偶然は必然か（〆）

怒るはると君もレアで面白いけど、提案しておいて裏切る真似はしねえって。……ホントに冷た。( 触れた彼の指先を器用に手繰り寄せ、所謂恋人繋ぎにすれば至極満足気に口角を上げ。一歩踏み出す前に相手の表情を拝もうと、好奇心と緊張感に揺れる心情のまま隣人を窺い )

なっ…、……！ッ見過ぎ、───ふぅ…、あんま俺で遊ばないでくださいよ。（ 周囲の視線も忘れるほど繋がれた手を凝視し、恐る恐る握り返すと僅かに頬を緩ませ。不意に視線が交わると、更に赤くなる顔を隠すように反対側に顔を向けて。目を瞑って息を吐き、気持ちを落ち着かせると剥れた表情で呟いて ）

遊んでないって。幾らきみの反応が良いからって、…なあ？──ほら、ずっと此処じゃあ冷えるだろ。行こう。( 不躾だとでも言いたげな台詞も、舌に乗せれば軽やかに機嫌の良さを反映した声調で。紅潮する横顔に意識されていると自負すれば、擽ったい心地になると同時に揶揄が頭を見せるが懸命に押し殺して。ゆったりと一歩踏み出し、繋いだ手を緩々と揺らせば歩を進めるように促し )

…どうせ俺は色々不慣れですよーだ。アキさんのせいで寒さもどっかいっちゃいましたよ。（ 促されるまま歩き出すと邪魔にはならない程度の近い距離で歩きながら不貞腐れたように、指先はまだ冷えてるものの気分的には全身暑いぐらいだと話して ）

そんなにいじらしい言動するのに恋愛に不慣れって、世間様は見る目がないな。っはは、そりゃあ良かった。きみが凍えずに済む。( 繋いだ手に伝う仄かな熱に心拍数が上昇する感覚、年甲斐もなく胸が苦しさを訴えては小さく息を落とし。不貞腐れた様子の彼に対し、真剣さを帯びた口調で文句を垂れては次に言葉の応酬を ) 着いた。此処から数駅程だから大して距離はないけど───今回のデート、俺の提案通りで良かった？まだ変更も効くけど。( 待ち合わせ場所から一番近いバス停に到着するなり隣を歩む彼を窺い見て )

…っふ、…あははっ、それは流石に大袈裟すぎ。俺よりいい人は沢山いるし───、それならアキさんがフリーってことの方が驚きですね。…まぁ、ほんとにフリーかは怪しいところですけど。（ 真剣に紡がれる言葉にむず痒さを感じて思わず笑ってしまい。少し調子を取り戻すと、小首を傾げては悪戯っぽい微笑を浮かべ ）…──変更なんて希望しませんよ、さっき言ったじゃないですか。楽しみにしてたんですよ、今日のその……デート、（ 単語を内心で呟き、視線を合わせると口籠らせて ）

相手が居るのにきみと会う約束を重ねる程器用じゃあないぞ。( 心外だと否定の旨を伝えるが快活な笑みを添えたばかりにマイルドな雰囲気を纏った発話となり。悪戯っぽい表情に小さく音を立てた気がする心臓には気付かない素振りをして ) ───っはは、良かった。水族館なら室内だからきっと冷えやしないな。……嬉しいな。俺も楽しみにしてた、って結構本音なんだけど伝わってる？( 改めて復唱された単語に満足気に頷いて、硝子玉のように綺麗な瞳を覗き込んでは落ち着いた声音で訊ね )

…うん、まあ…。あ、どうせ嘘だろーなとか思ってるわけじゃないですよ。───水族館とか結構久しぶりかも。ペンギンとか可愛くて、ずっと見てられんすよねぇ。…あ、来ましたね。（ 不誠実な人ではないと感じてはいて。心の内まで見透かされてしまいそうな深く澄んだ瞳に気後れすると曖昧に頷き。弁明を付け足しながらも気まずさから思考を水族館へと移すと微笑を浮かべ。バスが到着すると流石に繋いでる手を離して ）

はると君、いつもお世話になってます。物語が始まってまだ時間は経ってないけど、きみに対して絡みづらさを感じているんだ。返事を返せない上に不誠実だけど、今回をもってお相手を解消させて貰いたい。期待に応え切れられず申し訳ないです。きみに良い縁があることを祈っています。

こちらこそお世話になっております。
ちゃんと言葉をくれてありがとう。役不足でごめんね。
短い間でしたがほんとーにありがとうございました。