斎藤 悠介 2023-09-13 21:51:55 |
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どういたしまして。
あの先生とは簡単な挨拶くらいしかしたことなくて。きちんと話したのは今日が初めてかもしれない。…まぁ、得意では無いかな。
( 相手から礼を告げられると微笑んで。静かな廊下を歩きながら保健室へ向かう。あの先生ときちんと会話らしい会話をしたのは今日がはじめてだ。だからそのやり取りだけで決めつけてしまうのはいけないのだが、何となく相手が言うように相性は悪いかもしれない。保健室に着くと鍵を開けて中へ。そういえば熱はあるのだろうかと心配そうに彼へ視線を移し)
熱は?一応はかる?
そうなんだ。…なんかあの先生、前から話し掛けてきてくれてたみたいだけど記憶にあんま無いな。最近興味無い事への記憶力が皆無で困る。
んー、熱測んのはいいや。少し寝たら多分元気になると思う。
( 彼と仲が多少なりとも良いのであれば少し意識が向いていただろうが聞いている感じだとそうでもないようで、保健室に入ればネクタイを緩めて上着を脱ぐ。熱っぽさを感じて暑いのだがこういう時に測ってハッキリとした数値を見てしまうと余計具合が悪くなりそうでやんわりと断ればその辺にあった椅子に適当に上着を投げて、ベッドの方へ歩いて行き腰を掛ける。ぼんやりとした頭で今の状況を見返せば彼と引っ付ける最高の機会で、こんな状態でなければもう、だなんて人には話せない事を考えてしまうがこれはきっと風邪を引いているせいだろうと自己解決すると軽く笑い、靴を脱いでそのまま横になり )
…唯織さん、一限目終わっても起きなかったら遠慮なく叩き起して。
ん、わかった。
ゆっくり休んで。
( あの先生のことに関して記憶にないと言われると苦笑して、そこまでだとあの先生も可哀想だなと少しばかり思う。ベッドに横になった相手を見て、一限後に起こすことを約束すればベッドの傍の椅子に腰をかけ。自分は彼が寝ている間職員室から持ってきていた本を読むことに。)
唯織さんって、どの角度から見ても綺麗だよね。
( 直ぐにうとうとし出したのだが本を読む彼のすっきりとしたフェイスラインに何故か目が行くとついゆるりと片手を伸ばして相手の頬に触れて、そのまま撫でるように首筋に指先を落とす。目を細めて呟くように言うだけ言えば触れれた事に満足して手を引き「おやすみ。」と言葉を残して目を瞑り )
( 触れられたところがじんわりと熱を持ち。僅かに頬を赤くして頷く。彼の目が閉じて暫くはその整った顔を眺めていたのだが、寝息が聞こえてくると安心しては、先程の本に目を移して。外からはどうやら1限が始まったこともあり、3年生の体育の声がかすかに聞こえる。それにしても先の北条先生の彼に対する態度は一体何だったのか。感じる違和感の正体が何かは分からないが、少し気にかけておこうと思う。)
──
( 一限終了のチャイムが鳴り、読んでいた本をパタンと閉じて彼を見る。肩に触れ、軽くとんとんと叩くと声をかけて起こそうとして )
悠介くん、一限終わったよ。…起きられる?
……ん、あァ、起き……れないかもしんない。申し訳ない、ちょっと上着のポケットからスマホ取って欲しい。身内にすぐ迎え寄越すように連絡する。唯織さんは次の授業があれば行ってもらって、事情は先生達には後でこちらからでも説明出来るから。このまま…
( 優しく肩を叩かれた感覚で意識が浮上し、ぼんやり返事をして身体を起き上がらせようとしたがどうにも持ち上がらずに視界が回って動きを止める。明らかに体調が悪化しており、じわりと汗が背中に滲んでいるのを感じて微かに眉を顰めると動かすのを諦めてまたベッドに身体を預ける。学校に来たからには授業を受けるつもりだったがこれでは難しそうで、自分は今から早退すれば済む事なのだが相手は今後授業があるだろう。余計な心配はあまりさせたくない。愛おしい相手に指示はしたくなくて心苦しいが今は考える事が出来ず、漏れる呼吸の中で頼み事を必要最低限に纏めて伝える。そんな時に保健室の扉が大きな音を出して開くと今朝の体育教師が授業終わりに顔を覗かせて現れ、へらりとした様子で近付いてくれば声を掛けてきて )
「天羽先生と斎藤くん、どうも。体調どう?皆、心配してたよ。…ってあんま良くない感じ?両親…っつうか、家の人に連絡して迎えに来てもらった方が良さげだな。……天羽先生、後は引き継ぎますよ、」
大丈夫、じゃなさそうだね。
ん、わかった。
……北条先生。斎藤くん、自分で連絡は取れるみたいなので。俺は担任の先生にひとまず伝えて授業いきます。
( やはり体調の悪化がみても分かるくらいには進んでいるようで、辛そうな相手を見て心底心配そうな顔をしつつ、彼の上着からスマホを取り出す。それを彼の手に渡したところで、入ってきた北条先生を見て。このままこの先生に任せておくのも心配なのだが、次は授業がある。口にはしないが、心配そうに1度見て立ち上がると、先生にそう伝え。)
ごめん、……北条先生はちょっと無理だから。どうしても教員が必要なら他の先生呼んでくれない?
「天羽先生了解です!まあまあ、そんな嫌がんなよー。連絡終わったなら保護者来てもらうまでなんか話でもしようぜ。…あ、そういえば最近うろうろしてた半グレいたじゃん?あれ一切見なくなったよな、あれって…」
…人の領域にずかずか土足で入って来んなよ、三下。頭悪いから鉄砲玉みたいな使い方されんだよ。
( 彼の心配そうな表情を見て申し訳無さを感じてゆるりと苦笑いを浮かべるも雑に開かれた扉の音を聞き、更に好ましくない人物が入ってくれば一気に不快感が身を包む。渡されたスマホでメッセージをひとつ飛ばし、20分以内に迎えが来るだろうが短時間でもこの教師と本能的に一緒に居たくはないと感じて言うも動じずにベッド傍に座ってきた男から開口一番に出された話題に深く重い溜息を吐く。一般人が知っている話題ではない。警察か同業者かと考えるも経験上警察はずる賢く立ち回る、直ぐに同業者だと結論出せば熱を帯びた動かない身体に鞭を打って上半身を起き上がらせ、息苦しさから逃げるように雑にマスクを外せば自然と口から本音が洩れる。その瞬間へらへらとしていたのがぴくりと動きを止め、敵意を隠しきれない表情を北条が浮かべるが一切恐れ等は感じず逆に可愛いくらいで、更に追撃をしようと顔を上げた時にまだ彼がその場に居ることに気付くと"やらかした"という言葉だけが頭を過ぎて行った。一触即発状態の空気に自分がしたのだが彼を巻き込むつもりは一切無い。人に言っときながら頭の悪い言動をしてしまった、どうするかと上手く回らぬ頭で考えている間に胸倉を掴まれれば殺意のこもった低い声が聞こえて )
「……若頭から生かせって言われてたんだけど、もういいわ。」
( / 上げありがとうございます!見つけやすかったです。お恥ずかしながら悠介につられるように体調を崩してしまいお返事遅れてしまいました、すみません!回復まで少しレスペに波があるかも知れません。把握よろしくお願いします…! )
…斎藤くん?
!?北条先生!?
( このまま保健室から出ていこうとしたが、引き留められた彼からの願いに不思議に思うも、次の瞬間空気が一気に張りつめたものに変わり。気が付けば北条が彼の胸倉を掴んでいる状況に。彼の言葉の意味を理解する余裕もなかったが、北条が呟く言葉を聞き慌てて傍に駆け寄り胸倉を掴むその腕をおさえて離させようとする。しかし当たり前だが、体格差もありびくともしなさそうで。だからといって諦める訳にはいかず、キッと彼を睨み冷静な低い声のトーンで話を。)
…手、離してください。北条先生。
(/体調が悪いにもかかわらず、お返事ありがとうございます。なんか急かしてしまったようでごめんなさい。季節の変わり目ですから体調を崩す方も多いですよね。体調大丈夫でしょうか?こちらのことは気にせずゆっくりと休んでください。また体調回復しましたらよろしくお願いします!)
「…ア"?コイツの前にその綺麗な顔を見れないくらいぐちゃぐちゃに潰してやろうか?」
( 確かに自分は捨て駒だろう、単騎で人を壊す得体の知れない人物の情報収集だなんて馬鹿げている。少なくとも組長は自分が情報を持って帰るか、相手を消せたらラッキーくらいに思っているだろう。図星過ぎて腹が立ち、頭に血が上って思考が殺意で満たされる。危険な状態なのに何故かスカした表情をし、胸倉を掴んでいるのに余所見をしているのが気に食わない。どう苦しめてやろうかだなんて考えてる時に腕に触れた手、反応して視線を横に移すと先程の美術教師がおり、整った顔でこちらを睨んでいる。まだ居たのか、見られたのならもう一人も二人も消すのは一緒、鼻で笑って吐き捨てる。その瞬間にトン、と左胸に指先が触れる感触がして動きを止め )
…──誰に殺意向けて、暴言吐いてんの。
随分と希死念慮が強いように見えるな…ごめん、期待に応えらんなくて。今、刃物でも持ってたら希望通りにしてあげれただろうに。
( 駆け寄って来たのを見て色々考えていたが、脳筋男が彼に放った言葉に考えが揺れれば怒りの感情に愚直な行動を取ったせいで無防備になってしまっている心臓のある胸の位置に触れる。胸倉を掴むという行為は場馴れしている者は絶対にしない。自分の片腕をその行為で囚われる挙句、相手側は両手が空いていて反撃の自由度が高すぎる。審判が居て反則だと止めてくれる者がいる武道の場では有効かもしれないがそれは今は通用しない。本気の殺意を向けるのであればこの界隈ではそこにルールなんて存在せず、消すか消されるかだけで。理不尽だと思われるかもしれないが大切な彼が気に食わない相手に触れているだけで癪に触るのに更に暴言まで吐かれたとなれば見過ごせない。据わった目で静かに告げると流石に本能的に危機を感じたのか胸倉を掴んでいる手を離し、彼の手を跳ね除けて三歩程後退り距離を置いた様子を見て目を細める。臨時教師とはいえ同業者で情報収集目当ての奴なんて消すか利用するかの二択で相手との関係を知られたところで痛くも痒くもなく、払われた彼の手を優しく取ると不安そうに撫でて )
唯織さん、大丈夫?怪我してない?
( / いえいえ、全然!お気になさらず!
ですね、急な寒暖差にやられました…昨日はあまり体調が良く無かったのですがもう回復傾向に入っていて一応全回復の為に睡眠を優先しているのですが元気そのものです。心配と、いつもお相手ありがとうございます。今後もよろしくお願いします!蹴って頂いて大丈夫です! )
……、大丈夫。
( 多分必死で睨みつけることしかできなかったため、払われた手と彼に危害が及ばなかったことに心底ほっとして。正直、こんな風に敵意というか、殺意のようなものを人から受けた試しがなく、今になって僅かにこわいという感情が浮かび上がってくるが、まだ冷静に状況を把握しようとしている自分がいる。心配そうにこちらの手を取る彼に、小さく笑って頷き。それよりこの後、北条がどうでてくるのかが気になり、そちらの方へ視線を移す。何にせよ、彼の具合も良くないし、これ以上無理をさせたくない。ふと2限目の授業開始のチャイムが鳴り響き、それに僅かに反応を。)
……俺が授業に居ないことに気づいた生徒が職員室に呼びに行ってる頃だろうし、職員室の先生は俺がここにいること知ってる。もうすぐほかの先生がここにくるはずだ。
(/実は私の方も少し風邪気味でして。私の方も安静に無理はしないでおきます!とにかく回復傾向にあるようでよかったです!またよろしくお願いします!)
それに、お前だったら俺一人でも十二分だけどもう少ししたら俺んとこのでっかいわんこ来るから抵抗しようとしても無駄。…あ、それとも目の前で戯れ合って楽しませてくれんの?それはそれで…
「…ッテメェには分かんねぇだろうな!俺みたいな底辺人間の気持ちなんざ!捨て駒で使い捨てられる人間がどんな事考えてるかなんて…っ、俺だって、俺だってこんな事したくねぇんだよ。ただ、散々迷惑かけたお袋や弟達に少しでも楽な生活を送って欲しくて…!」
( 今さっきの出来事と後が無い状況に闘争心が完全に削がれたのかその場で床に膝をつく様は叱られた仔犬のようで、これならもう襲いかかって来ることはないだろうと考えれば汗で湿って気持ち悪い前髪を片手で掻き上げ、追い討ちの言葉を浴びせながら軽く笑うが急に怒鳴り出されれば不快そうに眉を顰めて、一応話を聞く。成程、根本的に職業がマッチしていない。喧嘩っ早いが馬鹿正直というかストレートな性格で、恐らく情に弱い。足洗って本当に教師に本腰を入れた方が幸せになれるんじゃないか、と考えた瞬間他の事が頭に浮かんで思わず立ち上がり )
待て。ちょっと聞きたいんだけど、どうやって教師枠でこの学校来たの?
「………は?いや、普通に、教員免許は持ってて…そっからは裏のやり方が。てか噂だと普通にお前の所でも警察に入ってるやつとか弁護士とかいるじゃん…ルートは組それぞれだと思うけど抜け道は…」
……そうか、その辺あんま深く考えた事なかったわ。じゃあ将来的に俺が教員免許取って唯織さんと一緒にこの学校で働くってのも可能じゃん。そうなったらずっと居れるし個人的にめっちゃ熱いんだけど唯織さん的にはどう?…同じ職場はちょっと嫌?
( もう無理だ。本能が生きたいとストップを掛けて動けない。組長が見ていたら「無能。」と目を逸らして行ってしまうんだろう、いや、見る事すらしないかもしれない。後も先も真っ暗、そう思ったら色んな感情が出てきて内面を隠す事無く吐露する。床に座り込みながら吠える情けない姿を見て笑え、少しでもこんな奴がいたと覚えてくれ。そんな考えが脳を巡り、敵に頼む事ではないがどうか家族には手を出さないでくれと言おうとした瞬間に言葉を止められ、立ち上がった姿にビビって肩を揺らすが掛けられた質問に?マークが浮かぶ。自然に返答すれば死んだような目をしていた奴が微かに目を輝かせて呟くように話した後に美術教師の方を向いて顔色を伺いながら聞いている。さっきまでのこちらが息の仕方を忘れるほどの威圧感はどこにいった?今見ているのはどこにでも居そうな普通の青年で、緊張感が解れていくのを感じると漸くゆっくり息をして )
( 暫し彼と北条のやり取りを見ていたが、どうにも北条は北条なりの思いがあってこの仕事についていたらしい。それが分かると一気に先程までの恐怖心はなくなるも、いまだ彼を傷つける可能性が捨てきれない間は気を張っている必要がある。しかしそんな空気を壊したのは彼自身。何を聞いてくるのかと思えば、目を丸くするも、なんだか拍子抜けしたように小さく笑ってしまう。彼と同じ職場出働く、か。悪くないかもしれないが、果たして仕事になるだろうか。なんて少し考えをめぐらせては答えて。)
……え?
嫌じゃない、
…でも悠介くんのことばっか気になって仕事に支障をきたすのは不味いかも?
確かに。俺もずっと唯織さん眺めるのに忙しくて仕事出来ないかも。
……あ、てか三下。ちゃんと"斎藤君の発言に大人気なく怒ってそれを天羽先生が止めてくれてました、僕が全部悪いです、すみません。"って来た先生に真実言えよ。俺は先に煽ったってのあるから別に謝罪はいらないけど唯織さんには誠心誠意謝れ。言うまでもないけど1mmでも情報洩らしたらお前が俺の大切な人に殺意向けたように同じ事をするから。…上には本当の事を少し混ぜた嘘の情報を流し続けろ、どうにも出来なくなったら相談しに来い。悪いようにはしない。
( そう言われればそうだ、同じ職場となれば意識がそっちに行き過ぎてしまうだろう。今の仕事の場に彼が居たとしたらと考えると想像するのは容易い。こちらも軽く笑って返すも安心した様子の仔犬を薄茶の瞳に写して呼べば、仔犬はヒュっと喉から音をさせて体を強ばらせる。この様子ならもう今後何も問題は無い、言いたいことを並べ終えると揺れていた視界が更にぐるりと回って立って居られずベッドに座れば金属の軋む音が響く。少しはしゃぎすぎたか、だなんて思いながらも深く息を吐いて )
「…は、い。ちょ、大丈夫っすか!?き、救急車呼んだ方がいい!?………じゃない、天羽先生。本当にすみません。ちょっと頭に血がのぼっちゃって、失礼な事を…!」
( 言葉を理解するまでに時間がかかった。てっきりもうここで人生は終わったものだと思っていた。呆気に取られながら返事を、次の瞬間崩れるようにベッドに座る姿を見て心配し焦って騒ぐが睨まれる。その瞳から今何よりも優先すべきなのは謝罪だ、と言われているようで一時停止した後に立ち上がって勢いよく頭を下げ )
大丈夫、じゃないよね。
迎えが来るまで安静にして。
( ベッドのスプリング音と、彼の辛そうな息を感じると心配そうに見つめて。せめて迎えが来るまでは動かないで欲しい。彼の横に腰をかけると、そっと相手の背中を撫でて。横からの謝罪には、正直自分に対して吐かれた暴言よりも相手を危険な目に合わせようとしたことの方に謝罪をしてほしい、なんて思うが必死に謝る相手にそんな気も薄れ、せめてもうこの先彼のことを狙わらないことを約束して欲しいという思いを伝える。きっと彼ほどその言葉に威圧感はないだろうし、なんの重みも無いかもしれないが、大切な相手に何かあったらと考えると自分もきっと相手を許せないだろうと思うから。真剣に相手の目を見て。)
…もういいです。
ただ、これからさき斎藤くんを危険な目に合わせるようなことがあれば、俺は北条先生のこと絶対許しませんから。
「…はい、もう二度とこんな事はしません。斎藤さんもすみません…これからは言う通りに行動しますし、勿論情報も…」
( 思いを深く受け止めて頷くとベッドに腰掛けしんどそうに呼吸をしながら項垂れている様子を見て心底後悔する。確かにターゲットではあったが何歳も下の、しかも体調を崩している相手に対して逆上し手をかけようとしたなんて恥以外の何物でもない。ぐっと服を握り締めて謝罪し、言葉を紡ぐが保健室の入口から自分だけ感じたであろう重く、酷く冷たい殺気に背筋が一瞬で凍ると反射的に窓際へと逃げるように自然に足が動く。ガタリと背中に窓ガラスが当たり、それ以上引けない状態になれば恐る恐る下げていた視線を上げる。開けっ放しだった保健室の扉前に居たのは自分と同じような背丈の男、こちらをまるで害虫を見るような表情で見据える顔には下っ端の自分でも覚えがあった。若くしてターゲットの組の本部長の座に座る要注意人物、確か"住吉"だ。「出会ったら逃げろ、無理だろうが。」としか聞いてない。寒くも無いのに身体が微かに震えてくる。頭の中に警鐘が鳴り響き、回避した筈の人生の終わりが見えてくる、がこちらから目を逸らして座る二人に目線を移すと穏やかな表情でご丁寧にも開いている扉をノックして )
『失礼します。
少々お久しぶりですね、天羽先生。いつも坊ちゃんが大変お世話になっております。
生きてますか、坊ちゃ………悠介さん。元気そうで何よりです。すみません、ご迷惑をお掛けしてしまって…お怪我等はございませんか?』
( 急な連絡には慣れているが学校への呼び出しは珍しい。学園に足を踏み入れて職員室で事情を説明すれば保健室に居るらしいとの情報を得て許可を取ってそちらへ足を運ぶ。現着すれば坊ちゃんと、その坊ちゃんが盲信的な愛を注ぎ大層大切にしている恋人、それに敵。敵対組織は上から下まで顔と名前を把握しているので間違いはない。こんな所に入り込んで来ていたのかと手を下そうとしたが様子を見るに調教済みと言った所でノックを終えた後に2人の元へと歩み寄る。大きな身体で威圧感を感じさせないように片膝をついて視線を下げるとご挨拶を、その後に横を見れば"坊ちゃん"のワードを嫌う年頃な為に睨まれてしまえば苦笑いを浮かべ、次に天羽先生を見て心配そうに尋ねる。坊ちゃんの大切な人は自分達にとっても大切な人で、傷一つでもつくことがあれば耐え難い )
住吉さん…お久しぶりです。
何も怪我はないですけど、悠介くんの体調が。早く病院に連れて行って休ませてあげた方がいいかと思います。
( どうやら自分の言葉は伝わったようで少しばかり安心する。そんなときに扉から入ってきた人物に目をやると、以前一度ばかり出会ったことのある住吉さん。相変わらず大柄な身体に威圧感を感じるが、どうやらそれだけではないらしい。彼の家のことはそこまで詳しくきいてはいないが、恐らく住吉さんもそちら側の人なのは定かで。自分たちの前に膝をつく住吉さんに、確かに自分たちは無事だが彼の体調が思わしくないことを伝える。ベッドに腰をかける彼の表情を心配そうに見つめては、歩けるかどうかを尋ねて。)
悠介くん、立てる?
『おや、…失礼します。ほう…中々の高熱ですね、珍しい。立てそうになければ運びますが、如何致しますか?』
……大丈夫、自分で立てるし歩ける。
ごめんね唯織さん、連絡出来るようになったらすぐする。
( 怪我が無いようで何よりだと思いながら話を聞いて再度視線を坊ちゃんの方に移して手の甲で頬に触れると思ったより熱が高く、顔を覗き込んで尋ねるとゆるりと首を横に振って立ち上がればこちらが見た事のないような申し訳なさそうな表情を天羽先生へ向ける。中々見れぬレアな様子をまじまじ見ていたが同じく立ち上がると『では、失礼致します。』と一礼した後に坊ちゃんの背に手を添えて共に保健室を後にし )
「…は、びっ…くりした。この場で消されるのかと…。」
( 終始息を殺していたが二人が去ると壁に背を預けたまま気が抜けてその場にずるりと座り込み、呟くように言うと深く息を吐いて )
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