斎藤 悠介 2023-09-13 21:51:55 |
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( / 畏まりました!
それは嬉しい限りです…!悠介には大人の余裕を持たせようと思っているのですが唯織さんを目の前にしたら即デレしそう…気をしっかり持たせねば。
では絡まれている方の再会でお願い致します!先レス助かります。よろしくお願いします! )
───
( あれから2年間。ふとした瞬間に思い出す彼のこと。距離をとってからというもの連絡をとることも、会うこともなくこれだけの月日が流れてしまった。勿論こちらから連絡をしようと思ったこともあったが、何か気まずいものがあり。もう彼は自分のことは忘れてしまったかもと思いつつも僅かな希望を抱き、スマホの画面から連絡先を見つけてはこうやって思い悩む様に自分が未だに彼のことが好きなのだと思い知らされる。
珍しく職場の飲み会があり参加をした帰り道。他の同僚よりも先に店を出たことがいけなかったのか、2人の男性に絡まれてしまった。迷惑そうな表情を示しつつ丁寧な言葉で断りを入れたのだが、一向に前から退いてくれる気配がない。どうしたものかと困っていると掴まれた右手。)
「いいじゃん、お兄さん1人でしょ?一緒に飲みに行こうって」
…いや、だから無理です、離してください。
────
( 数センチ伸びた背丈、羽織るスーツや身に付ける物は2年前よりも落ち着いて、日々双眸に映るのは現実の裏を煮詰めたような生臭い景色。絵画に興味を持って目を輝かしていたのが懐かしい。未だに夢に出てくる愛おしい彼への唯一の繋がりであるスマホは捨てられぬまま、距離を取ったあの日から学校へも行かなくなり、初めて学業で家の力を使って全てを解決し卒業をした。その後はずるずると堕ちていく様子に親は心配したが、今では皮肉にも界隈では知らぬ人が居ないほどに立派なもので。
この街に来たのは久々だ。偶然隣町で取引があって懐かしさから足を踏み入れてしまった。賑やかな夜の街の光は今では落ち着くもので、煙草を片手に肩掛けたコートが靡くまま歩いていれば目の前で揉め事、とも言えないが宜しくない雰囲気の3人が目に入る。二人の男の顔は見えない、絡まれている側も彼らに被っていて見えず、いつもなら無視するがここは一応自分の組の管轄で、考えたくもないが馬鹿な組員が一般人に絡んでいる可能性もあると思い近付くと彼を掴んでいた男の手首を空いている方の手で掴んでから先ずは男達の顔を確認しつつ煙草をゆるりと一吸いし )
何してんの、揉め事?
「あ?なに…、!」
「おい!やべえって。」
( 急に掴まれた腕に明らかに不機嫌そうな声でその人物を見る。しかしその後に言葉は続かず、目の前の見知った人物に顔面は青ざめていくばかりで。この辺りに居座る者なら彼の顔を知らない者はいない。)
─!
もしかして…、悠介くん…?
( 止めに入ってくれた男性。少しばかり自分よりも背の高い後ろ姿はどこか見たことがある感じがして。さらに聞き馴染みのある声に、もしかしなくても、と鼓動は高鳴っていく。口から出た声は僅かに震えているのを自分でも感じて、一息吸ってから彼の名前を。顔をしっかり見ているわけではないし、確証は薄いのだが、自分の勘がそう言っていて。)
この辺でおいたすんのはやめとこうな?怖いお兄さんが来るぞ。
( 組の者では無いがこちらの顔を知っている感じその辺のチンピラだろうか、牙を向けてこない限りは相手にする気も無く軽く微笑んで煙を吐きながら手を離すと興味を無くして絡まれている側の顔も見ずにその場を後にしようとするが夢に見る程に何度も何度も心底求めた愛おしい彼の声に動きを止める。黒く染まった自分が胸の奥にしまい込み忘れようとした甘く、幸せな時代に焦がれた感情からくる幻聴か。ゆっくり振り返ると目に映る彼の姿が夢でも幻聴でも無いと訴えてくる。一気に速まる心音が脳にやけに響いて、それとは逆に冷静になれと指示を出す。灰が落ちそうな煙草を胸ポケットから出した携帯灰皿へ入れて火種を揉み消すと緩やかに目を細めて )
……─久しぶり、唯織さん。元気にしてた?
う、ん。元気だよ。
悠介くんは?
( 振り返る瞬間はまるでスローモーションになったかのような感覚。少しばかり雰囲気の違った、大人びた彼の姿に何か溢れるかものがあるがグッと堪えて。思ったよりもあっさりとした彼の言葉には、本当は"今までどうしていたのか"、"どうして連絡をくれなかったのか"とか、色々聞きたいことが頭の中を巡るが、一先ず落ち着いてその言葉に返事を。本当にこれは夢では無いのだろうか。未だに信じられない気持ちと高揚感に胸が張り裂けそうで。)
俺も元気。
こんな時間に一人で何してるの、最近この辺物騒だから結構危ないと思うんだけど…って飲み会かなんかか。今日は歩き?柄悪いのがいない所まで送るよ。
( 良い意味であの頃と変わらない、懐かしく愛おしい彼。今すぐにでも抱き締めて、離れていた時間を埋めたいがそんな事が出来たらとうの昔にそうしていただろう。返答に軽く微笑むと場に居た理由を聞こうとするが此処は飲み屋街、話している間にも近くの居酒屋から酔っ払いが出てきて上機嫌に大声で語り合っている。それを見て彼の背中に手を添えればゆっくりと歩き出して )
そっか。よかった。
職場の飲み会で。って言っても全然飲んでないから大丈夫なんだけど、物騒なのは抜けてたな…。ごめん、ありがとう。
( 色々思うことはあるが、兎にも角にも彼がこうやって元気でいることにひどく安心して微笑む。しかしながらこの辺りが物騒だということは完全に抜けていた。まさか男が男に絡まれることなどはないだろうと思っていたため、そこは少し反省して。素直にここは彼に送ってもらった方がいいかとお願いを。背中に触れた手にまた胸の鼓動が速くなる。歩き始めては横の相手をちらっと見ると、やはり以前は自分と変わらなかった目線が少しばかり上にあることに、不思議な感じがして。あの頃が思い起こされては懐かしい気持ちが湧き上がり。)
…身長伸びた?当たり前だけど、大人になったね。いや、あのときから大人っぽかったけど。
どういたしまして。
伸びたよ、180は普通に超えてるんじゃないかな。
ふ、二十歳にはなったけどまだまだ大きいだけの子供だよ俺なんて。唯織さんは2年前とあまり変わらないね、酷く懐かしい。
( 彼に触れている手が熱を持っている感覚がして何とも言えない幸福感で胸が満たされる。色んな場数を踏んで、確かにあの頃よりは大人になったのだろうが小さく笑うと冗談をひとつ。前を見て歩きながらもスーツから煙草を取り出すと火を灯して煙を肺にゆるりと落とすがふとそちらに視線を向ける。確か昔は彼の前では吸っていなかったか、確認する前に火を付けてしまったのは配慮不足だったと申し訳なさげに )
……─あァ、ごめん。煙草の匂い苦手だったりする?
…どうりで。更にかっこよくなったわけだ。
俺は…うん、大人ってそう変わらないから。
( 元々かなりのイケメンが更に身長が伸びたことと雰囲気が変わったことにより磨きがかかっている。なんとも末恐ろしい。自分について変わらないと言われると、大人はそう簡単に変わらないというのは確かにそうだなと思う。ふと香った煙草の香り。高校時代も彼から僅かに感じたことがあったが、こうやって吸っているところは見たことがない。そんな仕草にすらときめいてしまうのだから、これはよくないな。相手は自分のことなどなんとも思ってないかもしれないのだから)
ううん、大丈夫。苦手じゃないよ。
…ありがとう。
なら良かった。…もう帰る予定だったなら家まで送ろうか?近くに車停めてあるから、良ければ。
( 些細な言葉で胸が高鳴り、久々の甘い感情に微かな戸惑いすら感じつつ礼を。紫煙をくゆらせながら歩いていればあっという間に飲み屋街を抜けて普通の商店街へと辿り着き、一旦足を止める。此処で離れるのが一番なんだろう、分かってはいるが口から出たのは考えていた言葉とは真逆でまだ一緒に居たいという本心から来た言葉。出てしまったものは仕方がない、と彼の返答を待ち )
…いいの?
じゃあ、お願いしようかな。
( 普通の商店街にさしかかると、もうここでお別れなのだろうかとなんとも言えない思いが胸を締め付ける。もう少し一緒にいたいという思いが溢れて口に出そうになったときに紡がれた彼の言葉。思わず嬉しそうな反応を示しては、少し恥ずかしそうにして素直にお願いを。結局彼の車には乗ったことのないままだったなとあの頃を思い出して。)
何その可愛い反応、じゃあ行こう。
( 断られるかもしれないと思っていたが嬉しそうな彼の様子を見て思わず目を細めてくつくつ笑い、足を駐車場の方へ向けてまた歩き出す。少ししてパーキングが見えると黒いベンツの元へと歩いていき、運転席に乗ってシートベルトをすればエンジンをかけて )
住所は変わってない?
…かっこいい車。
うん、変わってない。覚えてる?
( 着いていくとそこには黒塗りの車。素直な感想を呟くと、助手席に乗り込んでシートベルトを締めて。2人だけの空間に妙な緊張感を持ちつつ、彼からの質問には頷き。家の住所は覚えてくれているのだろうか、なんて期待を持ちつつ背もたれにそっと身体を預けては、「お願いします」と一言伝えて。)
そう?安全性のあるシンプルなのが一番だと思って。
勿論、覚えてるよ。当時、免許取り立てで唯織さんに送ってもらったり連れてってもらったりしてたから自分も、と運転に慣れる為に夜中にドライブとかしててさ、その度に唯織さんの家の近くに自然と行ったりしてたから忘れたくても体が覚えてる。……悪い、今の発言はちょっと恥ずかしいな、忘れて。
( 感想に笑いながら購入した理由を告げると彼の言葉に軽く頷いて車を発進させる。まだ初心者マークだった、付き合いたての頃の記憶が蘇り運転しながらも呟くように語るがそれは初々しく誰かに話すような内容では無くて、微かに照れくさそうに苦笑いすると言葉を付け足し )
ふ、そうだったんだ。知らなかった。
…悠介くんに運転してもらってるの、何か感慨深いな。
( まさか運転の練習に自分の家の近くを通っていたなんて。そんなこと全く知らなかった。こちらもなんだか気恥ずかしくなりながらも、少し嬉しそうに微笑んで。そう思うとこうやって夢にまで見た彼に出会えて、しかも彼の運転する車に乗せてもらえるなんて夢にも思わなかった。運転する相手の姿に時折視線を移すと、やはり運転する姿も様になっている。というか普通に安心して乗れる。)
そうだろうな、恥ずかしくてこんなの当時は言えなかった。
感慨深い、か…確かに。
( 当時の自分は今よりもまだ子供で、彼に嫌われたくないという思いで一部の素直な気持ちを告げる事や巻き込んで怪我をさせてしまった元凶である家の話を晒け出す勇気や守り切る自信や力が無かった。身近な周りに相談すればいいものをそれも自分の中にしまいこんで塞ぎ込み、結局引き摺って何も言えぬ告げぬまま避けて数年越しに再会を迎えた訳で、今までの過ちを謝罪し抱き締めたいが何を今更、なんて気持ちが強く言葉を止めるが視線を前に向けたままにゆっくり口を開いて )
…唯織さんの事、本当に大好きだった。
…俺は、
俺も悠介くんのことずっと好きだったよ。
もしかしたら…迷惑かもしれないんだけど、この気持ちは今も変わってない。…会えたら伝えようって思ってたんだ。
( 彼はこの2年間をどんな思いで過ごしていたのだろうか。彼から紡がれた突然の言葉に、ぐっと胸が締め付けられる。もしかしたら、自分の今の思いを告げてしまったら彼に迷惑がかかるかもしれない。でも、せっかく再会できたのだから伝えないわけにはいかない。意を決したように少しだけ深呼吸すると、相手の方を見てゆっくりと言葉を紡ぎ。 )
迷惑じゃない。
好きだった、なんて言ったけど俺は今でも唯織さんの事を愛してる。だからその言葉を聞いてどうしようも無い程に嬉しいよ、ただ…昔も今も、唯織さんの事が好き過ぎるんだ。何よりも大切にしたくて、何時でも幸せに笑っていて欲しくて仕方がない。
( 静かな車内。彼の言葉が耳に心地好く響いて微かに目を細め、はっきりと言えばハザードを出して路肩に車を停車させてそちらを向き、夢にまで出てきた愛おしい彼に触れたい感情は抑えて気持ちを告げる。ここで触れてしまったらもうきっと後戻りは出来ない。今自分はどんな表情をしているだろうか、彼を忘れようと組織や権力を拡大させる事に頭を動かし続け、それが功を奏して今や荒くれの末端にまで顔が知れているがこんな情けない表情を彼以外は見る事がないだろう。少し苦しげに微かに眉を顰めて目を伏せて )
……─俺の傍では、そうはさせてあげられない。
"何があっても守ってみせる"なんて言葉は非現実的だ。どれ程に計画を練っても必ず穴があって失敗する確率は0ではない。今後も一緒に居ればあの日の様に唯織さんを傷付ける可能性がある。だから、……もう俺の事は忘れて幸せになってほしい。
…俺の事を考えてくれるのは嬉しい。
だけど、悠介くんはそれで幸せになれる?
俺は…、今は悠介くんなしの幸せは考えられない。
( 暗い車内でもはっきりと分かる愛おしい彼の顔。少し大人びてはいるけど、昔の彼とちっとも変わらない。真剣にしかし時折苦しげにこちらを見つめる彼を見つめ返しては、胸が締め付けられる。しかし、彼の言葉に納得をするわけにはいかない。まるで自分の気持ちを蔑ろにしている彼に、自分が何も出来ない悔しさに苛立ちしか感じず。今はこのあと彼に何を言っても自分が冷静ではいられないだろうと、シートベルトを外してドアノブに手をかける。)
…、ごめん。ここでいい。
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