斎藤 悠介 2023-09-13 21:51:55 |
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……美味しいなら良かった。
いや、当日は色々と忙しくて予定立てにくいから全部断ってて…それでもいい、なんて言ってくれる子達はいたけど親しくない人と最後の文化祭回りたくないからさ。"天羽先生"は誰かと回んの?結構お誘いもらってるっしょ。
( 差し出したかき氷を口に含む様を見て背筋に何とも言えぬ感情がせり上がる。それを断ち切って言えば文化祭の話に戻り、敢えて名前では無く他人行儀に呼ぶと自分のかき氷を口に運んで )
そっか。
俺?まぁ、美術部の部員とかには声かけられたけど、俺も当日見回りの仕事あるから断ってる。
( やはり相手は人気なのだと分かると、やはりそうやって彼のことを誘える生徒たちが羨ましい。自分は、美術部の部員から声をかけられたが、見回りと美術部の展示エリアにいないといけない時間があるため断っている。)
あー、見回りか。文化祭って割とみんなハメ外しちゃったりすんもんな…先生達大変そう。てか、うちの顧問にもその真面目さ分けてもらいたい。多分俺しか知らないここだけの話なんだけど、あの人文化祭の日欠勤するらしい。"遠方の彼女の誕生日で会いに行きたい。軽音部は任せた"つって、普段から顔出さないし別にどうでもいいんだけど生徒に所構わず"遊びに行かない?"って声掛けてたから本命はちゃんといるんだなってびっくりしたわ。
( 誘いは断っているというのを聞いて内心安心しつつも見回りの仕事か、と納得する。それと同時に頭に浮かんだのはうちのちゃらんぽらん顧問の顔、今年からの新米教員で"なんかよく分かんないけど顧問になりました。"とへらへら挨拶してきた衝撃は今でも忘れられない。生徒との年齢が近いのと容姿がいいからか入れ食い状態らしく、傍から見て懲戒免職待ったナシなのだが上手く立ち回っているのか不思議と首が跳ねられる事は無い。そんな彼が仕事を休んでまで会いに行く、大事にしている彼女が居ると発覚した時は大層驚いた。話しながらも熱で溶け、液体になったかき氷を喉に流し込んで )
あぁ、あの先生は有名だよね…。結構教師間でも噂があって。若い先生によく声掛けてる。顔がいいから結構モテるんだろうな。
( 彼から軽音部の顧問の話を聞くと、あぁ、と少し気まずそうな返事を。教員も人間だからある程度のことは許容範囲なのだが、同僚だけでなくまさか生徒にまで声をかけているとは。自分はあまり関わらないのでなんら無害だが、若い女の先生は大変だなと思ってみていたところ。)
…え、先生達にもやってんの?節操無さすぎだろ…確かに顔はいいよな…顔は。教師より絶対ホストの方が向いてる。別にいいんだけど……あ、何の親近感持ってんのか知らないけどやたら合コン一緒に行こうぜって誘われんのは迷惑だな…どこに生徒巻き込んで合コンしようとする教師がいるんだって……ってごめん、ちょい愚痴になった。
( こちらも生徒に留まらず先生にも声を掛けているとは思わずに少し驚くと何でもアリなめちゃくちゃ行動につい笑ってしまう。自分にも相手にも被害はないので冷たいかもしれないが正直に言うと若干面白いネタ程度の認識で、しかし困っている事もあると呆れ気味に話すが全体的にデートには似つかわしくない愚痴の話になってしまったと反省して )
……それは許せないな。次そんなこと言われたら俺に教えて。俺が注意する。
( どちらにも被害はないが、まさか合コンに誘われていようとは思わず。珍しく眉を顰めて。少し冷めた目で静かな怒りを表せば、次にそんなことがあったら注意しに行くし、なんなら学校長に話に行ってもいいというくらいだ。愚痴に対しての謝罪には首を振り。ふと、腕時計を見ればもうすぐ花火が始まる時間。あの高台から花火を見ようとていあんを。)
…そろそろ花火の時間が近付いてきたかな。あの場所いく?
ん、ありがとう。次からはそうさせてもらう。
…ああ、行こっか。めちゃくちゃ綺麗に見えるんだろうな、楽しみ。
( ああいうタイプは一度痛い目に合わないと懲りないだろう。自分からは言っても駄目だったが流石に同じ立場の相手から叱られたら効きそうで、いい加減本気で誘うのをやめてもらいたかった為にかなり助かる。微笑みながら軽く頷けばもうそんな時間かと立ち上がって )
ん、めちゃくちゃ綺麗だから。お楽しみに。
( 立ち上がった相手の横に並ぶと、自然と相手の手をとる。目的地に向かってゆっくりと歩き始めて。この場所からあの高台までは歩いて15分ほど。あれだけいい場所なのにこれまで他の人たちに見つかっていないのが奇跡的だと思う。)
……そういえば唯織さんの手って、綺麗だよな。この間の授業中ずっと見てて思ってた。
( 祭りの賑やかな音が足を進める度に遠ざかっていく。なんだかそれに夏の終わりを感じて微かに切ない気持ちが湧くが愛おしい彼が隣にいるという幸福感が勝り、緩やかに微笑む。手を恋人繋ぎにするとふと思い出して口に出し )
え?そう?
まぁ油絵専攻だからあんまり手を使わないってのはあるかもしれない。
( 授業中手元を見られていたとは、少し恥ずかしい気持ちになる。自分は美術の中でも油絵専攻なので、手は綺麗な方だとは思う。あと遺伝的なことを言えば母の綺麗な手が自分に受け継がれているのかもしれない。)
俺は悠介くんの手好きだな。
軽音部でギター弾いてるんだっけ?
本当に綺麗、ずっと見てれるし触っていれる自信あるわ。
俺の手?少しゴツゴツしててあんま触り心地良くなくない?指長いとは言われるけど…ん、ギター弾いてる。最初の頃は指先めっちゃ硬くなってさ、今は慣れて柔らかくなったんたけどそん時は痛かったな。
( 繋いでいる手に視線を落としてみるとやはり普通の人よりは遥かに綺麗で、前にテレビで見たハンドタレントが出来そうだとぼんやり思いつつ自分の手はそこまで意識した事は無く、微かに首を傾げ )
ふ、ありがとう。
俺は、綺麗な手より使われてる手の方が好きだな。
悠介くんのギター、文化祭で聞けるよね?
( そんなに褒められるほどのものでもないが、素直に礼を告げて。自分も相手の手を見て、指でその触り心地を確かめるとやはり自分の手よりも相手のそれのほうが好きだと目を細め。彼が弾くギターを聴いたことがないので、今度の文化祭で聴けることを楽しみにしており。)
どういたしまして、……唯織さんにそう思ってもらえて嬉しい。
ん、ギターもだけどボーカルもするから唯織さんに一番聴いて欲しい、セットとかめっちゃ気合い入れてやるからさ。
( 綺麗な指で触れられて微笑みを洩らし、文化祭についての話になればパッと視線上げて微かに目を輝かせると準備も整ってきて最高のステージに仕上げる予定の為に少し浮かれた様子で話し。 )
準備頑張ってるもんね。
見回りのふりしてステージ見に行くよ。楽しみにしてる。
……ついた。
( 目を輝かせる彼の表情にはこちらも嬉しそうに。最近文化祭の準備などで放課後なかなか会えないときもあったがために、きっとすごく頑張っているのだと思っていたところで。当日教員の巡視場所は具体的に指定されていないので、見回りにかこつけてステージを見に行こうとくすっと笑って。高台に辿り着くと街の灯りがぼんやり揺らめく景色に、やはり夜はいいなと目を細め。)
……うーわ、めっちゃ綺麗じゃん…。
( 見回りの"ふり"だなんて聞いて、つい笑ってしまう。確かに他の人は彼がステージを見ていたとしてもただの見回りだとしか思わないだろう。見に来てくれる、という事実は自分だけが知っている秘密のようなもので、どこか嬉しいような擽ったさを感じる。到着すれば目の前に広がるのはこの間とは雰囲気をがらりと変えた夜景で、都会寄りな為に空は暗い色をしているのだがその空から星が地に堕ちてきたのかと錯覚する程に街の灯りが煌びやかに輝いていて、とても感動する。見方や共に見る人が変わるだけでここまで夜景が胸に響くものだとは思わなかった。なんだか感傷に浸って涙でも出てしまいそうだ、と考えながらもそちらを見ようとしたがその瞬間に空一面に広がった花火が目を奪い、それがまた息を飲む程の美しさで言葉を失うと無意識に握っている手の力を微かに強めて )
……綺麗だ。
悠介くんと見れてよかった。
( 空一面に広がる大輪に瞬きをするのも忘れる。こちらも、その美しさに目を奪われていたが、彼が手を握る力を強めたことにはっと我に返り。声にならない声でありきたりな感想を呟くと、彼とこの光景を見られている今が本当に幸せだ感じる。目線は動かさないまま、こちらも彼の手をそっと握り返し。)
凄く綺麗。
こんな素敵な場所、教えてくれてありがとう。
( 彼の声でこちらもふと返ってくると微笑みながら花火を眺め、寄り添うように彼の頭に邪魔にならぬ程度に頬を擦り寄せて、幸せを噛み締めながら小さな声で伝える。花火は空に上がっては色とりどりに世界を染めて、最後、一番大きく咲き乱れると火の花弁を淡い煙の中に散らしてその姿を消し、辺りには静けさと硝煙の香りが残って。静寂を切るように余韻の軽い溜息を吐くと微かに笑い )
…ぁー…なんか、ほんっとに綺麗で、泣きそうだった。
どういたしまして。
…、俺もちょっと泣きそうだった。
( 頬に擦り寄る彼の温もりに、僅かに目を細め幸せそうに微笑み。花火が終わった静寂包まれた辺りは本当に何も音が聞こえず。相手の声によってその静寂が終わりを告げると、自分も気がつけば潤んでいた目元を擦って。一人で来た時にはこんな気持ちにはならなかったのに不思議なものだ。なんだかこのままずっと相手といたい気持ちもあるが、一緒にこの景色を眺められた幸福感で今は十分かとそっと相手に尋ね。)
…帰る?
はは、一緒に花火見れて多分幸せ過ぎて感極まった。
……─今日、唯織さんの事、帰したくないかも。
( 笑って言いながら漸くそちらに視線を向ける。周りは薄暗いが緩やかな街灯に照らされる彼を見て目を細めると、手を離して優しく抱き締め耳に唇を寄せ、囁くように言った後にそのまま耳朶を甘噛みし )
( 彼の腕に抱き寄せられると、耳元から聞こえる彼の声と内容に背筋にぞくぞくとしたものが走る。勿論その意味が分からないわけではないし、自分も彼と一緒にいたいと思っている。 追って耳朶に感じた感触に肩を揺らして。呟くように放たれた言葉と同時に相手を抱き締め返し。)
……俺も、帰りたくない。
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