乙種七類型調査隔離　──番、〆

昨日の道程が割と順調だったからだな。…まあ着いても終わりってわけじゃねえけど。( 独り言のような呟きを添えて / 満更でもない調子で相手の掌に自身の手を絡め / 緩く首を傾けて相手を見据え )…ならお前の望む構い方にしてやる。言え。

…着いた後は？( 続けられる言葉へゆるりと首を傾げ / 問い掛けに笑みを漏らすと指先を絡めるようにして握り / 相手の肩口へ凭れ )甘やかしてくれりゃ良いよ。

まず宿取ってから飯。…ちなみに小せえシアターが寄せ集まってる所だ。パフォーマンスが好きなら楽しめるぜ。( 指折り数えながら相手に問いかけるような視線を向けて / 肩口に感じる感触に笑みを漏らして / 相手の髪に指を通し )…お前も甘え上手になったよな。前からか？

…見た事ねぇなァそういうの。( シアターと聞いても何が見られるのかがイメージできず首傾げ / 髪に触れられれば心地良さそうに瞼を伏せ / 問い掛けへ小さく笑み遠回しな言い方で答え )一つ願いが叶ったらまた別の欲求が出て来るモンだろ。

演劇、サーカス、オペラ、バレエ、後はなんだろうな…まあとにかくそういうのだ。( 相手の言葉に説明を試みるも一見したほうが早いと判断したのか途中でさじを投げ / 瞼を伏せる相手の様子に小さく笑むと髪に口付け / 相手の言葉の意図の全貌は把握できず再び首を傾げ )一つ目の願いは何だったんだよ。

へぇ、全部見れンのか。( 存在は知っていても実際に見聞きした事は無い物ばかりで目を瞬かせ / 目を伏せたまま重ねられる問いへ束の間の無言の後答え )…お前に四六時中引っ付いてられンのが当たり前になる事。

どうだろうな、それも運だ。何せ少し特殊な場所なんでね。（ 視線を上に遣りながら何かを思い出すようにして答え / 相手の言葉に一つ瞬いて / 言いようもない愛しさがこみ上げると腰に手を回して力を込め ）

運？( あまりにも端的で容量を得ない言葉に片眉上げ短く問い / 特に返答も無いまま腰へ回される腕に笑みを零し / 宥めるような手付きで背を撫でつつ笑みの混じる声色で呟き )…そのたまに黙ンのは何なんだよ。

演者の修行場みたいなもんなんだよ。そこで力が付けば都市部のステージに立てる切符が貰えんだ。( 聞き齧りに過ぎない知識をさも見てきたかのように口にして / 相手の肩に髪を擦り付けくぐもった声で小さく零し )…お前が可愛くて仕方ない、って時の沈黙だ。

…へぇ、そんなんあンのか。( 何と無くイメージができずぼんやりと呟き / 背を撫でていた手で髪に触れ頬を寄せながら心臓の辺りが疼くような感覚に目元を緩めて潜めた声で告げ )俺もお前が可愛くて仕方ねぇよ。

( 相手の返答を聞けば何事か企んでいるような笑顔を浮かべて視線を斜め上に遣り / 言葉に顔を上げると唇を重ね触れ合う距離のまま上機嫌に零し )…そりゃお前を好きな男が可愛くないわけ無いもんな。

…また悪巧みでもしてンのか。( 相手の表情を目にすれば恰も相手が常日頃から良からぬ事を考えているかのような物言いで尋ね / 顔を上げた相手と唇が触れ合えば目を細め / 小さく笑みながら答え )そうだなァ。初めは可愛さの欠片も無かったけど。

どうだと思うよ。( 相手からの言葉も強ち間違いでもなく否定の代わりにクスクスと笑みを漏らし / 片眉を上げると鼻先を擦り合わせて不満そうに応え )あ？そこそこの愛嬌はあっただろうが。

…その修行とやらを使って金を巻き上げる方法を考えてる。( 視線を虚空へ遣り束の間思案すると謎解きに臨むような調子で述べ / 鼻先がすり合わされる仕草にろくに触れ合った事も無い小動物の姿を思い浮かべてしまい相も変わらず緩んだ笑みを浮かべつつ此方としては至極真っ当な主張のつもりで答え )そうか？お前は俺を怒らせてばっかだったじゃねぇか。

半分当たりで、半分外れだ。( いずれにせよ此処で全貌を話してやる気はないのか言葉は暈したままで / 尤もな相手の言葉を何処までも自分に都合の良いものに置き換えながら緩く首を傾げ )こっちを見て欲しくて気を引いてたんだよ。可愛いだろ？

…お前あんま他人と関わンなよ。( どうやら答えが明かされる事は無いらしいと察すればそれ以上何を言うでもなく口を噤み / ふと相手を横目に見遣ると僅かに眉を寄せて釘を刺し / あまりにも耳触りの良い言葉につい笑みを零しながらも呆れを滲ませた声色で述べ )ンな事すんのは餓鬼くらいだと思ってたけどなァ。

…何を心配してんだよ。( 笑みを漏らしながら相手の頬に両手を伸ばして押し挟み / 呆れたような声音に態とらしく眉間に皺を刻み、如何にも不服げな調子で反論し )んだよ、そんな俺は気に入らねえってのか。

また人間が多いとこ行くンだろ。( 抵抗はしないまま憮然として相手を見据え / 問いに直接的な返答はせずに不満を零すような声で返し / 相手の表情が曇るのを目の当たりにすると宥めるように軽く下唇を食み )いや？年甲斐が無くて可愛いよ。

俺はお前しか見てないよ。( 笑みを零すと相手の頬に添えていた手で肌の曲線を撫で / 片手を頭に添えるとゆっくりとした手付きでポンポンと叩き / 返された答えには眉を上げると返答の代わりに唇を離し、相手の肩口に軽く噛み付いて )

…分かってる。( 相手に触れられる感触と甘ったるい台詞だけでいとも簡単に絆されると表情を和らげ / 何処となく決まり悪そうに視線を伏せて呟き / 肩への痛みにも満たない刺激に笑みを零しながら相手の耳元を撫で )何だよ、間違った事は言ってねぇだろ。