女子生徒 2024-04-30 23:32:52 |
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…わー、御影サン危なーい。
( カーテンの引かれた薄暗い密室はいやに怪しい雰囲気で、そんな中で驚くほど棒読みな自分の台詞はやけに浮いている気がする。ぽすりと自分の腕の中に飛び込んできた彼女を受け止めるも、防衛本能のようなもので両手は上げたまま。腕を回されてぴったりとくっついてくる彼女に視線を向けると、顔こそ見えないもののぶんぶんと振ってる尻尾のような物は簡単に想像できてしまって可笑しくなり。「これから暑くなる時期だから今だけだぞ、あったかいなんて言えるの。」と、彼女の囁きを耳に捉えたようで。とは言ったものの、彼女の鼓動が体温と共に微かに伝わってくればその温かさをしっかりと感じて。 )
え~、みきは夏でも人とくっついてたいタイプだもん。
暑いと人肌は別腹だよぉ
( 距離が近い分どうやら小さな呟きすらも聞こえてしまうようで、彼の言葉にくすくすと笑っては夏でも割とべたべたくっついている女子高生らしい意見をさらりと述べて、まだ暑くない今のうちにテストのご褒美をハグにしてよかった!と恐らく暑い日にくっつくのは嫌がるであろう彼を想像しながら自分のタイミングの良さを褒めて。だがしかしいつまで経っても背中に廻らない手にむ、と眉を顰めては少しだけ身を離して不満げな顔で彼を見つめ「 ……ぎゅってして。みきは転びそうだったんだよ、ちゃんと捕まえなきゃ危ない。 」と我儘をぽつり。今日は、というか今はみきのご褒美タイムなので多少のわがままは許されるだろうとこてりと首を傾げてはいつまで経っても降りてこない両手を待って。 )
まじで?俺無理……、
若いってすごいな…。
( 気温と湿度の高い夏場に人との距離が近いなんて考えるだけでげんなりと。そりゃまあ相手が好きな人で付き合ってる場合…など、多少の例外はあるかもしれないが。もしこのまま彼女が卒業すれば、年の差ゆえのそういったギャップに振り回されりするんだろうなとぼんやり考えては苦笑して。あわよくばこのままで、なんて甘い考えは彼女にぴしゃりと咎められてしまい。「………物は言いようだな…。──はいはい、ちゃんと支えますよ。」その強気な我儘にある意味で感心を零してはさすがに自分から言い出したご褒美なので反故にはできないと、彼女の細い体を包むように控えめに手を回して。 )
っふふ、絶対言うと思ったぁ
( 想像通りすぎる彼の言葉に思わず笑ってしまえば、それならば夏になる前に沢山堪能させてもらおうときゅ!と抱きつく力を強めて顔を埋め。けれど彼は何やかんや言いながらも冬もくっつかせてくれそう、とちょっぴり押しに弱いイメージのある彼を思い出しつつ自分の都合の良い方に寄せてはまた小さく笑い。遠慮の感じられる控えめな彼の手ににこ!と嬉しそうな笑顔を浮かべてはやはり自分から押せ押せで抱きしめるのと抱きしめられるのでは少しだけ羞恥度が違うのかほんのりと頬を赤らめながら「 んへへ。せんせーだいすき。 」とまた彼の胸に顔を埋めてぽそぽそ。 )
お前体温高そうだもんな、……冬はいいカイロになりそう。
( ぎゅむぎゅむとくっついてくる彼女の温かさは自分に比べればやはり子供体温(口に出したら怒られそうなので言わないが)で、もう少し肌寒い時期ならば心地良い暖かさを提供してくれそうだなと。暑いのも苦手だが寒いのも苦手な自分にとって四季の半分以上はお世辞にも快適とは言えず、来る冬を考えると目の前に無料のカイロがあるということに少しばかり惹かれてしまう気がしなくもないがそれは内緒。何となくいつもより照れ臭そうな彼女の台詞にはいはいと返事をしつつ、ふわりと鼻腔をくすぐる優しい香りに気付くと途端に自分の匂いが気になってしまうのは仕方のないことだろう。学校ではさすがに避けているものの、決して本数が多くはないが家では煙草を吸うときもある。出勤前にファ◯リーズやらで消臭を心がけているとはいえ煙草は吸わない人に取って案外匂うものなので、気になり始めるとそわそわと落ち着きなく。 )
そうなの!冬は色んな人にぎゅってされるんだよねぇ。
せんせーにもみきカイロ使わせたげる。
( ぱち!と彼の言葉に瞳を丸くしては冬場になれば友人たちによくカイロ替わりに抱きしめられたり手を握られるとからから笑って。勿論さすがに女子にしかやらない(そもそも女子が手放さない)のだが、みんなとくっつけるという意味ではみきは冬も大好き。少し背伸びをして彼の肩に顎を載せてはにこにこと頬を弛めながら彼にも使用許可を出して。落ち着いた男性らしい、遠くにタバコの香りの感じる香りは彼だけの匂い。落ち着くなぁなんて思っていたところ、ふとどこかソワソワとした雰囲気を醸し出した彼に不思議そうに首を傾げては「 ?どしたの? 」と問いかけて。長くぎゅってしすぎたかな、もう離れなきゃダメ?と彼のそわそわの真意には気付いていないようで。 )
色んな人ねぇ……。
必要になったら、な。この部屋クーラーは無いけどストーブくらいなら自分で持ち込めるし。
( 寒い時期が近づくにつれてよく女子同士が塊になっているのはあちこちで見かけるのだが、彼女もきっとそうなのだろう。まさか男子はその輪に含まれないよな…と少しばかり気になったりもして。いらない心配事に頭を悩ませていると思わぬお誘いが。けろっとした口調にやはり心配は膨らむも、寒いからといって女子生徒にくっついてまわるのはよろしくない。今回のハグだってご褒美枠なので、彼女からの魅力的な提案にはNOの意思を。…なぜだかハッキリと、とは言えない示し方にはなってしまったが。きょとんとした様子で問いかけてきた彼女は何も気にしてなさそうではあるが一応確認。「いや……一応気を付けてはいるんだけどさ、煙草の臭いとか大丈夫かな…って…。」学校、そして生徒の前という煙草とは縁遠くしていなければならない所で、実際に目の前で吸うわけではなくともやはり連想させてしまうものは気になってしまうもので。煙草を辞めようとも思ったことはあるけれど、何だかんだと惰性で続けてしまっている複雑な後ろめたさからおずおずと。決してベビースモーカーではないのが自分では救いだと思ってはいるのだが。 )
( / ア………誤字……誤字が………今気付いたんですけどあまりの恥ずかしさにスルーできなかったです……!
ヘビースモーカー、ですね。
何だよベビーって……いちばんダメだよ煙草なんて吸っちゃ……()
すみません、見て見ぬふりでこちら蹴ってくださいませ…! )
ストーブに負けたぁ。
( む、と不満そうに唇を尖らせれば、じゃあせめて今だけはと言わんばかりにだんだんと彼の体の温かさと自分の温かさが混じり合い境界線が分からなくなった互いの体をまたくっつけて。 けれど必要になったら、ということは有事の際はみきカイロを使うこともあるかもしれないとちゃっかり拾った一言に心を弾ませるもそれには敢えて言及しないことに。もし指摘してその必要になった時にすらも使って貰えなかったら困るので。どうやらタバコの匂いを気にしていたらしい彼にきょと…!と面食らったように瞬きをすればその言葉の意味を理解した途端にくすくすと笑い出してしまい。ぎゅ!と彼の胸元に顔を埋めてはまたパッと顔を上げて「 みき、せんせーの匂いだいすき!それにせんせーはそんなにタバコの匂いしないよ。遠くにあるかな?ってくらい!それも含めてすき。 」とにこにこきらきらお返事を。最も、年上に恋する女子高生はタバコの匂いというのもひとつのスパイスになってしまうものなのでそもそも気にならないのである。 )
ストーブに勝てるつもりでいたのか?
真冬の時期の、俺の相棒だぞ。
( 暑がりで寒がりという非常に面倒臭い体質ゆえ、季節ごとの相棒への信頼感は凄まじいようで。そんな相棒たちに助けてもらってる側のくせに何故だかふふんと得意げな顔を。確かに彼女の体温は適度に温かくて心地良いのは認めるが、少なくとも在学中はみきカイロとやらを四六時中使うわけにはいかないだろう。そもそも冬の話なんてまだまだ先、それより早くやってくる真夏の心配をしなくてはいけないのだが。せっかく人が気にしたというのに、一瞬ではあるが再び顔を埋めた彼女に驚いて。しかしすぐさまポジティブな意見を出されればその勢いに押されるようたじろぎながら。「そ、そっか……。まあそれならいい、のか?……あ、御影は煙草なんか吸うなよ。体に毒だぞ。」と、まさに自分の事は綺麗に棚に上げた一言を付け加えて。 )
ず、ずるい……!!!!
いつかみきが相棒って言わせてみせるんだから!
( ぷく、と柔い頬を膨らませては彼に相棒とまで言わせているストーブ…もとい無機物に分かりやすく嫉妬を。だがしかし所詮無機物は無機物、人間が手を加えないと温まることは出来ないのに比べ此方は起きたてからずっとエブリディ暖かいんだぞと心の中でぷんすこと拗ねてはその鬱憤を晴らすようにぐりぐりと彼の肩口に額を押し付けて。彼の付け足された一言に思わずふ、と吹き出してしまいながら「 はぁい。……でもせんせーも、タバコいっぱい吸ったらへろへろになっちゃうからほどほどにね。 」 と冗談混じりに返してはクスクスと笑いながらほんのりと煙草の香りのする彼の胸元をぽん、と叩いて。だがしかしそれはそれとして、彼のタバコの残り香も好きなのでちょっぴり吸ってて欲しい自分もいるのでそれは内緒。 )
おー、なれたらいいな?
ぜひ頑張ってくれ。
( 無機物に対して謎のライバル心を露わにした彼女に、はははと乾いた笑いを向けてペラッペラに気持ちのこもっていない応援を。確かに電気ストーブなので付けてから暖かくなるまでに多少時間はかかるものの、それでも自分を暖めるだけならば充分なので。分かりやすく拗ねた様子で額を押し付けてくる彼女にどこか子供らしさを感じては可笑しそうにくすくすと笑い。彼女からブーメランのように注意が返ってくれば、「へいへい、言うほど吸ってるわけじゃねーけど気を付けますよ。」がたがただとかか弱いとか、お前に小馬鹿にされるからな。と苦々しそうな顔で零して彼女の心の内には気付かずに。生徒の前ではもちろんだしそもそも学校では大人といえど喫煙は以ての外なのでここで吸う事はない。とはいえ学校以外で会う事は無いのだし、吸ってる所を見られることは無いなというその自信もそう遠くない未来に崩れることは今はまだ知らないのだが。 )
うー……道のりは遠そう……。
( 見事に気持ちの薄い応援を受けてはしょんぼりとこれからの道のりへ思わず沈んだ声をぽつり。だがしかし八つ当たりには満足したらしくこて、と改めて彼の肩口に顎を載せては乱れた前髪を指先で軽く整えながらドキドキよりも安心感が勝ってしまう今の状況に落ち着いて。例えるなら、飼い犬が飼い主脳での中で眠っているようなそんな感じ。みきはひっそりと微笑めばずっとこうしていられればいいのにな、なんて彼に言うでもなく胸中で呟いて。彼のあまりやる気の感じられない返答に仕方ないなぁと呆れて見せれば「 だってせんせー春と秋以外は基本的になんか元気ないし…。今年の夏はすっごく暑いらしいよ? 」と四季の半分は気温に負けているようなイメージのある彼を思い出しながら更にトドメを。クーラーのない部屋でどれだけ扇風機やうちわ等で彼が耐え忍べるのか甚だ疑問ではあるので、定期的にやっぱり生存確認はしにこよう……と1人近い将来の予定を新たに作成し。 )
バカ言え、春もそんなに好きじゃない。花粉怖い。
──つーかテレビで毎年言ってるよなそれ……。今年こそ準備室にもクーラー付けてもらえるよう校長に………いや無理か……。
( 彼女のことを小動物や仔犬のように思う時があるのは案外間違いではないのかもしれないと、甘えるようにくっついてくる様子にうっすらと庇護欲が湧いてきてはひとり納得して。お互いの立場は敢えて置いておいて、純粋にこの状態はロマンチックなものであるといえるだろう。だがしかしその話の内容は自分がいかに虚弱なのかを思い知らされているという何とも笑える状況で。もはやマトモに過ごせる季節は1つしかないのではという答えを彼女に向けるも、とりあえずは目先の夏の恐怖。ちょうど良い高さにある彼女の頭に顎を乗せながらぶつぶつと、過去何度も断られた談判に再び挑戦しようとするも脳内で断られるところまで余裕の再生ができてしまい戦わずして撃沈。何でお前らは元気なんだ…?と、矛先は年中元気印の彼女とその他大勢の生徒たちに向けられて。 )
……もー。
そんなことしたらもっと準備室から出てこなくなるでしょお。
( どうやら想い人は1年の4分の1しか快適に生きられないようで、どうにかみきがしっかりしなければ…と呆れたように眉を下げて。まだ教師陣の中では若手であろう彼の身を案じつつも、頭の上に彼の顎が乗っているのを感じてはくすぐったい、とくすくす笑って。そういえば去年の夏のスポーツ大会の時とかせんせーの姿見た記憶ないな…とふと思い出せば学生たちがきらきらした汗を振りまきながら青春を謳歌する生徒たちとは裏腹にきっとこの準備室かもっと涼しい場所にいたのであろう彼を思い出して。今年はもうちょっとみきが健康的に連れ出さねば…と謎の使命感にも似た覚悟を決めては「 せんせ、今年の夏のスポーツ大会は教師チームちゃんと出てね。閉じこもってちゃダメだよ。 」ととんとん、と彼の背に回した手で軽く背中を叩いては恐らく拒否が来るだろうなと想像はしつつも告げて。 )
でも何かあれば御影が来てくれるから別に困らないし…。
( どちらが年上なのか分からなくなるほど至極真っ当なお説教に、まるで拗ねた子供のようにぽそりと呟くも教師としてどうなのかという内容。良く言えば信頼して頼りにしている、悪く言えばただ甘えているような台詞だがどうやら本人は大人としての矜持よりも自分がいかに快適に過ごせるかを重視してしまったようで。そんな彼女から、まさかのスポーツ大会に出ろとの一言に固まって。「………やっ、ぱり出なきゃダメ…だよなぁ……。でも俺別にサボってたわけじゃなくて、去年は具合が悪くなった生徒のために待機をだな…。」ものすごく悩んでますといったように渋々と答えながら、去年の大会後に教頭から軽くお叱りを受けたことを思い出しては苦々しそうな表情に。もちろん保険医がいるので自分がわざわざ待機をする必要はないのであくまで言い訳なのだが、今年もお叱りを受ける覚悟で同じようにしていようと思った矢先の彼女の言葉。背中を優しく叩かれるその心地良さを感じられる余裕がないほどうんうんと唸りながら自らの欲望と戦っている様子で。 )
!
─── … 仕方ないなぁ。みきがせんせーの面倒見てあげる。
( きゅん、と心の柔らかな部分に矢が刺さってしまえば、拗ねた男の人ってなんてこんなに可愛いのかしらとみきの瞳はゆるゆると甘さに蕩けていくように細められ。する、と彼の背中に回していた腕を首元に回せば彼を見つめてふにゃりと微笑みながら全く仕方がないと思っていない声色でそれを了承し。そしてやはりNOに近い返事…もとい体の良い言い訳が渋々返ってくればどうしたものかと思わず笑みが溢れ。「 スポーツ大会楽しいよ、1種目だけでも出よ?それにほら、今回のみきみたいにご褒美用意すればいいじゃん! 」 彼の苦々しい表情を晴らすべく反対にニコニコとした表情を浮かべながらこてりと首を傾げつつ今回自分が62点という前代未聞の数字を取れた秘策を彼にもちかけ。まぁ尤も、成人男性のご褒美といえばだいたい未成年には手もお金も出せないものが多いので、そこは彼に譲歩していただくしかないのが難点ではあるのだが。 )
──じゃあお前の夏と冬は俺が予約したってことで。
頼りにしてるぞ専属パシリ。
( 彼女の言葉を聞くやいなや、上手く言いくるめてミイラ取りをミイラに出来たことにしてやったり。首元に手を回されて随分と近くなった彼女の額にこちらの額をこつんと当てて目と目を合わせ、にやりと口角上げて。駄々をこねる子供をあやすかのような彼女の意見を聞くも依然渋い表情のまま「ご褒美ぃ~…?……そう言うからには御影が何か用意してくれるのか?」と、段々と表情を意地悪いものに変えてはきっと答えに困るであろう聞き方を。とはいえ一応大人で教師なので、生徒にここまで言われてはさすがにまったく不参加という訳にはいかないだろうとすでに腹は括っているのだが。さて彼女はどんなご褒美を用意してくれるのかと、にっこり笑顔を顔に貼り付けたまま回答を待って。 )
!!!
………………ん、
( またその呼び方!と不名誉な呼び名に夕陽色の目をまんまるにさせて抗議をしようとしたのも束の間。ぴったりくっついた額同士とあと少しで鼻先が触れてしまうのではないかという近距離にその勢いは虚しくするすると大人しくなっていき、最後には小さな小さな返事を返すだけで。さっきまでお姉さんぶっていた表情は一気になりを潜めて純真な少女の顔が代わりに顔を出しては、嬉々として彼の首に回していた手すらもなにだか恥ずかしくなってしまい。じわじわと頬の血色が良くなっていき、心臓がどきどきと早鐘を打ち始めたのも彼に聞こえてしまいそうでみきはするりと首に回していた腕を彼の胸元に添えて少しでも心臓の音が聞こえてしまわないように隙間を確保して。彼から予想外の質問が飛んでくれば、正直なところそこまで深く考えて居なかったのか彼の綺麗なにっこり笑顔をぱち…とゆっくりとした瞬きで見つめながら首を傾げて。自分が用意できる程度のもので、なおかつ彼が喜ぶもの。逆ならいくらでも思い浮かぶのに…と思いつつ頭をフル回転させては「 …お、お弁当…とか……? 」と自分で答えておきながらしっくりは来ていないのかぎゅ……と眉を顰めたままで。 )
お、素直。
───……つーかもうそろそろ良いだろ?ご褒美タイムは。
( 前に一度使ったことのある呼び名は彼女にとって理想とはいえないものだと知っているので、今回も咎められるだろうと思っていたのだが。想像以上に大人しくそして静かに、僅かに開いた距離に何となく少しだけ肩透かしを食らったような気すら覚えて。誰にも見られることがないとはいえ、正直先ほどまでの体勢は心臓に悪いものがある。よく理性が勝ってくれたと内心で自分を褒めながら、互いの間に隙間が出来たことで彼女を包むように回していた手を背中から肩に移動させてこの甘美な一時に終了を告げて。自分の問いかけでここまで彼女を悩ませたのはかつてないかもしれないと、ゆっくり捻り出された彼女からの答えに未だ笑顔のまま頷いて。「…へえ、いいじゃん弁当。御影が作ってくれるなら味は保証されてるし、当日楽しみにしといてもいいか?」何を隠そう(というほどでもないのだが)スポーツ大会の日は案外教師陣も忙しいもので、いつもは弁当を持ってきているような先生方もコンビニ飯になりがちになる。とはいえ別に自分は普段からコンビニ飯なので何も変わらないのだが、久しぶりの手作りとなるとやはり心惹かれるものがあって。彼女の腕前は先日、調理実習とはいえ凝ったクッキーを作ってくれたことで非常に信頼しているため少しだけ楽しみなのも本音なのだが。 )
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