僕の内側 〆

………、…。

(とあるアパートの一室の前でポケットを探り、見つけた鍵を鍵穴へ。先程相手へ手渡した紙切れの裏に、小さく住所と連絡先を書いておいたが、我ながら古臭い誘い方。と首を捻った。)

…此処かな。合ってると良いんだけど。（緩やかな足取りで辺りを見渡して）俺も時間ある時に相手してくれれば良いから、タイミング良い時によろしくお願いするね。

…待って、今日ほんとなんかタイミング凄い合うの何なの…(笑い堪えるように口に手を添えながらスマホ片手に階段上り)…仕切り直し。…来たよ～、リンリン。

…そんなの、僕だって知らないよ。
(ふと背後から声が聞こえれば、階段を上がってくる姿が見えて、笑いを堪える相手とは対照的に冷静に答える。)

でも、よくすぐに分かったね。
迷うかと思ったのに。

気が合うんじゃない？…ていうのを期待したのに。冷たい。(片眉下げながらも釣れない彼には余韻のように愉しげに)
世の中地図アプリあれば何処でも行けるよ。…まあそれでもその辺1周したよ、ちょっと方向音痴なんだよね…寒くね？(彼の方歩み寄れば外気に肩を震わせて)

……まぁ、とにかく入れば？バイトの時ほどもてなせないけど。
(気が合う、という言葉が喉まで出かかっていたとは言えず、玄関の扉を開ければ入室を促し。
部屋自体は白くシンプルで上等そうだが、家具等は質素で、必要最低限のものしか置かれていない。目立った家具といえば、寝具とテーブルにソファーのみ。)




そういえば、こっちでぐらい簡易的だけど書いとく。

25歳/168cm/金髪で襟足の長いウルフカット
童顔で幼めな顔立ち/お洒落好きで個性的だったり中性的な格好をよくする。/昼間と夜でバイトを掛け持ちしている/常に金欠

いーよ、サークルでだってどうせ飲んでるし。…つかこちとらダチのつもりで来てるんだからマジで気ぃ使うの禁止。(お邪魔します、と小さく添えて中へと。周りを見回しながら奥へと進んでいって)…ミニマリスト？(ふとそんな疑問湧いて彼の方向き直り)



あっちに置いたけど倣って俺もちょっと追加しつつおいとこ。

22y/173/65
アッシュブラウンのマッシュショート/前髪は6:4分け眉に掛かる程度/二重の垂れ目/温和そうな年齢相応の出で立ち/灰色オーバーサイズスウェットパーカー/カーキカーゴパンツ/黒スニーカー

まぁ、僕もそもそも気を使う気はないんだけどね。
(きっぱりとそう返答すると、部屋を見回す彼へ そんな感じ、と疑問に対する答えを。)

金欠って前も言ったでしょ。
家具もほとんど貰い物だし、わざわざ買ったりもしてないから少ないだけだよ。
(そう言いながら着ていた上着を脱ぎ、荷物をテーブルの側へと無造作に置いて。)

……あれ、リンリンに別に気を使われてないなそもそも。
(そもそも昨日今日の仲なのを思い出しながらソファに遠慮なく腰掛けて)
ん。…リンリン普段どう過ごしてるのよこんな殺伐として、…えー、…(スマホを裏側にしてテーブルに置いたら背もたれに上体預けて)…とりあえず隣、来て。

慧だって、割と遠慮ないでしょ。
(遠慮なく腰かける相手にやや呆れ気味で息を吐きつつ、とりあえず冷蔵庫から水を取り出す。)

どうって、ほとんどご飯食べて寝るだけだよ。あんまり家で一日過ごすことないし。………、なに？
(水を1口飲み言葉を続ければ、一応言われた通りに隣へ腰掛けて。)

無いねえ。理由は色々あるけど、リンとは仲良くしたいから失礼する。
(薄い笑みを浮かべ頬杖、肘と膝突き合わせながら。素直に座る彼には意外そうに少し目を開いて)

そんなことあるんだなあ。…何って用事は特には無いんだけど、…うーん、(考えるよう1度目を閉じ、開いて。少し首を傾げて彼を覗くように見たりして)…俺あんまり役に立たないと思うけど、…やっぱあんな話聞いてなんも感じない訳では無いからさ。…んで、1人じゃ不安じゃないかとも思うから、呼んでみた。…て、理由じゃ駄目かな。(説明が普段からあんまり上手い自負は無くて、眉を下げながら自信なさげに問いかけ)

…いや、こっちこそ、ホントにつまんない事情だし、聞いてもらうのもなんか、むず痒いって言うか。
(どう言っていいか目線を泳がせながら、ふとガーゼや絆創膏が貼られた頬にそっと触れる。)

まぁ、でも、慧には、何となく聞いて貰いやすいような気がした。誰かを家に呼ぶなんてしないのに…アンタの言う通り、不安だったのかな、分かんないけど。
(ゆっくりと伸びをすれば、自分もソファの背もたれに身体を預け、肩を竦めると相も変わらずの声音で話し。)

……自分が痛めつけられる事情がつまらないとか全然意味分からないからね。…多分俺は全然助けになれないけど、…理解くらいはしたくて来たんだから。(こと更に眉間に皺寄せながら肩を落とし、合間で小さく息を吐き出しながら言い、)
もー、…俺が悪い人だったらどうするんだか。…んで、どうしたいのそれって。…2択やるよ。(呆れたような物言いしつつもふと横目に彼を見ると、)お友達として気が済むまで話してみるか、…俺がゲイなのを承知でただ甘やかされてみるか、…選んで？(彼側の自分の片腕を軽く広げ、目配せのように軽くニッと笑みを結びながら視線のまま問いかけ)

──甘やかされる、か、めちゃくちゃいいじゃん、それ。
(2択を提案されればため息混じりに小さく笑い、広げられた腕元にそっと自分の頭を凭れて目を閉じる。…が、すぐに起き上がり相手のおでこにデコピンを1つ。)

って、言いたいところだけど、遠慮しとく。これはただ、僕の独言に付き合ってもらうだけだから。
(自分に言い聞かせるかのように淡々と述べると、「まぁ、それだけでも悪いとは思ってるけど」と付け加えもう一度水を飲んで)

……、って、わ、(誘いに乗るのは意外そうな顔をしたものの大人しく伏し目に彼を迎える様姿勢そのままで―…いたら突然のデコピンに一瞬反応遅れたためそのまま綺麗にヒットしてぎゅっと反射的に瞬きし)…いだい、…ええ…役得かと思ったのに。(至極残念そうにしながら腕は引いてその手を自らの額に当てて撫でつつ)…なんでも良いよ、気が軽くなる手伝いしか俺は出来ないと思うし。…あと、俺が自分の意思で来たんだから悪いとか無いよ、絶対。(言いながら緩く足を組み、お好きなタイミングで、という風に視線合わせながら小さく口の端持ち上げ)

(痛がる相手に悪戯っ子のように小さく笑うと、気を取り直すかのように咳払いをしてもう一度隣へ座り直す。相手の言葉を聞けば、前傾姿勢になり頬杖をつきながら、ゆっくりと口を開いた。)

─…元カレは、ギャンブルとかお酒とか浪費癖が酷くて、僕の金を散々喰った挙句に女と浮気されて別れたんだけど…。
昨日、久しぶりに連絡が来たから、つい、会っちゃって。でも、結局は金が欲しくて来ただけで、ムカついて言い合いしてたら、殴られた。
……その後、借金取りも来て、僕もむしゃくしゃしてたし、金も足りなかったしで、そっちにもやられちゃって。

……喧嘩弱そうなのに何でそんな、…ていうかツッコミどこが多いんだけど…！（相手の言葉の端々でびっくりした様に目を見開いたりしながら一通り耳にしたのちに言葉を作ろうとするも上手くいかず自分の側頭部をくしゃと指先で掻いて）…馬鹿じゃん、何なんだよそれ。金のことは何ともならないから、言えることは何も無いんだけど、…リンは、自分大事にしなさすぎ。…駄目だよ、そんなの。（顔中に貼られた傷跡を隠す類のものを横目に溜息を吐いて、無意識的に彼の肩口近くに頭を寄せて）…て言うか、一個気になるんだけど元カレとやらはまだ好きなの、それって。

嫌いだよ。僕の可愛い顔を殴りやがってさ。
…でも、惚れた弱みってのは、あるかも。初めての彼氏だったし。
そもそも親もア ホでさ、借金まみれなのは元からだし、借金取りの件は親絡み。偶然、会うのが重なっただけ。
……そんな親の元にいたし、多分、頼りにされると嬉しくなっちゃうんだろうね。
(喧嘩が弱そう、の言葉には一瞬むっとし言い返そうとするが、首を横に振って思考を戻す。元カレの顔を思い出せば、んー、と考える素振りを見せつつ、小さく返答を。
そして、誤解を招かぬよう親のこともさらりも伝えると、ふと近づいてきた彼の顔を見てゆっくり立ち上がり、徐に冷蔵庫からビールを1つ取り出す。)

それに、僕は、僕が1番大事だよ。
働くのだって、金返さなきゃなのは勿論あるけど、好きな洋服も、コスメも欲しいし、接客してる時が1番楽で、好きだから…、。

…案外良い性格してるよねリンリン。……愛なのかなあ、これも、…俺はあんまり理解出来ないんだけどね。人の気持ちとかに、性格上そこまで寄り添えなくて。
…人に必要とされたいみたいなやつなのかな。…でも俺は自分好きならこんな怪我増やさないでほしい。…色々台無しだろ、こんな。化粧だって出来ない。
(考えをそのまま口にする様緩慢な返しを繰り返し、ビール缶取り出す仕草には頬杖する姿勢に直しながら横目に捉え「飲むの？」とだけ問い)
無愛想な割に接客好きなのは割と意外だね。…好きなものいっぱいあるじゃん、良かった。そういうの聞けると安心する。

褒め言葉？ありがとう。
(クスリと笑いながらそう言うが、その顔は謙虚さの欠片もなく肯定さに溢れていて、そのまま言葉を続ける)

理解出来なくてもいいんだよ。僕だって、自分のことでもよく分かってないし、寄り添うのも苦手。
……今回は、僕も短気になって無茶したから、もうしないよ。痛いのは普通に嫌だしね。
(飲むの？の問いには頷いて缶を開け、炭酸の漏れる音が部屋に響く。そのまま1口仰ぐと、相手にも同様な質問を尋ねるようにそのまま手にしたビール缶を差し出し視線を送ってみる。)

………“必要とされたい”か、もしかしたら、それが近いのかも。
だって、「ありがとう」とか「頑張ってるね」って、言われたいもん。こんな部屋にずっと独りでいても、誰も言ってくれないでしょ。