斎藤 悠介 2023-09-13 21:51:55 |
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( インターホンの音に指先がぴくりと動く。目を開くと座っている彼の背中が見えて、服で隠れてはいるがその下は深い愛咬の痕が沢山刻まれているんだろうなんて自分が付けたくせに何処か他人事のようにぼんやりと考える。宣言通り、欲のままに酷く抱いた。こんな時に思い出すものでは無いが以前の恋人に"怖い。こんなことする悠介は悠介じゃない。"と泣きながら拒絶された記憶が自然と頭に浮いてきて、その瞬間頭痛がすれば微かに眉を顰める。今すぐ彼を抱き締めて許しを乞うのが正しい行動だと分かってはいるが体が怠く、頭痛は強くなっていくばかりで背中に伸ばしかけていた手を止めて相手が使っていた枕をゆっくり手繰り寄せるとそれを抱き、枕に顔を埋めて目を瞑り )
…、悠介くん?
起きた?
( 背後から動く気配を感じとれば、そちらの方を見る。枕を抱きしめている彼を見ればどうしようもなく愛しくて。緩やかに微笑むと、起きているのかどうかを確認する。時計を見ると時間は昼近く、なんだか休みの日だからといって最近は怠惰な生活ばかりを送っている気がして少し反省しているところだ。)
…起きた。
昨日は酷い事してごめん、幻滅したでしょ。
( 優しい声が耳に届くとこんな状況なのに胸がぐっと締め付けられて好きな気持ちが湧いてくる。埋めた顔を枕から離す事なく答えれば、その後に小さな声で謝罪を。生きていく上で人に嫌われるなんて珍しくも無いし気にした事が無かったが彼相手は別で、どうか嫌わないで欲しいと縋りたくなってしまったのは初めてで )
...ん、いいよ。
てか俺があんなこと言ったからでしょ。別に幻滅しないよ。
( 謝られたことや、幻滅という言葉にはぽかんとした表情を。それでも顔をあげない彼の様子には相当参っているのだろうかと思い、首を振ると相手の頭をそっと撫でて。そもそも相手を煽ったのはこちらの方。彼は悪くは無いと優しく伝えて。)
……唯織さんから煽んなくても気持ちが昂ってる時は昨日みたいになる可能性がある。それに、もっと酷くしちゃう事ももしかしたらあるかもしんない。
( 緩やかに頭に触れる手に一瞬肩を揺らすが受け入れ、そろりと枕から顔を上げると薄茶の瞳に漸く彼の顔を映す。そこに軽蔑や嫌悪の色は一切無く、安堵と共に罪悪感が浮かんでくるも寝転んだまま撫でてくれていた手を握って口元に持ってくれば不安を吐き出して中指の先を甘噛みし )
受け入れるよ。
だって、悠介くんのこと好きだから。
ただ、本当に嫌だったりしたときは伝える。
( もっと酷いこと、というのがどういうことを指すのかは分からないが、きっと彼なりの愛情表現の仕方がそれなのだとしたら受け入れる他ない。これは惚れてしまった自分の弱みだと笑って。しかし際限なく許してしまうのも、それは違う気がするし、本当に嫌なときは伝えると言い。己の指を甘噛みする彼をまた愛おしそうに見つめては)
…俺も唯織さんが好き。
ん、言ってくれれば意識して絶対しないようにするから。
( 手を握ったままゆっくり上半身を起こすと腕を引いて優しく抱き締め、肩口に顔を埋める。彼の香りに安心しつつ顔を上げると頬に口付けを落として愛おしげに髪に触れ )
良かった、嫌われてたらどうしようかと思った。
こんなことで嫌いにならないよ。
( 相手から好きと言われれば何でも許してしまいそうになるのだから自分の方が余程やばいのでは無いかと思う。抱きしめ返しながら彼の背中を優しく撫でて、小さく笑う。話を切り替えると朝食でも食べようかと提案を。)
さて、朝ごはんでも食べようか。
ん、そうしよっか。
…てかもうすぐ昼じゃん。唯織さんと一緒に寝てると安心するのか夜中目を覚ましたりしないんだよな…普段は結構起きたりして眠れなくなったりするんだけど。
( 彼の言葉を聞いて小さく微笑み、いつの間にか酷かった頭痛も大分楽になって、ゆっくり身体を離せばふと時計を見て少し驚く。いつも一人の時は夜中に起きて覚醒し、結局朝方まで何かをしていたりするのだが彼と一緒の時は眠ったら朝まで起きない現象が起きており不思議なもので。ベットから降りれば一度身体を伸ばして )
そうなんだ。
俺は1回寝たら起きないタイプなんだけど。でも悠介くんと寝るときはよりぐっすり眠れる気がする。
( 相手の言葉には自分も彼といるとゆっくり休むことができると頷き。ベッドから立ち上がると、こちらも1度背伸びをして。下ろした髪を後ろ手にひとつに結うと、下へおりるべく階段に向かう。今日は何を作ろうかなとぼうっと考えながら。)
一緒に生活しだしたら互いに睡眠の質上がりそう。…唯織さんって本当に綺麗な髪してるよな、普通に羨ましい。
( 相手が髪を結う姿を見た後についていくように階段を降りる。さらさらと目の前で綺麗に纏まって揺れる毛先を眺めながら自分の髪に触れると案の定、後頭部に跳ねる寝癖を指先に感じてひとつ溜息を。自分は髪質が細く、そこまで癖が強い訳ではないがそれでもくせっ毛なのは確かで寝癖がつきやすい。思った事を口にしながらリビングに着くと人の家ではあるが習慣的にテレビのリモコンを手にして電源を入れ )
そうだね。余計起きるの辛くなるかも。
ありがとう。くせが付きにくいから楽してる。それに長いとこうやって結べばある程度癖があってもごまかせるから。結んでた方が作業の邪魔にならなくて済むのもあるんだけど。俺は悠介くんの髪質好きだよ。…なんか猫っぽいし。
( 話しながら1階に下りると、玄関のポストに不在通知が入っているのを見て先程のインターホンが配達業者だったことがわかる。その通知をテーブルに置いて台所へ。髪質の話をすると自分は遺伝もあるだろうがそんなに癖のつかない毛質で。しかしそんな髪でも癖がつくときもあるが、朝が本当に苦手な自分は髪を整えるのに時間を要したくないため、常にひとつに結ってごまかしているのだと苦笑して。少しはねた彼の髪を見て微笑む。冷蔵庫を見て、今簡単に用意できそうなメニューをあげて。)
ホットケーキでもいい?
それかパンもあるから、フレンチトーストとかも作れる。
そっか、長いとそういう利点が…猫っぽいは友達にもよく言われる。猫撫でてるみたいで触り心地いいって…俺的には無いもの強請りなのか唯織さんみたいな髪質が好きだし、触り心地もそっちの方が凄く良くてずっと触ってたいと思うんだけど。
んー、じゃあホットケーキで。…て、なんか手伝うことある?
( テーブルに置かれた不在通知を見ながらソファに腰を下ろせば考えもしなかった理由が聞こえて意外性を感じ顔を上げ、あまり気に入っていない自分の髪について彼に好きだなんて言われてしまうと実は悪くないのかもしれないと単純な思考で思い直すも"猫っぽい"のワードに笑って返す。台所からの提案に家気分でスマホを触りながら軽く返事するが直ぐに立ち上がってそちらへ足を向けて近付くと顔を覗かせて )
はは、やっぱり?実は髪触ってるとき俺もいつもそう思ってた。
そしたらバターとメープルシロップ。あと、フォークをテーブルに出しといてもらっていい?
( 身体を重ね合わせているときに相手の髪を触ってしまう癖が自分にはあると思っていたが、成程猫の毛質に似ているからかと納得を。彼に褒められるのなら嬉しい限りで。台所へ顔をのぞかせた相手を見て、冷蔵庫から容器に入った切れているバター、メープルシロップを取り出すと相手に渡す。コーヒーメーカーを作動させると豆を挽く音とお湯を熱する音が聞こえて、それがまた心地よい。卵、牛乳、ホットケーキミックスを混ぜ合わせ生地をテキパキと作り、フライパンで熱する。その合間にコーヒーも出来ていたのでマグカップ2つにそれぞれコーヒーを注いで相手の元へ。)
もうできるから、あとはコーヒー飲んでゆっくりしてて。
了解。
唯織さんって本当に手際良いよな、料理してる姿めちゃくちゃかっこいい。
( 友人から言われた時はふーん、程度で何も感じ無かったが猫好きの彼から言われると少し嬉しく、生まれて初めて自分がこの髪質で良かっただなんて思う。渡された物を持ちながら少しの間、彼の様子を眺める。慣れた手付きで準備していく様は見惚れそうになる程で、呟くように言いながらリビングに戻ればテーブルにバターとメープルシロップ、そしてフォークを並べれば良い香りと共にコーヒーが運ばれる。礼を言いながら受け取って座ると一口飲み、やはり美味しいと表情を綻ばせ )
はは、嬉しいな。そんなこと言われたことない。
( 料理には自信がある。そもそもこんなふうに作っているところを見せたのは彼が初めてかもしれない。そういうふうに言われるのは慣れてはいないが、少し照れたように笑って。出来上がった熱々のホットケーキを彼の前に出す。自分の前にも置くとバターとメープルシロップを上からかけて。そういえば、とふと気になったことを相手に話せば、自分も考えを巡らす。文化祭が終わってしまえばあとのイベントは何が残るだろうか。もう3年生は受験勉強に取り組まなければならない時期だし何も無いような気がする)
そういえば文化祭も終わったから後は学校のイベントっていうともう何も無いんだな。
うわ、美味しそう。
確かにもう大きいイベントは無いかも。球技大会、合唱コン、マラソン大会くらいか。勉強あるから仕方ないけど後期イベント少なくて退屈だよな、…授業中に校庭でデカめの花火打ち上げる悪戯でもしたら皆の学校生活に少し華が…いや、流石にバレたら停学処分モノになるか。やめとこ。
( 照れ笑いをする彼が可愛くて更に表情が緩みそうになるが何とか堪えると目の前に置かれたホットケーキを見て目を輝かす。自分もバターを乗せながら話すが強制されるような勉強漬けの日々が始まると思うと溜息が出てきてしまいそうになる。ふと名案が浮かび、顔を上げて言うがよくよく考えるとそんな事をしでかす生徒は限られていて、実行したら直ぐに生徒指導が顔を真っ赤にさせて自分の所に走ってくるビジョンが見えると悩ましげに少し首を傾げて )
そうか。寂しくなるな。
ふっ、はは。なにそれ、面白そうではあるけど。
まぁ受験生は勉強がんばれってことだね。俺でよければ勉強も少しは教えられるかも。
( 手を合わせるとフォークでホットケーキを一口サイズに切り分けて食べる。我ながらふわふわに焼けたホットケーキは美味しいと満足して、合間にコーヒーを飲み。もう大きな行事はないと知るとなんだか寂しく感じる。しかし受験生にとってはそれくらいがいいのだろう。自分も少しくらいなら勉強を教えることはできると一応伝えて。)
確かに。
でしょ?皆この時期から疲れてくる感じするし、何かしらの刺激をと思ったんだけど…もうちょい別の手考えるわ。
ん、分からない事あったら絶対聞くし、分かってても学校では今後聞きに行く。
( 行事があれば何かしら彼に関われる機会が出てくるが学校生活で授業以外に出来ることと言えば廊下で立ち話くらいでゆっくりと過ごせない。本音を言えば休み時間全て独占したいくらいなのだが流石にそれは出来ない。どうしようも無いと考えていたのだが勉強の話を聞いてその手があったかと思えば微笑んで。周りに聞かれたら「あの先生教え方上手いから。」とでも言っておけば誤魔化せるし会いにいける。手を合わせると自分もホットケーキを口にし、あまりの美味しさに一瞬言葉を失う。焼き加減も絶妙でお店で出てくる物のようで、二口目を食べた後にゆっくりコーヒーを飲み顔を上げて )
…すっごい美味しい。家でこんなん作れるんだ、ほんとお金払うレベルで美味しい。
うん。学校だと大体美術室か、隣の準備室にいることが多いから。来てくれれば。…といっても、忘れてることも多いから教えられないかもだけど。
( そこまで考えていなかったが、受験シーズンに入るということは彼も勉強に専念する時間が増えるということ。一緒に過ごす時間も減ってしまうと思っていたが、自分が勉強を見てあげればいいだけの話で。とはいえ受験勉強なんてしたのは10年以上前の話。勉強の内容なんて覚えている自信はないが、彼に会えるのなら頑張ろうかと思える。ホットケーキに関しては満足して貰えたようで嬉しそうに笑い。)
よかった。ホットケーキは好きだから、よく作るんだけど。どうやったら美味しく作れるか研究してた時期があって。それのお陰かな。
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