ジャック 2023-10-06 23:38:18 |
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( 深く穏やかな眠りに就きながらも相手の体温が離れて行けば僅かに意識が浮上するが覚醒には至らず規則的な寝息を立て続け / 暫くして漸く眠りから覚めた所で働かない頭が相手が隣に居ない事を認識すると重い瞼を僅かに開け / しかしどうにも起き上がる事ができず再び目を閉じると一体何処に居るかも判然としない相手の名前を掠れた声で呼びながら布団の上へ手を出し )…ジャック、
……、( 不意に呼ばれた自身の名前に顔を上げて / ソファから立ち上がりベッドへと歩み寄れば布団の上に出された手の手首を掴み / もう片手を相手の背に差しこんで支えとし、掴んでいた手首をぐいと引っ張る形で相手の上半身を起こさせて / 耳元に口を寄せて笑み混じりに囁き )…相変わらず朝弱えなぁ。
( 此方へやって来た相手にいとも簡単に体を起こされると思わず顔を顰めながら呻き声を漏らし / 耳元で聞こえる声に微かなくすぐったさを覚えつつ相手が近くに居るのを良い事に肩口に顔を埋めて答えにもなっていない一言を呟き )…眠い、
…寝てても良いけど置いてくぞ。( 肩の感触に微かな笑い声を上げ / 無論用事が終われば直ぐに帰って来るつもりではあるもののこのまま寝かせておくのも手かと考えており / 髪に指を通しゆっくりと撫でながら相手の返答を待ち )
…俺も行く…。( 髪を撫でられると余計に眠気を誘われゆっくりと頭を起こし / 大きな欠伸を零しつつ短く答えては緩慢にベッドを降り )
( あまりにも眠たげな様子に可愛らしさを覚えつつ隠さず笑みを漏らしてベッド端から立ち上がり / 相手の支度が終わるまで待つつもりで再びソファ上へと腰を落ち着けて / 広げていた地図に目を通しながら静かに珈琲を啜っており )
( 眠気を引きずりながら身支度を整えているうちに徐々に意識が覚醒し始め / 支度を終えて相手の隣に腰を下ろすと無言で地図を覗き込み )
( 支度を終えたらしい相手の様子を横目で見遣り / 相手が見やすいように地図を少し移動させるとある一点に指を置き / 何事か企んでいるような表情を浮かべながら唐突に問い掛けて )……お前、飛行船って興味あるか?
( 地図上の文字は言うまでもなく解読できない為大凡の地形でしか判断は付かないものの、今自分が居るのであろう位置は何となく覚えており地図に視線を落とし / 相手の指先が置かれた一箇所に視線を落とせばその問い掛けに一も二もなく短く即答し )ある。
ならとりあえずの目的地は決まりだ。( 一切の躊躇いの無い同意に笑みを零し / 地図を丸めてしまうとそれでポンと相手の頭を軽く叩いて / ソファから立ち上がると独り言のように零しながら傍の鞄に地図を仕舞い )…とは言えすぐには着かねえけどな。
( 頭に感じる弾むような感触に目を細めながら同様に立ち上がり / この目ではまだ見たことの無い飛行船へ思いを馳せていたところ呟かれた言葉へ問いを返し )どんくらいだ?
急ぐなら一ヶ月くらい。けど物見遊山になりそうなトコもあるし、道中寄り道はしてえな。……お前観劇の経験は?( ソファの背にかけていた上着を羽織ると購入した鞄を持ち / 今日受付に返すつもりで机の上の鍵を手に取ると首を傾げ、淡々と受け答えては疑問を付け加えて )
へぇ、楽しそうだな。( 相手の言葉に頬を緩めると何処か浮ついたような声色で呟き / 鞄を手にしつつ問い掛けにゆるりと首を傾げ )ねぇな。聞いた事はある。
お前がジッとしてられんならそれも寄り道の候補だって事な。( 手持ち無沙汰なのか片手で鍵をクルクルと回しては口角を上げ / 相手が着いてくるのならばそのまま宿を後にするつもりで戸を押し開けて )
してられる。( まるで落ち着きの無い子供のような言われように不満げに眉を寄せるも好奇心は拭えずぼそぼそと主張し / 相手に続き扉へ歩み寄り )
──
( 無事に宿に鍵を返しては土産にと梱包された焼き菓子を大量に貰い / 対応から察するに昨夜の出来事は従業員の独断であると脳裏で考えつつ診療所へと向かい / 被害が減ったのか幾らか余裕のできた診療所で直ぐに名を呼ばれるとあっという間に処置が終えられ / 待合に踏み入れた途端、恐らく先日の出来事を知っているのであろう人々から二人して雑貨やら菓子やら手紙やらを押し付けられており / 診療所を出ると往来を歩きながら幼子から相手に宛てられた手紙に目を落として / 誂うように目を細め )へぇ、お前も大概色男じゃねえか。
( 昨夜あんなにも従業員側の余計な対応に腹を立てていたにも関わらず焼き菓子を貰えば呑気にも道中それを頬張りながら上機嫌で診療所へ向かい / 思っていたよりも随分とあっと言う間に処置が終われば安堵を覚えながら診察室を出るもそこで複数の人々に囲まれ一方的に押し付けられる贈り物に目を白黒させ / 診療所を出る直前小さな手から受け取った手紙に視線を遣るも結局のところ封筒の文字は読めず片眉を上げ / とは言え年端も行かない相手から受けた純真な好意を無碍にするのはなけなしの良心が拒み何処となく困ったような声色で呟き )…餓鬼は夢見がちなモンなんだ。
なら見させたままで居てやれ。なんなら押し売りゃ良い。……お前も夢見てたタイプか?( クスクスと笑みを漏らしながらも文字を解説してやる気は無く諸々の贈り物を鞄の中に仕舞い / 相手の口振りからふと幼少期に意識が向くと益体もない問いを付け加えて / 程無くしてターミナルに到着するとその中から一台の蒸気自動車を選び何やら運転手と交渉を重ねては十分な金銭を払い / 後部に設置された座席に回ると深い赤色の天鵝絨が巡らされた内部へと足を踏み入れ / 長距離を走行する設計である為か内部は広く雨風を凌ぐ確りとした作りで / 腰を落ち着けると相手に向かって呼び掛け )次のとこまで二日くらい掛かるってよ。
…まあ多少はな。俺はもっとデケェ鬼になるモンだと思ってたし。( 相変わらずな口振りに肩竦め / 問い掛けへゆるりと首を傾げると先程の子供とは微妙にずれた言葉を付け足し / ターミナルの独特な喧騒へ興味を惹かれるまま周囲へ視線を巡らせながら相手と運転手が話し終えるのを待ち / やがて相手が座席へ座るのを追って同様に腰を下ろすと内部の様子を興味津々に眺めながら問い )その間ずっとこん中か?
今でも十分デカいだろ。…休憩は挟むが基本はこの中だな。手持ち無沙汰か?( 相手の言葉に揶揄うような声を掛けて / 問い掛けには緩く首を傾げて端的に答え / やがて振動と共にゆっくりと車輪が動き出せば手遊びに片手の指を絡めて )
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