通りすがりさん 2023-12-27 11:12:37 |
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【薫・クリフォード】
─硝華、大丈夫だろうか。
(暫くリビングで寛いだ後両親に断って自室に戻り、小さな文庫本を読んでいると─ざあざあと降る雨の音に混じってゴロゴロ、と窓の外で雷鳴が響いた。柔らかな色をしたブラウンダイヤの両目が鮮やかな金色の稲光を映して、ふと気になったのか─"お姫様"の名をぼそりと呟く。)
【葵依】
…いいや。─それ程気になるなら、全て見せてあげよう。俺が、全てを隠す理由を─。
(首を傾げる少女を愛おしそうに見つめて首を横に振り、浮世と彼を隔てる壁─薄布に手を掛けた。彼の手によってひらり、と捲られた薄布の下には─柔らかな光を纏った金色の瞳が目立つ端正な顔をした美丈夫と、その抜けるように白い肌を覆うような形で紅の文様が浮かんでいる。彼は意を決したように右腕を覆う為の羽織も脱いでしまい、露出した異型の右腕には─それを押さえ付けるかのように赤黒い包帯が幾重にも固く巻き付けられていた。)
【 妃 硝華 】
( どんどんと大きくなる雷鳴に、愛犬とひとつになるのではないかという程にお互い身を寄せる。だがそんな時でも頭の中に浮かぶのは自分の王子様の顔で、硝華は震える手でスマートフォンを取り出せば通話履歴の1番上にある〝彼〟の名前をタップし─── だが、通話開始の画面をタップすることがなかなかできなかった。「 こたろう、…薫に、かけても迷惑じゃないかしら。きっとご両親と一緒にいるのに、邪魔しちゃ申し訳ないわ。 」と大きな瞳に涙の膜を張りながら不安げな声で問いかけて。だが無論犬が人の言葉を理解できるはずもなく……はずも無いのだが、愛犬はわふ!と一言鳴いた後に通話開始画面を鼻先でタップして。 )
【 椿 】
、─── …………いた、く、ないの。
( 黒布の向こうから現れたのは、自分が想像していたよりもずっとずっと美しい、彫刻のような男。蘇芳の瞳でそれに見蕩れていたのも束の間、羽織で隠されていた右腕は明らかにヒトとは違う見目で更には赤黒い包帯でぐるぐると其れに巻き付けられているのを見てはびく、と1度体を強ばらせた後に彼の右腕と比べれば握るだけで折れてしまいそうな小さなヒトの手でそっと其れに触れては上記をぽつりと問いかける。その瞳は怯えよりも心配が勝っているような色で、いつもの刺々しい雰囲気はすっかりと抜け落ちていて。 )
【薫・クリフォード】
─もしもし?
(瞳に映る稲光が消え、途中まで読んだ文庫本に再び目線を戻した所で─机に放り出していた携帯電話が着信を告げる。"硝華"と表示された名前を見るなり「彼」は文庫本を閉じ、スピーカーモードにしてから通話開始ボタンをタップした。"お姫様"が喋り出す前に、柔らかく声を掛けて)
【葵依】
─痛くは無いよ。心配してくれているのかい?
(久方振りに空気に触れた彼の右腕が、ズキリと疼いた。─"神殺し"、"化け物"と─昔に「ひと」の子が発した恐れの声が未だ耳にこびりついている。だがそれも、眼の前の少女の柔らかな掌に全て吸収されるような気がした。彼はすう、と右腕を持ち上げ─薄布の取れた美しい顔に柔らかな笑みを浮かべながら、ぽす、と眼の前の少女の頭に手を置く。決して壊さないよう、慎重な手付きで彼女の頭をふわふわと撫で回した。)
君は…優しいね。
【 妃 硝華 】
、ごめんなさい、私……。今忙しかった、?
( まさかかかってしまうとは思わず慌てて切ろうとしたのも束の間、スマホから聞こえてきた王子様の声にきゅう、と胸が苦しくなる。スピーカーに切り替えて、雷に脅えた震えた声では無い…できるだけいつものように柔らかい声で上記を問いかけて。さっきまではあんなに大きく聞こえていた雷鳴が今ではすっかり〝王子様〟の声の方が硝華の頭を占める。「 …声が、聞きたくて。 」と普段人前で見せるしっかりとした大人の女性のような穏やかさではない、親しい彼女にしか見せないような甘えるような声でそうこぼして。 )
【 椿 】
、………別に!心配してるんじゃなくて気になっただけよ!
( ぽん、と自身の頭に置かれた手は紛れもなくヒトと同じような、誰かを慈しむような。やさしい手であることには変わりない。こうして優しく誰かに頭を撫でられたことがない─── ましてはこんな美丈夫になんて尚更 ───椿にとって初めての感覚にぶわ、と頬を真っ赤に染めてはいつものように可愛くない口を。だがしかし表情も口振りもわかり易く〝心配していたけれど恥ずかしいから誤魔化した〟といった様子で、椿はつん!とそっぽを向いた後に暫くしてちら、、と彼の瞳を見上げては「 …優しくなんて、ないんだから。 」と懐かない猫がみゃあと鳴くように小さく付け足して。 )
【薫・クリフォード】
─いいや、構わないよ。
(「彼」は電話越しに聞こえてくる、甘えるような"お姫様"の声に口元を柔らかく緩める。未だにゴロゴロと窓の外で低く唸る雷鳴を、少しでも誤魔化すようにカーテンをさっと閉め、手元にあった文庫本を本棚へと戻した。そうして─とびきりの甘い声で囁いて)
…丁度、僕もキミの声が聞きたかったところだ。
【葵依】
…ふふ…本当に可愛いねえ、お嬢さんは。
(顔を赤くしたままそっぽを向いてしまう彼女に向けて、彼は心底愛おしそうな声色でくすくすと笑った。右腕を彼女の頭から降ろし、緩んでいた包帯を引いてきつく締め直す。─腕を抑え付ける少しばかりの痛みに形の良い眉が顰まるものの、それも一瞬。ふと─ざわざわ、と木立が揺れ、狐の面を付けた小紋姿の小柄な少女─彼の"侍女"が姿を見せた。小紋姿の少女はぺこり、と眼の前の彼女に頭を下げ、彼が脱ぎ落とした羽織を拾い、小さな手で再び羽織らせて)
─嗚呼…有り難う、小町。
【 妃 硝華 】
……不思議。
さっきまでとっても怖かったのに、薫の声を聞いてるとすごく安心するの。
( 耳にするりと入る〝王子様〟の声は、甘いハチミツのように蕩けてそれから空に浮かぶ雲のように柔らかくて先程まで冷たく凍っていたお姫様の心をゆっくりと溶かしていく。硝華は安心したようにゆっくりとソファに腰を下ろしては、そのまま音もなく横になりそっと長いまつ毛に囲われた瞳を閉じて。「 ……ありがとう、だいすき。 」といつも通り艶やかなさくらんぼ色の唇から零れたのは、他の誰にも聞かせたことのないようなずうっと甘ったるくて世の中の男ならば大抵落としてしまうようなお姫様の囁きで。 )
【 椿 】
!可愛くなんて、ッ─── …あ。
( 此方の様子を見てくすくすと笑う美丈夫に更にぶわ、と頬に朱を散らしてはぱっと彼の方を振り返った途端、ざわりとした木々のざわめきの後に目の前に立っていた狐面の小柄な少女の姿にその言葉は最後まで紡がれることがなく。狐面の少女─── 小町 ───に頭を下げられれば、椿も若干困惑しつつではあるが華道家元の家に生まれた少女に相応しい美しい所作で頭を下げる。恐らくこの少女も人間では無いのだろう、とアタリをつけつつ彼の羽織をあらためて羽織らせている姿を眺めては「 …他にも、侍女さんがいるの? 」とふと疑問に思ったことを問いかけて。 )
【薫・クリフォード】
…僕もだよ、硝華。
(甘ったるい"お姫様"の囁きに、"王子様"は雪を溶かす柔らかな光のような笑みを浮かべ─ぱらり、と再び文庫本を開いた。そこだけ見れば細く華奢な"女の子"の指先で印刷された文字をつう、となぞり、カーテンの隙間から外を眺める。今しがたまで窓を破らんばかりの様子で降っていた雨は窓ガラスを叩く程度まで静まり、雷鳴も聞こえなくなっており)
【葵依】
……いいや、俺の世話を焼いてくれるのは小町だけだよ。
(羽織で腕を隠した彼が小町、と呼んだ侍女の頭を左腕で優しく撫でると─狐の面越しに表情は伺えないが、彼女は何処となく嬉しそうに跳ねるような足取りで、再び神社を覆い隠すように伸びた木立の中へと消えていった。消えてゆく彼女の背を見送り、彼はぼそりとそう呟く。「…お嬢さん。暇なら、話でもしようか。」微笑んだ後、彼は朽ち果てた本殿の濡れ縁を指して)
【 妃 硝華 】
─── ……あら、雷。
( 〝彼〟と共に過ごす時間は、直接目の前にいても声だけでもすぐに過ぎてしまうもの。ガラスの靴を履いたお姫様の魔法はあっという間に溶けてしまうのだ。ふ、と訪れた静寂に顔をあげればいつの間にか雷鳴は止まっており、雨音もぱらぱらと窓をノックする程度に収まっている。「 ふふ、すごいわ。薫とお話しているとあっという間。魔法使いみたい。 」とふわふわした口調でお姫様がころころ笑えば、先程までそばに居てくれた愛犬は満足そうにわふ!とひと鳴きして自分の定位置……お気に入りのクッションの上に戻っていき。 )
【 椿 】
小町ちゃん、……。
( 可愛い名前、とどこか嬉しそうに軽い足取りで去っていく少女の背中をぼうっと眺めてはそれが木々の中に消えていったことにまた蘇芳色の瞳は彼の方へと戻り。この神社には幾度となく訪れているが、彼と出会ってから今で見た事の無い体験したことの無いことがたくさんある。「 !お話するわ。私、ヒトじゃない友達は初めてなの。 」と段々と彼に心を許してきたのかほわりと表情を和らげては彼の指した本殿の方に体を向けて。 )
【薫・クリフォード】
…ふふ、キミの力になれたなら良かったよ。
(電話越しに聞こえてくる笑い声に釣られるように「彼」も笑い、文字をなぞる指がふと止まる。窓ガラスを叩く微かな雨の音は心地良く、"お姫様"の柔らかな声と相俟って、「彼」はどこか美しい音楽を聞いているような気分で電話越しの声に答えて)
【葵依】
……有り難う。─小町、お客人に茶を頼めるかい。
(出会った時より楽しそうな表情を浮かべる「ひと」の子─椿に、彼は瞳を伏せながらしみじみと礼を述べた。彼は本殿へ向かって歩き出す折、木立の中に向かってそう呼び掛ける。木立の中からは声の代わりに鈴を鳴らしたような音が響き、トタトタと慌ただしい足音が何処かへ向かって消えた。黒髪が玉砂利に擦れる度に髪が玉砂利を巻き込み、ざりざりと音が鳴る。其処だけごく最近作られたような濡れ縁に彼はゆったりと腰を下ろし、少女を手招き)
【 妃 硝華 】
まあ。いつだって薫は私の力になってくれているわ。
( まるで自然のパーカッションのような雨粒の音のBGMは夜の雰囲気も相まって実に幻想的。スピーカーにーしたスマートフォンから聞こえる声はまるで〝彼〟が隣にいるような感覚すらもして、硝華はころころと鈴が転がるような笑い声を漏らして。「 …あ。そうだわ。薫、次の土曜日と日曜日は部活かしら?お父様の取引先の社長さんがね、リゾートに招待してくださったんだけれど一緒に如何? 」と学校で〝彼〟に聞こうと思っていたがすっかり忘れていた用事を思い出し。 )
【 椿 】
……綺麗、
( 玉砂利に擦れる艶やかな黒髪にふと視線を向ければ、歩く度にそのキューティクルが木々の間から差し込む太陽の光に照らされてきらきらと光りまるでシャンプーのCMのようだと小さな声でぽそりと素直な感想を零して。少女たちが喉から手が出るほど欲しているであろうその美しく長い髪は幼い頃に絵本で見た長い髪を持ち塔の上から王子様を待つプリンセスを思い出す。彼に手招かれるがまま、馬鹿正直に隣にすとんと腰を下ろしては座ってもやはり自分よりも視線が上にある彼を蘇芳の瞳で見上げて。 )
【薫・クリフォード】
…予定は空いているけど…良いのかい?
(「彼」は"お姫様"からの問い掛けに眉を下げ、宝石のような両目を睫毛で覆い─困ったように微笑んだ。一方、手では読み終わった文庫本を閉じ、本棚へと静かに戻す。背中を預けた拍子に、マホガニー材の椅子がキィ、と軋む音が微かに響いた。)
【葵依】
─助かるよ、小町。…小町も座りなさい。
(彼と少女が濡れ縁に腰を下ろした少し後、木立の中から狐面の少女─小町がひょっこりと姿を見せる。その白い手には茶の入った湯呑みと煎餅やらが盛られた器が乗せられた紅葉柄の盆を持っており、それを彼と少女の間に置くとぺこり、と頭を下げて立ち去ろうとする─のを、彼が引き止めた。小町は一瞬躊躇うようにその場で足踏みをしたものの、やがてこくりと小さく頷いては彼の隣へと駆け寄り、すとんと腰を下ろす。)
【 妃 硝華 】
ふふ、実はお父様もお母様も学会が入ってしまって行けなくて。
断るのは申し訳ないし、折角なら薫も羽を伸ばせたらなあって思ったの。
( くすくすと柔らかく微笑みながら上記の理由を答えては、普段部活に精を出している〝彼〟を見ているせいか少しでもリラックスして休んで欲しいという我儘をひとつ。招待されたリゾートは温泉施設もあり今回は更にスイートルームでの宿泊なのでリラクゼーションにはもってこいだ。「 だからむしろ一緒に行けたら嬉しいわ。 」とほろほろと笑えばふわふわのお気に入りのテディベアを抱きしめて。 )
【 椿 】
ふふ。……ありがとう、小町ちゃん。
( 恐らくこの子もヒトではないのだろうが ─── 見た目は狐面を被った幼い少女だ。椿もそんな彼女には警戒心もなにも抱かないのか、ぱっと花が咲くように笑えば彼の隣にちょこんと腰掛けた狐面の少女へと笑いかけて。自分の母が開いている華道教室にはこの少女の見目年齢と同じくらいの少女たちも多数いるため、お姉さんとして彼女らの面倒を見るのは慣れっこだ。ふわり、と漂うお茶の香りは香り高く格式高い茶葉なのだろうなとふと思いつつ椿はふと外に視線をやれば、そういえば畳の上でお茶を飲むことはあってもこうして外の景色を見られる濡れ縁でお茶を飲むのは初めてだと椿のさくらんぼ色の唇は緩く口角を上げて。 )
【薫・クリフォード】
…じゃあ、お言葉に甘えることにしよう。─ありがとう、硝華。
("お姫様"の言葉を聞いた「彼」の、両目の宝石を覆う睫毛が緩やかに持ち上がり─ふわりと、普段の彼とはまた雰囲気の違う柔らかい笑みが漏れた。─丁度その時、階下から「薫、ちょっと降りてきて」と母親の声が聞こえる。「彼」は"お姫様"に断りを入れ、通話保留ボタンをタップして)
ごめんね、硝華。少し母さんに呼ばれたから─待っていてくれるかい?
【葵依】
…人と茶を飲むのなど、何時振りだったかな。
(彼は小町の持ってきた盆から湯呑みを手に取り、虚空に向かってぼんやりと呟いた後─湯気の立つそれを一口啜る。少女に茶を持って来た礼と共に微笑み掛けられた小町は、礼儀正しくぺこりと頭を下げつつ彼の着物の裾を小さく掴んで隠れてしまった。「─小町、このお嬢さんは大丈夫だよ。出ておいで」見兼ねた彼が小町の頭を撫で、そう声を掛けると─小町はおずおずと着物の影から顔を覗かせて、狐の面で覆い隠された口からは声の代わりに鈴を鳴らしたような音を漏らし)
【 妃 硝華 】
ええ、もちろん。
お母様によろしく伝えて頂戴な。
( スピーカーにしていたせいか、ふと遠くから聞こえた〝彼〟の御母堂の声に気付けばしっかりと此方に断りを入れてくれる相手の優しさや気遣いにふと笑顔になれば快く送り出し。そういえばお母様にもしばらくお会いしていないなぁ、なんてのんびり考えながら硝華は手持ち無沙汰にクッションのタッセルをくるりと白魚のような細い指に巻き付けてはもうすっかり恐怖心もなくなり雨粒が窓を叩く音をBGMに小さく鼻歌を歌い始めて。 )
【 椿 】
……暇な時なら、来てあげてもいいわ。暇な時だけど!
( 虚空に向かって彼の優しいテノールが零したのは、今まで長く孤独でいたヒトでない者の悲しげな呟き。椿は其れにきゅ、と心を締め付けられるような心地を覚えては思わずと言ったように上記をぽろりと。だがやはり気恥しさが勝ってしまったのかそれを誤魔化すようにお茶を美しい仕草で一口啜り。だがしかし椿の幼い意地っ張りも可愛らしい鈴の音の返事にまたぱちりと瞳を丸くした後に「 かわいい、 」とふにゃふにゃ花がほころぶように笑って。 )
【薫・クリフォード】
……何だい、母さん。
(母に呼ばれて階下に降りた「彼」は、父と母に手招かれるままリビングのソファに腰を下ろして問い掛ける。どうやら用事は何てことのない、"お姫様"は元気か、とのことだったらしい。胸を撫で下ろすようにして─普段の「彼」なら見せない、年相応の柔らかな笑みを浮かべて答え)
……ああ、硝華なら…元気だよ。今も昔も変わらない、僕の大事な"お姫様"さ。
【葵依】
……ふふ、有り難いよ。小町と二人きりの時間は─退屈ではないが、俺にとっても…小町にとっても、随分長過ぎたからね。
(彼女の優しく、心底彼を心配しているような声に─彼は目を見開いた後、一際柔らかく微笑んだ。一方、親愛の籠もった笑顔付きで「可愛い」と評された小町はと言うと─何処か恐縮するように首を左右にふるふると振った後、小紋の袂から小ぶりな懐紙を取り出して─小さな手に良く似合う、小さな筆を手に取ってさらさらと文字を書きつける。小町は彼女に「そんなことはありません」と容貌に似合わず流麗な筆致で文字の書かれたその懐紙を控え目に見せて)
【 妃 硝華 】
お洋服考えなくちゃ。
( 〝彼〟か離席をしている最中。暫く花歌を歌っていたがふと次の土日は共に過ごせるのだと思い出せばぽつりと自分が今やるべきことを思い出して。スマホを持ちながら愛犬と共に自分の部屋に戻り、ホテルのスイートルームのように広く整頓された自室に鎮座するウォークインクローゼットを開き。まるで芸能人の衣装部屋のように様々な洋服がずらりと並ぶウォークインクローゼットに足を踏み入れてはやはり機嫌よく花歌を歌いながら洋服を選びはじめて。愛犬も硝華のお手伝いをしているのかとある服の裾をちょいちょいと足先で引っ掛けているの見ては「 うふふ、それがいいと思う? 」とくすくす笑い。 )
【?椿 】
─── !すごい、とっても上手だわ。
ね、見て、葵依!
( 小町の書いた文字を見ては椿はまるで書道の達人が書いたかのようなその達筆で流麗な文字に目をまん丸にしては思わず隣に座る彼の裾をくい、と引っ張ってはきらきらとした瞳で懐紙を指さして。と、そこでふと自分よりもずっとずっと長い時間小町と過ごしてきた彼が其れを知らないはずがないと気付いてしまえば、かあっと顔に一気に熱が集まり「 、…なんでもない! 」と恥ずかしそうに彼の裾を掴んだ小さな手をおずおずと離して。 )
【薫・クリフォード】
……ああ…確かに、僕も服を選んでおいた方が良いかもね。ありがとう、母さん。
(「彼」が思い出したように"お姫様"と取り付けた約束を口にすると─母親はまあそうなの、と酷く楽しそうに笑いながら、「彼」に対して普段着で良いのか、と問い掛けた。顎に手を当てて考え込んだ後─母親に断りを口にしてリビングを後にし、隣の衣装部屋へと足を踏み入れる。父方の実家から大量に持ち込まれた上質な素材の服を手に取り、少しの間悩んでいたが─漸く服を決めたらしい。高級なブランド物ではあるが、シンプルなジャケットスタイルを小脇に抱えて部屋へと戻り)
【葵依】
……そうだろう?俺が文字を教えたんだ。
(裾を引っ張られた彼は小町の方に目線を向け、無邪気にはしゃぐ少女の姿を慈悲の籠もった眼差しで見つめていたが─ややあって、少女が顔を赤くしながら裾から手を離してしまった。堪えきれない笑みを零しつつ、少女の頭をぽんぽんと優しく叩く。当の小町は状況が良く分かっていないのか─何処かきょとん、とした様子で首を傾げるばかりで「わたし、なにかしてしまいましたか」と新たに書き付けた懐紙を見せながら少女の顔を狐の面越しにじっと覗き込んで)
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