偶然は必然か（〆）

はると君はモテそうだけど、……じゃあ互いに物好きだって事で。

祈らずとも俺はきみの傍に居るのにな。んな信用ねえ感じ？お兄さん泣いちゃう。

はると君なら悪用しねえってのは分かってるけどね。お兄さん意外と慎重なのよ。絡み文に関してはおっけー。任せとけ。拙いと思うけど俺から投下しとく。一緒に出掛けるていで進行しちまったけど、絡み辛かったら遠慮なく声を掛けて欲しい。ってのと、疚しい事はしないのは前提だけど、上げ進行と下げ進行何方にしようか？


───、( 頬を撫でる風こそ冷たいが、急ぎ足を止める事はなく。向かうは想いを寄せる彼との待ち合わせ場所であり、少しばかりの緊張感と高揚を纏い若干早めに辿り着いて )

俺が？ないない。29年間モテたことなんかないよ。…言ってて悲しいなぁもう。

あ、いや。アキさんに信用がないっていうより自分に自信がないってだけだから、そんな気にしないで。

絡み文ありがと。なんにも不都合ないからこのまま進めるね。
あと進行は下げにしようかな、たてるとこ間違えた気がする…。
下げにし忘れることもあるだろうけどそれはそれで気にしない方向でお願い。
上の絡みも切っちゃって大丈夫だからね。これからもよろしく。


──…お待たせ、しました。（ これから会う人が気さくな人だと知っていても緊張から自然と足早になり。数回しか会っていなくても間違いようのない存在感がある彼がすでにいることに気がつくと、寒くてポケットに突っ込んでいた手を出してから駆け寄り声を掛けて ）

！──いや、大して待ってないから大丈夫。それよりも、っはは…今日寒ぃもんな。( 春風が舞い込んだように柔らかな声主は待ち人であり、そちらに視線を流し意図せずとも表情が綻んで。冷え込んだ所為か鼻先や耳が仄かに色付いて見えた気がすれば、触れこそはせずとも綽然と笑い掛け )

ッ──、…いやぁ外出たら思った以上に寒くてびっくり、ってやつですね。ちょっと浮かれてて、寒さ対策とか抜け落ちてました。（ 紳士的な対応かつ向けられる笑顔に眩しさから息を飲んで。今自分に向けられているという僅かにある優越感からは目を逸らし、息を整えると失態への気恥ずかしさから苦笑いを浮かべて ）

今日は一段と冷えるらしい。…はると君は俺と逢うのに浮かれててくれたんだ？( 天気こそ見事な快晴、但し時折髪を揺らすのは冷たい風であり。今朝の天気予報で把握した温度は一桁に近く、早めに彼を室内へ導きたい気持ちと慢心しそうになる一言に弛む心持ちがせめぎ合い )

通りで…晴れってとこしか見てなかったや。ん、──まぁ、…楽しみにはしてました。って、改めて言うとなんか恥ずいっすね。んなことより、早く行きましょ。（ 昼間でこの風の冷たさ、夜の寒さを思うと少し気落ちするも相手からの質問に口籠もり。隠す理由もないので正直に肯定するも肩を竦めながら笑い、顔だけ熱くなるのを感じつつ話題を逸らして ）

そうだな。…はると君。──手、繋ぐ？
( 心を満たすに充分な一言に思わず破顔しかけるも、職場で培ったスマートな大人を装って返事をし。ところが薄らと紅を差した彼の表情を視界端に捉えてしまえば、更に欲張ってしまうのが自身の性。じわりと疼く感覚に先導されるがまま、試しに片手を差し出して )

…え！？ッあ、すみませ（ 脳内で言葉を噛み砕き理解すると今までで一番大きな声をあげて驚きを見せると手で口を塞ぎ ）もぉぉアキさんがびっくりさせるから大きな声出た…。……俺今めっちゃ手冷たいし、あんま触りたくないと思いますよ…？（ 照れくささから視線を逸らして態とらしく脱力して見せるも、冷えた自分の手を握りしめながら差し出されている手に視線を向けた後窺うように視線を向けて ）

──っ、くく…。はー……はると君のそんな大声初めて聞いたな。俺は気にしないけど、もしかして嫌だった？ ( 周囲一帯に響き渡る大音声に一驚するも、じわりと込み上げる感情の赴くまま一頻り笑い。次第に落ち着けば深く息を吐き、手は依然差し出したままに窺う視線に柔らかく眦を解して問うて )

…笑いすぎです、俺だってあんな声出たの久々なんですから。…──嫌、ではないんですけど……忠告したし、速攻で離したりしたら怒りますよ？（ 落ち着いた様子で気遣ってくれる相手のスマートさに惹かれはするものの、ひとしきり笑っていたことを無しにすることはできずに不満げな表情を向け。色々な要因で必要以上に目立っているせいで、周囲からの視線に戸惑うも、いっそ今だけはという開き直りの精神で、手のひらに指先で触れて ）

怒るはると君もレアで面白いけど、提案しておいて裏切る真似はしねえって。……ホントに冷た。( 触れた彼の指先を器用に手繰り寄せ、所謂恋人繋ぎにすれば至極満足気に口角を上げ。一歩踏み出す前に相手の表情を拝もうと、好奇心と緊張感に揺れる心情のまま隣人を窺い )

なっ…、……！ッ見過ぎ、───ふぅ…、あんま俺で遊ばないでくださいよ。（ 周囲の視線も忘れるほど繋がれた手を凝視し、恐る恐る握り返すと僅かに頬を緩ませ。不意に視線が交わると、更に赤くなる顔を隠すように反対側に顔を向けて。目を瞑って息を吐き、気持ちを落ち着かせると剥れた表情で呟いて ）

遊んでないって。幾らきみの反応が良いからって、…なあ？──ほら、ずっと此処じゃあ冷えるだろ。行こう。( 不躾だとでも言いたげな台詞も、舌に乗せれば軽やかに機嫌の良さを反映した声調で。紅潮する横顔に意識されていると自負すれば、擽ったい心地になると同時に揶揄が頭を見せるが懸命に押し殺して。ゆったりと一歩踏み出し、繋いだ手を緩々と揺らせば歩を進めるように促し )

…どうせ俺は色々不慣れですよーだ。アキさんのせいで寒さもどっかいっちゃいましたよ。（ 促されるまま歩き出すと邪魔にはならない程度の近い距離で歩きながら不貞腐れたように、指先はまだ冷えてるものの気分的には全身暑いぐらいだと話して ）

そんなにいじらしい言動するのに恋愛に不慣れって、世間様は見る目がないな。っはは、そりゃあ良かった。きみが凍えずに済む。( 繋いだ手に伝う仄かな熱に心拍数が上昇する感覚、年甲斐もなく胸が苦しさを訴えては小さく息を落とし。不貞腐れた様子の彼に対し、真剣さを帯びた口調で文句を垂れては次に言葉の応酬を ) 着いた。此処から数駅程だから大して距離はないけど───今回のデート、俺の提案通りで良かった？まだ変更も効くけど。( 待ち合わせ場所から一番近いバス停に到着するなり隣を歩む彼を窺い見て )

…っふ、…あははっ、それは流石に大袈裟すぎ。俺よりいい人は沢山いるし───、それならアキさんがフリーってことの方が驚きですね。…まぁ、ほんとにフリーかは怪しいところですけど。（ 真剣に紡がれる言葉にむず痒さを感じて思わず笑ってしまい。少し調子を取り戻すと、小首を傾げては悪戯っぽい微笑を浮かべ ）…──変更なんて希望しませんよ、さっき言ったじゃないですか。楽しみにしてたんですよ、今日のその……デート、（ 単語を内心で呟き、視線を合わせると口籠らせて ）

相手が居るのにきみと会う約束を重ねる程器用じゃあないぞ。( 心外だと否定の旨を伝えるが快活な笑みを添えたばかりにマイルドな雰囲気を纏った発話となり。悪戯っぽい表情に小さく音を立てた気がする心臓には気付かない素振りをして ) ───っはは、良かった。水族館なら室内だからきっと冷えやしないな。……嬉しいな。俺も楽しみにしてた、って結構本音なんだけど伝わってる？( 改めて復唱された単語に満足気に頷いて、硝子玉のように綺麗な瞳を覗き込んでは落ち着いた声音で訊ね )

…うん、まあ…。あ、どうせ嘘だろーなとか思ってるわけじゃないですよ。───水族館とか結構久しぶりかも。ペンギンとか可愛くて、ずっと見てられんすよねぇ。…あ、来ましたね。（ 不誠実な人ではないと感じてはいて。心の内まで見透かされてしまいそうな深く澄んだ瞳に気後れすると曖昧に頷き。弁明を付け足しながらも気まずさから思考を水族館へと移すと微笑を浮かべ。バスが到着すると流石に繋いでる手を離して ）

はると君、いつもお世話になってます。物語が始まってまだ時間は経ってないけど、きみに対して絡みづらさを感じているんだ。返事を返せない上に不誠実だけど、今回をもってお相手を解消させて貰いたい。期待に応え切れられず申し訳ないです。きみに良い縁があることを祈っています。

こちらこそお世話になっております。
ちゃんと言葉をくれてありがとう。役不足でごめんね。
短い間でしたがほんとーにありがとうございました。