女子生徒 2024-04-30 23:32:52 |
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…じゃ、お前がそう言ってくれるならお言葉に甘えて。
つーかそれでありがたい思いしてんのはむしろ俺の方なんだけどな。
( 彼女の笑顔に絆されるように頷けば、続く言葉はむしろこちらの台詞だと柔らかく微笑んで。普段1人で食べているばかりなので、誰かと共に食べる嬉しさや暖かさを感じるのは自分の方が大きいだろう。特殊な状況とはいえ、こうして一緒にご飯を食べられることに素直に感謝して。グラスに入ったビールはシュワシュワと細かい泡が弾ける音が聞こえ、それだけですでに缶のまま飲むよりも美味しいであろうことが伺えて。彼女のお酌の腕がバイトによるものか父親に対するものなのかは自分には分からないが、完璧な黄金比率が出来上がればそれを自賛する彼女にくすりと可笑しそうに笑って。「ん、いただきます。……──まじで料理上手いな御影。全部美味いよ。…ビールにも合うし。」ごくりと一口、喉を潤してから出来立ての料理に箸を伸ばし。弁当を食べた時も思ったが、やはり彼女の腕前は確かでそれが出来立てとなれば尚更美味しくて。カレーは好みの味だし、ポテサラは本当に元気の無い野菜を使っているのかと思うほど美味しいうえ、ゆで卵に至っては言わずもがな酒のアテとして完璧で更にグラスを傾けて。 )
!
良かったぁ。せんせーに美味しいって言ってもらえるのがいちばん嬉しい!
( どうやら作った料理たちは彼の舌に気に入って貰えたようで、ぱぁあ!と分かりやすく表情を輝かせては安心したようにふにゃりと微笑み。まだ未成年でお酒を飲まない自分にとって、お酒に合うアテというものはどういった味が好まれるのかの傾向は調べることが出来ても実際に自分が飲食して研究していくことはできないのでこればっかりは周りにいる大人たちの知恵やアドバイスに感謝して。自分も同じようにスプーンでカレーを一口食べてみれば、彼のカレーよりも甘口に味付けにした為か辛さも自分が食べられるほどに丁度良く。「 これでいつでもせんせーのお嫁さんになれちゃうかも! 」と、彼のおうちの洗濯機の操作もわかるしキッチンだってある程度のものの場所は把握出来たし、胃袋だって掴めていたらいいなという希望の元いつものようににこにことご機嫌に笑いながら自分の将来の夢であるひとつをさらりと。緊急事態でなおかつ特殊な環境だけれど、なってしまったものは糧にして自分の望む未来に近付くしかないのだと実に前向きな様子でみきは隣の彼を見つめてにっこり微笑み。 )
はは、そんなんで良いならいくらでも言えるよ。
よっ、御影シェフ。
( 心からの本音だろう真っ直ぐな言葉はこちらの心にも良く刺さるもので、その笑顔も手料理の理由も何もかもが今自分にだけ向けられていると改めて実感すれば不覚にも胸の奥がきゅんとして。誤魔化すように、だが美味しいのは本当なので、今回こうして腕を奮ってくれた彼女を讃えるように言葉を掛けて。いつか彼女の作るものを肴にして一緒に晩酌を──なんて未来が頭を過れば、案外悪くないかもなんて肯定的に考えてしまうのは酒のせいにしておこう。相変わらずポジティブに、しかもそれを隠す事なく堂々と言える彼女にやれやれと呆れたように笑い。「気が早いって。せめて卒業してから言ってくれないと頷かないよ俺は。」べ、と舌を出すも返す言葉は完全な否定では無く。今はまだお互いの立場上はいはいと受け流せてはいるが、もしも彼女が卒業後もその気持ちを持ち続けているのならばそのうち本当になりそうなのがこわい所ではあるが、決して悪い意味では無く。 )
えへへ、せんせー専属のシェフです。
( 彼からの賛辞にへにゃへにゃと照れたように頬を弛めながらも、そもそもこの料理の腕は彼のために磨いたものなので応援団長に引き続きシェフの肩書きも彼の専属なのだと悪戯っぽくそれにノり。いつか大人になったらもっともっとお酒に合うおつまみを作って彼とお酒が飲めたらいいな、なんて奇しくも彼とおんなじようなことを同じようなタイミングでふと考えてしまえば、いつものように彼にハートマークを飛ばした自分の言葉に舌をべ、と出しながら答えた彼の言葉にみきの頬は一気に桃色に染まり。と、いうことは卒業後にまた同じことを伝えたら頷いてくれる可能性があるということなのでは!?と恋する乙女の脳内は大混乱し、「 そ、卒業したあとに言ったら頷いてくれるってこと…!? 」と脳内で考えていたことをそっくりそのまま彼に問いかけて。卒業後もこの気持ちが変わらないことにはとてもとても自信があるのだけれど、それはそれとして確かに教師と生徒の枠組みが無くなった時の彼はどう此方に対応してくれるのかというのはまた気になるところで。 )
お、それは光栄だな。
これだけ美味い飯が食えるならスポ大のひとつやふたつ頑張れそう………いや、やっぱふたつはちょっと嫌だな…。
( 二つ目の専属という称号を手に入れたらしい彼女に触発されて言ってみたものの、蘇る夏の暑さと数日後の筋肉痛にふるふると首を振ってすぐさま前言撤回。美味しいご飯は食べたいけれど、特別な事をしなくても毎日起きて仕事に行っているだけで充分なはずだと今度はうんうん頷き。食事の手がピタリと止まり、薄らと頬を染めた彼女の瞳は期待の色が混じっていて。「…さあね。あー美味い美味い。」くす、と笑みを零しながら肩を竦め、彼女の質問には一言で答えた後再びカレーを掬うスプーンを動かして。正直に言えば、卒業したからとてすぐに彼女を生徒からひとりの女性として見ることは無理だろう。だがいつまでも"生徒だから"という言い訳で向けられる想いから逃げ続けるわけにもいかないし、その時は真剣に向き合うつもりで。…と言ってもすでに彼女に対して悪いような感情は抱いていないのだが、それを今言ってしまうと確実に調子に乗るだろうということは容易に想像がつくので敢えて何も言わずに。 )
っふふ、あはは、なにそれぇ。
……でも、みきのご飯で良ければいつでも作ったげる。
( なんとも素早い前言撤回に思わずふは、と笑ってしまえば可笑しそうにクスクスと笑顔を浮かべながらも、確かにスポ大の後の彼はなんだか大変そうだったな…と筋肉痛と戦う彼を思い出してはそれほどまでに彼にとってスポ大とは大変なものなのだろうと妙に納得してしまい。だがしかし、自分の手料理の為ならばそんなにスポ大も頑張れてしまうだなんて言われてしまえばそれに喜ばない女は居ないだろう。みきも例外なくその瞳は嬉しそうに細められており、ついつい緩んでしまう頬をそのままに彼の為ならばいつでも振る舞うと言葉を付け足して。残念ながら大人お得意の曖昧な態度でのらりくらりと回答を躱されてしまえばム、と不満げに頬をふくらませた後に「 いいもん、みきは卒業したってせんせーのこと好きだから振り向いてくれるまでずっとアタックし続けちゃうんだから! 」と脅しなのか決意なのか、どっちとも付かない言葉を返しながら覚悟していろと言わんばかりに自信ありげな笑顔を向けてまた食事に戻り。初恋は実らない、なんて聞いた事があるけれど残念ながら諦めるつもりはサラサラないし、実らないなら実るまであがく根性はあるつもりなので。 )
惣菜弁当ばっかりの俺にはそう言ってくれるだけで充分嬉しいよ。
また頼む…って言いたいけど、今回みたいに台風で家出れなくなるのは出来れば勘弁願いたいよな。
( 思い出すのは腕をぷるぷるさせながらその日1日黒板の半分から下にしか文字が書けなくて、生徒に見えないと散々揶揄われたこと。日頃から運動しなきゃなと思うのはその時だけで、今ではもう明日から本気出すという定型文すら出てこなくて。そんな自分を甘やかすかのように彼女がまた腕を奮ってくれるというのは純粋にありがたいが、やはりそう何度も生徒に食の世話を焼いてもらうのはいかがなものか。成り行きとはいえ不可抗力の状況を作った台風は今もなお勢力を増しているようで、雨風にガタガタと揺れる窓をカーテン越しにちらりと見遣っては溜息吐いて。打てど躱せど自分の言葉は彼女にはただの燃料にしかならないようで。未来の自分自身の気持ちにしっかりとした自信があるらしいその様子に一瞬目を丸くするも、すぐに可笑しそうに笑い。「…っはは!それは頼もしいんだか怖いんだか。──ふう、ご馳走様。ほんと美味かった。」最後の一口と共に残ったビールを呷れば、満足そうな息をひとつ吐いて礼を述べて。 )
んー、雷はやだけど、こうやってせんせーのお家にお泊まりできるならみきは台風も悪くないかも。
( 緊急事態で不可抗力、しかも彼に面倒をかけさせてしまっていることも重々承知の上でだけれどやはり好きな人のお家にお邪魔してしまっている上にお泊まりまでさせてもらえる今の状況はみきにとっては幸せなことで。悪戯っぽい笑顔と共にこてりと首を傾げて彼の方へ視線を向けては、これからきっと激しくなるであろう雷雨─── いちばん嫌いな雷がまだ一度しか鳴っていないから余裕なのかもしれないけれど ─── も悪くないのだと返して。最も、この後夜になるにかけて雷が激しくなり彼に泣きつくことになる未来はまだだ先の話なのだけれど。綺麗に完食してくれた彼に嬉しそうにはにかめば「 お粗末さまでした!綺麗に食べてくれて嬉しい、みきが食べ終わったらまとめて洗っちゃうからお皿そのままでいーよ。 」とあと数口で自分も食べ終わるので後のことは構わなくて良いと付けたして。自分で料理を作るのはいつもの事だし家族にもいつも完食してもらっているけれど、やっぱりそれが好きな人相手だとただ完食してもらうだけでもどきどきと嬉しいものでその瞳は嬉しそうに緩められており。 )
ばか言え、こんな事そうそうあってたまるか。
悪いことしてる訳じゃ無いのに俺のメンタル削られまくりだよ。
( すでにこの状況をプラスに捉えて楽しんでいる様子の彼女に対し、こちらはじとりとした視線で乾いた笑いを浮かべながら。非常事態だ不可抗力だというのは正直体裁を保つ為の言い訳でもあって、誰かに見られる事なんて現状万に一つも無いとは分かっているのだがやはり本来取るべき教師と生徒の距離を考えると余りにも近すぎる。そんな少女漫画よろしくな状況にそわそわしてしまうのは彼女が自分の生徒である以上仕方のないことで。どこまでも家庭的な彼女の言葉に「いーよ。飯作ってもらったんだから片付けくらいは俺がやる。お前は急がなくていいからゆっくり食べてな。」と、さすがに全てを甘えて任せる訳にはいかないと空いた皿を重ねて持ってキッチンへ。彼女のことだから気にしての事なのだろうが、一宿の恩を返したいのならば抜群に美味しかった晩ご飯だけで充分。そうして先に持ってきた分から洗い始めて。 )
でもみき、せんせーが拾ってくれなかったらこの嵐の中公園でひとりぼっちだったし。人助けってことで!
( じとりと抗議的な彼の視線にも負けずにエヘ。と可愛らしく笑って見せれば少しでも彼のメンタルの削れを抑えようとにっこり微笑んで。だが自分がこうして彼の家に転がり込んだことによって命が助かったのは確かだし最近不審者が出るだとかも噂があるので精神的にも安心できたのもまた事実なので、ちょっぴり緊張やそわそわした気持ちはあれど大半は感謝の気持ちでいっぱいで。あとちょっと少女漫画みたいでわくわくもしているのは彼には内緒だけれど。あっさりと空のお皿をキッチンへと運び片付けを担ってくれるという彼に「(優しい…。)」とむぐむぐ咀嚼しながらキュンキュン胸を高鳴らせてはしっかりと飲み込んだ後に「 やさしい、すき!…あ間違えた。ありがとう! 」 と今度はちゃんと口に出してしまいつつもきちんとお礼も伝えて。それから少しして自分もしっかり完食して手を合わせれば、空のお皿を持ってキッチンの彼の方へとぺたぺたお皿を持っていき。 )
今回はな。
だからって次もアテにするなよ?
( 彼女の言う通り、今回の騒動は人助けと言っても過言ではないだろう。そもそもあんな連絡をもらった時点で助けに行かないという選択肢は無いので、そこに関しては間に合って良かったし何ともなくて良かったと心から安堵したもので。しかしそう何度も女子生徒を家に招く事など、やましい気持ちは無くとも少し人の目が気になることも事実なので今回限りだぞと念を押して。(とは言っても、もしまた同じような事があればやはりなりふり構わずに保護する事になるのだろうが。)背中に掛けられた唐突な"好き"からの一連の流れに小さく吹き出しては「どんな間違いだよ。」と可笑しそうに笑い。食べ終わった皿を彼女が持ってくるのを確認すれば、洗いながらも少しだけシンクの中にスペースを空けて。「ん、ここ置いといて。テレビ見るなり適当にくつろいでくれてていいからな。」と、特に面白い物を置いていない自分の部屋の中、娯楽として勧められるのがそれしか無いのだが。 )
んふふ。はあーい。
( 次もアテにするな、なんて言いながらもこうして助けを求めたら彼は何があっても助けてくれることをみきは知っているので思わずにこにこと頬を弛めてしまいながらも素直に頷いて。だがしかし、きっとこれは自分だけの特別扱いでもなんでもなくて生徒が助けを求めれば彼は同じようになりふり構わずにその手を差し伸べてくれるのだろう。そんな彼のことが好きになったのだけれど、いつかはちょっとでも他の人よりも特別な存在になれたらいいなというのはみきの心の中での小さな願望で。彼が空けてくれたシンクのスペースに食べ終わったお皿を丁寧に置けば、「 じゃあせんせーのこと見ててもいい? 」と好きな人が家事をしている姿なんて嫌いな女の子はいないので(みき調べ)、それを見つめていたいのだとお強請りを。いつも自分の頭を撫でてくれる大好きな手がただ優しく繊細に皿を洗っていくというだけでもみきにとってはテレビよりもよほど楽しいので。 )
…ったく。ほんとに分かってんだか。
( 甘やかすつもりは毛頭ないけれど、もしまた同じような状況になれば一応文句を零してもきっと(流されるという形にもなるかもしれないが)こうして招かざるを得なければならなくなったら自分はそうするのだろう。もちろん助けるという意味では、相手が例え彼女じゃなくても生徒ならば迷う事もなく。そんな自分の本質を、小気味良い返事とは正反対に頬を緩めている彼女には見抜かれているようで何だか悔しい気もするのだが。ただ皿を洗っているだけ。ただそれだけを見たいという彼女に怪訝な顔を向けつつ首を捻り。「えぇ…?いやまあ…お前がいいなら別にいいけど……。別に何も面白くないだろ…。」と、まったく想像だにしていないお強請りに少し戸惑いながらも、隣に立つ彼女をそのままに洗い物を進めて。 )
だって学校にいる先生はこれからもたくさん見られるけど、おうちにいるせんせーはあんまり見られないんだもん。
─── …それに、好きな人はたくさん見てたいの。何時間見たって飽きないよ。
( ただ隣で彼のことをずっと見つめているのもちょっぴり緊張させてしまうかな、と思えば彼が洗い終わったお皿の水滴を拭きながら上記をさらりと答えてはまたへにゃりと彼にしか見せないような気を許しきった笑顔を浮かべて。けれど学校にいる彼を見ることが出来るのも在学期間中だけなのでそれはそれでしっかりと堪能をしなければならないのだけれど、今のところレア度で言えば圧倒的にお家にいる彼の方がなかなか見ることが出来ないのでここぞとばかりにそれを堪能しなければならないらしくちらりと彼の方へと視線を向けてはにこにこと緩んでしまう頬をそのままにまるで新婚さんのようなこの空間をしっかりと楽しんで。彼は自分ほど感情がくるくると顔に出る訳では無いけれど、でもじっと見ていれば実はダークブラウンの瞳が意外と多弁だったりするのが可愛らしくて飽きないのだと口には出さずにその瞳をじっと見つめ。 )
そりゃまあ休みの日に生徒を家に招くなんてしないしそんな機会も無いしな。
…あ、それなら俺もちょっと分かるかも。
( いつだかの会話でスーツ姿がレアだ何だと話したような記憶があるが、家着なんて完全オフの状態を生徒に見せる事なんてきっと後にも先にも今だけなのではないだろうか。見てるだけと言いながらちゃっかり隣で手伝いに入る彼女の柔らかい笑顔をちらりと見やっては、確かに彼女のようにコロコロと表情が変わっているのは面白くて何時間見ていても飽きなさそうだなと。そうしてこちらの思考を読み取るかのようにじっと見つめてくる夕陽色の瞳にぱちりと視線を絡ませながら「…手、止まってるぞ。」と次に洗い立てのお皿を差し出してはにやりと笑い。彼女の言葉通りなら"好きな人"だからこそ見ていられるという事になるのだが、果たして自分の同意はどちらなのかまでは明言せず。 )
、─── 。
( 今、間違いなく彼が見つめているのは自分で。というかそもそも自分と彼の2人しかこの部屋にはいなくて。果たして彼のちょっと分かるかも、は自分のどちらに反応をした言葉なのかが分からないけれど、此方を見つめてくるダークブラウンから視線を逸らすことが出来ずにぽわぽわと頬を赤らめたまんまるの瞳で固まってしまい。否、どちらの言葉に反応したかなんて彼の文脈や言葉のタイミングを読み取れば実に簡単なことなのだけれど、でもだってそうなると彼が自分のことを好きだということに── というところまで考えていれば、ふと彼から手元が止まっているとの指摘が入りびく!と肩を跳ねさせて我に返り。にやりと笑う意地悪な顔は、きっと此方が何を考え込んでいたのかまで完璧にバレている顔で、みきは赤い顔のまま彼から皿を受け取りつつ「 ……わ、分かるって、…なにが? 」とお皿を拭くことに集中しています、この質問に深い意味は無いです、と言わんばかりにお皿を拭いている手元の方に目線を下ろしながら(本当は彼の方を見たい)問いかけて。 )
何がって……、
『何時間見てても飽きない』ってとこ。お前見てるとヘタなお笑い番組より面白いし?
( 未だ意地悪い笑みを浮かべたまま、顔を真っ赤にしてキュッキュと皿を拭く彼女に向けてこてりと小首を傾げて。その顔が真っ赤になった理由も分かっているし、何なら返ってきた質問も予想通りでつまりは確信犯。もちろん真偽はどうあれ自らの心の内を吐露することなど今はまだ出来ないので、さっきの言葉にだって特に深い意味は無いですと、お返しとばかりに喉を鳴らして笑い。実際今もこうして自分の言葉ひとつに薄らと期待と戸惑いを滲ませながら、平然としてるフリを装ってその意味を探ろうとする彼女は見ているだけで面白く可愛らしい。「心理戦とか弱そうだよな御影は……、はい。これで最後。」と、何事も無かったかのように洗い終わった最後の1枚を彼女に差し出して。 )
!!
ま、また弄ばれた!
( 彼の言葉といじわるく楽しそうな笑みにハッ!とみきの賢い部分が働けばムキャ!と顔をくしゃくしゃにして悔しそうに上記を零して。もしかしたらちょっとでもみきのこと好きになってくれたのかも、と勘違いしてしまった自分がひどく恥ずかしくて半ば八つ当たりのようにぷんぷんと頬をふくらませては最後の1枚を彼から受けとりながら「 みきは正直者なの! 」 と怒っていますの顔をしている割にお皿を拭く手付きは丁寧で最後の1枚まで丁寧にピカピカ拭きあげれば、ふとつまりは自分は彼にとって女の子としてどころか見てて飽きない珍獣かなにかだと思われているのでは……!?と彼にとっての自分の立ち位置に大きな不安を抱え始めてはわわ…と危機感を覚えて。 )
またって何だよ人聞きの悪い。
俺がいつもお前を揶揄ってるみたいに言わないでくださーい。
( 言いがかりだといわんばかりに反論するが、その顔は楽しそうな笑みを浮かべたままで何の説得力も無く。──彼女を見ていて飽きないのは本当だし面白いと思っているのも本当。しかしだからと言って肝心の"好きな人だから"という部分を、言葉として肯定こそしてないものの別に否定もしていない事に彼女は気付かないんだろうなぁと考えると余計に面白くて。くすくすと笑いを抑えようともせず、濡れた手をしっかり拭いてから「はいはい、正直者で働き者の御影さん。手伝いありがとな。」とぷんすこ怒ったままの彼女の頭を軽く一撫でしてリビングへ。つけっぱなしだったテレビは台風情報を画面の端に追いやり、その内容はバラエティ番組へと切り替わっており。「とりあえず俺は風呂入ってくるからお前はゆっくりしてな。面白いものとか何もなくて悪いけど。」と、彼女を視線だけでソファへと促し自分はそのまま洗面所へと足を向けて。 )
い、いつもからかってるくせに……!!
( 自分は普段何にもしていません、といったしれっとした彼の言葉にむむむ…!とその頬は餅のように膨らんでいくものの、そんな彼に頭を撫でられてしまえば恋する乙女の心なんて簡単に浮き上がってしまうもの。だがしかしぷんすこと起こっている手前素直に喜ぶことはできなくて、怒っているのだか照れているのだか絶妙な表情のままにぺたぺたと彼の後を追ってリビングへ。先程まで様々な地方の台風情報やらヘルメットを被ったリポーターが豪雨の中必死にリポートをしていたTVの中はいつの間にか楽しげなバラエティ番組に変わっており、今回の台風はそんなにすごくないのかな…とすら認識してしまうほどだ。とは言っても、外は紛れも無い豪雨なのだけれど。ゆっくりしてろ、との彼の言葉に「 はぁい。 」とのんびり返事をしてはいくら好きな人とはいえ異性なのでお風呂にまでついていくことはなく。ソファにゆっくりと腰を下ろせばやはりやわらかさは自分の家のものとは違い、そのまま体を横に倒せば自分でも自認していなかった疲れがドッと襲ってきていつの間にかみきの瞳は閉ざされて。 )
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