女子生徒 2024-04-30 23:32:52 |
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っ、……せんせ、わかってたでしょ…。
( どうした、なんて問いかけるような言葉を吐きつつもこちらを覗き込む彼の表情は意地悪な笑顔を携えていて、ぐぬぬ…と悔しそうに眉を顰めればきっとこれを見越していたのだろう彼へと恥ずかしそうな夕陽色を向けて。片思い中の少女にとっては効果抜群の甘美な毒林檎は未だにきらきらと輝いており、今すぐにでも自分を食べろと言わんばかり。これの何が問題かといえば決して嫌では無いのが問題なのだ、ちょっぴり(うそ、だいぶ)恥ずかしいだけで。周りの人の視線がないのが唯一の幸いだけれど。みきはしばらく悔しそうに彼を見つめたあとに意を決したようにカリ。と軽やかな音を立てて彼が口をつけた場所と同じところを齧っては〝どうだ!間接キスなんて気にする子供じゃないぞ!〟と言いたげな真っ赤な顔で彼を見上げて。 )
何のことやら。
( 羞恥と悔しさの滲んだふたつの瞳に加えて確信犯を指摘する一言に、悪びれるどころか首を傾げながら肩を竦めて。さっきまでの彼女が何も考えずに差し出してきたのが悪いんだぞと、前回のココアの件もあって少しは気にするようになってくれればいいのだが。そんなことを考えながら彼女の次の一手を見守っていれば、自身が先に一口食べたところではなくわざわざこちらが口を付けた所を齧るという意外にも挑戦的な行動にきょとんと目を丸くさせて。彼女のことだから、てっきり何処から食べ進めていいやらと狼狽えるのではと思っていたのだが予想は外れてしまい。しかしやってやったと言わんばかりにこちらに視線を向ける彼女の顔は残念ながら正直で、「……っふふ。お前…林檎と変わんねーくらい真っ赤…!」とつい我慢できずに肩を震わせて。 )
っ、……真っ赤じゃないもん!
( 彼からの指摘にバッ!と頬に手を当てれば確かにじんわりと熱を持っていることは明らかで。自分でも無理があることは充分にわかっているのだけれど、ふるふると肩を震わせて可笑しそうに笑っている彼の大人びた様子(紛れもなく大人なのだけれど)に比べて間接キスくらいで顔を赤らめる子供っぽい自分が浮き彫りになるようで思わずいつもの流れで照れたあとの威嚇を。だって好きな人と間接キスだもん、誰だって照れるもん、と心の中で開き直りながらむす!と唇を尖らせては拗ねた様子を表すようにまた1口りんご飴を齧って。がやがやと賑やかな屋台の中心地では此方の様子を気にする人など誰もいないので、りんご飴で口元を隠しながら「 ……だって好きな人との間接ちゅうだもん。 」と小さな声で先程心の中で呟いた開き直りを小さな声でボソリと呟いて。 )
前に1回ちゃんと言ってやったのに…、
もう少し警戒心を持ってくれないと心配ですよ先生は。
( 肩を竦めてやれやれといったようにどこか他人事のような言い回しをしているが、たかが間接キスとは言うもののされど間接キス。相手が相手のため自分だってまったく意識してなかったかと問われれば多少なりとも口籠る事になるだろうが、それを分かりやすく表に出さないのは大人としてのチンケな矜持で。未だに真っ赤な顔のまま威嚇されるも、つんと尖らせた唇もりんご飴を食べているせいか紅を差したように見える気がして。周りが賑やかなうえに口元を隠された為彼女の呟きを聞き取ることが出来ず。しかし何か言葉を発した事だけは分かったので「何て?悪い聞こえなかった。」と、改めて口にするには恥ずかしいのではないだろうかという先の台詞を再び聞くべく無遠慮に顔を近付けて。 )
……他の人にはやってないもん…。せんせーだからやったの。
( ぷく、と未だ桃色の頬を膨らませては言い訳半分にぽそぽそ言葉を紡いでいき。実際、例えもう飲まないからと言っても自分の口をつけたものは男の子に譲らなくなったし『美味そう、1口ちょうだい』と言われてもちゃんとお断りするようになったので。警戒心、とは言いつつも彼は結局此方がどんなに押そうとも揺らいではくれないのでこれくらいは良いだろう、だなんて思っているのは内緒だけれど、みきはちら…と彼を見上げては自分の言葉を念押するようにわかってる?と見つめて。どうやら人混みの喧騒に紛れてしまったらしい言葉を聞き返すためにふと此方に顔を近付けた彼にさらに顔を赤らめては、一定の距離がないと心臓が持たない!と言いたげに1歩だけ後退りをして「 っ、……なんでもない! 」とぶんぶんと首を横に振り。好き、だなんて日常会話レベルで彼に伝えているけれど、こんなに近い距離で心がよわよわな状況では恥ずかしすぎると誤魔化すようにまた一口りんご飴を齧って。 )
!…、ふーん。
それならまあ、今回は目を瞑ってやるよ。
( 前に話している時に意図せずこの話題が出た際は、誰が相手でも友達だからオールオッケー!(好意を持っているであろう男子たちにはある意味酷かもしれないが)といった彼女の無警戒さが気になっていたものだが。彼女自身がそういった事を気にするようになったうえで自分にだけ変わらずの対応というのは本音を言えば悪い気がしなくて、何だか気恥ずかしさを感じてはこちらを見上げてくる夕陽色から逃れるようにふいと視線を遠くへ向けて。こちらが近付いた分退いて更に顔を染める彼女に疑問符を浮かべるも、それは聞き取れなかった言葉に対してのもので彼女の真っ赤な顔を見れば恥ずかしがっているのは一目瞭然。無意識とはいえ相手から煽ってきた間接キスでこの状態ならば、間接的でないものはどうなるのかと少し興味が湧き上がりそうになるがそれはいつかの未来のお楽しみで。 )
…………今回だけ?
( 今回は、ということは次回は無いのだろうか。もし次おんなじことをしたら怒られるのだろうか。何故だか逸らされてしまった彼のダークブラウンに首を傾げては素直な疑問を口にして。だって美味しい物食べた時に一番に浮かぶのは彼の顔だし、一緒に食べたいなぁって思うのに。怒られるのも困らせてしまうのも嫌だなぁなんてしょぼ…と眉を下げては、答えを強請るように服の裾を掴んだ手に緩く力を込めて〝なんで?〟 を瞳だけで訴えて。まもなく花火の時間なのか先程まで多かった人の波も疎らになってきて、さっきよりもずっとずっとお互いの声が聞き取りやすくなった状況でぱっちりと開かれた夕陽はその答えを待っているのかずっと彼を見つめており。 )
っ………、お前ほんと──…
( 無意識にしてしまった事で彼女も恥ずかしい思いをしたのではとのこちらの気遣いを、あっさりと無いものにしてしまう彼女の一言に反射的に視線を戻すも目を丸くさせてどう言葉を続けていいやらで口籠って。タチが悪いのは自覚無く仕掛けられることで、そんな誘惑に対して自分を制するのにもいつか限界がきてしまうのではと思ってしまうのが実のところ本音。しかしこちらの心情を知る由のない彼女は無垢な瞳を向け続けており、ましてや眉を下げたどこか寂しげにも見える表情にはこちらとて弱いのだ。さてどうするかと必死で頭を回転させながら何となく人混みが流れる方へ視線を向けていれば、隣を抜けていく誰かの「 花火見る場所空いてるかなぁ? 」といった一言が耳に入り。これ幸いとばかりに「…御影、花火見に行くか。」と、彼女の手を取れば皆の足が向かう方向へ(この空気感から逃げる為でもあるが)歩みを進めようと。 )
へ、?
( いつまで経っても続きのない彼の言葉に痺れを切らして口を開こうとしたところ、唐突な提案とあっさりと握られてしまった手に思わず開いたままの口から間抜けな一言が漏れてはようやく収まってきたはずの顔の赤みがまた戻ってきて。自分から彼にくっつくのは良いけれど、彼からの接触にすこぶる弱いみきにとって突然自分の手を包んだ大好きな大きな手に思考は全て持っていかれてしまう。無邪気な残酷さを孕んだ空気感は一気に散ったので、ある意味彼の作戦は大成功なのはみきは知る由もなく。〝見回りのお手伝い〟という名目で彼の隣を今歩いているのに、これでは本当に夏祭りデートになってしまう。けれどそれを指摘してあっさりと手を離されてしまうなんてことは絶対に嫌で、彼が気付いているのか無意識なのかは分からないけれど繋がれた手に柔く力を込めては「 ば、…場所。場所あるかな。 」とぐるぐると混乱している頭でなんとか質問を捻り出したものの、どうしても隣の彼を見れなくて浴衣とおんなじ黄色のペディキュアが施された足元を見て。 )
どうだろうなー、空いてたらいいけどなー。
( 咄嗟に繋いだようなものの振り解かれる事もなく、手を引くままに彼女がすんなりと着いてくれば何とか誤魔化せたようで内心安堵していて。そんな心持ちなので彼女の質問には何処か上の空に近いような返しにはなってしまったが、彼女の心情も加えれば質問含めてこのやり取りはお互いに取り繕うためのものだったと言っても過言ではないだろう。やはりメインイベントだけあって人の波は進めば進むほど混雑していき、こうして手を繋いでいても人混みに紛れてさえしまえば上手いこと目立たなくなるもので。こう言うのも何だが、花火なんてわざわざ人の多い所に行かなくても遠目にだって見えるわけで。逃げ道に困っての行動とはいえ今までの自分ならこうして人の群れにわざわざ参加していくような事はしなかったように思う。やはり彼女といると自分の思うようにはいかないなと自嘲気味な考えが浮かぶもそれを嫌だと思うようなことはなくて。「──…あ、とりあえずあそこでいいか。」進んだ先にある広場では花火が良く見えるためすでに場所取りは終了しており、花火を見るのに視界に入って気になるかもしれない木々が立ち並ぶ辺りは場所取りに敗れた人達がちらほらといるくらいで。絶好の場所とはいかないが、空いている場所を見つけてはとりあえずそちらへと足を向けて。 )
─── っ、…。
( 繋いだ手がひどく熱くて、まるでそこだけ熱があるような錯覚すら覚える。普段あんなに人混みを嫌っているし以前仕事でなければ夏祭りなんて来ないタイプとすら言っていたのに、言葉通り祭りの花である花火を見に彼と手を繋いで人混みの多い観覧スポットに向かっているというこの現実がまるで夢のようで。夢見心地のまま到着した広場はやはり見晴らしが良いだけありもうその場は満員だけれど、ふとどこが良い場所が見つかったらしい彼の言葉と手を引かれて向かったのは人が疎らな木々の立ち上る場所。木々が立ち並んでいるせいか他人から隠れるようなその場所はどこかカップルたちが寄り添っている率が高いような気がして、みきはそれらから目や意識を逸らすように「 は、花火もうすぐかな!楽しみだね! 」とまだじんわりと頬を赤らめたままへにゃへにゃと笑って。 )
……、はー…歩き疲れた……ちょっと休憩…。
( 出店で賑わう神社の境内からここまで正直さほど離れているわけではないのだが、人の多さ+暑さという夏祭りならではの雰囲気の中を歩いていれば普段が出不精気味で耐性の無い大人にはそこそこのダメージになるもので。浴衣に下駄という、自分より何倍も動き難いはずの格好をした彼女が隣でケロッとしているのは若さ故かと考えると少し悲しくなる気がするのでそんな思考にはストップを掛け、しっかりと根を張って立つ木を背凭れにしてほんの少しの休息を。「ん。…こうやってちゃんと花火見るのとか何年振りだっけなー……。」繋いだままの手は何となく離すタイミングが掴めず、彼女が何かから意識を逸らすような話し方をするのはそれのせいだろうと。周りの様子を気にする事なく、花火が打ち上がるのを待っているかのようにまだ暗いままの空を見上げて。 )
みきも花火をちゃんと見るのは久しぶりかも。
……ちっちゃい頃は大きな音が雷みたいで怖くて苦手だったなぁ。
( 深いため息とともに木に寄りかかった彼に思わずくすくすと笑ってしまいながらも大丈夫?とぱたぱたと手で緩く風を送って。彼の言葉に確かに考えてみたら去年お祭りに来た時もその前もただお友達と屋台とかに夢中で花火はちらっと遠目に見えたらいいなぁくらいの認識だったと思い出せば、こうして久しぶりに見る花火が大好きな彼が隣にいる状態だということが何だかすごく幸せで思わず頬が緩んでしまい。幼い頃は大きな音ときらきらと光る火の粉が雷とどこか似ているような気がして苦手だった花火もいつの間にか平気になったのだけれど、繋いだままの手にきゅ、と力を込めれば「 でもね、おっきな音はまだちょっと怖いからもうちょっとこうしててもいい? 」と隣の彼にへらりと眉を下げて笑いかければ甘ったるい嘘をついてもう少しだけこのままでいたいと強請って。 )
はは、俺も学生の頃は尚更まともに見た記憶ねーわ。
花火見ててもすぐ飽きて、やっぱり屋台で食って騒いでする方が楽しかったんだよなー。
( そよそよと肌に当たる少しぬるい風が案外心地良く、彼女の話に頷きながら過去の自分を思い返しては笑みを零し。付き合っている相手がいればまた違っていたが、気の合う友達同士で集まればまさに花より団子状態だった当時を今となっては少し呆れ口調で語って。そうして自分が楽しんでいた頃かもしくはもう少し前、まだ幼かった彼女はどうやら花火が怖かったらしいと知れば意外そうに目を丸くして。むしろ雷でさえテンションの上がっていた男子とはやはり違うのだろうと笑っていれば、繋いだ手に力が込められるのを感じ。「!……ま、怖いなら仕方ないか。それにしても御影は怖いもの多いなぁ。」彼女の言葉が嘘かどうかなんてこの際どうでもよくて、ただその可愛らしさに胸の奥が少しだけきゅっとしたのは内緒。返す言葉と共に繋いだ手の方にも返事をするかのようにゆるりと力を込めては、保護者とも恋人とも取れるような優しい眼差しで微笑みながら柔らかに笑う彼女を見つめて。 )
ふふ。高校生の時のせんせー、やんちゃだ。かわいい。
( どうやら高校生時代の彼はやんちゃにお祭りを楽しんでいたようで、どこか懐かしむような穏やかな笑顔の彼をそっと見つめてはそんな彼と青春を送ってみたかったななんて気持ちを心の中に押し止めて今の彼からはちょっぴり想像できるようなできないような、そんな過去の彼へ思いを馳せてみて。こちらの嘘を全て包み込んでしまうように少しだけ力の込められた手と、愛おしい者を見つめる時のようなそんな瞳で此方を見つめる彼にまたきゅう、と痛くなるほどにときめいてしまえば「 おばけと雷だけだもん。……でもそれもせんせーが居てくれたら平気。 」と繋いだ手を見せるようにひょい、と持ち上げてはにこにこと頬を弛め。彼が一緒にいたら怖いのどきどきよりもときめきの方が勝ってしまうから、なんて理由は恥ずかしいから内緒だけれど。 )
う………やんちゃって…、
ふ、普通だろ…たぶん……。
( 言葉を向けられているのが過去の自分とはいえ、今の自分より年下でありしかも生徒にやんちゃなどと言われてしまえば、垣間見える彼女の姉気質に何となく居た堪れなさも感じてしまい。もしも彼女が共に青春時代を過ごす同世代だったとしても、こうしてたまにお姉さん風を吹かされてはタジタジになってしまうのだろう。"だけ"とは言いつつも前に少しだけ(?)驚かした時を思い出せばその怖がりようは相当なものだったと肩を震わせて。しかし突如引っ張り上げられて繋いだ手を目線上に晒されれば、「じゃあ雷が鳴るたびに御影のとこに駆けつけなきゃだな俺。」と、口角をじんわり上げて冗談めいた口調で。お化けに関しては除霊できるような力がもちろんある訳ないのでノーコメントだが。 )
どうかなぁ~?
せんせーピアス穴開いてるし、意外と髪とか染めてたりして?
( 案外当たらずしも遠からずな彼の反応に思わず頬を弛めてしまえば自分とおんなじ彼の黒髪を見たあとに視線を彼の瞳に戻しては首を傾げて。ヤンチャの度合いはそれこそ年度や性別で違うものだけれど、もしかしたら今でこそしっかりとした教師という職に就いている彼も意外と本当にヤンチャだったら面白いとすっかりいつも通りの楽しげな色に戻った夕陽は楽しげにどうなの?と真っ直ぐに彼を見つめて。冗談めいた彼の言葉にふふ、とこちらも思わず笑ってしまえば「 そう、せんせーがいなかったら1人で震えちゃうしもしかしたら泣いちゃうかも。 」とおんなじように冗談めかした口調で(あながち冗談ではないのは本人は気付いていないのだが)答えて。冗談だとしても雷がなる度に駆け付けてくれる彼を想像してはぽやぽやと心が穏やかになり、少なくともみきの中ではいちばんに頼るべき相手だと彼を認識していることは確かで。 )
あーあー、どっちも昔の話すぎてもう忘れましたー。
つーかピアスはもう閉じてるって。
( 的確に的を得てくる彼女の指摘に否定する事ができず、言葉を被せるように声を発し。自分本来の色に戻っている髪の、耳に掛かっている部分を掻き上げては過去にピアスが開いていたが今ではもうすっかり閉じた痕をほら、とこちらを伺う夕陽色に見せてみて。むしろ彼女の年頃でそういった事をしていないのが珍しい気もするが、今のままで充分に可愛らしいと思っているのが本音なのでそこに関しては何も言うまい。笑いながら冗談のように話す彼女に「それは困るなぁ。俺が忙しいときは弟くんに任せるかー。」と普段はその役を担ってくれているであろう彼女の頼れる弟くんを思い描いては、怖がる彼女にくっつかれている様が容易に頭に浮かんでまた可笑しそうに笑い。──そうして他愛のない話をしていれば、ドン、と一発。大きい音と共に辺りがパッと明るくなって。 )
んふふ。
でもまだピアス穴の痕あるよぉ。
( 彼の言葉にくすくすと笑ってしまえばこちらに見せられるように露出された無防備な彼の耳朶をちょん、と指先でつつけばなぜだかなかなか無くならない(らしい)ピアス穴の痕について悪戯っぽく言及し。彼はいつも断じてヤンチャではなかったと言うけれど、多分そこそこやんちゃだったのではないかというのかただの乙女の勘で、ただそんな彼も見てみたいのでもし彼のお姉様とお知り合いになれたら根掘り葉掘り聞いちゃおうと決意したのもつい最近の話なのだけれど。彼が忙しい時は弟に任せる、との彼の言葉に不満げに唇を尖らせてやんややんやといつもの準備室のように─── 正確には今は手を繋いでいるのでいつもとはちょっと違うけれど ─── 話を続けていれば、不意にお腹に響くようなどしんとした低音と共に辺りがぱっと昼間のように華やげばみきはびく!と肩を跳ねさせてそのまま彼の腕に抱きついて。ドッドッド、と早い鼓動もそのままに「 は、花火……びっくりした……。 」と呆然と、だがしかしキラキラとしたひとみで花火を見上げて。 )
っ……おー…!
一発目からでっかいなぁ、俺もちょっとビックリした。
( 穴のあった箇所をつつかれれば少し擽ったそうにぴくりと反応しては、はい終わりと髪を押さえていた手を下ろして。やんちゃといっても悪い事をした事なんてもちろん無ければ憧れたりしていた訳でもなく、ただ毎日を友達と騒がしく楽しんでいたくらい。というより見た目はどうあれ反抗期のようなものはあまり記憶に無いのが本音で(そもそも姉には逆らえないので)。彼女の計画などもちろん知る由もなく、『 なーんか格好だけ気にしちゃってさ~。見た目だけよ見た目だけ! 』とけらけら笑いながら弟の昔を面白そうに語る姉と彼女がいつ出会うかなんて尚更神のみぞ知ることで。突然打ち上がった花火に周りの人々が歓喜の声をあげる中反射的に抱きついてきた彼女にくすくすと笑いながらも、お互いがお互いを見ながら話に花を咲かせていたので驚くのはまあ仕方のないことだろうと。「たーまやー……って言いたくなるよな、何か。」と、同じく花火を見上げる瞳はその光を反射してキラキラと輝いており。 )
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