ジャック 2023-10-06 23:38:18 |
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な、っ、( 耳馴染みのある独特な響きの言語を聞き取れば僅かに瞠目し / 戸惑いと脳裏を埋めるあらゆる仮説に束の間言葉を無くしていればあっという間に男の姿は消え / 立ち尽くしたまま手の甲の入れ墨に視線を落としては束の間逡巡するように黙り込んでおり / 思案の最中聞こえた問い掛けには端的に答え )…見つかンのも時間の問題だってよ。色々知ってるらしいぜ、コレの事とか。
……どうする?( 相手の言葉に無言で片眉を上げると男の消えた先に視線を落とし / 幾つかの可能性を脳裏で推敲しては相手に選択肢を委ねるように顔を上げて尋ね )
……まあ大抵の事はお前が何とかすンだろ。( 暫し顔を顰めて無言で思案しているも不意に表情を和らげると投げ遣りな物言いで告げ / 後ろ手に指の背で相手の胸元を軽く叩くとそのまま階段を降りていき )
…俺の責任重大すぎねえ?( 苦笑しながら相手の後に続き / 銃口は降ろさないまま階下へと下って )
( 降りた先は銀色の道具が散らばるコンクリート調の無機質な部屋で / 中央に手術台のようなベッドが置いてあり / 傍らにあるソファに浅く腰掛けるようにして先程の前髪の長い男が座していて / 男はちらりと目を上げたきりで独り言のように呟き )……来たか。
…お前誰なんだ。公社と何の関係がある。( 階段を下った先にある室内の様相に素早く視線を走らせた後傍らに座る男へ目を遣り / 属していた組織の幾つかある通称の内表向きの名称から取った呼び方で引き合いに出せば端的に問い )
( 無言で相手を見遣るとその手に視線を向け / 投げかけられた質問にはこれもまた端的に答えて )彫り師。公社は取引先だ。それ以上でもそれ以下でもない。
( 相手と男の動向を見守り / 話の成り行きが自身の意識外で進んでいくことに不満そうな表情を浮かべながらも言葉は発さないままで / 代わりに男の背後に忍び寄るとその頭に銃を軽く押し当て )
理由は最初に言ったはずだ。よく見せろ、と。( 相手の言葉に肩を竦めると視線は指に流れ / そのまま相手の身体に掘られた刺青を辿るように目を動かし言葉の意図を滲ませて )
……さっきから聞いてりゃお前、俺のモンを勝手にジロジロと…( そろそろ面白くなくなってきたのかあからさまに表情を歪ませて / 制止がなければほとんどトリガーを引きかねない調子で指に力を込めて )
…こら、殺すなよ。( 続けようとした問いは相手の声に気を取られ声にならず / 鋭く男に向けていた視線を和らげて半ば困ったような表情を浮かべると軽い口調で窘め )
…( 如何にも不満そうに渋々銃を取り下げて / 代わりにソファの脚をガンと蹴り / 本当に珍しく殺意さえ滲ませて眼の前の男に耳打ちし )…おい、指先一本でも彼奴に触れたら撃つからな。
( のんびりとも取れる調子でやり取りを聞いており / 脅しにも動じた風はなく緩く首を傾げると服の内側から一枚の紙を取り出して / 座ったまま机の上に差し出し )此方の目的はお前のタトゥーを研究すること。…それで、割の良い取引を提案するのはここまでだ。拒むなら、対価の前にお前の情報を組織に差し出す。
( 男の奥にこれまで目にした事の無い様子の相手の姿があればつい物珍しげな視線向けるも意識は直ぐに取り出された紙へ向き / 自分の代わりに紙面を確認するよう無言で相手へ目配せし / 淡々と告げられる言葉に口元を笑みの形に歪め )…随分強気だな。この場でお前を殺す事だってできるんだぜ。
( 未だ不満げながらも相手の指示に従って机から紙を取り上げ / どこから取り出したものが赤いペンを走らせ書面の幾つかの文に訂正を施して / 相手の言葉を待とうと再び顔を上げ )
殺して何になる?我が殺された所で、情報の流出は止められない。…お前達が選べるのは、取引か、さもなくば挽肉だ。( 表情には全く出ないものの指で机を叩く仕草から苛立ちをにじませており )
…俺はどっちでも構わねぇよ、お前の後ろに居る奴に聞いてくれ。其奴が嫌だってンなら挽肉になる他ねぇからな。( 幾ら仮説と目算を立てた所で状況が好転する事も無く、不意に肩を竦めると相手の方へ視線を遣り / 契約内容を知るのも此方の身の振り方に関し物言いたげなのも相手の方であるのを思えば判断は一任してしまおうと笑みを浮かべて告げ )
お前を挽肉にさせる訳ねえだろが。( 相手の言葉に些か眉を寄せて苦言を呈し / 赤色でペンを入れていた箇所を示して男に淡々と示し / 赤いペンを挟んでいた片手に新たに黒いペンを差し挟むと男の方へ突き出し )…この文は絶対に除かせてもらう。それとここもだ。契約にはこのペンを使え。疑うなら俺が先にサインをする。
……( 溜息をつくと特に否を発するわけでもなく諾々と署名して / 変わった形の印章を取り出すと早々に契約書に捺印し / 朱雀の紋様が紙面に出現すると後ろ手に突き返して / 皮肉げな調子で片眉を上げ )契約成立だ。…お前の保護者は過保護だな。
( 苦言に対し場にそぐわない愉快そうな笑みを返して / 笑みを噛み殺しながら遣り取りを眺めており / 揶揄の響きのある言葉に何処となく満足げな笑みを浮かべると訂正も兼ねて平然と告げ )可愛いだろ、俺の番だ。
…ソドムか。まあ何でも良いが、お前の墨は我の観察対象になった。期間が終了するまでは指示に従え。( 片肘をつくと呟くように言葉を発し / 変わらず淡々と受け答えて / 目線は相手の首筋から見える刺青へと向き )…そっちも研究したかったが、お前の番からは手しか許可が降りなかった。
( 不快そうに眉を顰めたまま契約書を受け取り / どうにか飛んでしまえないかと考えながらも自分の感情を除けば一先ず男の指示に従うのが最善手と理解し歯噛みして / 駄目押しとばかりにまたソファを蹴り )
…ジャック。( 契約書にサインをしてしまった以上は男の言葉に従う他無く肩を竦め / とは言え何かと言いたい事やら疑問はあるがそれよりも何やら先程から不服そうな相手の様子が気に掛かれば徐に名前を呼んで手招きし )
んだよ。( 相手に呼びかけられれば最早条件反射のように其方へと近付き / 介入するつもりはないのか静かに見守っている男を背後で警戒しながらもなにか言いたいことがあるのかと相手の元で少し身を屈め )
( 此方へやって来た相手が直ぐ傍で身を屈めれば其方へ片手を伸ばし機嫌を取るように顎の下を擽り / まるで動物を愛でるような手付きで空いている手で髪を撫でながら男へと横目で視線を遣り )言う事聞いてやる分には構わねぇが、その期間とやらはいつまでなんだ。
( 顎に手が伸ばされれば一瞬驚いたように目を開くも直ぐに受け入れて眉を下げ / 髪に触れる手に擦り寄り喉を鳴らすような調子で目を細め )
一年。その後は交渉だ。( 眼の前の光景に呆れたように首を振り / やがてゆっくりとソファから立ち上がると裾を翻して隣の部屋へと入り / 入室直前に振り向いて相手の指へ目を向け )今日の所はそれを撮るだけで勘弁してやる。来い。
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