ジャック 2023-10-06 23:38:18 |
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よしよし、良い子。いっぱい覚えような、( 背筋を走るように湧き上がる征服欲に目を細め / ゆるりと手を持ち上げると相手の髪に指を通し、ほぼ耳朶を食むような距離で耳元に唇を寄せ / 興奮から少し上擦り掠れた声で幼子を褒めるような調子の言葉を口にして )上等な掌だろ、お前向けに誂えてんだから。……は、お前も随分熱烈だ。( 自然と上がる口角はそのままに小さく笑みを漏らし )…早い所嫉妬で刺し違えるくらいになって欲しいもんだな。…、( 強ち間違いでもない心境を吐きながら首を振り / 唇への感触を肯定と取ると少し乱れたシーツに相手の身体を沈め、先の情事よりは些か穏やかな甘さを帯びた行為に双方を導くことにして )
──、
──は…、暑…、( 荒い呼吸を繰り返しているうちに徐々に落ち着き始め汗も引いてきた頃小さく溜息を漏らし / 未だ体内に燻る熱が引かず鬱陶しそうに前髪を掻き上げ横へ払うと短い呟きを落とし )
…喉でも乾いたか。( わずかに乱れた自身の衣服を申し訳程度に直しながら立ち上がり、端に据え付けられた古い型の冷蔵庫から水の瓶を取り出して / クスクスと笑みを漏らしては見下ろした相手の頬に既にコルクの開けられたそれを押し付け )
ッ、…もっとマシな渡し方はできねぇのかよ。( 唐突に頬に感じた冷感に息を呑んで顔を顰め / 不満を零しながらゆっくりと上体を起こし受け取った瓶に口を付け )
…順調に開発されてるようで何より。( 視線を合わせようとしない相手の様子に笑みを含んだ声を掛けながら緩々と手を引き )ああ、それとコレ。( 掌に収まるほどの大きさのメタリックな銀の無線機を何処からともなく取り出すと、相手の居るであろうベッドに向けぽいと放り投げて )
…その言い方やめろ。( 頭ごなしの否定もできずむくれた表情で告げ )…何だコレ。( 放られた物を片手で受け取り目の高さに翳し / まじまじ眺め )
…俺に染まってるようで何より?( 少し考えた後大して変らない言葉を呟きながら頭を傾げて )無線機。この中じゃ連絡取れねえと不都合だろ、予め決められたもんなら文字も送れるぜ。( 指で指し示しながら機材の使い方を簡単に説明していき )
…仰る通り染まってるよ。このたった数日間でお前が居ないと生きていけねぇような大層我儘な体になっちまった。最後まで面倒見てくんなきゃ困るぜ。( 然程変わり映えのない返答に小さく息を吐くと開き直って肩を竦め )…別にわざわざこんなモンで連絡取ンなくてもお前が俺から離れなきゃ良いだけの話だろ。( 大人しく使用法に耳を傾け / わざとらしく片眉上げると平然と無理難題を口にし )
ふ、そうか。俺もお前が居ねえと生きてけねえからこれでフェアだな。……今度はお前からおねだりしてくれよ?( 相手の顎に手を添えるとクッと持ち上げて )…可愛い恋人のお願いを聞いてやりたいのは山々だが、根回し中はそうもいかねえんだ。分かってくれるだろ。( 相手の言葉に瞬きを落とせば微笑ましさにも似た苦笑を漏らして / 相手の前髪を指で攫うと額に軽く口付けて )
…驚いたな。お前からそう言われる日が来るとは思わなかった。……万が一にも俺の気が向いたら考えてやる。( 思ってもみなかった言葉へ眉を上げると愉快げに笑み / 顔を上げ相手を見遣ると多分に保険を掛けた言葉で返し )可愛くて物分りが良い恋人に感謝すんだな。じゃあコレに使う文字だけ教えてくれよ。…あとお前の名前。( 軽く目を伏せて額への口付けを受け / 無線機へ視線落とすと相手の名前の綴りを尋ね )
お前なんか退屈しのぎの一つだって言われると思ってたのか?…そんじゃ我慢比べだな。( 手を離すと緩く首を傾げて )……最初は簡単なのだけ教えといてやる。番号に言葉が割り振られてんだ。それぞれここを二回押すと“ Come ”、“ Yes ”、“ No ”( 相手の手元を覗き込み番号のボタンをゆっくりと切り替えながら、小さな液晶に表示される文字を一つずつ口にしていき )それからここに登録してあんのが“ Jack ”。そんでお前のスペルは“ Xiao ”、な。( 口の端を緩ませると慣れた手付きで機械を操作し、既に登録していた自身と相手の名前が表示されているディスプレイの文字列を示して )
…そこまでは思ってねぇけど、有り得ねぇ話じゃねぇか。…どうだろうな。( いずれ相手の言う“我慢比べ”になる未来は何となく見えているものの素直に認めるでも無く不明瞭な言葉を零し )…come…yes、no、……ジャック、紹…、…ムズい。( 顔を顰めて文字列を眺めながらぶつぶつと呟き / ぼんやりと見覚えのある記号の並びにしか見えず眉間に手を遣りながら溜息混じりに呟き落とし )
物分りが良いのも考えものだ。( 眉を顰めると苦言とも取れる言葉を口にして )…こういうのは書いたほうが覚えられる。( 苦闘している様子に知らず笑みを零し / 手を離すと申し訳程度に備え付けられている棚に歩み寄り抽斗を開け、ペンと革表紙のノートを取り出して / 机の前のソファに腰掛けると此方へ来い、と言うかのようにペンをくるりと回し視線を向け )
もっと物分りが悪くて馬鹿な我儘放題の俺の方が良いか?( 相手の表情に思わず笑みを零し / 口角上げてゆるりと首傾げ )…書くのは得意じゃねぇンだよなァ。( 言外に促されるまま立ち上がり / ぼやきながら隣に腰掛け )
それも良いな。お前の薬の効果にそんなのはねえの?( 片眉を上げて肩を竦め )お前これまで取引に紙面は使わなかったのか。随分取り立てに自信があったんだな。( 隣に座り込んだ相手に無遠慮な視線を向けて / 不意に手を取ると上から相手の掌を握り込む形でペンを持たせ / 掌同士を重ねたまま開いた紙面に“ Jack ”“ Xiao ”と整然と呼べるだろう字体で大きく書き付けて )…さあ、今度は一人で書いてみな。
そんな都合良い効能はねぇなァ。努力次第かもしれねぇけど。( 既に脳内で薬の調合へ思い巡らせ視線を虚空へ遣りながら独り言のような声色で応じ )あの辺の治安は最悪だったからな、わざわざサインさせてる暇がねぇ程客が居たんだ。それに俺の役目は精々客寄せパンダなんでね。パンダに契約書扱わせる奴なんか居ねぇだろ。( 肩を竦めて滔々と答え / 不意に手を取られ掌越しに紙面に書かれる文字へ視線遣り / 言われるまま同様な文字を書こうと試みるも言うまでもなく乱れきった文体で我ながら同じ文字を書いているのか判然とせず無意識に眉を寄せ / 随分と時間をかけて紙面にでかでかと乱れた文字を並べては横に並んだ整然とした文字と見比べ首を傾げ )…書けてンのか?コレ。
んじゃお前に教え込むしか道はないわけだ。…お前の薬作ってるとこも見てえな。( ふと脳裏に過った疑問をそのまま口に出して )へえ、治安の悪さにも種類があるんだな。…パンダ兼生産者だろ。これからは契約書も扱えるようになるんだから更に市場価値が上がるぜ。( 手を離し相手の書く文字を静かに見守りながらソファの肘掛けに肘をついて )初めてにしちゃ上出来だよ。慣れていけばいい。( 文字と表情に交互に視線を遣っては手を伸ばし、褒めるように相手の頭を柔らかく撫で )
俺に我儘の言い方なんか教えちゃ後悔するぜ。…また随分物好きだな。先に言っとくけど面白ぇモンはねぇぞ。( 片眉を上げると相手へ視線を遣りながら告げ )市場価値上げて稼いで、お前に貢ぐモンでも用意するよ。( 笑みを零して呟きつつ再度紙面へ同様な文字を残し )意外だな、褒めて伸ばすタイプか。( 頭を撫でる手に目を細め )
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