女子生徒 2024-04-30 23:32:52 |
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だって司くん風邪引いた時“食欲無いしめんどくさいから”ってゼリー飲料とかで凌ぐタイプでしょ。
風邪ひいた時ほどちゃんとご飯食べなきゃダメなんだからね。
( 以前彼の家にお邪魔した際の冷蔵庫の中や調味料の充実具合等々を見ればある程度普段の食生活はどうしても見えてきてしまうもの。普段から料理をしない人が風邪の時にわざわざ料理をするとは思えずにぷく、と呆れたように頬をふくらませながら鋭い指摘を続けていけばお姉さんぶって分かってる?と言わんばかりに彼の顔を覗き込んで。最も、教師である彼にとっては迷惑だということも分かっているのでお家までは押しかけなくとも家の扉にご飯を提げておくくらいのことはしようと思っているのだけど。意を決して自分がこのソファを迷っている理由を素直に吐露したと言うのにどうやら目の前の彼はその深い訳までは把握していないような様子で店員さんに購入意思を伝えてしまい。もちろん店員さんが売上チャンスを逃すわけも無いのでにっこりと柔らかな笑顔を浮かべながらそれを了承し購入準備を進めるべく品番確認をしてさっさとバックヤードへとはけていってしまい。「 ……もう、みき知らないんだからね。初めて来た女の人とかに指摘されちゃえばいいんだから。 」せっかく自分が気を遣ってあげたというのに、と呆れたように息を吐いたもののその実はみきの独占欲は充分に満たされてしまうのでその声色や表情はちょっぴり嬉しそうで。 )
………お前もしかして、前来たとき監視カメラか何か仕掛けていった?
( 彼女の指摘はあまりにも的確で、本当に見られているのではと思うほどまさに調子を崩したときの自分の行動をズバリと当てられればぎくりと固まり。そのままじとりとした視線をこちらを覗き込んでくる彼女に向ければ、冗談ではあるが可能性のひとつとしてそんな問いかけを。とはいえ少し考えれば、これだけ長いこと一緒にいるに加えて心許ない冷蔵庫を見られているのだからそんな推理はきっと簡単なのだろうと当たり前に分かることではあるのだが。にこやか且つ素早く対応してくれた店員さんを見送っては、配達の手続きもしなければいけないのでレジへ向かおうと。そんな中で聞こえてきた彼女の言葉は予想だにしていなかったもので、二度目のきょとん顔を披露した後へらりと笑顔を浮かべては「はは、何だそれ。お前そんなこと心配してたの?……仮に誰か来るとしても、ソファを選んだ張本人が看病だーつって押しかけてくるぐらいだろ。」と可笑しそうに言葉を繋いで。何の意図もなく自然と出たものだが、まるで彼女以外がもう部屋に来ることなど考えていないかのような台詞となって。 )
、
……ふふ!そんなのしなくても好きな人のことくらいわかるよ。
( じとりとしたダークブラウンでこちらを見つめながら冗談交じりの問いをなげかける彼にきょとん、と瞳を丸くしたかと思えばそのままくすくすと可笑しそうに笑い出し、そのままつん。と彼の頬を人差し指で軽く突いては楽しそうに頬を弛めて。監視カメラなんかに頼らなくても好きな人のことならばなんでも分かってしまうのだという恋する乙女はいつだって無敵で最強、みきは彼のダークブラウンを愛おしそうに見つめてはまたへらりと微笑み。きょとんと瞳を丸くしたかと思えばとんでもない殺し文句をさらりと零した彼に今度はこちらが瞳を丸くする番で。きっと彼は気づいていないし無意識なのだろうけれど、好きな人から自分以外の女性を部屋に入れるつもりがないような発言をされてときめかない女は当然居るはずもなく(みき調べ)じわじわと熱の上がってきた顔を自覚しながらもどうしようもないほどのときめきを発散する術はどこにもなくて「 っ、………ぎゅ、ってしていい…? 」と真っ赤になった顔を両手で隠しながらいつものようにダメ元でこのトキメキの発散をしようと小さなおねだりを。最も、断られる前提でいつも言っているのでいざ許可されたら許可されたで慌てるのはみきの方なのだけれど。 )
えぇ……?
そんなの分かるの絶対お前だけだって……。
( 大人しく頬をつつかれながらも怪訝な表情は崩さず、彼女曰くの恋する乙女のパワーとやらを実感するに終わり。お前だけ、なんて言いながら自分も彼女のことならきっと他の人より少しばかり気付くこともあるのだろうが、もちろんそれも無自覚で。彼女の夕陽色が綺麗にまん丸く見開かれたかと思えば、その瞳もすべて小さな両手に隠されてしまい。彼女の手がその顔を覆う直前に見えたのは本日だけでも何度か見る機会のあった真っ赤に染まった頬。そのままぽそぽそと、彼女の中の何かが限界を超えた際にいつも頼まれるおねだりを零されれば「また急だなお前は。…ダメに決まってんだろ、まったく。」と腰に手を当て、呆れたような笑みを浮かべて。そもそも仮にハグをするのに差し支えのない関係性だったとしても、こんな人の多いところではさすがに出来ないのだが。 )
せんせーが分かりやすすぎるのもありまーす。
( 未だ怪訝そうな顔を崩さない彼に対してくすくすと頬を弛めてしまえばそのままふに、と一度だけ彼の頬を指先で摘んで満足したらしくその手は離れて。普段散々わかりやすいと彼にからかわれているのでそれの仕返しのつもりらしい上記の言葉を返せばそれにプラスしてべ、と赤い舌を小さく出してこれもやっばり彼の真似で。案の定断られたハグのお強請りはいつもの事なので特になんにもショックを受けたりはないのだけれど、この胸の中の致死量のときめきはどうにかしなければならない。みきは両手で顔を隠しながら「 だってきゅんきゅんしたんだもん…ときめきで死んじゃう…。 」ともごもごくぐもった声で何度目か分からないこのお強請りの理由を説明し。ちらり、と両手の隙間から顔を覗かせては、困ったような…もとい恥ずかしそうの夕陽色で彼のダークブラウンを見つめて。 )
うっせ。
お前にだけは言われたくねーよそれ。
( 彼女の細い指が離れた後、ただでさえ分かりやすいと日頃揶揄っている相手に同じ言葉を返されるも残念ながら彼女の言っていることはすべて当たっているため反論のしようもなく。細い指の隙間からちらりと覗く夕陽色はどこか恥ずかしそうに熱の込もったもの。そんな瞳に見つめられれば少しばかり絆されそうになる気がしなくもないが、「──、…ばーか。ほらさっさと行くぞ。」と一言だけ返せば支払いを済ませるため踵を返して。道中で季節物の商品として炬燵やら完全に自分がダメになりそうな家具に惹かれてしまいそうになったりしたが、またもや彼女に的確な指摘を受けると考えれば泣く泣く()諦めて。 )
─── ふぅ。
炬燵も人をダメにするクッションも着る毛布も全部阻止!
( 気分はまさにひと仕事終えた後。会計に行くまでの道中、尽く人をだらけさせるのに特化した魅惑の家具たち(冬はそういったものが特に多い)に惹かれる彼を正論パンチで引き剥がす作業を繰り返すこと数回行っていけば、あとは今会計を行っている彼と合流すれば本日の目的である買い出し補佐の仕事は早々に終了するわけで。もちろん彼のお金出し彼のおうちで使うものなのだからある程度は自由に買ってもらって構わないのだけれど、それで体調を崩してしまったり体を痛めてしまったら元も子も無いので本日のみきは買い出し補佐の他にそんな彼の欲望を打ち破る役だったのかもしれない…と知らされざる自分の新たな任務を発見したことに満足気に頷きながらもベンチで彼の買い物が終わるのを大人しく待っていて。─── 本当はちょっぴり夫婦茶碗とか、そういったペアの食器類に目移りしてしまっていたのだけれどそれはきっと彼にはバレていないので良しとして。 )
───『すみません、お姉さんあちらのお客様のお連れ様ですよね?』
( 目的の物はしっかり買えたものの、誘惑に負けるように魅力的な品を見つければあっちへフラフラこっちへフラフラ。しかし何を見ても反論の余地など許されない同行者のド正論に勝てるはずもなく、しおしおとソファのみを購入するためにレジにて手続き中。そんな自分の知らないところで店員のお姉さんが彼女に声を掛けていることなどもちろん気付くはずもなく。──『ただいま当店でお品物をご購入して頂いたお客様にクリスマスのサービスとして粗品をプレゼントしておりまして~。カップルのお客様には、ペアのマグカップかミニクッションがお選び頂けますが如何でしょうか?』とプレゼントの写真が載ったチラシをにこやかに差し出して。マグカップの方は淡いピンクとブルーのペアで、中央から少し下にワンポイントとして白いラインが1本入ったシンプルなもの。続いてミニクッションの方は、彼女ならば抱きしめた際にちょうど良いサイズ感になるだろう。こちらも色合いはピンクとブルーだがマグカップよりは少し落ち着いた色で、デザインは可愛らしいテディベアが小さなハートを胸に抱いているもので。 )
─── へ、?
あ、いや、えっと、……
( 突然かけられた声にハッと我に返ればそこにはにこやかな笑顔の店員のお姉さん。なんだろう、と素直に話を聞いていればどうやらお店のキャンペーンで声をかけてくれたそうで、“カップルのお客様”という部分に思わず否定をしそうになったものの、こうして彼と並んで歩いていて初めてカップルに間違えられたという記念すべき嬉しさとちょっぴりの照れで頬を淡い桃色に染めれば否定の言葉はふにゃりとしたはにかみに変わり。お姉さんが笑顔でシンプルで使いやすそうなマグカップと可愛らしいクッションの写真が載ったパンフレットをじ、と真剣な夕陽色で見つめては少し悩んだ後に「 えと、…じゃあ、マグカップでお願いします! 」と今日のデートの為に昨晩塗ったオレンジ色のマニキュアで彩られた指先でマグカップの方をとん、と指さして。マグカップならばおうちに何個あってもいいし、シンプルなデザインなので別にみき用じゃなくても来客用(ほんとはみき専用してほしいけれど)として使えるのではないかという考えで勝手に選んでみたものの心の奥でちょっぴり“勝手に決めちゃったけどいいかな”、“せんせー使ってくれるかなぁ”と不安もあったりして思わずちらりと彼の方を見ては不安げに眉を下げて。 )
『ありがとうございます、マグカップですね。ではすぐにお持ちしますね~。』
( 可愛らしいお客様の照れた様子に、まだ付き合いたてなのかしら。なんて微笑ましく思っていれば、少し悩んだ後に選ばれたマグカップ。にこにこと了承すれば、店の一角に今回のプレゼント企画を宣伝しているスペースがあるのでそちらへと小走りで向かい。イベント用に広げられた机の上には大量のプレゼントが用意されており、マグカップが2個入っている箱がぴったり入る紙袋にその箱をひとつ入れるとまたもや小走りでお客様の元へ。『お待たせいたしました~。本日はありがとうございました。』と彼女に袋を手渡せばぺこ、と一礼、そのまま次はレジを通ったばかりの家族連れのお客様の方へと向かって。───「悪いお待たせ。明日には届くみたい………って、何それ。」店員が彼女の元を離れて少し、支払いとその他手続きを終えて戻ってくればベンチで大人しく座って待っていたはずの彼女の手にいつの間にか小さな紙袋があることにきょとんと。 )
わ…!
ありがとうございます、大事にします!
( 店員のお姉さんが戻ってくるのを待っている間はちょっぴりのそわそわとドキドキで正直落ち着かなかったのだけれど、いざマグカップの入った袋を渡されればぱぁあ!と夕陽色の瞳はきらきらと輝いて。大切そうに両手でそれを受け取ったあとぎゅ、と胸に抱き締めれば嬉しそうにふにゃふにゃ笑ってお姉さんにお辞儀を。それからしばらくして戻ってきた彼にキラキラした笑顔で紙袋を差し出しながら「 あのね、お店のクリスマスのキャンペーンでカップルの人にってペアマグカップくれたの!だから、……えと、お、おうちで…使ったらどうかなって…。 」とにこにこ元気に話し始めたものの段々と不安も襲ってきたのか声は最終的に小さな小さなものになり。これじゃあまるでペアだからみきの分も置いてね!とわがままを言っているようで、みきは差し出していた紙袋をそっと胸元で抱きしめては「 …お、お客さん用に…とか… 」ポソポソ付け足して。 )
へえ、いいじゃん。
マグカップなんて何個あっても困るもんじゃねーし。
( "カップル""ペア"の2つの言葉に目を丸くしたものの特に嫌がったり言及などしたりせず、差し出された袋を受け取…ろうとしたのだがそれは叶わず。段々と彼女の声は小さくなるし、最後に付け足された言葉が本心ではないことくらいはさすがに分かる。「うちに来る客っていっても友也とか男友達くらいだし、あいつらに出すのにペア物は気持ち悪いだろ。…俺のとこにあっても片方使わないままで勿体無いしお前1個持って帰れば?"カップル"用なんだろ?これ。」自分と男友達が色違いのペアカップを使う様を想像してどこかげんなりとしながら、別にペア物だからといって必ずしも同じ所に置いておかなきゃならないわけではないだろうと。お互いが1個ずつ持っていてもペアはペアだしそもそも貰ったのは"自分たち"だろ?といつもの意地悪な、しかしいつもよりは少し優しさも混ざったような笑みを浮かべてどこか不安そうな彼女の顔を覗き込んで。 )
!!
い、いいの……!?
( ホントはやだけど、でも我儘を言う勇気もなくて。けれど彼から告げられた提案にぱっと分かりやすく表情を輝かせてはきらきらと光る夕陽で彼を見上げて嬉しそうに表情を綻ばせ。置いてある家が違くとも、ペアマグカップはペアマグカップ。カップル用ならば尚更。いつもの意地悪な笑顔の中に優しさと温かさを感じればさっきまでむくむくと湧いていた不安はあっという間に散ってしまい。紙袋を持っている手を口元まで持ってきて緩んでしまう口元を隠せば「 じゃあ、マグカップおそろいしよ?─── …司くん。 」とにこにこふわふわ浮かぶような甘い声色で小さくおねだりを。 )
いいもなにもお前以外に誰が使うんだよ。
( やっぱ分かりやすい。と自分のことは棚上げに、こんな些細なことでここまで嬉しそうに顔を輝かせる彼女が可愛くて柔らかく微笑み。改めてお揃いを強請ってくる彼女の仕草や声色はとても甘く、漸く聴き慣れたはずの名前呼びにその甘さが加わればまた攻撃力は一段と高まって。どきりと胸が高鳴るのを誤魔化すように「っ、…はいはい喜んで。───じゃあ俺の用事も済んだことだしそろそろ昼飯にするか。」と、スマホで時間の確認を。お昼時にはまだ少し早いが、これくらいの時間ならどこの店もまだ混む前だろうしスムーズに昼ご飯を食べられるだろう。小さい紙袋とはいえ荷物は荷物。それ持つから、と声を掛ければ手を差し出して。 )
ふふ、はあい。
─── …ね、せんせーって普段外食するの?
( 未だゆるゆると緩んでしまう頬をそのままに、確かにちょっぴりお腹がすいてきた時間だと彼の言葉に元気よく返事をしてはそういえば大人の男の人ってこういう時どんなお店行くんだろ…と普段は女子高生らしくファーストフード多めなみきはちらりと彼を見上げて純粋な疑問を投げかけて。マグカップがふたつ入っただけの紙袋は決して重くないし全然持てるのだけれど、紳士に紙袋を持ってくれようとする彼にきゅん。とまた単純にときめいては「 ありがと!優しいとこもだいすき。 」と当然のように感謝と共に愛も投げかけて。ハイハイと流されるのを分かっていても好きだと思ったらすぐ伝えなければ気が済まないので、恥ずかしいなんて感情は二の次。伝えられなくて後悔はしたくないので、いつだってみきは自分の気持ち(恋心)に正直で。 )
んー…友達と飲みに行くくらいで滅多にしないかな、
行ってもラーメンとか。
……あ。言っとくけど、オシャレなレストランとか高級フレンチとか俺に期待すんなよ。
( 彼女のように、当たり前に自分の気持ちを素直に伝えられるのは本当に美点だと思う。大人になればなるほど建前やらしがらみが多くなって気持ちを押し殺すことの方が当たり前になってくるもの。もちろん彼女と自分の間には今はまだどうしても超えられない壁があるためこちらから何かできる訳ではないので、こうして好きなだけ気持ちをぶつけてきてくれる彼女に感謝しつつも少しだけ羨ましかったりするのも事実なのだがそれは内緒で。彼女からの質問には少し考える素振りを見せるも、普段は惣菜弁当とごく稀にする自炊ばかり。外食は確かに楽だが、1人だとどうしても大手チェーンの牛丼屋であったりラーメン屋くらいの選択肢になってしまう。仲間内で行くのはだいたい居酒屋ばかりだし…と考えたところで、このクリスマスの雰囲気にピッタリなお洒落ランチを期待されているのではと態とらしくハッとすれば、渇いた笑いを浮かべながら"大人の男性"らしからぬ格好のつかない台詞を零して。ましてや異性とこうして休日にお出かけ(デート)なんて数年ぶり。「御影は何か食いたい物とか無いの?」と、とりあえず本日買い物に付き合ってくれた彼女のリクエストが何よりも先だと首を傾げて。 )
お、男の子のご飯って感じ…。
( ファーストフードやコーヒーチェーン店、ファミレスはよくあれどあまり友人とラーメン屋さんに行くことがない女子高生にとってはなんだか新鮮で、ちょっぴりそわそわした気持ちを感じながらも彼の普段の食生活にぽそりと一言。もちろんみきもラーメンは好きなので食べたくなったら食べに行くことはよくあるのでその気持ちは充分分かるのだけれど。だがしかしハッと何かに気がついたかなような反応の後に付け足された彼の言葉にぱち!と夕陽をまん丸にしては思わず吹き出してしまいながら「 大丈夫だよー、自分で払えるレベルのお店しか行きませーん。 」とくすくす可笑しそうに笑いながらふるふると首を振って。最もそういうところは大人のお姉さんとお兄さんが行くところなのでこんなチンチクリンが言っても1人浮いてしまう未来しか見えないので。それから彼に食べたいもののリクエストを聞かれればうーん…と悩ましげに首を傾げて考えること少し。パッと浮かんだ好物はなにだか彼に言うには子供っぽいような気がしてちょっぴり恥ずかしそうに「 ……オムライス…。 」と小さな声で正直に今食べたいものを答えて。オシャレなレストランでも、高級フレンチでもない、実に庶民的なメニューしか出てこない自分の子供舌には我ながら恥ずかしくなってしまうのだけれど。 )
男の子って歳でも無いけどな。
二郎系なんて食える気しねーもん、胃もたれと胸焼けする自信ある。
( 男の子、だなんて10歳近くも歳下の女子高生に言われてしまえば何だかむず痒くて苦笑いをすれば、実際若い子たちならペロリと食べてしまえるであろう流行りのガッツリ系は少々三十路の胃にはつらいので。そういう些細なところに案外年齢差を如実に感じたりするものなのだが、彼女の手作りを食べたことのある立場から言わせてもらえば味付けや量が余りにも自分に合いすぎていたので彼女とは食の好みの相違が無いのではと思っていたりもして。仮にもデート()だというのにまだ昼代を自分で出そうとしている彼女には悪いのだがもちろん払わせるつもりなんてこちらには毛頭無い。ただそれを先に言ってしまえば変に気を遣うのではと考えているので敢えて口にはしていないが。いつかフォーマルな服装で入るような店に彼女を連れて行ってあげたい気もするのだが、それはきっとまだまだ未来の話だろう。思い付いたものの何だか恥ずかしそうな様子で出してくれた答えは庶民の舌に馴染みのあるもの。背伸びして変わったような物でなく、素直に自身の食べたい物を教えてくれた彼女に何だかホッとしてくすくすと笑いながら「ん、りょーかい。オムライス…ってことは洋食か。えーっと確か……、──ちょっと歩いた先にオムライスが美味いって評判のカフェがあるみたいだから行ってみるか。」とスマホを取り出してぽちぽち検索を。彼女のリクエストが仮に中華であれ和食であれスムーズに店が決まるよう、実は先だって昼ご飯を食べられる店をいくつかピックアップしていて。 )
ふふ!
クラスの男の子たちがそれ美味しいって言ってたよ。みきもまだ食べたことないの。
( つい最近クラスの男の子たちが口にしていたラーメンの種類が出てくれば自分もいつか食べようと目論んでいる最中らしく特に胃もたれも胸焼けも感じぬままにヘラヘラも笑って。だってまだお皿いっぱいの天ぷらも何重にも巻かれて絞られた致死量の生クリームもぺろりと食べられてしまうので。女子高生は無敵なのだ。お店を調べてくれているのだろうかというにはあまりに早すぎるそのスピードにきょとん…と思わず瞳を丸くしては「 もしかして、…調べておいてくれたの? 」と気付きながらも男を立ててスルーするような良い女精神はまだ備わってないので思ったことをそのまま問いかけて。もしかしたら彼も、今日を楽しみにしてくれてたとか。そんな想いがじわじわと湧き上がればやっぱりみきの心はきゅんきゅんとときめいて暖かくなってしまい。やっぱりこの人のこういう優しいところが好き、と何度だって彼に恋に落ちてはにこ!と満面の笑顔を浮かべて「 ありがとう、司くん! 」とだいぶ慣れてきた名前呼びと共に感謝の気持ちを素直に伝えて。 )
まじかよ……さすが男子高校生だな…。
あれ結構量もあるって聞いたけど、さすがに御影はそんな食えないんじゃないか?
( やはり若い力というのは凄まじく、自分も学生時代ならワンチャン……と考えてはみたがもはや想像するだけでお腹がいっぱいになってしまいそうな悲しい大人が年齢を実感しただけに終わり。無謀にも挑戦した同い年の友人(更に少食気味)が小盛りを食べるのすら精一杯だったといつだかに聞いたことがある。若いとはいえ女子には少し敷居が高いのではないだろうかと苦笑いをひとつ。スマホをしまい早速歩き出そうとしたところ真っ直ぐ投げかけられた疑問にぴたりと動きを止めて。そうやって思ったことをすんなりと口にしてくれるところもまた彼女の魅力なのだが、やはり少しだけ格好がつかないなと眉を下げて。「ン………まあ、…ほら、店っていざ探すとなったら案外見つけるの手間取ったりするしな。時間勿体無いだろ。」と、彼女のきらきらとした笑顔に照れ臭さを覚えては、それを誤魔化すようにはいはいと返事をしながら再び歩みを進めて。 )
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