スレ主 2023-12-10 17:44:55 ID:896f7f474 |
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>120 ことも、ALL
【廃屋敷/リビング】
攻撃は確かに命中した、しかし手応えが軽い。人と同じ形をしていると予測を立てていたが、どうやら読み違えていたらしいと眉を顰めた。ノコギリ鉈を引き戻し、即座にバックステップを取って距離を離す。霧は四方を囲むように揺らいでいるが、回避の難しい同時攻撃を仕掛けるつもりだろうか。しかし予想に反して攻撃が来ることはなかった。隙を晒したにも関わらず仕掛けて来ないその訳は、様子を伺っているのか、はたまたいつでも倒せるという意思表示か。どちらにせよ反撃が来なかった事で、狩人は体制を立て直す時間と眼前の見えない敵に対する考察の時間を得ることが出来た。姿が見えないのなら、輸血液をぶつけたり発火ヤスリで点火したノコギリ鉈で炎上させてみたりして居場所が分かり易いようにしてみるか。前者は少々勿体無いし、後者は当たり方や敵の大きさによっては屋敷ごと炎上させてしまうかもしれない。ならば“彼方への呼びかけ”を使ってみるか。弱点がどこにあるか不明で四方を囲まれた今なら全方位攻撃は有効に思えるが、現状水銀弾の補充手段が己の血液のみな以上、水銀弾の消耗が激しいこの秘技を使うのは少々躊躇われる。しかし弾を出し惜しんだ末に己が死ぬのでは本末転倒、使うしかないだろう。獣狩りの短銃をベルトに下げ、ポケットに仕舞われた精霊──宇宙のように透き通った深い藍色の体を持つ軟体生物、“彼方への呼びかけ”を行う際の媒介にする──を取り出そうとして、この屋敷に入ってくる何者かの気配を感じ取った。先程までは不可視の敵に全ての神経を集中させていたので分からなかったが、一旦考察できる程の余裕が生じた事で気付く事ができた。敵の新手か、それとも偶々迷い込んだだけか。それを見極めてからでも秘技を使うのは遅くないだろう。ポケットの中に手を入れ、精霊を握りしめながら、此方に来るであろう誰かを待った。
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