女子生徒 2024-04-30 23:32:52 |
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いやまあ、お前が怪我してたら俺の責任だしな…。
あ、保田先せ──え、まじで?
( いつもの柔らかな笑顔を見て安堵の表情を浮かべるも、そもそも自分がフィールドワークに連れ出したことが原因なので頭を掻きながら申し訳なさそうに。部屋の中に保険医の姿は無く、呼んでこようかと思ってたところで廊下からこちらを…というよりも、持ち上げられて存在感が引き立ったアマガエルを凝視している相手の姿を見つけ。何やら慌てているようにも見えるのだが、その謎は彼女からの耳打ちによって明らかになり。頭を下げながら保険医の方へと近付いて「すいません、すぐにカエルは生物準備室へと持っていくんで。実はさっき──。」と、苦手な物を知らなかったことへの謝罪と彼女を診てほしい経緯を伝えて。ちらりと部屋の中を見るとカエルに優しく微笑む彼女が目に入りその様子につられて微笑みそうになるも、保険医の怯えたようなお叱りに再び頭を下げて。 )
大丈夫だよぉ、まりあちゃん。
ふろすけいい子だし、虫かごの中に入ってるからへーきへーき。
( いつも堂々としている彼が年下であるはずの保健医に頭を下げている様子がなにだか新鮮だし、いつも優しくて恋バナが大好きなメンタルが女子高生のような保健医が怒っているのも面白くて、この場でみきとアマガエルだけがいつも通りにそれらを眺めており。カエルを見ないようにいつもよりちょっぴり大雑把に─── とは言っても元々みきは何にも怪我も体調不良にもなっていないのが保健医にはバレバレなため ─── 保健医からの診察を受ければ、無事に(?)はなまる元気だという診断が下される。当然。みきはへらりと笑って「 なんもないって! 」とにこにことピースをしながら彼の方へとくるりと顔を向けて。保健医は一刻も早く苦手なカエルから離れたいのか〝 職員室で別の仕事をしてるから、18時には閉めるのでそれまでは自由に休んで 〟という旨を言い残しサッサと保健室を出て行ってしまい。 )
そうそう、別に外に出るわけじゃないんで──あ、何でもないです。すいません。
( 実際に虫かごを持っている彼女に対しては怯えながらも優しい保険医は明らかにこちらを元凶だと認識したようで。少しでもカエルの恐怖を和らげようと援護射撃のつもりで放った言葉は鋭く睨まれて何もできなかった。年下だがしっかりしている相手に怒られるのは、姉と妹を足したようでとてもじゃないが抗える気がしなくて。何だかいつもよりも診る時間が明らかに早い気がするが、保険医が大丈夫だと太鼓判を押したうえに当の本人もけろっとしているその様子に何度目かの安堵のため息。職員室へと逃げ帰っていく保険医の背中に2、3回頭を下げた後、「は~…良かった…。本当にどこも痛くないんだよな?」と元気良くピースサインをこちらへと向けている彼女に最終確認を。 )
とっても元気100倍。
( 萌え袖ピースのままコク…!と深く頷けばあんぱんのヒーローのような台詞をひとつ。ちょっとオリジナル気味だけれども。せんせーとくっついてたいからちょっぴり黙ってました、というのはマァ乙女の秘密なので言わないとして、あまり彼に心配をかけ続けるのも心労的によろしくないだろうということでまずは安心をさせるために無事をアピールして。「 ちょっとびっくりして動けなくなっちゃっただけなんだあ、心配かけてごめんねせんせー。 」嘘は言ってない、と心の中で一言付け足せばいつものようににこ!と人懐っこく笑って見せて、保健医も居なくなったし立ちっぱなしも気の毒だとソファの隣をぺちぺちと叩いて。 )
そっか、新しい顔が届いたようで何よりだ。
( いつもの調子に戻った彼女に乗って、こちらもあんぱんヒーローよろしくな一言を。しかし安心すると人間は糸が切れるもので、催促を受けた彼女の隣に深く腰掛けるように座り「びっくりして動けないって…猫みたいな奴だなお前。」あの時固まってしまった理由を直接彼女の口から聞くと、安心したような呆れたような何とも微妙な笑いをこぼし。ここまで来る途中に何事かと野次馬をしていた生徒たちもほとんど帰っていったのか、少しでも会話が止まるとやけにその静けさが浮き立って。 )
にゃーん。
( 猫のような奴、という彼からの評価にへらりと笑っては相変わらず萌え袖をぱたぱたさせながら彼の方をこてりと覗き込みつつ猫の鳴き声を。だがしかし彼の表情も和らいだのを見ればきっお心から心配してくれたのだろう、〝本当に良い先生だな〟 という気持ちと〝やはり自分は彼にとってただの生徒なのだろうか〟というふたつの心が芽吹けばそれを誤魔化すように先程彼が捕まえたアマガエルの入った虫かごをそうっと持ち上げて「 それより、新しい子が見つかってよかったねぇ。ふぐ太郎と仲良くできるかな。 」とへらへら笑ってみせて。 )
…何、飼われたい?
( 萌え袖をぱたつかせるその様はまるで小動物なのだが、さらに猫の鳴き真似までされてはもはや可愛さの権化だ。そのあざとさがあまりにも破壊的すぎるので他の男に見せたくないという思いが湧き上がるも、なぜそんな事を思ってしまったのかが自分の中で上手く噛み砕けずに。こちらの思いなどつゆ知らずで覗き込んでくる彼女に反撃、同じように小首を傾げる仕草を取りながら口角をうっすらと上げて問いかけ。「仲良くなってもらえるように水槽は隣同士にするか。」と、準備室での配置を頭の中で組み立てながら持ち上げられた水槽を見やり。 )
!…………うんって言っても、困るくせに。
( きゅう、と痛いほどにときめいた心臓を誤魔化すようにぷく、と赤くなった頬をふくらませてはこちらを見つめる彼の視線から逃げるようにぶかぶかの両手でそのまま顔を隠して。ばくばくうるさいほどに響く心臓の音が相手に聞こえてしまいそうで、隣に座る彼から少しだけ距離をとるように離れ。「 んふふ、ふろすけも仲良くしてあげてね。かえるとおさかなが友達同士だなんてとっても素敵! 」と彼の提案に嬉しそうににこにこと同意して。だがやはりアマガエルは不思議そうに大きな黒目をこちらに向けるばかりで先程のようにタイミングよく返事をする筈もなく。 )
当たり前だろ。ま、お前が───、
( "生徒じゃなければな"と言いそうになったところでハッとなって口をつぐみ。今、自分は何を言いそうになった?いつもように軽口の後流れるようにまったくの無意識で出てしまいかけた言葉に、赤くなっていいやら青ざめていいやら思考はぐるぐる回り。ほんの少しだけ開いた距離に座る彼女は自分の白衣で顔を覆っている。女子生徒に自分の白衣を着せ(正確には着られていただが)、放課後の保健室に2人きりで楽しく話をしている今の状況を冷静に考えた結果ソファから立ち上がり。「…あー、じゃあそろそろふろすけを準備室に持っていくわ。もうこんな時間だし部活動をしていない生徒は下校の時間だ。…怪我も大丈夫だったし、1人で帰れるか?」何とも言えない雰囲気から逃れるように視線を壁掛けの時計へと送ると針はもうすぐ保険医の告げていった制限時間に迫りそうで。 )
、……???
( 途中で途切れた彼の言葉に、不思議そうな顔で天の岩戸よろしくそろそろと顔を隠している手を下ろして彼の方を見つめ。一体何を言いかけたのだろうと〝お前が〟に続く言葉を脳内で模索してみるも出てくるのは自分に都合の良い続き言葉ばかりで。本当はなんて言おうとしたの、と口を開きかけたものの、帰宅時刻を告げる彼の言葉によってそれが言葉として発せられることはなく疑問はそのまま胸の中にすとんと落ちていき。「 帰れない!って言ったらせんせー送ってくれる? 」と、なにだかいつもと少し雰囲気の違うように見える彼を気遣うようにへらりといつものように気の抜けた笑顔を浮かべては彼に甘えるようにもうすっかり日常になった冗談─── みきは本気なのだけれど ───を零して。 )
仮病は受け付けません。頑丈で良かったな。
( 止めた言葉のその先を追求されなかったことに内心安堵し、彼女の冗談めいたお願いはいつもの調子を取り戻した様子でさらりと流して。女性に頑丈などと下手すれば失礼極まりない台詞だが、本音は怪我をしていないことへの安心感で。「本当に怪我なり具合悪いなりなったら、その時はちゃんと送ってやるよ。」あくまで仮病だから断るわけであって、という事を強調するかのように薄く微笑みを浮かべながら相手の頭を一度だけ軽くぽん。普段は捕まりたくないだなんだと理由を付けて触れることを自分から拒んでいるのだが、怪我未遂やら色々あったし今日ぐらいはいいだろう。と安心させたい一心で。 )
ちぇー。
( どうやら彼もいつもの調子に戻りつつあるのか、ほぼほぼお決まりとなっている彼からの〝NO〟の言葉にみきは分かりやすくさくらんぼ色の唇を尖らせて。だがしかしその後に続いた彼の優しさが垣間見える言葉と更にぽん、と頭に載せられた暖かな手の感触にぱちぱちと現実を受け止めきれていない瞬きを数回繰り返せば、普段あんなに必要以上に触れることに対して消極的な彼からの貴重すぎる接触に紅潮する頬とむずむずと湧き上がるような淡く温かい気持ちににぱ!と花がほころぶように笑って。「 せんせーのそういう優しいところ、だいすき!白衣、洗って明日返すね。 」と白衣の萌え袖で口元を隠しながらうふうふと幸せそうに嬉しそうに笑ってはひょい、と軽い動作でソファから立ち上がりぱたぱたと保健室の扉の方へ。もうすっかり空の色がみきの瞳と同じ色になってきた頃合、きっと暗くなる前に帰らなければ彼が心配してしまうだろう。みきはぱちん、と器用に彼へウインクを飛ばしては萌え袖をヒラヒラと振って )
じゃあねせんせー、放課後デートとってもたのしかった!
また明日!だいすきだよ!
はいは──え、ちょ、白衣……!
( つい十数分前までしおらしかった彼女はすっかり普段の調子で、もはや口癖になっているのではないかと疑うレベルにまで達している「だいすき」の一言。いつものように聞き流そうとしたもののその後に続く言葉に時間が止まり。返してもらうため手を差し出そうとしたのも束の間、まさかの白衣をお持ち帰り。いや持ち帰るだけならいざ知らず、洗濯までしてきてくれるというのだ。そこまでさせるわけにはいかないし、そもそもしてもらう理由もないと困惑気味だが引き止めるために発しようとした言葉は彼女の勢いに完全に負けたため尻すぼみに消え去ってしまい。突如としてぽつんと保健室に残された1人と1匹は、彼女と入れ違うように戻ってくる部屋の主に再び怯えられては怒られることになるのだが。
────翌日。
朝からいつも着ている白衣が無いことを他の先生方に珍しがられるも、まさか生徒に洗ってきてもらうんですとは言えず。微妙に躱しつつ朝イチで持ってきてくれることを祈りながら、1時間目が始まるギリギリまで準備室にて彼女と白衣を待とうと。 )
せんせーおはよお!
お洗濯してきたよー!!
( ぱたぱたぱたと忙しなく走ってきて、いつものように前髪などを整える乙女の時間が挟まり、それから準備室の扉を開けていつものようににこにこぴかぴかと朝のご挨拶。いつもと違う点は手に持った女子高生なら誰しも持ってるようなかわゆいお洋服ブランドの紙袋くらいで。きっといつも着てる白衣が無ければ落ち着かないだろうと思って朝に準備室に寄った次第なのだろう、「 はい、どーぞ。 」と彼に白衣の入った紙袋を差し出してはお借りしました、と笑って。 )
おはよ。
なんか悪いな、そんなつもりじゃなかったんだけど。
( 朝から絶好調に元気な挨拶を受け、若いって良いな…と低血圧気味のため朝は少し弱い自分とは違う彼女を眩しく思い。差し出されたお洒落なデザインの紙袋は、彼女の手にあるうちは相応に見えるのだが自分が受け取った時点でどうにも浮いてしまう気がする。予定外に洗濯をしてもらった白衣は一層白さを増したように見え、袖を通すとふわりと香る洗剤もしくは柔軟剤の香り。そういや御影と同じ香りなのか。そんな考えが頭を過った瞬間、ギャグ漫画よろしく壁に頭を1度だけ打ちつけては突如として湧いた煩悩を消そうと。 )
!?!
せんせー!?大丈夫!?
( 白衣着ていない彼も素敵だけれど、いつもの白衣に袖を通した彼はいつも通り格好よくて〝やっぱりせんせー白衣似合うなぁ〟とにこにこしていたのも束の間。突然彼が壁に頭をうちつけた事にオレンジ色の瞳をまん丸にさせてはあわあわと慌てながら彼の顔を覗き込んで。「 ど、どしたの…そんなことしたら痛いじゃん…! 」となぜだかみきまで痛そうに眉を顰めては大丈夫?と首を傾げて。 )
……いや、うん、大丈夫…。
あのほら、アレだ、禊的な。
( あまりにも突飛かつ不自然極まりない行為に案の定彼女は驚いていたが、ひりひりとした痛みが変な考えを追いやってくれたおかげで頭はスッキリ。少し赤くなってしまったおでこの辺りをさすりながら「つーか洗濯してくれたの親御さんだよな?変に思われたりしたんじゃないか?」と、御影家の洗濯物の中に自分の白衣が混ざっている様子を想像しては何とも言い難い居心地の悪さのようなものに胃がキリキリと痛むような気さえして。 )
みそぎ…………????
( 禊ってなにか悪いことをしたあとにやることじゃ…、と成績が悪いながらもなんとなく意味を知っている単語が出てくればみきの不思議そうな顔はさらに疑問を重ねて。赤くなってしまった彼の額を見ては痛そう、と何となく自分の方まで痛みが伝わって来るような気がしてそれを払拭するようにふるふると首を横に振って。「 昨日はみきがお洗濯当番だったからみきが洗濯したよ!今日の当番はパパだけど! 」共働きの両親と学生2人、家事は家族でそれぞれ分担しているのか昨日の洗濯係は丁度みきだったようで彼の心配には及ばず。家族の誰にもバレることなく白衣を洗濯し、干し、そして取り込めたようで大丈夫だよと伝えるようにピースサインと満面の笑顔を送って。 )
いいからいいから。気にするな追求するな。
( 誤魔化すよう手をひらひらと動かしながらふうと一息吐きつつ椅子に座り。幸い今日の生物の授業はどのクラスも1時間目にはないので、その時間の間軽く冷やしておけばすぐに赤みも治まるだろう。「……あー…、家族で協力してんの凄いな。お前もお父さんも。」彼女の満面の笑みとは正反対に少し引き攣ったような笑みを。もしも白衣を持って帰られるのが昨日ではなく今日だったらと考えると全身から血の気が引きそうで。心の底から昨日で良かったし、本人以外に洗ってもらう可能性があった中でよく彼女の日に当たってくれたと思う。居た堪れない気持ちと安堵感がほぼ同時に押し寄せたことで返事をするのに変な間が空いてしまったが、発言自体は純粋に彼女の家族がお互いを思いやって仲が良いんだなと感心して。 )
えッ…まさかせんせーのおうち仲悪い…!?
大丈夫だよ、みきがせんせーの家族になるから…!!!
( 妙に歯切れの悪い言葉と引き攣った笑顔の理由がわからずにこてん…と静かに首を傾げて考えることしばらく。もしかしたら先生は家族と関係があまり宜しくないのでは!?というマァなんとも見当違いな結果にたどり着けば、はわわと慌てながら恐らく本当に彼が家族と関係があまり宜しくないのならば追求しない方が良いことをご丁寧に口に出した上にまた更に見当違いなフォローをひとつ。まだ学生だし学生の中でもなかなか学力がない方なのでこういった時の空気の読み方はまだまだ未熟者なのだが、励ましているつもりの本人のその瞳は実に真剣に彼を見つめていて。 )
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