斎藤 悠介 2023-09-13 21:51:55 |
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喜んで。唯織さんなら何時でも何処でも歓迎……と、この階段上がるよ。足元気をつけて。
( 人生で初めて自分の体温に感謝する事になるとは、だなんてこちらも笑って頬に軽く口付けを落とす。そんな穏やかな心境の中、彼とのやり取りに夢中で通り過ぎる所だったと立ち止まって脇道に目線を送ればそこには人一人上れるくらいの細い階段が、整備もされてなく落ち葉で埋もれている為に普通の人なら気付かないだろう。手を取ったまま先に階段を数段登れば振り返って )
ん、わかった。
たしかに、普通の人ならこの階段気付かないかも。
( 頬に触れた口付けに嬉しそうに微笑んで。ふと脇道に逸れたと思えば、どうやらその先の道をゆくらしい。彼が先に進んでくれたおかげでやっとここに階段があったのかと分かった。彼が言っていたように人が居ないというのはこれが理由かもしれないな、と思いながら足元に気をつけて進み。)
でしょ、それにちょっと急斜面だから本当に気を付けて。
( 少し長い階段、この道中で一番体力を使う場所。彼を逐一気遣いつつ上がっていけば開けた場所に到着する。目の前に広がるのは空と同様に澄んだ湖、沿うように生え揃っている山紅葉は色とりどりでそのまま見るのも美しいが湖面に映り込む姿も見事で、所々に紫や白い野花も自生しておりそれからか自然の甘い匂いが微かに鼻を掠め )
到着、お疲れ様。俺の秘密の場所へようこそ…って言っても多分管理人さんとかは知ってると思うけど。
う、わぁ…...。
綺麗…。
( 開けた場所に広がる光景に思わず声にならない声が漏れ。ふわっと香る甘い花の香りに、そよ吹く秋風、紅や黄色とりどりが眩しい。湖の傍に近付くと大きく息を吸う。「空気も美味しいきがする」なんて言うと、キラキラと光る水面を眺めて。)
ありがとう、連れてきてくれて。
どういたしまして、唯織さんに気に入ってもらえて良かった。…此処に誰か連れてくるの初めてだったから。
もう少しだけ歩こう、
( 彼の様子を見ていると初めてこの場所を見付けた時の自分を重ねて思い出し、小さく笑うと水面を見つめる彼を後ろから抱きしめて柔らかな髪に顔を埋める。愛おしい相手の喜ぶ姿にこちらも嬉しくなり、連れてきて良かっただなんて思いながら話してゆるりと離れればまだ先に行きたい場所があり、歩きながら手招きをして )
うん、
( 後ろから抱き締められると幸せそうに笑い。きれいな景色に思わず涙が出そうになる。どうやらここが到着地点では無いようで、また彼の後を再び歩き始め。)
( 言った通り、少しだけ湖沿いを歩いた先にあったのは落ち葉の絨毯が敷かれているかのような場所、その中にポツリと3人程座れそうな倒木のベンチがあり、それに近付くと上に落ちていた葉を手で払って腰を掛ければ湖や紅葉を一望し )
このベンチ、小さい時に俺が作ったんだ。勉強して防腐処理もして…秘密基地作ってるみたいで楽しかったな。今でも一人になりたい時とか考え事ある時とかは此処来たりしてるんだよ。スケッチするにも丁度良さそうじゃない?
え、すごい。
小さい頃に作ったなんて思えないくらいちゃんとしてる。
( 少し歩いた先にあったベンチ。なんだか紅葉の中にぽつんとあるそのベンチが1枚の絵になりそうで。彼の横に腰をかけると湖を眺めては、これが彼が小さい頃から眺めていた風景か、と目を細めて。確かにここから見た風景はとても絵になるだろう。)
うん、いいね。
ここでかこっか?
来る度に手を加えてるってのもあるけどね。
ん、描こう…はい、鞄。
( 幼い自分は将来大切な人が出来て、ここに座っているだなんて思ってもいなかっただろう。辛い時に孤独感を抱きながら縮こまっていた小さな自分に今の幸せを伝えに行きたいくらいで、微笑んで頷くと持っていた鞄を彼に渡し )
ありがと。
…はい、これ悠介くん用のスケッチブック。
( カバンを受け取ると中から1冊のスケッチブックを取り出す。それとデッサン用鉛筆を彼に渡して、自分も大きめのスケッチブックを取り出すと新しいページを捲って用意する。他にも鞄には色鉛筆、水彩絵の具など必要最低限の画材道具が入っており。)
ありがとう。
……俺、字が綺麗って褒められるんだよな。楽器も一通りは弾けるし、勉強も本気出せばそこそこ出来て…わりと何でもそつ無くこなせる自信ある、のに、絵と料理だけは本当にダメ。綺麗な絵描く恋人いんのになんか情けない。俺の絵を嫌いになってもいいけど、俺の事は嫌いになんないでね。
( 受け取って礼を言い手元のスケッチブックを一度見て、美しい景色を見た後にふっと笑いを一つ洩らすと穏やかな口調で告げる。実を言えば今日の約束をした後に彼には秘密で同級生の元美術部員に絵の描き方を教えてくれと頼み、指導を受けていたのだが「アッ、無理。」と最後は匙を投げられた。仕方ないと達観していてもう何も感じないのだが彼に引かれるのだけは避けたい。絵が下手で今話題の蛙化現象を起こすような相手で無いことは確かだが冗談交じりに言いながら笑って )
そうなんだ?
そんなことで嫌いになんてならないから、安心して?
( 確かに彼の言うように何でもそれなりにこなしているイメージがある。だから苦手な部分を知れたことは嬉しく。そんなことで嫌いなどなるわけがないと笑い。相手の傍にもう少し近付くと、スケッチブックを指さして描き方のコツを。話していると真剣になってきて。)
描きたいところが決まったら、薄く十字の線を入れてその線を基準にして描いていくと描きやすいよ。絵が上手く描けない人って、細部にこだわって描いちゃう場合が多くて。風景画とかは、全体のバランスが大事だから、どこになにがあるか大体紙の上で場所を決めて……、ってごめん。ついいつもの癖が。
知ってる。
十字の線を…なるほど、……ふ、いや、唯織さんのそういう面凄く好き。指導受けてるのが言っちゃ悪いけど、あー、やっぱ先生なんだよなぁって感じの背徳感がして。ちょっと今の参考にして描いてみる。
( 思った通りこちらの絵が下手でも彼は大丈夫そうで微笑む。説明を真剣に聞き、理解してからまたじっくり景色を見て絵の中央を決めれば言われた通りに薄く十字線を描けば謝罪に対して喉をくつくつ鳴らして笑ってしまう。彼の授業中も思ってしまうのだが自分は生徒で彼は教員なのだと自覚する瞬間が学生生活の密かな楽しみで、口にしながらもスケッチブックに向き合うと景色を見つつ鉛筆を動かし始め )
なにそれ。でも、まぁ分からなくはないかな。
うん、なんか聞きたいことあったら言って。
( 背徳感。その言葉にクスクスと笑って。しかしふとした瞬間に自分たちの立場を思い出すというところは自分も同意。言われた通り描き始めた彼を見て、自分も目の前の風景に視線を落としスケッチブックに鉛筆を走らせて。 )
( 頷き、真面目に描き始めるも不思議と集中力は散漫で、景色よりも彼の整った横顔に視線が行ってしまう。綺麗な指先からスケッチブックに描き紡がれる様子は本当に見事なもので、自然に見とれそうになった時に背後に何者かの気配を感じ動きを止めてゆるりと振り返れば間近に人懐っこいのか、近すぎる鹿の顔があって笑いそうになるのを堪えつつトントンと彼の肩を軽く叩いて )
……唯織さん、後ろ。
……?
わ...!びっくりした。鹿?初めて見た。
( 絵を描き始めると周囲のことが気にならないくらい集中してしまうのはいつものこと。彼に呼ばれたときも少し反応が遅れて後ろを見れば、そこには野生の鹿。しかもこんな近い距離で。目を丸くしておどろくも、人懐こい鹿は逃げることはせずこちらをじっと見ており。 )
この辺はよくいるよ、しかも全然人怖がらなくて厚かましいやつが…なーにしてんの。ほら、山に戻りな。
( 人懐っこい鹿はじっと2人を見つめた後にスケッチブックに視線を移し、食べようとしているのか2人の間に背後から入り込んで紙に鼻を寄せる。それを見て笑うと鹿の顎をぐいっと上げて離れさせるがどうにも山に戻る様子は無く、今度はベンチの前に移動すれば寝転んで寛ぎ始め )
………絵に書くものが増えたな。
…ははっ、可愛いなぁ。もしかして描いてほしいの?
せっかくだし絵に入れようかな。
( 鼻を押しても返ってくれそうにない様子を見ると、微笑ましくて声に出して笑ってしまう。前で寛ぐ様子を見ればどうやら構って欲しいのだなとその人懐こさにびっくりするが、ここらへんの動物はそんなものだと聞き、そうなのかと納得を。スケッチブックの絵の前方に、鹿を描くスペースをつくるとさらさらと鹿を描き始めて。)
描こうか悩んだけど俺はパス……て、本当に凄いな…流石美術教師。
( 自分が悩んで鉛筆を止めてる間にもう既に彼の手は動いていて、スケッチブックを見ながら感心を。改めて彼は教える立場で、十二分に実力があるのだと思えば暫し眺めていたが自分のスケッチブックに視線を移し、ゆっくりと描いていき )
ありがとう。
…悠介くんもいい感じじゃない?
( 褒められると素直に礼を。こうやって人に描いているところを見せるなんて、きっと彼だけだろう。少し描き進めたところで、彼の絵を見るとそれなりにいい感じにかけているように見える。)
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