女子生徒 2024-04-30 23:32:52 |
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言った言った。
俺にとって生徒は、"みんな"可愛いからな。鈴木も田中も、山田だってみーんな可愛い。
( スマホを出して擦り寄ってきた相手から逃げるでもなくむしろにっこりと笑って録音待ちのスマホに顔を近付けては、敢えて「みんな」を強調したうえに彼女以外の生徒の名前を出して。お望みのおかわりにちゃんと答えてやったぞと言わんばかりに満足げな様子で「良かったな、録音できて。」と楽しげに笑い。教材用とはいえ生き物は元々好きなので、どうしても周りが見えなくなってしまうのがある意味では短所なのかもしれない。自分の後ろで彼女がどうしているかなど気付く様子もなくガサガサと草むらに分け入りながら上の空で相槌を。「そうだなー……、あれ?カエルどこいった?………おっ、いたいた!やっと見つけ…………お前それ暑くないか?」漸く可愛らしいアマガエルを発見しては優しく包むように捕獲。立ち上がってくるりと後ろを向くと、世の男性諸君ならノックアウトされるであろう女子高生の彼シャツwith萌え袖(正確には白衣だが)。丸くなった目をぱちくりと瞬き、一拍置いて出た言葉は何とも色気の無いもので。 )
もーっ!
欲しかった言葉とちがぁう!
( わくわくしながら待っていた、彼の形の良い唇から紡がれた言葉は自分が期待していたものよりもずっとずっと範囲の広い意味の言葉に変わっており。してやったりな笑顔もかっこいい、とも思ってしまう単純な頭でぐぬぬ…と対照的に悔しそうに彼を見つめては不満げに上記を述べつつもだがしかしちゃっかりと録音できた音声は保存して。恐らくここで変に期待通りの言葉を受けていたらそのままするりとスマートフォンが地面とキスする羽目になったことだろうから、結果的に先の言葉で正解だったことは神のみぞ知ることなのだけれど。くるり、と大切そうにカエルを保護したままこちらを振り返ったと思えば怒るでも照れるでもなく体温の心配をしてきた彼に「 ……そこは彼しゃつ?に見蕩れちゃうとこじゃないの……!? 」 と驚き半分物悲しさ半分でツッコミをいれては男の人ってみんなこういう彼しゃつ?が好きなわけではないのか…と新たに情報を補填しつつ、ちょっとしたミニワンピースのようになっている白衣を靡かせて自分でも着姿を見るようにくるりと一回転してみて。 )
可愛い生徒って言葉が欲しかったんなら間違ってはないだろ?
( わんもあ!と求められたのは確かに件の単語で、決して名前を入れろと言われた訳じゃないし。と何とも大人気ないような気もするが、彼女の反応が予想通りだったのか堪えきれてない笑いが顔に滲み出ながらも小首を傾げて。ただあんな物だからこそまさか保存されるとは思っておらずその辺はまったくの無警戒で。案外この学校周りには生き物が少ないのだろうか、時間をかけて見つけたアマガエルをそっと虫かごの中に入れて「あのなぁ…、俺が生徒のそういう姿見て喜んでたら倫理的にやばいから。」と、溜息を吐きながらピシャリ。…と本人は何でもない風を装ってはいるのだが、本音を言えばやばかった。教師と生徒という認識のおかげで落ち着けたものの、彼シャツが嫌いな男がいるわけないだろうと心の中で盛大なツッコミをひとつ入れて。日頃懐っこくてただ可愛いだけの生徒だと思っていた相手が白衣ひとつで少し大人びて見えるとは思わず、反応するまでに間が空いてしまったのは実は見惚れていたからです。なんて言えるか。こほん、と軽い咳払いをひとつした後手を出して暗に白衣を返すよう求め。 )
大人はそうやってすぐ揚げ足を取る…!!
( ぐぐぐ、と悔しそうに眉を顰めるたものの彼の言うことは最もなことなので特に何も言い返すことが出来ず。でも何だか楽しそうなのでそれはそれはそれで良いのかな、と思ってしまうのは惚れた弱み。結局は好きな人が笑っているならそれでいいかと思ってしまうのだ。だがしかし、と簡単に録音できてしまった彼の音声を思い出せばいまどき簡単に切って貼ってを繰り返し捏造音声は作れるので気をつけて欲しいな、私以外にはやらないで欲しいな、だなんて今時の学生らしいリテラシーもふわふわと浮かび。「 せんせーさっきあっついって言ってたじゃん。みきが持っててあーげる。 」返せ、と言うように手をこちらに差し出してきた彼にんべ、といつものお返しと言わんばかりに小さな舌を出して見せれば萌え袖でぶかぶかとした手元で楽しげに笑う口元を隠しつつ彼から数歩逃げるように距離をとって。 )
人生経験の差だな、大人ってのは卑怯な生き物なもんで。
( 完全勝利の4文字でも貼り付いているのかといわんばかりのしてやったり顔で本人は大変満足そうではあるが、やはり今時の若い子の技術には少し疎いのか保存された音声への危機感は薄く。そのため彼女が変に捻じ曲がった好意を持ってたりしないことに救われていたというのは、きっとこの先も知らず仕舞いになるのだろう。好きな子の写真や動画を大切に保存してた時期は自分にも確かに存在したが、そんな若かりし頃を思い出しては何とも言えない気持ちになったりもして。「お前は………って、ばか!後ろ!」逃げられればこちらとて更に追いかけてしまうのは本能なのか、数歩開けられればまた数歩詰める。そうして繰り返しているうちに彼女の後ろに蓋の無い小さな側溝が。あまりにも楽しげで気付くのに遅れてしまいそうな彼女に慌てて声をかけると同時にその手を掴もうと咄嗟に手を伸ばして。)
─── ぁ、
( 後ろ、と彼に声をかけられた時にはすでに片足は半分ほど宙に浮いており、そのまま重力に従うようにみきの小さな体はかくんとバランスを崩して。転んじゃう、と思った時にはもう既に立て直せる体制ではなく、不安そうにきゅ、と眉を下げては助けを求めるように此方に伸ばされた彼の手を小さな手で掴んで。 )
────っは……あぶな…。
( 間一髪で掴まれた手を離さないようしっかり握り返して力いっぱい引き寄せると、想像よりも遥かに軽かった彼女の体は簡単にこちらへとその体重を預ける形になり。そのまま彼女を守るように抱き抱えて尻餅をつくと安堵の溜息をひとつ。もしも自分がもう少し体を鍛えているような人間であれば、こういう時はバランスを崩さず立ったまま彼女を支えられたのだろうかという考えがじんわりとした痛みと共に広がって。 )
─── …び、っくりした…、
( そのまま衝撃に備えてぎゅっと目を瞑るものの、いつまで経っても覚悟していた衝撃は来ずにその代わりに彼の香りに包まれながら前にスローモーションのように倒れる感覚が。恐る恐るゆっくりと橙色の瞳を開ければ、どうやら彼が引っ張ってくれその反動でそのまま後ろに倒れ込むように尻もちをついたのだと気が付けばいつもよりもずっとずっと距離の近い彼に照れることも忘れてぽつり、と言葉を零して。だがしかしすぐにくすくすと楽しげに笑い出せば「 ふふ、んふふ。せんせーナイスキャッチ。ありがとう。 」と彼を見上げながら花が綻ぶようにふにゃふにゃと安堵の微笑みを浮かべて。 )
お前な…っ、……あ"ーー…焦った……。
( 心臓がばくばくと忙しなく鼓動を打つのを感じながら、腕の中からぽつりと聞こえてきた彼女の声はいつもと同じでほっと一息。何が可笑しかったのかくすくすと聞こえる笑い声に彼女の方を見れば、こちらを見上げて楽しそうに笑みをこぼす夕陽色の瞳と目が合って。「何がナイスキャッチだばか……つーか怪我は?大丈夫か?」気の抜ける台詞にいつもよりゆっくりとした調子で悪態をつくと、思い出したように彼女の体の心配を。大切な生徒、ましてや女性の体に傷がついては大変だと少し焦りの混ざった声色で問いかけて。 )
んーん。
せんせーが庇ってくれたからだいじょぶ。どこも痛いところない。
( ほわほわと浮き上がるような不思議な気分の中、なぜだか自分よりも焦り不安そうな相手はこの学校に入学して二年目になるけれど初めて見る顔でにこにこふわふわと自然と頬が緩んでしまうのを感じ。だがしかし漸く焦りや驚きが一段落したと思えばふといつもよりもずっとずっと距離の近い事実に気付いて真っ直ぐに見つめあった瞳に静かにみきの頬は桃色に染っていき。「 ぁ、……。 」となぜか金縛りにあったかのように体は彼にすっぽりと包まれたまま動けなくなってしまい、直ぐに離れなきゃと頭ではわかっているはずなのに腰が抜けたのかはたまた彼から離れたくない心の奥底の本音がそうしているのか其の場所だけ時間が止まったかのような錯覚すらして。 )
それなら良かっ……?…あ、お前やっぱりどこか痛めたろ。
( そろそろ陽が傾いてくる時間なのもあってか、彼女の頬がほんのりと色付いていることに気付かず。突如として動かなくなった状態に、いつでもにこにこ元気な彼女のことだから多少の怪我なら何でもないと隠してしまうのではと思いじとりと、それでいて心配そうな眼差しを逸らさずに。「念の為に保健室行くぞ。」もしも彼女に何かあっては親御さんに申し訳が立たない。未だ固まったままの相手に、優しく立ち上がるように促して。 )
……手、
( 逸らされない視線と、それから声色から分かるこちらを心配している様子。少しの沈黙の後におずおずと控えめにちいちゃな手を彼に伸ばしては〝立たせて、連れてって〟という意味の込められた一言をぽそりと。勘違いで心配をしてくれている彼にはなにだか申し訳なさが心をちくりと刺すけれど、でも何となく今は甘えたい気分で、どうせならその勘違いに乗らせて頂こうという魂胆。ぶかぶかの白衣に包まれた手は彼の方に伸ばしても指先ほどしか姿が見えず、先程の彼に掴まれた手の力強い感触を思い出しては普段良い先生として在ってくれる彼の男性的な一面を意識するには十分な材料で。 )
ん。
( 普段ハグやら何やら求められる時は断固として触れないように気をつけてはいるが今は別、生徒が怪我をしているかもしれないのに手を差し伸べなくては教師が廃る。伸ばされた手を迷いなく取り、先程とは違い立ち上がらせるために優しく力を込めて。自分にとってはジャストサイズの白衣がこんなにもぶかぶかになるとは…と、改めて彼女を小動物のようだなどと思いながら。「んー……悪い、ちょっとだけ我慢してくれるか?」昼間の喧騒が薄れてだいぶ生徒たちの姿が少なくなったとはいえまだ学校。手を繋いで一緒に歩いているとさすがにそれは怪我人を連れているようには見えないのではと思い、彼女の隣で軽くしゃがみ込むと膝裏と背中にそっと手を当て、俗にいう「お姫様抱っこ」の状態で運ぼうと。 )
、へ、─── ?
( ふと隣にしゃがみこんだ彼につられるように視線をそちらに向けては、何が何だかわからないままに膝裏と背中に彼の暖かな手の感触が伝われば〝あ、お姫様抱っこだ〟とぽわぽわする頭でかろうじて認識してはそのまま彼の首元に手を回して。どうしよう、ほんとは全然元気なんだけど、恥ずかしくて動けなかっただけなのに、ぐるぐると頭の中で言い訳が巡るもののそれが唇からこぼれ落ちることはなくただただ彼に身を委ねて。「 ぁ、あの、みき、重いかも、 」ようやく出た言葉は自分の体重を心配する言葉。さっきもよろけちゃってたし、持ち上がらないかも。そうしたら傷ついちゃうかな、だなんていつもの強気な姿勢はどこへやらしおしおと桃色の頬のまま心配そうに彼を見つめて。 )
──っと。
いやお前むしろ軽すぎるくらいだからな?もっとちゃんと飯食えよー。
( 彼女の心配をよそにその小柄な体をひょいと持ち上げては、女の子なら誰しもが不安に思うであろう事に関してはっきりと否定の言葉を。さっきは突然の事だったので体が勝手に動いたために格好悪くも尻餅をついてしまったが、最初から分かっていればなんて事はない。普段からよく話す相手とはいえ今までこんなにしっかりと体に触れたことはなく、想像以上の線の細さに内心驚きつつ持ち前の元気の良さが顔を引っ込めてしまっている彼女を気遣っていつものように軽口を叩き。「散々人のことか弱いだなんだ言ってくれたけどな…これくらいは余裕だっての。はいそれ持って。」先ほど白衣を取り返そうとする前に置いておいた虫かごをさすがにそのままにしていくわけにはいかないので彼女が取りやすいように近付き。 )
……ふふ。
せんせーかっこいい。
( 自分の心配なぞ杞憂に終わり、なんとまあ軽々と体が宙に浮けば普段体感することの無い浮遊感に思わず彼に身を寄せるように腕に力を少し込めて。女の子が誰しも憧れる(諸説あり)お姫様抱っこ、まさかこんな形で好きな人にしてもらえるだなんて思わずに乙女の心はふわふわぴかぴかと幸せそうに凪いで。ぽろりと出た言葉は紛れも無い本音で、だがしかしいつものキャッキャとした高いテンションではなくまるで眠る前に恋人に囁くようなそんな静かな声色で囁けばへにゃへにゃ笑い。「 ふろすけ、おいでー。 」そうっと手を伸ばして虫かごを手に取れば安定するように虫かごをお腹辺りに。それならたったいま名付けたのであろう〝ふろすけ〟という名前を呼びながらこちらを不思議そうに虫かごの中から見つめるかえるににこにこと笑って見せて。 )
はいはい、ありがとな。
( 彼女が発したいつもの台詞に少しばかりホッとしたが、それでもいつもとは明らかにテンションが違うのがやはり気になりそわそわと。相変わらずの名付けセンスに一瞬思考が止まりそうになったが、もはやここまでくると壊滅的と言うよりは芸術性すら感じる気がして。まだ僅かに校内に残っている生徒に好奇の目を向けられながら急ぎ足気味に保健室へと向かい。「お前のそのセンスほんと癖になるな…。」と、図らずして虫かごの中にいるアマガエル改めふろすけも共に行くことになったため、男子生徒の憧れ的存在になりがちな保健室の先生がカエル等が苦手なことなどもちろん知らないのでこの後怒られることになるのだが。 )
んふふ。
かえるは英語でフロッグでしょ?だからふろすけなの。
( ねー、と腹の上で未だに何を考えているか分からないまん丸の黒目でこちらを見つめるアマガエルに返事を求めれば奇跡的にアマガエル?──もといふろすけは「ゲコ」とひと鳴き。校内にまだ疎らに残っていたらしい生徒たちからの何事だという好奇の目をビシバシと肌に感じてはあたかも私は具合が悪いです!と言ったように顔をしょんぼりとさせておき。しょんぼり顔が具合が悪い人間の顔かと言われれば微妙なところなのだが。どうやら彼のこの足取りは保健室に向かっているらしく、豊満な体に悩ましげな泣きぼくろがとっても可愛らしい保健室のまりあちゃん(バツイチ)は確かカエル苦手じゃなかったかな…と1人静かにこてりと首を傾げ。マァ同じ先生同士だしきっと彼の方がまりあちゃんに詳しいだろうとちょっと悔しい気持ちもありつつ本当は正しかった自分の記憶をぽい、と投げ捨てて保健室に到着するのを待ち。 )
あーなるほど、一応理由のある名付けだったんだな。
( 彼女の名付けはインスピレーションだとばかり思っていたのだが思いのほかちゃんとしていたことに感心しつつ、ん?じゃあふぐ太郎は?とメダカにそぐわない名前のことを気にするもやはりその名前のインパクトを改めて強く感じるに留まり。ちらりと腕の中の彼女を気にかけると、怪我人というよりただ悲しんでいるだけに見える。普段ならばこうして人目につくところでこのような状況なら大手を振って喜びそうな彼女も少しは気にしているのか…少し演技力に難はありそうだが、しおらしくしているその様子が少し可笑しくもあり。「すいません、保田先生います?ちょっと診てほしくて…。」幸い保健室の扉は開きっぱなしだったので中にいるであろう保険医に声をかけ。相手は自分より少し年下なのだがその大人びた雰囲気につい敬語になってしまう。噂ではバツイチらしいが、逆にそこが妖艶さの演出になっているらしく一部の男子生徒から絶大な人気を得ているらしい。歳が近いこともあるせいかよく「鳴海センセ。」と話しかけてはきてくれるのだが、自分としてはたまに話す程度の認識しかないのが正直な感想だ。中に入るなり部屋の真ん中辺りに置かれているソファに抱いていた彼女をそっと下ろして。 )
……んへへ。運んでくれてありがと、せんせー。
ふろすけも。着いてきてくれてありがとねぇ。
( 優しく保健室内のソファに下ろされれば比較的照れも落ち着いてきたのかいつものようにふにゃふにゃと笑ってみせて。虫かごの中をひょい、と持ち上げてアマガエルと目線を合わせれば「 かッ、…かえ、かえる、……!! 」と廊下の方から声が。そちらに夕陽色の瞳を向ければ怯えた…もとい引き攣った顔の保険医のまりあちゃん。 やっぱりカエル苦手だったかー…と苦笑いを浮べながら「 あのね、まりあちゃんカエル苦手なんだって。 」と彼へこそこそと耳打ちしては未だ状況の分かっていないようなつぶらな目でこちらを見あげてくるアマガエルには大丈夫だよ、とでも言うようにへらりと笑ってみせて )
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