女子生徒 2024-04-30 23:32:52 |
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もー。教頭先生みたいなこと言って、…………!?!?
今可愛いって言った!!?
( あまりにもさらりとした肯定にこちらもうっかりスルーしそうになってしまったのをギリギリのところで救いあげれば、〝御影は〟と個人を特定しているのでいつもの生徒はみんな可愛い理論が通じないであろう彼の言葉に薄暗い夜道でも分かるほどに頬を赤らめて彼の言葉を再確認して。酔っているせいか、それともいつもの揺さぶりなのか、どちらかとは分かっているのに照れてしまったりその一言で心がふわふわと浮き足立ってしまうのは恋してしまった側の負け。どうやら周囲には本当に何もいなかったようで、心からの安堵のため息を漏らしながら恐怖のあまり彼の腕に抱きついてしまっている今の状態の指摘にぱち、と瞳を丸くして。だがすぐにその表情は悪戯っ子のようににこにことした笑顔に変われば「 脅かしたのはせんせーなのに?みき脅かされてすっごく怖かったのにな~。 」と視線を逸らしてしまった彼の方を楽しげに見つめながら普段ならば許されないこの状態を今のうちに堪能してしまおう、とまたぎゅ!と抱き着いて。 )
言った言った。
御影はほーんと可愛いなぁ。
( 少しぽろりと零しただけの言葉にも律儀に反応を見せる彼女にくすくすと笑いながら、小さい子をあやすかのように空いてる方の手でわしゃわしゃと猫耳フードの上から雑にその頭を撫で回して。自分が何を言っているか覚えてないほど酔っているわけではないし、明日以降もきっと記憶はしっかり残っているだろう。それでもやはり酒というものは口の潤滑油のようで、ましてや今は学校外なのもあって普段よりもつい彼女に対して甘々になってしまい。彼女の悪戯めいた笑顔と台詞に墓穴を掘ったと感じては「あーもう、悪かったって。今はもう怖くないんだからいいだろ?」と、くっつく彼女を引き剥がそうとはしないもののそのままゆっくりと歩みを進めるため結果的に少し引きずるような形になり。酒の恐ろしいところは理性のタガを外してしまうことだが、酔い覚ましにとお茶を飲んだ数分前の自分を褒め称えてやりたいと小さく溜息を吐き。 )
!!
な、う、……も、もういい…熱出ちゃう……。
( どうやら今日の彼はとことん甘々なようで、トドメの様な一言とわしゃわしゃと頭を撫でてくれる仕草に更に心臓にハートの矢が突き刺さってしまえば頭を撫でる彼の手をきゅ、と握ってはギブアップだと真っ赤な顔を横に振り。人は許容量以上のものを受け取るとショートしてしまうので、まさに今ショート寸前なみきはいっぱいいっぱいです!という顔で猫耳のフードを深く被り直し完全ガード。どうやらお酒の力を借りても腕に抱きつくのはNGのようでおもちゃ屋コーナーでごねる子どものように暫く引き摺られれば諦めたように渋々腕から離れ。「 せんせーわがまま……。 」となんとも自然に(と、本人は思っている)恋人繋ぎにシフトチェンジをしながら不満げに唇を尖らせて。最も、ここで重要なのは別に彼が我儘ではないということ。傍から見て駄々を捏ねているのはこちらだけれど、それは不問として。 )
だいじょーぶ大丈夫、熱出たらちゃんと介抱してやるから。
( けらけらと楽しげに笑いながら、あくまで求められた答えを返しただけなのにと真っ赤な顔を隠したフードの猫耳部分をつんつんとつつき。もちろん彼女が照れていることは分かっているので、敢えて落ち着く隙を与えないようにやっているわけで。むすりとした表情でやっと腕から離れたと思えば、さすがに気付かないわけない恋人繋ぎ。「どっちが───…!………、そういや御影の家ってそろそろか?」どちらが我儘なのかと指摘しようとしたところでするりと絡められた指にぴくりと反応、は我慢。何事も無かったように話を続けながら、再び鎌首をもたげた悪戯心。こうして無防備に距離を詰めてくる彼女への少しばかりの制裁も込めて、絡めている指のうち中指を器用に解いては手と手の隙間に滑り込ませて彼女の手の平をかり、と軽く引っ掻いてみて。 )
そ、そっちの方が熱上がるからのーせんきゅー!
可愛い生徒からかうの、反対!
( 彼からの猛攻にぶんぶんと首を横に振りながら耐えているものの、やっぱり浅ましい心臓はどきどきバクバクとときめいてしまうもので苦しいほどにきゅうと締め付けるような心臓をおさえては羞恥で潤んだ全く覇気のないふたつの夕日で彼をむむむ、と睨んで。どうやらナチュラル恋人繋ぎ作戦は成功したようで、何も気付かずに(気付いている)話題を変えた彼ににんまりと計画が成功して嬉しい笑顔を浮かべれば意気揚々とその質問に答えようと口を開き。「 そ!この先の公園抜けた先がみきのおう、─── ひゃあ、ッ!? 」コンビニの袋を持った手で少し先に見える公演を指さし説明をしていたところ、掌を軽く引っかかれたことにびくりと肩を跳ねさせながらぞわりと腰に粟肌がたち小さな悲鳴をあげて。 )
そりゃ残念。
可愛いからこそからかい甲斐があるんだけどな。
( 潤んだ夕陽色からの睨みつけは悲しいかな可愛いだけで何の威嚇効果も無く。とはいえあまり揶揄いすぎてもまた意地悪だなんだと言われてしまうので、つついていた手をパッと開いてこれ以上は何もしませんというアピールと共にここは素直に退いて。揶揄うたびに可愛くて面白い反応を見せる御影の方が悪いんだぞと頭の中で責任転嫁を展開しては、いつものようにべ、と舌をちろりと出して。ご丁寧に説明をしてくれようとしていた彼女を遮ったことに関しては悪いとは思うが、無警戒からのいい反応に笑いを堪え切れず。「……っくく…!お前…ほんと、…この前もそうだったけどくすぐったがりだよな……!」顔を背け、肩をぷるぷると震わせて少しでも込み上げる笑いを抑えようと。それはそれとして、教師と生徒としての壁を日頃自分が示していることが良いのか悪いのか…彼女がこうして無防備に接している相手も一応ひとりの男だということを少しでも分かってもらえればという考えもあっての制裁で。 )
ぅ、…………なあに今日のせんせー、ずるい。
( ぐ、と彼の返事に言葉が詰まってしまえばきゅんきゅんと心臓が高鳴っている状態でもうこれ以上何かを言い返せる訳もなく敗北宣言に似た負け惜しみをぽそり。でもこれで全く構ってくれなくなったらそれはそれで寂しいし、だからといって供給で溺れない程度に構って欲しいというのは単なる我儘なのでそれは心の中にしまうとして。みきは深く被ったフードから少し顔を覗かせてはぷくりと頬をふくらませて。まだ彼のそわりとした手つきの感覚が残っている手を解こうとしないのはほぼ維持のようなもので、楽しげに此方の様子に笑い声を噛み殺そうとしている(できていない)彼にムキャ!と顔をしわくちゃにして怒っては「 もお!!!今のは油断してただけだもん!いつもはこんなんにならない! 」と、なぜだか友人に擽られた時とは違うぞわぞわとした体の下から昇ってくるような不思議な感覚を体に残しながらブン!と繋いだ手を大きく振って。 )
酒は飲んでてもそこまで酔ってるわけじゃねーし、普段と何も変わらないと思うけど?
( にやにやと意地悪い笑みを携えながら膨れっ面の彼女を見やって口にした酔っていないというのはまさに酔っ払いの常套句。普段飛び越えないラインをすんなり超えてしまっている事に本人は気付いていないらしく、どうやら今日の自分の行動はひたすら彼女に甘い攻撃を仕掛けているようで。ぴょこんと立っている猫耳をつつくのは辞めたものの、狙いはその膨らまされた頬にチェンジ。空気が入っていてもなお柔らかい彼女の頬をつん、と人差し指でつついてみて。相変わらず可愛い威嚇を飛ばしてくる彼女は、前にその小さな手を弄ばれたことすらもその時は油断してただけと言い張るのだろう。「…へえ。じゃあお前にイタズラしますってちゃんと宣言したら耐えれるんだ?」大きく振られた手の勢いに「おっと。」なんて言いながら少し足並みが乱れるも転ぶほどでは無く。負けず嫌いな彼女を可笑しそうに見つめながら、その言い方としてはギリギリな気がする煽り文句を。 )
うそだよぉ、今日はすっごく甘々だもん。
……甘々のせんせーもだいすきだけど、ずっとどきどきしちゃうから心臓に悪い。
( 膨らませた頬をつん、と優しくつつきながらも意地悪な笑みを絶やさない彼のダークブラウンをちら、と見つめてはイタズラに頬を突く彼の手を優しくぺいっと引き剥がしながら恥ずかしそうにそっぽを向いてしまい。決して悪いことでは無いしむしろ喜ばしいことなのだけれど、でもやっぱり乙女の心臓に悪いのはまた事実。触れる回数も、紡ぐ言葉も、此方を見つめる瞳も、何もかもがはちみつのように甘く誘惑してくるので、どうやら今日たじたじにされるのはみきの番らしくちら、と拗ねたような瞳で彼の方へと視線を送り。叩きつけられた挑戦状─── と、みきが勝手に思っているだけだが ─── にむん!と唇をへの字にしては「 当たり前じゃん!お友達と遊んでる時はそんなに擽ったくならないもん! 」と楽しげな彼の瞳を真っ向から見つめて自信ありげに、そして丁寧に色んなフラグを建設していき。 )
はは、何だそれ。
……──そんなんで"お付き合い"できんの?お前。
( 引き剥がされた手をぷらぷらと振りながら、そっぽを向いた彼女の顔がどれほど染まっているのかを考えてはくすくすと楽しそうに笑い。ふと頭に浮かんだのは、毎日飽きずに好意を伝えてきてくれる彼女は将来的に自分とそうなる未来を望んでいるのだろうか、ということ。歴代の彼女からは『彼女に対しての興味を感じられない。』という理由でフラれたことがあるし、確かにその場合はたいてい"告白されたからとりあえず付き合った"というのが前提にあった気がする。案外薄情な性格をしてるかもと思ったこともあったが、目の前の彼女に対しては正直興味しかない。もしも彼女がこの先を描いているのであれば、自分たちの間に何も障害が無くなったときを考えたときに今の反応では前途多難だなと溜息混じりの苦笑を零し。友達とくすぐり合戦でもして鍛えているのか、謎の自信に溢れたその様子は少し挑戦的に見えてしまう。「じゃあ俺とも遊ぼうか御影。1分間だけ。」にっこりと笑って遊び…もとい戦の申し込み。とはいえ彼女の体にあちこち触れる訳にはいかないので、制限時間付きで触れる箇所も絞るというハンデを彼女に提示して。 )
っ、……お、お付き合いしたら慣れるもん。
( キュ、と彼の言葉に眉を下げては静かに首を横に振ったものの、自分でもその未来が来てみないと分からないのは正直なところ。まぁでも今こんな体たらくならば、恐らくみきの願う未来通りにお付き合いが始まってしまえば慣れるどころかいつも致死量のときめきと死にそうになりながら戦うことになるのは明らかで。ちらりと潤んだ瞳で彼を見上げては〝ほんとなんだから!〟と訴えかけるようにきゅ、と眉を寄せて。彼からの挑戦状にぱち、ぱち、と何度か瞬きをしたあとに少しだけ胸のざわつくような感覚を覚えながらも「 う、受けてみせる! 」と両の拳を握ってこくりと深く頷いて。1分間、という実に短い制限時間の中で何をされるのかは全く想像のつかないまま軽率に勝負を受けてしまったものの、それでも短いし耐えられるでしょ、と油断しているのもまた事実で。 )
どうだか。
……ま、今のままでもそれはそれで良いかもしれないけどな。
( 潤んだ夕陽色の瞳は自信のほどを語りかけてくるが、彼女自身もそこまで確信は持てていないであろう様子は面白くも微笑ましい。しかしちょっとした事で色付きの良い頬を更に真っ赤に染めたりして本当に湯気でも見えそうな彼女の照れ姿は少しばかりお気に入りでもあるのが本音で。フードを被っている彼女がどこまで声を拾えるかは分からないが、その耳に届くか届かないかの小さな呟きをぽつりと零し。潔くこちらの挑戦を受けた彼女に「きゃー。御影サンかっこいいー。」と、意地悪な笑みと共にあからさまな棒読みを送り。気付けば彼女が先ほど言いかけていた公園に入っておりそこで足を止め、手は繋いだまま立ち位置を彼女の隣から向かい合うように変更。「1分は御影がちゃんと数えてな?はいスタート。」声をかけるや否や、繋いでいない方の手をフードに隠された彼女の頬にするりと添えて。 )
?……せんせ、今なんて言ったの?
( あつい、と空き手でぱたぱたと火照った頬を冷ますようにしながらもフードで彼の声は届いていなかったのかきょとん、瞳をまんまるにしながらちらりと彼を見上げて。いつもならば好きな人の言葉は絶対に聞き逃さないのだけれど、熱冷ましに集中していたのとフードを被っていたことにより残念ながらそれは届かずに。だがしかし彼の笑顔があまりにも優しくて何を言ったのかとそわそわした瞳で彼の返事を待って。いつの間にか入っていた公園にて足が止まれば、手を繋いだままの体制でお互いに向かい合い。何をするんだろう、と彼を見上げていればタイマーの役目を仰せつかったのもつかの間、あっさりとスタートの合図。もう、!?と慌てつつも「 あ、えっと、いーち、にーい、さ、っ……!? 」と始めたばかりのカウントはするりと頬に添えられた彼の手によって早速止まってしまい。声こそ出さなかったものの、ビクッと体を跳ねさせては驚きと羞恥の入り交じった夕陽は所在無さげに逸らされて。 )
んー?…内緒。
( どうやらフードの遮音性に加えて自らの熱を冷ますことに気を取られていた彼女にこちらの声は届かなかったようで。しかし普段はどんな言葉でも耳聡く拾いきる彼女、やはり気になるのだろうその瞳はワンモアと訴えている気がする。もう一度言うことは別に構わないのだが、結果彼女は照れるのか調子に乗るのか……たぶん後者だな。という思考に辿り着くと、返事の代わりに悪戯っ子のような笑顔を返し。慌てながらも律儀に声に出して数え始めた彼女に愛しさを感じては、即座に跳ねた体にくすくすと可笑しそうな声を漏らし。「手を擽られるのが弱いのはさっきと前とで知ってるからな。今日はこっち。」楽しげに上がった口角は意地悪さを少しばかり孕んでいるが、彼女を見る視線はとても優しいもので。酒を飲んだ後ゆえにいつもより少しだけ温かさを増している手は頬に添えたまま、その指先はフードの更に下、カラスの羽のような艶やかな黒髪に隠された小さな耳にそっと触れて。 )
何それぇ~。
( 悪戯っ子のような笑顔で内緒だと告げる彼の様子に何だかこちらも気が抜けてしまったのか、不思議そうな表情から一点楽しそうにくすくすと笑い。内緒と言われてしまっても何だか嫌な気はしなくて、彼とこんなに他愛ないやりとりができるのがふわふわと心が暖かくなるような安心するような気持ちがしてみきの瞳はゆるゆると蕩けて。数を、数えなきゃ。そう頭では分かっているのにその思考をかき消すようにぞわりとした感覚が体全部を支配して「 っひ、… 」と彼に触れられる度に甘みの含んだ小さな悲鳴を零すばかり。彼に触れられたところから熱が出ているような錯覚を覚えながら、どうにか他の事に意識を向けなければと繋がれたままの手の方へ意識と視線を向けるものの同時に彼の手がするりと動けばそれも虚しく全てがそちらに持っていかれてしまいカウントは続くことなく3から止まったままで。 )
…──御影、ちゃんと時間数えてる?
( こうして話をしている自分たちを側から見ればきっと教師と生徒だとは誰も思わないだろう。それくらい2人を包んでいる空気感は自然で穏やかなものだと何となく感じていて。しかし今は少しだけ違う。自分から仕掛けた事ではあるが、くすぐったさや羞恥心、もしかしたらそれ以外の感情に現在耐えている彼女はどこか色っぽさを醸し出している気がする。それと同時に自分の中の嗜虐心のようなものも刺激され、提示した時間中ひたすら耐えようとしている彼女が愛しくて仕方なく。隠されたままの耳はこちらから見えているわけではないので指の感覚だけにはなるが、小さな耳朶を指で挟んでみたり耳輪をつつ、となぞってみたり。くすりと笑みを零しては一向に3から進まないカウントに言及しつつ、まるで壊れものを扱うかのように優しく彼女に触れ続け。 )
ッ!
さ、さぁん、…っよーん、ご、…ろく……っ
( するりと優しく撫でられ、優しく指に挟まれ、ゆっくりと撫でられ。彼の指が動く度にあさましく跳ねてしまう肩と、思わず出てしまいそうになる声を必死に堪えながらはふ、と悩ましげに息を吐けば彼からカウントダウンの指摘。馬鹿正直に止まっていたカウントからまた再開をしては、甘い暴力の拷問のようなこの時間が早く終わって欲しい気持ちとまだ彼に触れていて欲しい気持ちで今にも脳がショートしそうになってしまい。カウントダウンをする為に数字を喋らなければならないのに、口を開いたらそれと一緒に違う声も出てしまいそうになるのを必死に耐えながらひとつひとつゆっくりと数えていき。「 ─── っじゅ、う。ッひ…っ 」と漸く10まで数え終わったもののこれをあと5セット続けなければならないということが信じられなくて、こうして自分を追い詰めているのは彼自身なのに彼に助けを求めるようにすっかり蕩けてぽやぽやとした瞳で彼を見上げて。 )
…お前耳たぶ小さいなぁ、ピアスとか開けらんないんじゃないか?これ。
( スムーズに、とはいかないカウントダウンを聞きながらふにふにと耳朶を優しく触って。その小ささに(開けられないことはないだろうが)ピアスの存在を想像しながら目を丸くして。しかし女子高生にもなればピアスなんて皆普通にしてるものだというイメージがあったのだが、これも彼女の"素行の良さ"であり魅力だなとひとり頷きながらどこか物珍しそうに柔らかな触り心地を堪能して。そしてだいぶ遅ればせながらカウントはやっと10まで進んだようで、その区切りに彼女を見れば何ともとろんとした夕陽色がこちらを見つめていることに気付き。もちろんカウントの合間合間に耐えるような声が吐息と共に漏れていることは分かっているためその様子にくす、と口角を上げては手の動きを止め、「……ギブアップ?」と小首を傾げて問いかけて。 )
ひ、ぴあす、……?
痛いのやだから、開けない、
( ふに、と暖かな指で耳朶を挟まれればまたびくりと肩を揺らし、くらくらとする頭で彼から投げかけられた言葉にたどたどしくも答えて。世の中には素敵なデザインのピアスがたくさんあるし、イヤリングと違って落ちてしまう心配もそうないだろうから開けてみたいと思ったことは何度もあるけれど、やはり友人のピアッシングを目の前で見ていると大きな音と赤く腫れた耳朶が痛々しくとてもではないが開ける勇気がない。─── 最も、今みきの耳は同じくらいに赤く熱を持っているのだが。ようやく止まった彼の手と、ギブアップを問う声にまだ少し荒い呼吸を繰り返しながらもこれが勝負だと思い出せば浅ましい負けん気がどうしても湧いてきてしまうのもまた事実で、みきはぽやぽやとしていた夕陽に改めて気合いを入れ直せば「 ぜ、全然へーきだもん! 」と見え透いた強がりを吐きながら煩悩を払うようにぶんぶんと首を振って。 )
はは、そっか。
確かに痛いのは嫌だよな、俺も好きじゃない。
( 彼女の小さな耳には華奢なものが似合いそうだな、なんて考えてはみるも当の本人が嫌がっているのだからそれはそれでいいだろう。自分だって友達とのノリで開けたことはあるがじんわりとした痛みに当時は少しだけ後悔したものだと、繋いでいた方の手を解いては今ではもう穴が塞がっている自分の耳をちょんと触り。10カウントを数えるまでの間ですでに瀕死の様子だった彼女は、いったいどこからこの自信が湧いてくるのか。直前まで蕩けていたその瞳に少しばかり輝きが戻るのを見ればくく、と喉を鳴らして笑い。「あんまり平気には見えないけどな?擽ったいのが限界ならギブアップを勧めるぞー。」と声を掛けつつまたゆっくりと、熱を持って随分と温かくなった小さな耳に手を這わせて。しかし負けず嫌いもここまでくると逆に可愛らしいが、それが他の人相手に向けられるのは是非とも遠慮願いたいと内心思っているのは内緒。 )
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