ジャック 2023-10-06 23:38:18 |
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( 此方から問い掛けたにも関わらず男の声は果たして耳に入っているのか否か判然としない調子で相手の様子を見詰め / あまりに可愛らしい表情にうっとりと目を細めれば束の間男の存在も忘れ目元へ口付け / ソファを立った男が隣室へ消えるのを横目に見届けてから軽く唇を食むと触れ合わせたまま不満げに零し )…一年もあの辛気臭ェツラ見ンのか。
( この状況にも関わらず触れる体温が心地良く鼻先を擦り合せ / 相手のされるがままになっていたが不満げな声が聞こえれば顔を上げ / バツが悪そうに謝罪を告げて / 身を翻して先に男の入っていった部屋へと歩を進めて )…悪い。俺のせいだ。
( 触れ合う鼻先の感触に思わず笑みを零すも随分と素直に告げられる謝罪と自責的な言葉に思わず瞠目し / 部屋の方へと歩き出す相手の腕を唐突に掴み力づくで引き寄せると勢いのまま再度唇を重ね / 一言告げると相手の腕を掴んだまま部屋へと向かい )…お前のお陰で退屈してる暇もねぇよ。
( 唐突に重ねられる唇に思わず目を見開き / 目を瞬いている間に半ば引きずられるようにして部屋へと踏み入り / 部屋の大まかな間取りは先程と大して変わらないものの隅には仰々しい活版印刷の機械が並べられており / 中央に鎮座している手術台の前には男が無言で佇んでいて )
来たな。そこに座って腕を出せ。( 顎で相手に向けて手術台をしゃくり / 右手にルーペ、左手に小型のライトを持っており )
( 踏み込んだ部屋の内装へ無遠慮に視線を走らせ / 何とも独特な雰囲気に居心地の悪さを感じながらも示されるまま手術台へ歩み寄り / 腰を下ろすと両手の甲を男の方へ差し出して )
( 相手の直ぐ傍で監視するように仁王立ちして / 先ほど仕舞い込んだ銃を再び取り出すとこれみよがしにチラつかせ / 男に向けて牽制するように鋭い眼差しを注ぎ )
邪魔だ。( ライトで手の紋様を照らしながら何事かぶつぶつと呟いており / 隣に仁王立ちしている為か陰になっている部分を鬱陶しそうに見るとそのまま一言零して / やがて観察し終えたのか此方を見ないまま何やらルーペを弄りだして )まあ良い、大体わかった。後は一年以内にレッドキンジアのスタジオに来い。……どうせ、旅人は一度其処を目的とする。
( 今更男が何かを仕出かすとも思えず警戒心剥き出しな相手の様子に視線を遣り / 男が何やら呟いているのが耳に入るも聞くでもなく明後日の方をぼんやりと眺めており / 気付けば作業を終えたらしい男が口にした耳慣れない地名に目を瞬くと問うように相手の方へ視線を向け )
……飛行船の離陸場がある国だ。一言で言えば技術大国、…向かおうとしていた地点だな。( 相手から視線が向けられれば訥々とした調子で言葉を並べ / 用が済んだならこんな場所はさっさと後にしようと相手の腕を掴んで軽く引つ張り )
報酬だ、必要なら持っていけ。( 後は興味を失ったというようにぶっきらぼうに言い放ち / カルテらしきものに何やら記入しながら横目で机の上に無造作に置かれた札束を見て促し )
あァ、飛行船か。楽しみだな。( 相手からの解説を聞けばあまりにも呑気な様子で呟き / 腕を引かれるまま立ち上がり / 不意に男を見れば札束に目を向けるでも無く端的に尋ね / 自らが組織に居た頃に関わりのあった男の名を挙げ )…公社の実権はまだ清祥が握ってんのか。
( 目を眇めると片腕を伸ばして机上から無造作に掴み取り / ふと相手の口から零れ出た名前に意識が向けば微かに口元を歪めて / 引き止められないのであれば腕を引っ張ったまま元来た道を戻っていき )
知らん。ただの取引先だと言っただろう。( 一瞥もくれないまま作業を続けており / 変わらず淡々とした物言いながらこれ以上の情報を差し出す気は無いようで )
( 何事もなく外に出ると相手の腕を離し / 後ろから腰に腕を回すと肩に顔を埋め / そのまま分かりきった問いを低く呟き )……清祥ってお前の元ボスか。
( 先程から虫の居所が悪いらしい事は察しており腕が離れるのと同時に口を開くも腰に腕が回されると言葉を呑み込み / 肩口に柔い重みを感じればほぼ無意識に後ろ手に髪を撫で / 思いも寄らない問いに目を瞬かせて頷くも一瞬の間の後弁明のように告げ )…あァ、…別に聞いたのに意味はねぇよ。今の組織がどんなモンか知れたら動きやすくなると思っただけだ。
…それだけか?( 髪に触れる手に僅かに表情を緩めながらも声音は鋭いままで / 不意にするりと腕を解くと次の瞬間手近な壁に相手を押し付けて / 壁に後頭部が当たらないよう咄嗟に片手で相手の頭を覆いながら、鼻先が合わさるほど近い距離まで顔を近付け / 眉を下げて意味の取れない一言を零し )……名前、
そうだよ、別に何も、っ、( 重ねられる問いへ心外とばかりに肯定し更に言い募ろうとするも不意に目の前に相手が現れたかと思えば壁に背を押し付けられ咄嗟に口を閉ざし / 眼前の相手へ問うような視線を向けるもその表情が目に留まれば胸の奥が疼くような疼痛を感じ / 口にされた一言の意図が分からず問いながら片手で相手の髪を梳くように指を通し )…何だ。
……もう其奴の名前呼ぶな。( 常に無く拗ねたようにぼそぼそと一言の意図を付け足し / 変わらず髪を撫でる指に表情を和らげつつも片腕を相手の腰に回してきつく抱き / 肩に顔を埋めると首筋に擦り寄せて )
…分かった。( 相手の言葉を聞き届ければ小さく頷き / どうやら不貞腐れているようであるらしいとは思いながらも先程の様子と言い寧ろ弱っているようにすら見えれば相手の髪に頬を寄せ / 片手を背に回し宥めるように撫でて )…どうした、何をそんな気にしてンだよ。
お前は俺のものだ。( 質問には一切答えること無く背を撫でる手を甘受して / 言い切ってしまうとややあってゆっくりと身を起こし / 身を翻しここに来るまでに乗ってきた車の方へと歩きだして / 細工をされていないか軽く確かめた後車内へと乗り込み )
お前だって俺のモンだよ。( 聞こえた声に同様に返しては相も変わらず背を撫で続け / 相手が体を起こすのに合わせ手を解き / 離れて行く背を眺めて束の間思案するもののやがて相手の後に続き車に乗り込み )
……、( 何も答えることなく肩を竦めて同意を示し / やがて相手が車に乗り込んでくれば早々に車を発進させ / 日も暮れ掛け薄暗い道を走らせながら独り言のように呟き )……いっそ潰しちまうかな。
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