匿名さん 2024-01-18 21:20:33 |
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鮫島旭
「……それは無いでしょう。俺は五条先輩ほど顔が良い訳でもないですし、何より─『生意気で面白くねーデカブツ』ですからね。」
(先輩の下らない問い掛けを一蹴し、かつて高専時代に散々呼ばれた不名誉な渾名を口に出す。ふと、先輩のデスクに目を遣ると─見ているだけで腹が立ちそうな程大量に溜め込まれた報告書が目に入った。何気無く席を立ち、山積みになったそれの1、2枚程を怖いもの見たさでぺらりと捲ると─具体性の欠片も無い、よく分かんないけど全部祓った、だのという簡素極まりない文言が目に入り、思わず気が遠くなる。─普段から報告書と銘打ってこんなものを提出しているのだろうか、それならば夜蛾学長が怒るのも理解できた。盛大な舌打ちと共に3分の1程を引き取ってデスクに戻り、態と見せつけるように音を立ててパソコンの隣へ置き。)
「……俺はこれだけしか手伝いませんからね。後は自分でやって下さい。」
五条悟
「うん、たまたまね。」
(彼女の前に到着すると通話を切り、そのままスマホをポケットへと仕舞う。─勿論偶々な筈も無く、職員室の辺りでソワソワしているのを棘やらパンダやらの2年生達に見つかり、恋人か、などと散々揶揄われた。授業でどう絞ってやろうか、と考えていたところで彼女の呟きが聞こえ、自分もふと昔に戻ったような気分になる。良く夜蛾に叱られ、夏油と共に廊下を走り回って逃げたものだ─とノスタルジーに浸りながら、職員室のドアを開けた。中には家入やら夜蛾やらが待っており、それぞれが声を掛けて。)
「さ、どーぞどーぞ。」
五条悟
「旭なら手伝ってくれると思ってたよ。先輩思いの後輩を持って僕は幸せだなー」
(確かに僕以上のグッドルッキングガイは居ない。一蹴され妙に納得してしまい気にならなくなった。鮫島の高専時代の渾名は確か僕が考えた気がする。そう呼んでいたら周りにもいつの間にか浸透していた。ププっと笑いながら「そんなふうに呼んでた時期もあったねー」と告げて。鮫島はやっと報告書を手伝ってくれる気になったらしく、見せ付けるようにパソコンの隣に置いた。まだそれ以上も手伝ってもらう気ではあるが、うんうんと頷き本当に思っているのか思っていないのか分からないような口振りで鮫島を褒めて。そして自身のデスクに向かえば一応報告書を作成し始める。やる気無さげに記入して何枚か作成すると数十分程しか経っていないのに「疲れたー…休憩しよ、休憩♪」と先程鮫島に貰ったケーキを取り出しており。)
胡桃沢彩莉菜
「…失礼します。高専の教師として働く事になった胡桃沢彩莉菜です。よろしくお願いします。」
(廊下を歩いていれば高専時代の事を思い出してしまう。ぼーっと眺め歩いていては職員室に到着し彼によりドアが開かれ中に入るように促される。中には見知った家入や夜蛾が声を掛けてくれた。それに笑み浮かべつつ職員室に足を踏み入れれば彼が伝えてくれているとは思うが知らない人達もいるだろうと思い一応改まり自分からも挨拶をして。そして夜蛾と家入の方に向かうと「お久しぶりです、夜蛾学長。久しぶり、硝子。」と2人に会えて嬉しく思い笑み浮かべ声を掛けて。)
鮫島旭
「………。」
(─良く言う、そんなこと思ってもいない癖に。下らない言葉を吐き出す口をギロリ、と多少強めに一睨みしておいたが、恐らく堪えてなどいないだろう。溜息混じりに報告書の山と向き合い、先輩の書いた文言を加筆修正していく。積み上がった報告書が半分程まで減ったところでふと先輩の方を見ると─一切減っているようには見受けられない報告書の山を前に休憩、などと宣い、今しがた自分が渡したケーキを箱から取り出していた。今すぐにでも殴ってやりたい衝動に駆られるが、凝り固まった眉間の皺を揉んで誤魔化す。─と、その時。ケーキの箱からひらり、と何かが落ちるのが見えた。一瞬報告書か、と思ったが、汚れないようビニールに包まれたそれは淡いピンク色をした可愛らしい封筒で。)
「……何か落ちましたよ、五条先輩。」
五条悟
「硝子と胡桃沢とかさー、十何年ぶりじゃない?夜蛾センもだけど。」
(一応は普段通りの調子で、家入と夜蛾に声を掛ける。家入は「ああ、そうだな」と素っ気無く答えつつ、濃いクマの目立つ目で彼女に微笑んで「久しぶり。…それにしても変わんないな、彩莉菜は」と彼女の服装やら顔付きやらを見回してそう呟いた。あの頃の渾名で呼ばれた夜蛾は「学長と呼べ」と睨んでくるが、素知らぬ顔をしていれば溜息と共に顔が逸らされる。少しの間渋い表情をしていたが、「…まあ、何はともあれ…久しぶりだな、胡桃沢」普段の顰めっ面よりは多少穏やかな表情を浮かべて声を掛け。)
五条悟
「……これ、ケーキの箱に入ってたんだけど。」
(報告書は飽きてきたため適当に一言ずつしか書いていない報告書をデスクの上に置けば鮫島から貰ったケーキの箱を開け、食べようとする。すると、何か落ちたと鮫島から言われ下を見てはビニールに包まれたピンク色の封筒で。やはり僕の読みは的中していたか。これはあきらかラブレターであり。封筒を手に取ればずいっと鮫島の前に突き付ける。そして「どう見てもラブレターでしょ。やっぱり僕の言う通り旭に気があるんだよ。」と告げながら居ても立ってもいられず鮫島に許可を得ず、勝手にビニールから取り出し封筒を開いて中の紙を取り出し開く。中には先程の丸っこい字で鮫島への想いが綴られているようで。)
胡桃沢彩莉菜
「ほんとそのくらいになるよね。そうかな?硝子も変わってないよ。…少しお疲れ様みたいだけど。」
(卒業してから会っていなかった家入と夜蛾に会えて嬉しくなる。家入はあれから大人っぽくなったようだがあの頃の面影が残っている。しかし目の下の濃いクマが目立ち忙しくしている事がよく分かる。少しでも負担を減らせてあげられれば良いな。夜蛾も変わっていないようで少し皺が増えたくらいだろうか。彼の言葉に渋い顔を浮かべていたが此方には少し穏やかな表情で声を掛けてくれた。その様子に笑み浮かべ「お元気そうで良かったです。」と伝える。ここで働く事になるが、彼には補佐をして貰いたいと言われていたがその認識で間違い無いのだろうか。流石に担任はまだ荷が重い気がした。「あの…私は五条くんの補佐という認識で良いんでしょうか?」と夜蛾に訊ねる。)
鮫島旭
「………まあ、もう慣れましたが…五条先輩、デリカシーって言葉知らないんですか?」
(ずい、と目前に突き付けられた可愛らしい封筒への感想を述べる間も無く─先輩の手によってその封筒はビニールから取り出され、開封されてしまった。心底呆れたような溜息を吐きつつ、先輩からその手紙をひょいともぎ取る。そこに綴られているのは「以前の任務で守ってもらった時の背中が頼もしくて」やら「笑顔が素敵で惹かれました」やら─その文字からも彼女の真摯な想いが伝わってくる内容だった。だが、正直なところ─こういった感情を他人から向けられるのは苦手だ。さてどうしたものか、と思案していた時─先輩の報告書が目に入り、その余りの適当さに苛立ちが限界を超える。デスクの上に積まれている報告書を全て回収し、怒りに任せて口を開き。)
「………もういいです、俺がやります。先輩に任せてたら、幾ら時間があっても足りません。……その手紙、後で返事をするのでデスクに置いておいてください。」
五条悟
「そーいうこと!これから宜しくねー!」
(家入は彼女の言葉に乾いた笑い声を上げ、「はは、そうか?まあ、最近はあんまり寝てないな」と随分あっけらかんとした口振りでそう答える。彼女に問われた夜蛾は頷き、「五条からはそう聞いているが…」と答えて五条に視線を投げた。その視線に応えるように軽い調子でぐっ、と親指を立て、へらへらと笑ってみせる。その様子を見た家入は揶揄うようにふ、と笑い、煙草に火を点けて─窓をガラリと開け、煙を外へ向けて吐き出した。)
五条悟
「いやぁ、悪いねー。旭はやっぱり優しいなー。」
(鮫島の言葉など耳に入っておらず、まじまじとラブレターの内容を見ていてはもぎ取られてしまった。じっくりと見たく手紙を取り返したところ、報告書を全て引き受けてくれる気になったようで。その言葉を待っていたと言わんばかりに口元に笑み浮かべまたも本当に思っているのか思っていないのか分からないような口振りで褒めて。そしてデスクに置いておくように言われたラブレターを眺めながら鮫島の近くにデスクチェア毎移動してきては「何て返事する気?」と問い掛ける。そして何もする事がない為かずっと傍に貼り付き「ねぇ、何て返事するの?」、「ねぇ」、「おーい、旭くーん」などとちょっかいを掛けていて。)
胡桃沢彩莉菜
「分かった、此方こそこれからよろしくね。」
(家入はいつもの事なのかあっけらかんと述べていた。しかし少しでも負担を減らせたらと「私も役に立てる事があったら手伝うから言ってね。」と伝えて。夜蛾に問い掛けると認識は間違っていないようで彼からそう聞いたと言う。所謂副担任という立場になるのだろう。笑っている彼に此方も笑み浮かべ返事をする。_と、その時廊下から声が聞こえるのに気付いて。どうやら生徒達が居る様子で。私のことを聞き付けたのだろうか?其方に目線を向け首を傾げながら「…生徒の子達かな…?」と呟いて。)
鮫島旭
「………仕事の邪魔ですから、せめて黙っててもらえますか。」
(心の籠もっていない褒め言葉も、横で揶揄う声も、暫くは無視を決め込んでいたのだが─余りのしつこさに─ブチン、と脳内で何かの糸が切れた音がした。可愛い生徒達には決して聞かせられない、地を這うような声で低く呟いた後、憎たらしい先輩の両頬を片手で潰さんばかりに掴んで睨み付ける。そのまま腕力だけでデスクチェアごと先輩を突き飛ばし、パソコンのディスプレイに視線を戻した。起動したままだったワードで適当極まりない報告書を淡々と編集し、少なくとも見られるものへと昇華していく。積み上がっていた山が半分程まで減ったところで、疲れた目を休めるように片腕で目を覆い─デスクチェアに背中を預けて。)
五条悟
「あ、棘に真希ー!どしたの?」
(彼女の声と目線を追い、職員室の外に目線を遣ると─こちらに気付いたらしく手をひらひらと振る狗巻棘と、その隣に居る禪院真希の姿が目に入った。パンダの姿はない。いつもの調子で呼び掛ければ二人は職員室の中へ入り、迷うこと無く真っ直ぐ彼女に近寄って─狗巻は「しゃけ、いくら…明太子?」と不思議そうに首を傾げ、真希は狗巻の肩に手を置きつつ、「新しいセンセーか?」とあまり丁寧とは言えない口調で彼女に問い掛けて。)
五条悟
「ごめんごめん、黙ってまーす。」
(傍でちょっかいを掛けていては、怒られてしまった。頬を掴まれデスクチェア毎隅の方まで飛ばされてしまった。流石にちょっかいかけ過ぎたか。大いに反省するべきだが、少しだけ反省をして。あまり反省していない様子で返事を返す。どうせ暇だし飲み物でも買ってきてやるか。席を立つと職員室を出る。自動販売機に向かうと自身にはミルクココアを購入し、鮫島にはブラックコーヒーを購入して。職員室に戻れば、疲れた目を休ませている鮫島に気付けば音もなく傍に忍び寄り額にヒヤリとブラックコーヒーの缶を当て上から顔を覗かせて。)
「お疲れー、これ飲んで休憩したら?」
胡桃沢彩莉菜
「あ…うん、そうだよ。五条先生のクラスの副担任をする事になった胡桃沢彩莉菜です。よろしくね。」
(生徒達の方に視線を向けていると彼も気付いたようで声を掛けている。声を掛けられ入ってきた2人の生徒は此方に近寄って来て男の子は何やらおにぎりの具を告げ首を傾げている。女の子は丁寧な言葉遣いとは言えないが問い掛けてきた。術式の影響だろうかとおにぎりの具に気を取られていたが女の子の問いにハッとして頷き、笑み浮かべては軽く頭を下げ2人に自己紹介をして。)
鮫島旭
「…………明日は台風ですかね。…まあ、どうも。」
(少しの間静かになった職員室でぼんやり目を休めていたが─ふと額に当てられたコーヒー缶の冷たさに一瞬で目が冴えた。目を覆っていた腕をゆっくり降ろし、腕を降ろすついでにその缶を受け取りながらボソリと呟く。デスクチェアから身を起こして缶のプルタブを引き開け、中身を喉に流し込んだ。その後は頬をバチン、と張ってから報告書の加筆修正を再開し、十数分後─漸く全ての報告書を纏め終わる。疲れ切った溜息を吐き出し、大きく伸びをしながら特に何もしていない先輩の方を振り返って。)
「………久しぶりに組手でもしますか、本気で。…まあ、今死ぬ程機嫌悪いので…捻り潰しますけどね。」
五条悟
「こっちは棘でー、こっちは真希!どっちも2年生だよ。棘は呪言師だからねー、おにぎりの具でしか喋んないの。」
(適当に二人を彼女に紹介すると、その言葉に大きく頷いた狗巻は「しゃけしゃけ、すじこ…高菜、明太子!」と笑顔で元気良く手を振ってみせ、真希は「…禪院真希。名字は嫌いだからよ、呼ぶなら名前で呼べ」とぶっきらぼうに吐き捨てる。─二人は本当に彼女のことが気になって来ただけのようで、くるりと踵を返すとグラウンドで待つパンダの方へと向かっていって。)
五条悟
「良いよ。久々だし腕が鳴るねぇ。…僕に勝てるかな?」
(素直にお礼だけ言ってくれれば良いものを一言余計な言葉を言う鮫島。しかし飲んだことで休む事は出来たようで。報告書を再開させたのを見てはまた邪魔をしたら怒られるため自身のデスクに足を掛けスマホを片手にこれからの予定について考える。出張が控えていたり上層部に報告をしたりとやる事は山積みだ。デスクチェアに頭を預け天井を仰いでいては鮫島から声を掛けられる。鮫島と本気で組手をするなんて何時ぶりだろう。楽しめそうなのには違いない。デスクチェアから立ち上がりニヤリと笑み浮かべ来いというような仕草をして。)
胡桃沢彩莉菜
「呪言師…成程。よろしくね、棘くんに真希ちゃん。」
(彼からの自己紹介を聞き、おにぎりの具しか言わない男の子_狗巻の謎が解けた。2人からの自己紹介にも笑み浮かべ頷いて2人に返事を返す。2人は話を終えると職員室を去っていった。やはり私の事を聞きつけていたんだな。グラウンドに向かい歩いていく狗巻と真希の姿を見送って。_それから関係者に挨拶を済ませた為、帰る事にした。高専の出入口まで到着しては一緒に挨拶周りを着いてきてくれた彼にお礼を伝えて。)
「挨拶周り一緒に周ってくれてありがとう。」
鮫島旭
「………むしろ、五条先輩が俺に組手で勝てたことってありましたっけ?…勝てない喧嘩は売らない方が、身の為ですよ。」
(拳と首の骨をパキパキと軽く鳴らし、デスクワークで少々凝り固まった肩の骨をぐるぐると回して解し─公然と今から振るう暴力の準備運動をしつつ、先輩にそう声を掛けた。─高専時代、生まれ持った身体能力のお陰で体術だけは誰にも─五条先輩や夏油先輩にさえ、一度も負けたことがなかった。それは今も変わらない。だが、流石に職員室で本気の組手をおっ始める訳にはいかないので─生徒達の居ないグラウンドに移動し、即興のスコアボードを爪先で砂に描く。時間の問題的にも5本程で良いだろう、と目星を付けた後、余裕綽々に意地悪く笑ってみせて。)
「……そうですね、俺から1本でも取れたら…今日は五条先輩の言う事、何でも聞いてあげますよ。」
五条悟
「ううん。今日は暇だったしねー、気にしないで!」
(彼女の言葉に軽く返しつつ、きっとこのまま帰るのであろう背中を見つめて─少し躊躇う。まだ一緒に居たい、でも今日は彼女だって、前の職場の引き継ぎやら何やらで疲れているだろうし─無理はさせたくない。そんな風に一人で悶々と自問自答を繰り返している内、彼女の足が一歩高専を出るのが見えて─考えるより先に、彼女の服の裾を掴んでいた。もうどうにでもなれ、と思考を全て放棄し、いつものように笑ってみせて。)
「ね、今日さ…暇ならご飯食べに行こうよ。」
五条悟
「それくらい息巻いてないと旭とやるのは骨が折れるからね。」
(高専時代、1度も鮫島に勝てたことは無いが鮫島と組手するのは楽しかった。何より密着出来るのが1番の理由である。無下限を使えば勝てるが組手する以前に触れられず終わってしまうため無下限を使う訳にはいかない。無下限無しで戦えば鮫島の身体能力の方が上であり負けてしまっていた。グラウンドに移動すると鮫島は僕が1本取れたら何でも言うことを聞くと言った。面白い、俄然やる気が出てきた。この瞳を使えば鮫島の動きを最速で読み取る事も出来る。そう1本でも取れそうな道筋を見つければ口元に笑みを浮かべ目隠しを下ろしその瞳で鮫島を見据えて。)
「へー…それなら僕本気出しちゃうよ?」
胡桃沢彩莉菜
「え…ご飯…?」
(今日は時間があったようで気にしないでと言う彼に頷き笑みを返して。そろそろ帰ろうと高専を出ようと踏み出したところ、何かに引っ張られている感覚があり振り向くと彼が服の裾を掴んでいた。どうしたのだろうと彼を見上げればいつもの笑みでご飯の誘いをされた。誘われると思っていなくて目を瞬かせる。これから特に予定も無く自宅に帰る予定だったため断る理由もなく。少し考える素振りをした後、こくりと首を縦に振る。)
「…うん、特に予定も無いし…良いよ。」
鮫島旭
「………望むところです。その余裕そうなツラ、グチャグチャにしてやりますよ。」
(先輩が目隠しを外し、露わになった六眼にそこまでして勝ちたいのか、と呆れて一瞬眉を顰めたものの─直ぐに意地悪い笑みが戻り、全身の毛がブワリと逆立つような感覚が走る。─若干だが、昔の─"狂犬"と呼ばれていた頃、ヤンキー時代のテンションに戻っているらしい。腕には幾筋もの血管がボコボコと浮き出し、普段ならば感じることがない程異常に感情が高揚した。ザリ、と音を鳴らして砂を踏み込んだのが合図─数歩で距離を詰め、先輩の顎下目掛けて掌底を放つ。だがこれを避けられることは想定内、もう片方の手で脳震盪狙いのアッパーを放ち、足元は向脛を狙う爪先と足払いを掛ける構え─つまり、本気で"殺り"に行くスタイルで飛び掛かり、先輩をギラついた目で見据えて。)
五条悟
「ホント?やったー!じゃ、行くよー。」
(─この時の自分は、いつも通りの声が出せていただろうか─と、少し心配になる。表面上は全く普段と変わらない態度のまま、持つ場所を彼女の服の裾から彼女の腕へと変更した。そのまま軽く腕を引き、高専の外へと出る。近くでタクシーを捕まえ、レストランの名前を告げて座席に腰を下ろした。少しの間は黙って車に揺られていたが─ふと、隣に座る彼女の横顔をじっと見つめて。)
五条悟
「見えるよ、旭の動き。丸分かりー。これなら余裕かなぁ。」
(砂を踏み込む音を皮切りに距離を詰められ掌底を放たれるがが、動きを読み交わす。すぐにアッパーと足払いをする構えが見えた。その様に鮫島が本気である事が見るからに分かった。これはやられたら一溜りもない。どんどん仕掛けられるが見えるため避けられはする。だが、防戦一方で此方から仕掛けられない。隙が見えないのは流石鮫島だ。このまま鮫島の体力を削るのも有りだが、此方の体力も保たなくなる。隙を作れないだろうか。余裕など全くない筈なのに、煽るような言葉を告げていて。)
胡桃沢彩莉菜
「…?…どうかした…?」
(喜んでいる彼は少し何時もより声色が違う気がしたが気の所為だろうか。しかし言動はいつも通りのようで腕を引かれては高専の外に出る。タクシーを捕まえてくれ先に乗り腰を下ろすと、彼も行き先を伝え腰を下ろした。やっぱりいつも通りなのかな。目線を彼から、動き出した車窓から見える景色に移す。何故誘ってくれたのだろう。再会してからの彼はあの出来事が起こる前の彼のようだ。卒業間際は避けられてばかりだったのに。_と、ふと視線を感じるのに気付いて。彼の方を向けばじっと此方を見ている。不思議に思えば首を傾げて。)
鮫島旭
「……見えた所で、防げなきゃ意味無いですけどね。…ほら、これみたいに。」
(自分を煽る言葉に視線だけを持ち上げ、ギロリと射殺さんばかりに先輩を睨んで笑った。蹴り出していた爪先が向脛に命中し、躱された掌底の掌を即座に握り込んで拳に変え─左腕上腕骨の接合部を強かに殴り付ける。─これで一時的に先輩の左腕は痺れ、使い物にならない。防御体勢の崩れた隙を狙い、足を払って地面に素早く引き倒し、両肩を膝で抑え込むマウントポジションを取ってその白い首に手を掛けた。─こうなると必然的に先輩の腹が立つ程美しい六眼と、自分の濃い茶色をした瞳が真っ直ぐに睨み合う形となる。あれ程の人外じみた動きをしておいて息切れ一つ見られない余裕さのまま─首から手を離してスコアボードに◯を書き込み、膝に付いた砂を軽く払って立ち上がり。)
「……まずは俺が1本。まさか、こんなのでバテたとか言いませんよね?……次行きますよ。」
五条悟
「んー?なんでもないよ。あ、それより聞いてよ!この前悠仁達がさあ、」
(視線に気付いた彼女が自分の方へ顔を向けると、ゆるゆると首を横に振って曖昧に笑った。─相変わらず可愛いと思って、などと言える訳も無く、誤魔化すように自分の生徒達の話へと話題を無理矢理転換する。虎杖を訓練と称してB級映画漬けにしたこと、釘崎のイカレっぷりを確認したあの初めての任務のこと─口を開けば次々に飛び出してくる生徒達の話題に夢中になっている内、タクシーは店の前で止まっていて。)
五条悟
「…まさか、まだまだいけるよ。」
(見切れていたのに鮫島の速さに負け出遅れた。左腕上腕骨の接合部を殴られ左腕に電流が走る。左腕が痺れて動かない。それにより防御が崩れたのを逃される訳もなく足を払い引き倒された。何も出来ず真っ直ぐに鮫島を睨み付ける。あれ程の動きをしていたのに息切れも見られず余裕である。ムカつく。睨みつけたままでいては首から手を離された。余裕はあまり無かったがこの瞳を使えば鮫島の動きは見えたし今までよりは戦えた。絶対1本取って言うこと聞かせてやる。平静を装いながら立ち上がり痺れが無くなった左腕をぐるぐると動かして鮫島を見詰めて。)
胡桃沢彩莉菜
「そんな事があったんだ?有望な1年生みたいだね。」
(見詰められているのに気付き訊ねると何でもないと答える彼。何かありそうな気がしたが追求する間もなく生徒達の話をされる。生徒達は高専の授業や生活を楽しんでいるようで。彼も楽しそうに話している。本当に生徒達が可愛いんだな。時折相槌を打ちながら笑み浮かべ彼の話を聞いていては目的地である店に到着した。タクシーから降りるとそこは夜景の綺麗な事で有名な高級レストランで。こういう店には縁が無いと思っていたがまさか私が…。やはり彼は御三家の当主なんだなと見せ付けられ目を瞬かせながらレストランを見上げて。)
鮫島旭
「……ま、当然ですよね。それくらいじゃないと、俺もやり甲斐ありませんし。」
(先輩の視線を嘲るようにあしらい、再び─今度は円を描くように爪先を砂の上でザリ、と滑らせる。地面に両手を付き、先輩の顎先目掛けて長い脚を回すように蹴り出した。─実践練習も兼ね、ファイトスタイルを先程の拳主体のものから脚技主体のものへと変更する。練習相手として─目前の先輩ほど優秀な相手も他に居ないだろう。腕を払われないよう地面を両手で強く押し、身体が一瞬ふわりと宙を舞った。─その刹那、五条の目に映る表情は─酷く楽しげで、心の底からこの戦闘を楽しんでいるように見える。脚を掴まれては堪ったものでは無いが─最悪片脚は犠牲にする覚悟で眼の前の首に脚を絡め、もう片方はいつでも解けるような状態で地面へ引き倒そうとして。)
五条悟
「そうそう、皆すっごく可愛いんだよ!…あ、そういえばこの前棘とさ、」
(目を瞬かせてレストランの外装を見上げる彼女の肩をそれとなく抱き、店内へと入る。丁度窓際の席が空いていたのでそこへ座り、テーブルの下で脚を組みながらメニュー表を開いた。─会話を切らすと普段通りで居られない気がして、取り留めの無い話をひたすらに続ける。狗巻と共に生徒のスカートを履いてふざけた話、真希と下らないことで言い争いになった話─高級レストランの内装にはそぐわないそんな話をしつつ、テーブルに頬杖をついて。)
五条悟
「僕は最強だからね。こんなの軽いものだよ。」
(じっと見詰めていては鮫島が動き出した。先程のスタイルとは違い今度は足技主体のものになった。顎先目掛けて脚が来るのを見ては避ける。身体が宙を舞った瞬間に見えた鮫島の表情は楽しんでいるようで。楽しんでいるようで何よりだが僕としては鮫島から1本取りたい。首に脚を絡めては引き倒そうとする様子に首に脚が触れる直前に瞬間移動し、「隙有りー」と鮫島の脚を掴んで体勢を崩そうとして。)
胡桃沢彩莉菜
「五条くんたらそんな事したの?…ほんと学生の時と変わらないね。」
(目を瞬かせていては肩を抱かれ店内に促される。店内に入ると店内は豪華で緊張してしまう。窓際の席に座りメニューを眺める。その間も彼は普段の日常の生徒達との一コマを話してくれる。彼も生徒達と楽しんでいるようでまるで彼も生徒のようだ。話を聞く感じ彼は一緒に過ごしていたあの時と変わっていないのが分かり嬉しくなる。店にはそぐわない話であるがそのお陰でいつの間にか緊張も解れクスッと笑みを零して。)
鮫島旭
「………甘いんですよ、五条先輩。」
(即座に瞳に負担を掛け、一時的に動体視力を向上させる。先輩の移動ルートを目線で追っては、少々無茶な動きになるが─身体の方向を腕力だけで転換した。身体を反転させた拍子に関節が一瞬─ゴキリ、と嫌な音を立てたが、気にしている間など無い。掴まれた脚を軸にぐるりと空中で一回転し、先輩の肩の上に跨る形になった。掴まれているのを利用し、そのまま左右の頸動脈を両脚の膝頭で挟み込んでギリギリと絞め上げる。─本来ならば更に目潰しも喰らわせているところだが、今は殺し合いではなく組手だ。常人なら視界が霞んでくる辺りで解放し、無茶な動きで外れかけている関節を元の位置へ戻しながらふん、と鼻で笑って。)
「……そろそろ時間も遅いですし、後1本にしましょうか。……後輩に馬鹿にされたくなかったら、頑張ってくださいね?『センパイ』。」
五条悟
「いやー、あの時の野薔薇のパンチは痛かったね。」
(学生時代と変わらない、と自分のことを笑う彼女に少しだけ安心し、テーブルから戻した両腕を組んでうんうんと頷く。あの時の釘崎の鬼気迫る形相を思い出しながら肩を竦めたところで─漸くメニュー表に目線が落ちた。少しの間首を傾げて悩んだ後、適当に選んでから彼女の方にメニュー表を手渡して。)
五条悟
「…いいよ。僕の本気見せてあげよう。」
(脚を掴み体勢を崩そうとしたが、脚を掴んでいるのを利用し肩の上に跨がれ頸動脈を締め上げられる。視界が少し霞んできたかと思うところで解放された。時間的にあと1本だと言われ僕が1本取れないと思っているのか鼻で笑われる。煽られてはこのまま負ける訳にもいかない。それに鮫島に言うことを聞かせたい。こうなれば無下限を本格的に使っても良いだろう。今までは動きを見るのと移動するのに少しと必要最低限にしていたが、それでもここまで戦えるのなら本格的に使っても問題無いだろう。六眼をギラつかせ見詰めて。)
胡桃沢彩莉菜
「それはそんな事されたら誰だって怒るよ。」
(私が離れていた間も彼は相変わらずだったんだな。変わっていない彼に嬉しく思う反面、寂しく思ってはくれなかったのかなと思う気持ちもあった。私は寂しかった。だから彼への想いには蓋をした。またこの想いが溢れないように閉じておかないといけない。複雑な気持ちは隠し笑みを浮かべ返事をする。メニュー表を渡され受け取り思案するも、高級なものばかりで金額も高く圧倒されてしまう。これくらいなら支払えそうだと本日のオススメと書かれたものにする事にしてメニューを指差す。)
「…私はこれにしようかな。」
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