ジャック 2023-10-06 23:38:18 |
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( 相手の物言いに愉快げに口角を上げ / 車体を器用に操り入口を塞ぐのを見れば思わず眉を上げ / 相手に続き車を降りると此方を見る男の顔をまじまじと眺めた後肩を竦め )…知らねぇな。顔なんか覚えてねぇし。
……お前が知らねえならお手上げだ。( 頭を降ると軽く車体を蹴り / 僅かに車体が揺れて数秒、運転席の窓が開かれるとその窓からぐっと身体が乗り出され / 不意を突かれた刹那に胸元へ名刺らしき紙片が押し付けられており )
( 名刺を押し付けると其方の用は終わったとばかりにもう片方へ向き直り / その指の入れ墨をまじまじと見つめるとその視線自体が脅しのように顔を上げ )…店主の遣いで来た。悪いようにはしない、だと。
……は、お前からの口説き文句くらい当てになンねぇな。( 窓が降りたかと思えば不意に横にいる相手の元へ伸びる腕に一歩反応が遅れ / 害は無かったようだがその荒っぽい手付きで相手に触れられた事が些か癇に障ると無言で顔を顰め / 次いで此方を向いた男の視線の先に気付き目を細め / 何をされる物か検討もつかない台詞は凡そ信用には値せず、会話をする気すら無いと態度で示すように男の言葉が聞こえて居ただろう相手を横目に見遣り口角を上げ / どうやら刺青の意味を知る者が存在するらしいと判断すれば警戒心を隠そうともせず隣に居る相手へ短く問い )殺すか?
商人サンのセールストークには負けるね。( 冗談のように返しながらも銃口は下げないままで / 片手で押し付けられた紙片を目の高さまで摘み上げて / 簡素な名刺にはタトゥースタジオの文字が印字されており住所らしき場所が小さく隅に記され / 横からの視線を感じ取ると同じく視線を返して / 特に動揺もしておらず押し黙っている男の姿に目を細めながら考えるような素振りを見せて )……いや、蜥蜴の尻尾切りになりかねん。こいつの言い分を信じるなら、あくまで遣いらしいからな。
( 相手からの返答に状況にそぐわない呑気な笑みを零し / 相手の言葉に片眉を上げると不満げに告げ )まさかこのまま帰してやるつもりか?
いや?案内してもらうんだよ。親玉の所までな。( 運転席のドアをいきなり開くと瞬間の内に男の足へ鎖の長さにいくらかの余裕がある枷を掛けて / 車内の様子を軽く確認すると相手に向けて顎でしゃくり )俺後ろで見てっから、お前こいつの隣の席に乗れ。適度に圧掛けといてくれ。
はァ?本気で言ってンのか?( 選択肢にすら無かった返答に瞠目すると非難すら含んだ声色で問い / 口にする間にも早々に男の足へ枷を掛けてしまう様子に止めに入る隙も無く溜息を吐き / 肩を竦めると指示のまま助手席へ乗り込み )ッたく何考えてンだか。
よく分からんままにしとくのは尻の据わりが悪ィだろ。……まぁ、お前が気に食わなかったら殺して良い。( 特に気にした風でもなく飄々と肩を竦め / 自身は乗ってきた車に再び腰を落ち着けると来たときと同じ様に小回りさせて相手の車の背後へと回り込み / 前方の車が発進すればその背にぴったりと着く形でタイヤを転がし )
( 指示に従う様子を見せて車を発進させ / 迷いのない手捌きで道を進んでいき / 隣席にも構う様子は見せず )
( 相手の言い分が腑に落ちたわけでもないがそれ以上何を言うでも無く / 不服を隠そうともせず窓枠に頬杖をつき窓の外へ視線を遣り / 不意に口を開くと母国の言葉で問い / 言外に指に彫られた文字を示し )…お前、これが何だか分かってンのか。
知らない。俺は命令に従っている。( 淡々と応えるとその後は無言でハンドルを握っており / 幾らもしない内に細い路地裏の奥にある白い車庫らしき場所へと辿り着き / 目的地であることを知らせるように同じく無言で降車を促し )
( 相手と得体の知れない男が乗る車の後ろを一定の距離を保ちながら着いていき / やがて目的地らしき場所に到着すると停車して / 片手に鞄を持ち懐に忍ばせた銃を確かめながら車を降り / 眼前の車へと歩み寄って相手の姿を待ち )
( 何とも簡素な返答に此方から言葉を返すでもなく思考を巡らせ / 幾つかの最悪を想定した仮定を立てておき心積りをする中不意に車が停車すると素早く周囲へ視線を走らせ / 促されるまま車を降り )
( 相手と一緒に降りてきた男の方へ歩み寄りその頭に銃口を突き付けて / 特に何も言わないまま鎖で繋いでいるために少し歩きにくそうな男の背中を片手で押し / 案内しろと言う意図はそれで察せられたのか車庫中央に取り付けられた扉へとのろのろ歩き / 相手が着いてきているかどうか視線で確認しながら男が扉の鍵を開けるのを気配で察し )
( 開いた扉の先は地下空間に繋がるような階段が視認され / 踏み入らないまま男の動向を見守っていると不意にその姿が眼前から消え去り / 次の瞬間には自身と同じような背丈の黒髪の男が階下からのっそりと姿を表して / 咄嗟に銃口をそちらへと向け )
( 銃口にも構わず視線は背後へと素通りして / 長い前髪の奥から指の入れ墨に視線を向けると遠慮もなく人差し指で示し / 淡々とした単語を並べるような喋りで目的を話し )久々にそれを見た。よく見せろ。報酬は払う。
( それまで目で追っていた男の姿が不意に消えると反射的に周囲へ視線を走らせ / そうしている間にも現れた男へ視線を戻せば告げられた言葉へ僅かに眉を顰め / 元来他人から無遠慮な視線を向けられる事を好まず警戒も拭えなければ至極素直に短く答え )…嫌だ。
……『逃げてきたんだろう?その指、見つけられるのも時間の問題だ』( 慣れては居ないが聞き齧っただけではないような言葉の使い方で『組織』特有の言語を口にして / 長袍を翻すとそのまま階下へと降りていってしまい )
( やり取りに対して何もピンと来てはいないがそろそろ始末を考え出した段階で相手に視線を向け / 再び姿を消した男の後を追うでもなく相手に耳打ちし )……何て言ってた?
な、っ、( 耳馴染みのある独特な響きの言語を聞き取れば僅かに瞠目し / 戸惑いと脳裏を埋めるあらゆる仮説に束の間言葉を無くしていればあっという間に男の姿は消え / 立ち尽くしたまま手の甲の入れ墨に視線を落としては束の間逡巡するように黙り込んでおり / 思案の最中聞こえた問い掛けには端的に答え )…見つかンのも時間の問題だってよ。色々知ってるらしいぜ、コレの事とか。
……どうする?( 相手の言葉に無言で片眉を上げると男の消えた先に視線を落とし / 幾つかの可能性を脳裏で推敲しては相手に選択肢を委ねるように顔を上げて尋ね )
……まあ大抵の事はお前が何とかすンだろ。( 暫し顔を顰めて無言で思案しているも不意に表情を和らげると投げ遣りな物言いで告げ / 後ろ手に指の背で相手の胸元を軽く叩くとそのまま階段を降りていき )
…俺の責任重大すぎねえ?( 苦笑しながら相手の後に続き / 銃口は降ろさないまま階下へと下って )
( 降りた先は銀色の道具が散らばるコンクリート調の無機質な部屋で / 中央に手術台のようなベッドが置いてあり / 傍らにあるソファに浅く腰掛けるようにして先程の前髪の長い男が座していて / 男はちらりと目を上げたきりで独り言のように呟き )……来たか。
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