斎藤 悠介 2023-09-13 21:51:55 |
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?あぁ。…はい、どうぞ。
( 悶々としたまま授業中盤に差し掛かったとき、彼女から声がかかり、言われた通りに落ちていたボールペンを拾う。何気ないやり取り。しかしやはりどうにも彼女の着ているジャージに目がいってしまう。雑念を振り払うようにいつもの通りを装いボールペンを彼女の元へ届けて。)
「ありがとうございま、『……ね、あのボールペンって斎藤くんも使ってなかった?確かブランド物のやつだよね?』
( 止まる授業、自然と原因になったボールペンにみんなの視線が集まる。その時にふと一人の女生徒が隣の席の子に話すとざわりと教室が一気に騒がしくなる。普段は人の文房具なんて見ていないが高級ブランドの物はかなり珍しく、目が行きやすい。女子高生ならではで楽しそうな恋の話にみんな食いつかない訳が無く、『そういえば、うちの男子が"斎藤、金持ちなんじゃね?"みたいな感じでその話してたかも!』『え、お揃いって事?』だなんて授業中にも関わらずきゃあきゃあと各々話を始め )
( 確かに高校生が使うにはいいボールペンだとは思っていたが、彼が使っているところを自分も見たことは無いので何とも言えない。その場に居ない彼の話と、そのボールペンがお揃いであることに話題が持ち切りになったところで、いたたまれなくなったのは自分の方。少し普段とは違う声色で授業に戻ることを皆に伝えて。)
……はい。静かに。気になることは休み時間に聞いてください。
授業戻るよ。
( 流石に先生から注意されれば皆口を閉じるがそわそわとしたような空気が流れる。周りは違いに気付いてないだろうがいつも集中して彼の声を聞いている自分には分かる。聞いた事の無い声色を出す先生に思わずにやけそうな口許を大きなジャージの袖で隠すと目を細め、その後の授業は何事も無く過ぎて終わりのチャイムが鳴る。号令が済むと女子達が自分の周りに集まりジャージやボールペンについて興味津々に尋ねてきて程よくはぐらかしていたが男子の体育が早めに終わっていたのか、休憩時間に入ってすぐに美術室の扉が開いて友人と共に話題に上がっている制服に着替えた人物が登場すれば騒がしすぎる程に教室が沸き立って )
……え、なに、うるさ…マジでなに?天羽先生、なんかあった?男を使ったインスタ映えの極意みたいな授業してないとこんな事なんないと思うんだけど。
( 次の授業は美術、都合のいい北条に圧力を掛けて授業を早々と終わらせると微かに胸を浮かせながら美術室に向かう。ついてきていた友人に「最近、授業の意欲やばくね?」と笑いながら聞かれてこちらも笑い、返そうとしながら美術室の扉を開けば耳を刺すような女子の悲鳴に近い高い声が聞こえて意味が分からずに呆気に取られて呟く。女子達のテンションが異常に高い。男を利用した新たな映えでも覚えたのか、最初に美術室に入った自分が餌食になってしまったのか、ギラギラした目でこちらを見ている様子を見れば流石に引いて彼の元へそっと近付いて )
んー、花里さんが着てるジャージが斎藤くんの者なことと、使ってるボールペンも一緒じゃないかって話で授業中盛り上がって。あとは見ての通り。
( 5限の授業が終わった途端女子の賑やかな声が美術室に響き渡る。正直居心地が悪く、一旦どこかへ行こうか悩んでいるところに男子が入って来て。これまたターゲットが来たとばかりに女子たちがまた色めき立つ。自分の元に来た彼に、そっと小声でこれまでにあったことを話せば苦笑して。しかしながら、花里さんの目立つ行動はこれまでにないもので、違和感しか感じない。何か企んでいるのだろうかとさえ思えてくる。なんにせよ彼に害が及ぶのはよくない。)
何それ、確かにジャージはさっき奪われたけどボールペンとか分からな……、「悠介!上着借りちゃってごめんね、お詫びに奢るし放課後制服デートとかどう?学校帰りに美味しいクレープのお店見つけたの。」
行かない。距離近い、それとジャージ返せよ。
( 事情を聞けば予想外だが最近の花里が起こしそうな動きで、不快そうに眉を顰めて言うが途中でドンッと身体に軽い衝撃を受けて香水か、シャンプーか、わからないが甘い花の香りが鼻を掠めれば花里に抱きつかれたのだと分かると最近こういう事をされる頻度が高い為に慣れてしまっていて呆れて溜息を吐きつつ額に軽めのデコピンをすれば吐き捨てるように言う。しかしそれに堪えていないようでへらりと彼女が笑顔を浮かべると周りがまた色めき立って )
……、花里さん。他のみんなも、次体育でしょ?
そろそろ移動したら?
( さすがに、目の前にいる恋人が他の人に抱き着かれて何も思わないわけが無い。明らかに今度は声のトーンも少し低く、少しばかり笑みは浮かべてはいるものの全く目は笑っておらず。それだけを言い残せば、「次の授業準備するから、」と言って準備室へ逃げるように向かい。入ってすぐに、1つ深呼吸をして全く大人気ないと、自分の言動に嫌気がさして。)
( 騒いでいたが彼の変化が何も気にならない様子の生徒達は確かにそうだと残念そうに教材をまとめて次の授業の準備へと行動を移し始める中、低いトーンの声に反応して振り返ろうとするが何故か満足げに微笑んで離れる花里から小さな声で「ありがと、"斎藤くん"」とジャージを渡され、彼女も周りと同様に去っていく。手元に残された甘い香りが付いたジャージを取り敢えず自分の席に置くと友人に言葉を掛けて後を追うように準備室へと入って密やかな声で彼の背中に声を掛けて )
悪い、天羽先生に聞きたい事あったの思い出したわ。
……──唯織さん?
...、ごめん。
さっきの、ちょっと見てられなかった。悠介くんは何も悪くないんだけど。モヤモヤして。
( 準備室の扉を閉めて1人の空間で気持ちを落ち着かせていると、後ろから入ってきた彼の声に分かりやすく肩を揺らし。そちらの方を振り返ると、少しだけ困ったような、無理やり笑ったような表情を浮かべて正直な感想を呟くように言う。)
いや、俺の方に非がある。唯織さんに気を取られてて花里避けれなかった、ごめん。
( 後ろ手に扉の鍵をするとゆっくり近付く。普段であればさっと避けたりしていたのだが気を抜いて恋人の前で抱きつかれるなんて不覚だ。さっきの去り際といい、本当に花里の意図が分からない。悩ましげに眉を顰めるも少なくとも彼が謝罪をする事だけはあってはならず、首を左右に振った後に口を開き )
ふ、いいよ。悠介くんは悪くないって。
…なんか花里さんの行動が気になるな。何がしたいんだろう。
( 謝られると苦笑して首を振り。それにしても花里さんのこうどうは目につく。まるであえて自分に対して、彼と仲がいいと言うアピールをしているような。考えすぎかとも思うが、もしかして自分と彼との関係性に気づかれているとか。嫌な方向へどんどん思考は巡っていき。ひとつ溜息をついて。 )
よく分からない。…でもそろそろ話し合いをするべきなんだろうな。拒否しても寄ってくるし、男相手なら投げ飛ばせるけどそうもいかないし。
早めに目的聞いて、どうにかやめてもらえないか話してみる。……そろそろ授業始まるな、戻ろっか。
( 思ったより面倒な方に物事が転がっていっているような気がする。今までは花里を避けてきたがこのままでは埒があかないし、彼に嫌な想いをさせ続けるのは嫌だ。いっその事、花里が男ならなんとでも出来るのにだなんて思って口にしてしまうがくだらない夢物語で、やる事をハッキリと決めると腕時計に目を落とし )
ありがとう。お願いします。
うん…、ごめんあと10秒だけ。
( この件においては自分は何も動くことはできない。彼に聞いてもらうしかない。少しだけやんわりと微笑むと、もうすぐチャイムがなる時間だと分かり美術室へ戻ろうとするが、ふと目の前の彼に後ろから抱き着いて)
ん、お任せを。
…唯織さ、……好きだよ。
( やると決めたら早急に、流石に2人きりになるのは違うと思うしグループチャットから連絡先を追加して聞いてみるかと考え、戻る為に踵を返す。扉の鍵に手を掛けて開ける前に最後に触れたいと思い振り返ろうとするがその瞬間背中に感じた彼の体温に動きを止める。彼から抱き着いてくるなんて珍しい。一気に心拍数が上がり、頬を微かに染めると目を細めて微笑み、回されている腕を優しく撫でて穏やかに告げ )
……、俺も。悠介が好き。
( 抱き締めた温もりと、自分の心臓の音が彼に伝わっているだろうか。腕を撫でられるとくすぐったそうに、そして幸せそうに微笑み。離れる前にそっと彼の耳元に唇を寄せ、いつもとは違い「くん」付けでない相手の名前を呼ぶとぱっと離れて。さっき彼のことを呼び捨てで呼んでいた花里さんに対抗しているようで、なんだか子どもっぽいとも感じるが、頬を赤く染めて満足気に笑うと、「戻ろう」と相手に伝え )
…っ、…今が授業前じゃなかったら良かったのに。……よし、行こう。
( 耳元で聞こえた声、好きでたまらなくなってしまう。振り返って僅かに強く抱き締めて肩口に顔を埋めると呟くように言い、本当はずっとこうしていたいが離れれば唇に軽い口付けを落としてからゆっくり深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。名前を呼ばれるなんてただの日常なのに彼が口にした瞬間特別過ぎるものになってしまうのは幸せな事で、また表情が緩みそうになるが何とか抑えると鍵を開けて美術室へと戻る。そのまま席に歩いて行けば花里に恋する友人が羨ましそうに自分の机に置かれたジャージを見ており、溜息を吐きながら椅子に座ると甘ったるい香りのするジャージを友人の頭に放り投げて )
そんな欲しいならやるよ、家に予備あるし。…あ、元は俺のジャージって事を忘れんなよ、変な事には使うな………やっぱ無理、授業終わったら返して。それまで持ってていいから。
( 話しながら教科書の準備をしていたがなんでそんなもん欲しがるんだか、と使用用途を想像すればぞわりと鳥肌が立ち、注意しながら隣を見れば頭にジャージを被ったまま動けなくなって硬直している姿が目に入ってドン引きすると前言撤回をし )
( 口付けにまた頬を赤くすると深呼吸をして心を落ち着かせる。先に美術室へと戻って行く彼より少し遅れて教壇の方へ向かえば、チャイムと同時に挨拶をしてから授業を始めて。不思議なもので、先程までのモヤモヤは多少残ってはいるものの、随分とスッキリとして授業をしている自分がいて、なんとも単純だなと思ってしまう。
そうこうしているうちに授業の終わりのチャイムが鳴り響いて。次々と美術室をあとにする生徒たちを見送り。)
「ちょ、もうちょい!もうちょっとだけ!」
絶対嫌。なんか絵面気持ち悪いし…もう十二分堪能しただろ、周りも引いてたぞ。……天羽先生、お疲れ様ー。
( 授業が終わり教材を片付けて立ち上がる。離れた席だった友人達が「終礼だるくね?」だなんて言いながら寄ってきて談笑し、隣の席からジャージを奪い歩き出すとくだらないやり取りをしつつ美術室を出ようとするもふと振り返り、彼に声を掛けて"また後で"と口パクで伝えれば目を細めて優しく微笑み、その後は何事も無かったかのように教室に戻って終礼を済ます。放課後になると早々と帰ろうとしたがまさかの清掃当番の日で同じ場所担当の同級生に引き止められて箒を渡されると少しテンションを落とし )
─
( 放課後になって、友達からのお誘いを断って教室を出る。途中で「花里、今日の放課後デートしない?斎藤に振られて暇だろ?」と声を掛けてきた男子もいたが暇じゃない。にこやかに首を左右に振れば美術室に急ぐ。もう少し様子見をした方がいいんだろうけど、きっと大丈夫。問題なのはまだ天羽先生がいるか、だけど。そんな事を考えながら美術室に着くとトントンと控えめに扉を叩いてみて )
( 放課後。今日は彼との約束もあるため早く帰ろうと美術室の片付けを行っており。昼間のことはまだ引っかかってはいるのだが、今は楽しみの気持ちの方が大きい。ノックされた扉の方に視線を移すと、今日は部活動もないため誰だろうと不思議そうにそちらを見るも、開いた扉の先にいた人物を見るなり手が止まり)
…花里さん?どうしたの?
「失礼します!よかった、天羽先生がいてくれて…実は忘れ物しちゃったんです。悠介の、ジャージのポケットにキーホルダー入れてたんですけどどっかに落ちちゃったみたいで。確認してもらっても無かったし、落としたならここかなぁって思って。」
( 遠くに生徒の声は聞こえるが美術室に用がある人はおらず比較的静かな空間で先生と目が合い、自分の名を口にされれば胸が高鳴る。前々から分かっていたがやっぱり大好きで、諦められない。例え障害があったとしても。へらりと笑って美術室に入れば扉を閉じて、事情を説明しながら一応自分が座っていた席に歩いて行くと取り敢えず机の周りを見て )
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