匿名さん 2023-12-19 21:56:50 |
通報 |
…お言葉ですが、完全栄養食は食べていますよ。
(夏油の言葉にさして気分を害した様子もなく、鶴原は足で段ボールを再びデスク下へと押し戻し、ゼリー飲料の飲み口を歯で噛んで咥えながら、少しばかりズレた解答を彼に返す。その後夏油の纏め直した書類に目を遣り、軽く会釈をしながら回収すると自身の纏め直した書類と共に束ね、角を揃えてから原本をホッチキスでバチンと留めた。その書類を今から夜蛾に提出しにでも行くのか、デスクチェアから腰を起こすと顔だけを夏油に向けて声を掛ける。)
…少し席を外しますが、物を壊す以外はご自由に。
──
俺?んー…あ、あれとか美味そう!
(人混みの奥から微かに見える、壁貼りのメニュー表に目を遣る。─ファーストフードは宿儺にとってはどれもあまり興味を唆られない見目だったようだが、"期間限定"だの"増量"だのと大仰なフォントが周囲を彩るバーガーのメニューがふと目に留まったらしい。それに興味を唆られたのかは分からないが、適当にそのメニューを指差しておく。─この小娘、先程から一向に気付く様子が無い。文様でも出してやらんと気付かんか、と表向きの表情には出さないが、宿儺は内心少しばかり興醒めした様子を浮かべていた。)
あぁ、行ってらっしゃい。
(普通の食事をすることの大切さを伝えたつもりだったが、鶴原には届いていなかったようで何やら少しズレた回答が返ってきた。兎に角、栄養補助食品にしても完成栄養食にしてもそればかり摂取していては身体には良くない。伝わらなったことに内心溜息をついていればどうやら書類を提出するようで席を外すらしい。手を振り見送る。言葉で説明しても分からないのならばこの間に何か料理を作ってやろうか。そう考えては自身の部屋から材料を持って来て作ることにした。しかし生憎今の持ち合わせは蕎麦しか無かった。まぁ、栄養補助食品よりは良いだろう。そう考え台所を借りて作り始めて。)
あれ美味しそうだね。私も限定のにしようかな。
( 何にしようかとあれこれ悩んでしまうため虎杖に訊ねてみた。虎杖は限定のものにするらしい。己もそうしようかなと思いメニューを決め順番を待つ。そうしていればふと違和感に気付いた。いつもの虎杖ならあれこれと色々話題を振ってくれるが振ってこない。それに表情や言動もいつもより大人しい気がした。思い返せば映画が終わった辺りからかもしれない。宿儺に代わったのだろうか?しかし宿儺なら文様が浮かび上がって話口調が代わっていた気がする。気の所為だろうか?しかしいつもの虎杖でないことは確かだ。勇気を出して訊ねてみて。)
あの…虎杖くん。何かあった?映画終わった辺りからいつもと様子が違う気がして…あ、間違ってたらごめんね…!
…夜蛾先生、こちらの書類ですが。
(夏油の思惑など露知らず、書類を抱えてさっさと部屋を出た鶴原は夜蛾にそれを提出しに向かう。渡してものの一時間程で内容が整理され、複数コピーが可能な程にまとめ上げられた書類に夜蛾からのお褒めの言葉を貰うが、鶴原は相変わらず無表情で気の無い生返事を返すばかりだった。その後少し夜蛾の話に付き合わされ、漸く解放された鶴原は自動販売機で柚子レモンを購入した後自身の部屋へと足を向ける。ドアノブに手を伸ばしかけたところで─部屋の奥、主にキッチン辺りから聞こえてくる物音にふと気付いたらしい。ドアを開けるついでにキッチンを覗き込みつつ、再びデスクチェアに腰を下ろして声を掛けた。)
…夏油くん、キッチンで何かなさってますか?
──
─遅い。漸く気付いたか、小娘。
(如月の問い掛けを聞いた虎杖─否、宿儺の顔から屈託の無い大型犬のような笑顔がすう、と消える。その代わりとでも言わんばかりに文様が浮き上がり、宿儺は柔らかな前髪を鬱陶しそうに掻き上げつつ、唇の端を吊り上げてにまりと嗤った。そのまま空いた方の片手で如月の肩をぐいと自分の方へ引き寄せ、"お前、小僧のことが好きなのだろう"と揶揄いと嘲笑混じりの声で囁く。─その瞬間、殺害した筈の虎杖がまた領域内でぎゃんぎゃんと騒ぎ始めた。仕方無い、とでも言うように宿儺は如月の肩から手を離し、虎杖に身体を明け渡す寸前─何かを言いかける。)
ああ、そうだ─言っておくがな、小娘。小僧もお前のことを─
玲司、おかえり。キッチン借りているよ。
(鶴原に普通の食事を振る舞うべく、一度食材を取りに自室に戻ったが生憎蕎麦しか無かった。しかし栄養補助食品よりは良かろうと考え鶴原の部屋に戻りキッチンを借りる。栄養補助食品ばかり食べているため使わないからかキッチンは綺麗だった。一応必要最低限な物は置かれているようで鍋に水を入れ火にかける。程なくし沸騰したら蕎麦を入れ茹でる。その間に汁を作り茹で上がれば湯切りし汁に入れる。ねぎとかまぼこは丁度自室のあったため盛り付けた。丁度出来上がった頃、鶴原が戻ってきたようで声を掛け手。デスクチェアに戻った鶴原の前に蕎麦が入った容器と箸を置いて。)
栄養補助食品ばかりでは良くないからね。何か振る舞おうと思ったんだが生憎蕎麦しか無くてね。簡単なものですまないが栄養補助食品よりは良いだろうから食べてくれ。
え…それは…その…っ
(いつもと様子が違う虎杖に声を掛ければ、虎杖ではなく宿儺であった。虎杖に化けるような事も出来るのかと驚き目を瞬かせる。状況を飲み込み切れずまごまごしていると肩を引き寄せられ虎杖のことが好きなのだろうと囁かれた。言葉では肯定も否定も出来ない代わりにみるみる頬が熱を持って真っ赤になり肯定をしているようなもので。そうこうしているうちに肩から手が離れる。赤くなった頬を隠すように両手で覆っていれば何か言いかける宿儺に顔から手を離し宿儺に顔を向け聞こうとしていればその瞬間に入れ替わったようで聞けず。)
私の事…って、何言いかけたんだろう…。
…はあ。…頂きます。
(普段は栄養補助食品が殆どの場所を占めるデスク。その眼の前で湯気を立てる蕎麦の容器に現実感が無いのか、鶴原は夏油の声に気の抜けたような生返事を口から漏らす。─何とも表現し難い表情を浮かべているものの─態々他人が作ってくれたものを無下には出来ないのだろう、短く息を吐くと礼儀正しく手を合わせてから箸を手に取り、眼の前の蕎麦を音もなく黙々と啜り始めた。特に味への感想を述べるでも無く、蕎麦の容器が空になってから箸を置き、再び手を合わせる。)
…ご馳走様でした。わざわざありがとうございます、夏油くん。
──
っは~…やっと戻った!ごめん、如月!迷惑かけたよな?…宿儺!勝手に俺の身体乗っ取るなって言ってんじゃん!
(宿儺が虎杖に身体を明け渡すと顔の文様が引き、宿儺の手で掻き上げられた前髪もぱさりと顔の前に落ちる。無意識の内に周囲に放っていたプレッシャーもすっかり消え失せ、完全に宿儺から普段の虎杖に戻ったらしい。虎杖は脳内の宿儺に憤りつつ、何故か顔の真っ赤な如月に慌てて頭を下げ、謝罪した。─と、虎杖の左目下辺りに宿儺の目と口が現れ、"随分な言い様だな、小僧"と不機嫌そうな声を上げる。虎杖は周囲の客に奇異の目で見られるのが嫌なのかまた声を抑えつつも尚宿儺に文句を述べて)
当たり前だろ!…如月に、"俺のこと好きだろ"、とか…勝手なこと言ってんじゃねえよ。
気にしないでくれ。栄養補助食品よりこういう食事の方が良いだろう?
(鶴原の場合こうして料理を提供しても断わるのでは無いかと内心ヒヤヒヤしていたが、食べてくれた。表情はあまり良いものとはいえなかったが。手を合わせて箸を手に取り食べ始める鶴原を見守る。特に何か感想を言うでもなく黙々と食べている。数十分もすれば容器は空になり綺麗に食べ終わっていた。感想はなかったが綺麗に食べてくれた辺り不味くはなく口に合ったのだろう。もう少し豪勢なものを振る舞えれば普通の食事の良さを伝えられた気がするため否定されるかもしれないが、一応こういう食事の方が良くないかと訊ねてみて。)
あ…ううん、大丈夫。
(宿儺から虎杖に入れ替わると顔の文様が無くなり周りに放たれていたプレッシャーが無くなった。一瞬の出来事で放心状態になってしまっていたが虎杖から謝られ、ハッとして首を横にふるふると振って大丈夫だと答える。目の下辺りに現れた宿儺に虎杖が文句を言っている。その言葉に虎杖も聞いていたんだなと分かる。肯定も否定もしなかったもののこんな赤い顔をしてしまっていれば虎杖に思いを気づかれてしまったのではないかと赤い頬の熱を冷めしつつ考えていて。)
……食事に時間を掛ける有用性が分かりませんので、自分ではこういった食事は摂らないでしょうね。
(空になった容器を手に取り、キッチンのシンクで丁寧に洗った後、水を切って立て掛ける。その後またデスクチェアに戻って来てはそう返答し、自動販売機で購入した─実を言うと、今この瞬間まで買ったことすらも忘れていた─柚子レモンの蓋を開けた。買った時は温かかったものの、時間が経ってすっかり温くなったそれを一気に喉へと流し込んで、空き容器をゴミ箱に投げ込みつつ小さく欠伸をする。ふと部屋の壁掛け時計に目を遣ると3時を過ぎたところで、特にやることもないのかデスクチェアから立ち上がった。)
……そういえば、夏油くん。図書館に行かれるんでしたっけ?ご一緒しても構いませんか。
──
マジ大丈夫?ごめんな~…
("大丈夫"だと言って赤い顔のまま首を横に振る如月に少しばかり胸を撫で下ろしたものの、勝手に宿儺に取り変わられたことによっぽど落ち込んでいるのか─虎杖の表情は眉の下がった申し訳無さそうなものから変化しない。─と、そうこうしている内に二人の順番が来たらしく、店員がまず虎杖の方へ注文を聞く。虎杖は少し考えた後に通常のバーガーセットを注文し、如月の方へ伺うように声を掛けた。)
俺、これにするけど…如月、どうする?
そうか、分かったよ。
( 普通の食事の良さが少しでも伝わっただろうかと訊ねるも、やはり分かってもらえ無かったようでこういう食事は摂らないと言われた。しかし今回こうして食べてくれたのであればまた作れば食べてくれるのではないかと思い、偶にこうして料理を振る舞おうと心の中で決めて。鶴原に言えば断られそうだったため口では了承の言葉を告げて。そうしていると鶴原から図書館に一緒に行っても良いかと訊ねられた。その予定を忘れていたが思い出しそういう約束であったため了承をして。鶴原と共に部屋を出れば図書館に向かって。 )
あぁ、そういう約束だったからね。構わないよ。
ほんとに大丈夫だから気にしないで、ね?
(大丈夫だと答えると安堵した様子だったが、よっぽど落ち込んでいるようで虎杖の表情は晴れない。己としては入れ替わったことはこうして元に戻れたのだし気にしてはいなく、虎杖に好きと気付かれたのではないかということと宿儺が言いかけた言葉が気掛かりで。そんなことを考えつつ虎杖に気にしないように伝えていれば注文する順番が回ってきたようで。訊ねられれば思案し、セットだと食べ切れないだろうと思い期間限定のバーガーのみと飲み物を頼んで。)
じゃあ…私はこれと飲み物はこれにしようかな。
……ありがとうございます。
(簡素な礼の言葉を述べ、鶴原は夏油の背を追いかけるようにして自室を出た。後ろ手で自室の鍵を閉め、高専を出て図書館へと向かう。図書館に入った後は外国小説の棚へと引き寄せられるように足を進め、シャーロック・ホームズシリーズを何冊かまとめて持って来た。その上に任務先に関する本を重ね、適当な席に腰を下ろす。その後は黙って小説を開き、任務先に関する本は夏油の方へ静かに押し出した。)
──
オッケ!んじゃ、これとこれで!
(にっ、と効果音でも付きそうな程屈託の無い虎杖の笑顔に釣られたかのように、対応する店員も満面の笑顔になって注文を作りに奥へと引っ込む。虎杖は映画終わりに雪崩れ込んだ人で混み合う店内で空いている席を探し、ようやく窓際の二人掛け席たけが空いているのが分かったらしく─如月の肩を軽く叩いてその席を指差した。)
如月、あそこ空いてるっぽい。座ろうぜ!
持ってきてくれたのか。ありがとう。
(鶴原の部屋を出て図書館に向かう。到着するとすぐに本を探しに向かった様子で。交流する名目でここに来ると言っていたためにあまり調べるつもりはなかったが、鶴原に変に思われてもいけないと思い任務地に関する本を探すかと書棚に向かおうとしていれば鶴原が戻ってきた。自分が読む本に加え己の探している本も見つけて来てくれたようで任務地に関する本を渡された。本を受け取り隣に腰を下ろして。鶴原の読む本に目を向ければ、これは会話の糸口になるのではと思い訊ねて。)
…そのシリーズよく読むのか?
うん、そうだね。分かった。
(これにすると虎杖に伝えれば頼んでくれて注文を終える。混んでいるため座れる席はあるだろうかと店内を眺めていると虎杖が見つけた様で声を掛けてきた。其方に目を向ければ2人がけの席があり、頷いて他の客に取られる前に席に向かう。無事に席を確保出来座れたことに安堵して席に座って。先程の宿儺の一件があってなんとなく虎杖のことを意識してしまう。平静を装い他愛のない話をして。)
席、確保出来て良かったね。
……まあ…そうですね。実家にあったもので。
(唐突な問いに、些かの間頁を捲る手がぴたりと止まった。そこから少し間を置いて鶴原は本から顔を上げて夏油の方へ目線を上げると口を開き、図書館故に抑えた声で淡々と答える。答えた後はまた本に目線を戻しては頁を捲る手を動かし、積み上げた本の一番上─"緋色の研究"を読み進めていった。暫くの間黙々と頁を捲り、読み終わったらしいそれを脇に置いては二冊目─"バスカヴィル家の犬"を開き、読み始める。)
──
だな!…てか、映画面白かった?俺、宿儺に変わられててさ…全然観れなかったんだよな。
(店員から貰った番号札をテーブルに立て、虎杖は如月の向かいに腰を下ろす。"席が取れて良かった"という如月の言葉に明るい笑顔で同意した後、ばつが悪そうに頭を掻きながら問うた。─実際のところ、映画を見ていたのは虎杖に成り代わった宿儺であって─虎杖は領域内で死体となって転がっていただけ。誘っておきながら見ていない、という状況が気まずいのか、虎杖は苦笑いしながら如月の返答を待っていた。)
なるほど、それでか。
(会話の糸口を見つけ鶴原の読んでいる本に目を向けて話し掛けた。どうやら実家に本があったらしい。鶴原のことを少しだけ知れたなと思いつつ返事を返していれば此方に向けていた目線はもう本人戻っており。集中しているのに話し掛けるのも悪いかと思い此方も本に目を向ける。意外と興味深くあっという間に読んでしまった。鶴原も読み終わり2冊目に突入したらしい。脇に置いてある読み終わった本に目を向ければこれこそ会話の糸口になるのではと思い脇に置いてある本を手に取れば声を掛けて。)
これ読んでみても良いかい?
あ…そうなんだね。人気なだけあって面白かったよ。誘ってくれてありがとう。
(どうやら映画を観ている時は既に宿儺に変わっていたようで虎杖は映画を観ていないらしい。映画を観る前は虎杖だったはずのため映画を観ている途中で変わったのかと推察して。気まずそうな虎杖に気にしないようにと感想と誘ってくれたことに対してお礼を伝えて。しかし入れ替わっている時は意識があると思っていたがなかったんだなと思い。それならば宿儺と己が話していた時と意識がなかったのだろうか。なければ己の気持ちには気付かれていないのかなと一抹の希望を感じ訊ねてみる。)
宿儺に変わってる時は虎杖くんは意識ないの?
……お好きにどうぞ。
(鶴原は夏油の声に反応してちらり、と脇に置いた本に目線を投げた後、さして興味も無さそうにそう言ってのけた。当の本人は"バスカヴィル家の犬"が随分面白いらしく、楽しそうに目を細めている─と言っても、端から見れば鶴原の表情の変化など禄に分かりやしないのだが─黙々と本の頁をぱらぱらと捲り続けている。この本もどうやら読み終わりかけらしく、既に目の前には"四つの署名"が引き寄せられていた。)
──
そ?だったら良かった~!
(如月からお礼を言われた途端、虎杖の表情が一気に明るくなる。表現するなら、尻尾を振る犬のような─楽しそうな笑顔のまま身を乗り出しかけたところで店員が虎杖たちの注文した商品を持って来た。虎杖はあざっす、と店員に軽く手を上げながら商品を置くスペースをそれとなく取り、店員が去っていった後で今しがた中断された話の続きを始めようとするが─ふと、如月から投げられた問いかけに首を傾げる。)
宿儺に変わってる間?普段はあるけど…今回はすぐ殺されたしな~。ほとんど覚えてねえや。…それがどしたん?
あぁ、ありがとう。
(鶴原に声を掛けると此方に一瞬視線を向けたが好きにどうぞとすぐに本の世界に入っていった。何時もより素っ気ない気がするのは本に夢中になっているからだろうか。本に集中している鶴原に目を向ければ、此方の視線を気にすることなく読んでいる。鶴原は本が好きなのだなと勝手に思えば、鶴原が読んでいた本を手に取り読むことにする。ページを開き読み進めていれば意外と面白くいつの間にか集中して読んでおり。)
あ…いや、えっと…宿儺と私が話していたこと聞いてたのかなって気になっただけ。
(誘ったことにお礼を言えばいつもの虎杖に戻ったようで笑顔を向けてくれた。その様子が犬のようで可愛らしく小さく笑みを浮かべつつも虎杖に質問を投げ掛けたところで店員が商品を持ってきてくれた。虎杖と共に此方も商品を置くスペースを広げ商品が置かれれば軽く頭を下げ見送って。それから中断した質問に対して回答が返ってきた。殺されるなどと物騒な言葉に中ではその様なことが行われていたのかと驚く。首を傾げられれば内心焦りながらも平静を装い気になっただけだと伝えて。しかし、覚えてないということは好きという事は気付かれていないのかもしれないなと考え。)
………
(一言も発すること無く黙り込んだまま続けて5冊程読んだところで、鶴原はふと窓の外に目を向ける。窓の外の空はもう薄っすらとオレンジがかっていて、夕方なのが見て取れた。図書館の中には夏油と鶴原以外の客が疎らに数人居る程度で、ほとんどの客はもう帰ったらしい。─そろそろ帰った方が良いのかもしれない。ぱたん、と音を立てて"まだらの紐"を閉じ、同じく本を読む夏油の前のテーブルを指先で叩き、気付かせるために小さく音を立てながら声を掛ける。)
…夏油くん、もう夕方ですよ。そろそろ帰りませんか。
──
宿儺と?
(如月の言動にきょとんとした表情で首を傾げ、だがそれ以上の追求は諦めて─虎杖は眼の前のハンバーガーをぐあ、と大口を開けて齧る。三分の一程が一気に口の中へ入ってきたようで、口の中のハンバーガーをもしゃもしゃと咀嚼する虎杖の両頬はリスのように大きく膨らんでいた。手元のドリンクでそれを喉に流し込み、漸くハンバーガーを飲み込んだ後─脳内で宿儺に"何を言ったのか"と問い掛けてみるが、"煩いぞ、小僧"と不機嫌そうに返されただけで─大した返答は返ってこなかったらしい。)
あぁ…もうそんな時間か。そうしようか。
(読み進めていけば意外と面白くつい夢中になって読んでいた。目の前のテーブルをトントンと叩く音に気が付き顔を上げると鶴原からもう夕方だと言われた。図書館の窓からはオレンジ色の夕陽が差しており時計も夕刻を示していた。鶴原と共に夢中になって本を読んでしまっていたらしい。本はそれなりに読むが高専に入ってからは五条とつるむことが多く読む機会が減っていたため久しぶりにこんなに夢中になって読んだ。固まった身体を解そうと伸びをして立ち上がり鶴原が本の返却場所を知っているため鶴原に読んでいた本を渡して。)
これ面白かったよ。つい夢中になって読んでしまった。
気になっただけだからほんと気にしないで?
(気になっただけだと伝えるときょとんとした表情で首を傾げる虎杖。この様子からして本当に宿儺と話していたことは知らないのかもしれない。そう確信しては内心でほっと胸をなで下ろして。これで落ち着いて食べられると此方もハンバーガーに手を伸ばしてぱくりと1口食べる。とても美味しくて頬を緩ませ食べ進める。そういえばこの後はまだ時間もあるが何処か行ったりするのだろうかと考えては訊ねて。)
そういえばこの後どうする?まだ帰るには時間あるよね?
……そうですか。
(帰るのならば本を元の場所へ戻さなくては─と、積み上げていた本を元の棚へ戻しに行こうと立ち上がったところで、夏油が今しがたまで読んでいた"緋色の研究"を手渡してきた。鶴原はさして気にした様子もなく頷いて本を受け取ったが、外国小説の棚へ戻す時に─ふ、と微かな笑みを本棚の影になる場所で口元に浮かべる。夏油の元へ戻る時にはその笑顔はまた消え失せ、普段通りの無表情のまま、夏油を入口の方へと促した。)
………今日は比較的楽しかったですよ。あまり分からないとは思いますが。
──
そっか?なら良いんだけど。
(一口が大きいからか早々にハンバーガーを食べ終わってしまい、半ばセットのドリンクとポテトを摘んでいるような状態の虎杖は不思議そうな─と言うよりはどこか腑に落ちないような─微妙な表情を浮かべながら首を傾げた。だがそれでも、"この後何処か行くのか"と如月に尋ねられると途端に顎に手を当てて考え込むような様子を見せ、少し考え込んだ後思い付いたように手を叩く。)
ん~…あ、そうだ!服見に行かね?前俺さ、釘崎に私服ダセえって言われたんだよな~…
楽しんでもらえていたのなら良かったよ。私も楽しかったよ、玲司のことが少し知れたしね。
(鶴原が本の返却場所を知っているため立ち上がった鶴原に感想を伝え本を渡した。相変わらず返答は素っ気なかったが、まぁこうして交流出来ただけでも今回は良しとしよう。そんな事を考えながら返却する鶴原を遠くから眺めていると全て棚に戻し終えたようで戻ってきた。戻ってきた鶴原は無表情のため笑っていたことには気付かず。入口へ促され入口に向かい歩いていれば楽しかったと言われた。無表情なため分かりにくかったが楽しんでくれていたことに安堵しながらも此方も感想を伝えて。)
野薔薇に?そうなんだ、私は別に思わなかったけど…。うん、良いよ。行こうか!
(宿儺との一件を知られていないことに安堵していたためか腑に落ちていない虎杖をあまり気にすることも無くこれからどうするかと訊ねた。考え込んでいた様子だが思い付いた様子で手を叩いた虎杖は服を見に行かないかと言った。どうやら釘崎に私服を指摘されたらしい。己も虎杖の私服は見た事あるが気にはならなかった。釘崎は己とは違い流行りに敏感なためファッションには五月蝿いのだろう。そんな事を考えながらも、まだ虎杖と2人で居れることが出来て嬉しさを感じつつ笑みを浮かべ了承をして。それから程なくして食べ終えれば店を出て。)
……夏油くんも物好きですね、僕と居ても退屈なだけでしょう。
(鶴原は夏油にそう返して図書館を出、呪術高専に向かって黙々と歩いていく。呪術高専に戻ると鶴原は「失礼します」と夏油に頭を下げただけで早々に自室へと戻り、自室の中心に据え付けられたデスクチェアに腰を下ろした。─デスク下の完全栄養食が減っていることに気付いたのか、携帯でネットショップを起動してそれを注文する。注文が終わった後ふとコーヒーが飲みたくなったようで、共有スペースの自動販売機へと向かい)
──
どんなのが良いかな~…
(如月の了承を得るとまた楽しそうに笑いながら店を出て、ショッピングモール内をうろうろと歩き回りつつ─虎杖はそんなことを呟きながら服屋を物色する。時々店内に入って試着したり─大抵はカジュアルやらストリートやら、普段あまり自分が着ないジャンルであるからか新鮮そうな表情をして着ていた。だがやはり自分では決めかねるのか、ストリート系とアクティブ系の服を二つ持ってきては如月に問い掛ける。)
如月~…俺、どっち似合うと思う?
そんなことは無いよ。実際楽しかったしね。
(鶴原の言葉にそう返し鶴原に続いて図書館を出て高専に向かい歩く。話をしないと居心地が悪いと思っていたが、鶴原とはそう思わない。黙々と歩いていれば高専に戻ってきた。鶴原に挨拶をして別れると喉が渇いてきたため自動販売機に向かうと先客がおり。「あ?おー傑か。」と此方に気付き軽く手を上げる五条。どうやら機嫌は治ったようでいつも通りのようで。此方も軽く手を上げ飲み物を自動販売機で買えば隣に腰を下ろしながら「玲司と図書館に行っていたらこんな時間になっていたよ。」と述べて。その言葉を聴けば五条は眉を顰め後頭部で手を組み背もたれに反り返り天井を仰ぎながら「玲司と?彼奴とつるんでても面白くねーだろ。何考えてるか分かんねーし。」と述べており。)
いろいろあるから迷うよね。
(店を出ればショッピングモールに向かい様々な服屋を周り物色する。己も男性の服屋を見ることは無いため珍しくていろいろと眺めており。虎杖も新鮮そうに試着したりしており、その様子を見ているだけでも楽しくて眺めており。すると、自分では決めかねたようで何方が良いかと訊ねられた。己もファッションは得意ではなく釘崎のように的確なことは言えないが自分なりに考えてみる。何方もよく虎杖に似合いそうだがアクティブ系の方が虎杖に合っている気がする。己の好みもあるかもしれないため好みだと言いながらアクティブ系の服を指さして。)
どっちも虎杖くんに似合いそうだし、迷うけど…私はこっちの方が好きかな。野薔薇みたいにファッションのことよく分からないから的確には言えなくてごめんね。
トピック検索 |