって。」と軽口を返すも、彼女が慣れるためにはもちろんその相手が必要なわけなのだが。 )
???わかった。
……せんせー、なにか悪いことしようとしてるの、?
( 急激なストップ要求に今度こそしっかりこてりと首傾げては、何故だろうと純粋な夕陽色は瞳で問いかけながらも幸か不幸かみきの唇はその理由を追求することはなく。良心、ということは何か悪いことをしようとしているのだろうか。と彼の言葉からふとそんな疑問が浮き上がってきては残念ながらそれはぽろりとみきの唇から疑問としてうっかり零れてしまい。だって悪いことをしなければ良心は痛まないし。そのうち慣れる、の彼の言葉にノータイムで相手がせんせーじゃなきゃやだ。と思った割にそれを口にするのはなにだかはばかられて、みきはむぐ、と口を噤んだあとに「 ……じゃあ、誰で慣れればいいの? 」とちらりと彼の方を真っ直ぐに見つめながらちょっぴり意地悪を。せんせーが慣らしてくれるの、そんな意味の籠った夕陽の瞳は色んな言葉を我慢したみきの唇よりもよっぽど雄弁で。 )
う゛……人聞きが悪いこと言うなよな…。
……しようとしてるっていうか、もうすでにっていうか……いやでも別に悪い事じゃねーし…たぶん……。
( 純粋かつ素朴な彼女の疑問に核心をつかれたような苦い顔を浮かべては、独り言のようにぶつぶつと言い訳がましく呟いて。だってハグはご褒美の約束だし、慰めるためでもあったし、キスに関してはコンテストの演出だし……と、決して生徒に手を出した訳ではないと自分に言い聞かせて。そもそも何においても相手は彼女だけだし、信頼している関係だからこそのあれやこれやなわけで。普段の彼女であればこういう時はすぐさま『せんせーがいい!』と声をあげていただろう。しかし1年生の件もあってか未だに何処かこちらに甘えてきている様子の彼女は頭もよく回るらしい。「誰、って………、…そりゃまあ……お前が今後付き合う相手…とか?」ほんのり赤くて艶やかな唇から言葉は出なくとも、その夕陽色がすべてを語っているのはよく分かる。しかしだからと言って無責任な発言など出来るはずもなく当たり障りのない答えを返すも、彼女が他の誰かの愛情表現に慣れるところを想像すればもやりとした黒い気持ちが湧き上がる気がしなくもなくて。 )
え、えぇ…。
せんせーなんにも悪いことしてないよ、大丈夫だよ。
( 苦々しい顔で小さく言葉を呟く彼に驚いたようにぱちぱちと何度か瞳を瞬きさせては、その理由は分からずともいつも彼に慰めて貰っている恩返しをしようも彼の背中を小さな手でポンポンと優しく叩いて。まだまだ幼く若いみきにはそもそも“当人が嫌がってなければ良いのでは”との考えなので彼が今何と戦っているのかも分かるはずがなく、ただただその夕陽は疑問と心配がふたつ存在しているだけでそれ以上の何かはなく。彼の答えは残念ながらみきの望む答えではなく、ぷく。と頬を膨らませては「 ……みきが今好きなのはせんせーなのに? 」と、“今後付き合いたい相手”は確実に彼なのに、どこか他人事のように答える彼に不満気な視線を送ればむむむとその真意を読み取ろうと彼をじっと見つめて。 )
…お前にそれを言われるのも何だかなぁ……、
( 優しく背中を叩いてくれる彼女は、自分自身がこちらの頭を悩ませている張本人だということには当たり前に気付いてない様子で。だがそんな無垢な彼女に何だか毒気を抜かれたような気がしては自嘲気味な笑いを小さく浮かべ、兎にも角にもこんな事で頭を捻らなくて済むように早く卒業してくれよ。なんて心の中で呟いてみて。先ほどよりも更に不満げになるのは分かっていたが、あまりにも純粋な彼女の瞳に見つめられると少しだけ黒い心の内を見透かされそうで。逃げるようにふい、と顔を逸らしながら「……だからって任せろなんて言えるわけ無いだろ。」と答えるに終わり。しかしその内容は決して"付き合わない"と言っているものでなくあくまで"今は"という副詞がつくのだが。こうして話しているうちに少しずつ彼女の調子が戻ってきていると感じれば「ほら、もういいからそろそろお前もクラス戻れ。今日の文化祭はもうすぐ終わるけど、明日の分の準備とかあるんじゃねーの?」と(この逃げ場に困る会話から離脱しようとする気持ちも多少はあるが)それとなく促して。 )
??
慰めてるのに…。
( 残念ながら彼の苦悩の原因が自分だということに気が付かないみきは再度彼の言葉に不思議そうにきょとんと瞳を丸めるだけで。肝心なところではなかなか能力を発揮してくれないみきのエスパーは案の定今回も働くことはなく、みき何かやっちゃった?と己の行動を省みつつもちょっぴり疲れた笑いを浮かべる彼の顔をポケ、と見つめていて。みきとしては今後もこうして触れたいし触れられたいと思うのは彼ただ一人なのに、残念ながら自身の視界から逃げるように顔を背けてしまった彼にさらに何かを言おうと口を開いたところですっかり頭からすっぽ抜けていた明日の後夜祭の準備。とはいえハロウィン当日に行われる仮装パーティのようなものなので準備も何もないのだけれど、さすがにそろそろ教室に戻らなければ友人たちに心配をかけてしまうだろう。みきはそうだった!と慌てて教室に戻ろうと踵を返しかけたものの再度彼の方に振り返っては「 ─── また明日ね、だいすき! 」と見せびらかすようにちゅ、と自身の薬指にキスを落としてはへにゃりとはにかんで逃げるようにぱたぱた教室の方へ走っていき。 )
……元気になったな。
( いつもの調子で駆けていく彼女の後ろ姿を見送りながら、どこか安堵したように呟いて。ややこしい事になりそうな1年生の件には一抹の不安を覚えるが、揶揄われることには慣れてるつもりだし飽きたら別に行くだろうなんて考えは楽観的と言われればそうかもしれないが。…この後クラスに戻った彼女がコンテストの一件で山田と共に称賛と質問の嵐に合うことになるのは自分には知らない話。 )
( ────翌日。前日の賑わいとまた違った雰囲気を感じるのは、本日がハロウィンだからだろうか。廊下や教室の飾り付けの中にいつの間にかハロウィンらしいモチーフの物がいくつか加えられており、生徒たちは簡単なものから凝ったものまで十人十色な仮装に身を纏っており。教師陣は相変わらずいつも通りではあるが、比較的人気のある先生方(保健医含む)は生徒から少しだけ飾り付けられたりしている模様。自分も前日行われたコンテストのおかげか声を掛けられることはあれどのらりくらりと仮装の提案は躱しつつ、生徒の手伝いやら見回りやらでうろうろとしていれば辿り着いたのは2-B。生徒たちの賑やかな声に誘われるようちらりと中を覗いてみて。 )
『 きゃーっ!いいじゃんみき!かわいいかわいい! 』『 やっぱロングにして正解だね、ミニより可愛いかも! 』『 ね、ね、写真撮ろ!自撮ろ! 』
ほんと?良かったー!お写真撮ろ!
( 昨日までの動物たちはどこへやら、着ぐるみパジャマや赤ずきんや普段の制服に魔女帽子を被ったり等々各々好きな格好をしてきゃっきゃとはしゃいでいる2-B女子の声は教室を超えて廊下にまで聞こえてくるほど楽しそうで。もちろんその中に混ざっているみきも例外ではなくさらりとした黒髪を高い位置でふたつお団子にして、服装はコスプレチックなミニチャイナではなく深くスリットの入った深い柿色のぴっちり体のラインが現れるロングチャイナ。太ももあたりまでしっかりと入った両サイドのスリットから覗く足は女子高生らしく恐らく生足で、動く度にスリットからちらりとそれが覗くのが彼女たち曰く可愛いらしい。すっかりはしゃいできゃぴきゃぴ写真を撮っていたのも束の間、みきは彼の姿を見つけるなり「 せんせー! 」とキラキラ瞳を輝かせてぱたぱたと彼に駆け寄って。「 見回り?それともみきに会いに来てくれたの? 」とにこにこぴかぴか嬉しそうに笑いながら今日もみきのプラス思考は絶好調、強いて言えばせんせーは仮装しないのかな、衣装渡したら着てくれるかな、なんてちょっぴりそわそわしているくらいで。 )
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