猫と白金の流線 〆

何も無いならいい。ほら、最近何かと物騒じゃん？何かあったら直ぐに言ってね。

…てか、めっちゃ美味しそう。本当に作ってくれてありがと、準備任せちゃってごめん。

（ 相手に変わった事は無いようで、自分の動き方は今の所問題がなさそうだと安心すれば気を取り直し、声掛けに軽く頷いて綺麗に並べられた料理を見て微笑む。立ち上がって台所へと歩いて行き、冷蔵庫を開き取り敢えずスパークリングの日本酒を手に取ってリビングに戻ると座って、相手のグラスにお酒を注ぎ ）

うん。分かった。

どういたしまして。口に合うか心配だけど。
( たしかに最近ニュースで物騒な事件が多い。特に気にとめず頷くも、もしかしたら何か心配な事があるのかもしれないなと思い。料理について礼を言われると微笑み、口に合えばいいけれどと少しどきどきしながら。日本酒が注がれたグラスを受け取り自分も相手にお返しに注げば席について、グラスを相手の方に向けて。)

とりあえず、乾杯しよっか。

じゃあ、乾杯。

（ グラスを持って、相手のと軽く合わせるとそのまま一口飲む。日本酒の甘みとフルーティな香りが淡い炭酸と共に口に広がり、癖がなくやはり飲みやすい。個人的にはもう少し度数が欲しいと感じてしまうのだがそれでも美味しくてたまに買ってしまうくらいには気に入っているので人に勧める事も多く、好んでくれる人も多いのだが彼はどうだろうとそちらを見て ）

…どう？飲めそう？

乾杯。
...わ、飲みやすい。美味しい。
( グラスを軽く合わせた音が心地よい。1口飲むと、想像していたより遥かに飲みやすい味と、炭酸が口の中に広がる。アルコールも感じつつ、これだけ飲みやすかったらぐいぐい飲んでしまってすぐ潰れてしまいそうなので気をつけようと思い。相手と自分の取り皿にだし巻き玉子と肉じゃがを少量とりながら、そういえば今日の文化祭での彼の演奏について感想を述べてなかったと思い出しては)

そういえばさ、悠介くんたちのバンドの演奏。凄かった。
なんていうか上手く言えないけど、悠介くんたちの音楽にあっという間に惹き込まれて。...感動した。

本当？良かった。

…ありがとう。ステージの上で唯織さん見付けた時、凄く嬉しくてさ。いつもより実力発揮出来た気がする。俺的には人生最後のって思ってやったんだけどメンバーが離してくれないらしいからまだステージに立つ機会あるかも。そん時はまた来てくれる？

（ 気に入ってくれたようで安心しつつ二口目を飲んでいたら文化祭の話が出て、微笑むと礼を。色んな人に感想を貰えたが彼からの言葉が一番嬉しい。ファンだと言ってくれている子達には申し訳ないが相手の心に少しでも特別に響いてくれたらなんて演奏中に考えていた事を思い出して少々恥ずかしさを覚えつつも終演後の片付けの際にバンドメンバーに羽交い締めにされて「まだ表舞台には立ち続けるよな？」と尋問を受けた事も思い出す。軽音部関係無くメンバーだけで素性を明かさず動画投稿サイトで曲を上げていて、今後はその活動だけだと思っていたので一旦首を横に振ったのだが押しに押されて負けてしまった。いつになるかは分からないが一度言ったことは絶対に遂行するメンツが揃っている為にまた公演があるのだろう。その時にも彼には傍に居て聞いていて欲しいと我儘なのだが思ってしまう。グラスを置いて、取り分けてくれている彼を見つつ目を細めれば軽く首を傾げて尋ね ）

ステージから見えてた？目は合ったなと思ったけど。そっか。
勿論。絶対見に行くよ。

( ステージの上の相手と目が合ったような気がしていたが、やはりそうだったかと思うと嬉しく思う。やはりあれだけ実力があれば続けないのは惜しいと自分も思うし、ぜひ続けてほしい。彼からのお願いには寧ろこちらから行きたいと言いたいくらいだと微笑み。しかしやはりそれだけ人気があるということは、当然これまでもモテてきたんだろうなと苦笑しては、盛り付けた取り皿を渡して。)

あれだけ実力あるし、悠介くんかっこいいし。そりゃ人気出るわけだ。今更だけどめちゃくちゃモテるでしょ？

唯織さん来てくれるんだったら前向きに頑張ろ……んー、まあそこそこは。でもモテるってのなら唯織さんの方がってなるけどな…気付いて無いと思うけど男女関係無く、生徒人気凄いよ。話聞いてる感じ恋愛感情持ってるの多そう。この間の祭りでだって色んな人に見られてたし、綺麗過ぎるから当然なんだけども。

（ 見に来てくれるのだと分かれば表情を緩め、取り皿を受け取りつつ少し考えてから正直に話すがその話題となれば避けて通れないのは彼の事。恋人がいるという噂が流れた時はガチ恋が何人沈んだのか分からない。彼の事を"顔面国宝"だなんて話している生徒も居て、その場に居合わせたのだが確かに。と納得してしまったのも記憶に残っている。高嶺の花だと皆感じているようで強くアピールしている生徒は少ないが花里がいい例で、と彼女の名前が出そうになるが流石にそこは止めると手を合わせて「いただきます」と言った後に箸を取って、肉じゃがを口に運び ）

美味しい。めっちゃ好きな味なんだけど。

（ ほくほくのじゃがいもには優しい出汁の味がしっかり染みていて、食べたかった肉じゃがの理想の味を軽く超えてくる。幸せで自然に微笑むともう一口食べて ）

...え？
そうなのかな...。全くそんなこと感じない。
好意を持たれるのは嫌じゃないけど…今日の花里さんみたいになるのはちょっと困るかな。
( 相手の話をしていたのだが、まさか自分の話に戻ってくるとは思わずキョトンとした顔をして。担任もしていないため生徒との関わりは薄く、そこまで自分に好意が向いているとは少しも思っておらず。しかしそうだとしたとしても、今日の花里さんのような展開になられては困るなと苦笑を浮かべ。肉じゃがを食べる彼の様子をじっと見ていたが、どうやら気に入って貰えたようで安心し。 )

よかった。肉じゃがとかって家によって味付け変わったりもするからさ、好みとかもあるんだよな。

あー…花里な。断って食い下がられるのは確かに困る…まあ、そのうち諦めてくれるのを願うしかないよな。

今まで食べた中で本当に一番美味しい。酒にも合うし最高…。

（ やっぱりモテている自覚は無いようで、意外そうな表情をする彼を見て少し笑ってしまうが敢えて出していなかった彼女の名前が出るとこちらも苦笑いをする。何とかしたいがこちらから動く事はあまりよろしくない為に見守るしかない、サクッと次の相手を見つけて諦めて欲しいものだと考えながらグラスを口にする。色々悩ましく感じていたが肉じゃがと酒の相性が良くて少し驚くとだし巻きにも手を付ける。これもまた美味しくて目を輝かせると酒を、と思ったがもう空で。二杯目というのもあって自分でおかわりを注ぎ ）

うん、今はとにかく何もしないことにするよ。また相談させて。

嬉しいな。
こんな風に誰かに料理を振る舞うなんてことないから、ちよっと緊張してたんだ。

( 相手の言うように今はどうにも出来ないので時間が解決してくれるのを待つしかないと頷いて。どうしようもなくなることは無いとは思うけれど、また彼に相談させてほしいとお願いを。だし巻きもどうやら気に入って貰えたようで、嬉しそうに笑うと自分もグラスの日本酒を少しずつ飲んでいき。やはりアルコール度数は高めなので、まだ酔ってはいないが体がぽかぽかとしてきた感じがする。 )

唯織さんからの相談なら何時でも喜んで。

確かに自炊してる人でも振る舞う機会なんて中々無いよな。唯織さんの料理、美味しいし凄く好きだよ、多分同棲したら幸せ太りする。

（ 頼ってもらえるのは嬉しくて快く頷く。自分は料理はしないが気持ちは分かって共感すれば笑う彼につられて微笑み、思った事をぽつりと。彼のグラスが空いたら次はワインか、スパークリングではない日本酒辺りを持ってこようだなんて考えていたらスマホが震え、取り出して見るとクラスのグループチャットに執事喫茶の時の写真が貼られていて送信者は"花里"となっている。振られた後で落ち込んでいるはずだが写真係に自ら立候補した手前頑張ったのだろうかと目を通し、直ぐに閉じるつもりだったのだが彼がコーヒーを飲んでいる時の写真を見付けて手を止めればすかさず保存し、その後に顔を上げて二人の時間なのにスマホを触ってしまった挙句、彼の姿に釣られて少し夢中になった事に対して謝罪を述べた後に画面をそちらに向けて ）

…あ、ごめん。文化祭の写真送られて来てさ、偶然かもしんないんだけど唯織さん写ってるのあってそれだけ保存してた。

そう言って貰えて嬉しい。
太らせちゃったら責任とらないとな。でも悠介くん細いから少し太っても平気だよ。

( 料理に関して好きだなんて言って貰えて嬉しくないわけがない。少し恥ずかしそうに微笑むと、幸せ太りする、なんて言う相手にくすくすと声を漏らして笑う。元々細い彼だから少しくらい太ったって問題は無いだろう。気が付くとグラスが空いており、次も同じものか、それとも違うものにするかで悩んでいる内にスマホを見つめる彼。何かあったのかとじっとそちらを見ていると目が合う。自分が写っている写真を保存していたとか。それならば、と今一度視線を彼の方に向けると、自分もなんて普段ならしないお願いを。)

あぁ、ほんとだ。
...じゃあさ俺も悠介くんの写真欲しいな。執事姿の。

責任取ってくれんの？じゃあ遠慮なく太ろう。いや、少し太る範囲じゃ責任取ってもらえないと思うしもっと上を目指す。

……俺の？
いいよ、唯織さんの貰ったし送る…て、量多いし自分の写りいいの分かんないわ。次の酒用意してくるから欲しいのあったら保存して、唯織さんのスマホ送っといて。

（ 実際はジムや格闘技に通っているからそうはならないだろうが笑いながら冗談混じりに言い。お願いを聞いて一瞬意外そうに目を丸くするが了承してまたスマホに目を落とし、自分の写っている写真を見るも何枚もあってどれを送ればいいか分からずに、相手のグラスが空いてる事もあり立ち上がると自分のスマホを彼に差し出して ）

…あ、次は何飲みたい？

...いい写真たくさんある。

もうひとつの？日本酒？飲んでみたいかな。
( 彼から受けとったスマホに映る写真を眺める。燕尾服を身にまとう彼の姿をやはり似合うなとじっと見つめていたが、声をかけられて一先ずその1枚を自分のスマホへ送り、相手のそれを戻し。次の酒に関しては、ほかの日本酒も飲んでみたいという気持ちからそれを選択して。だんだん火照ってきた頬に、やはり自分はそんなに酒に強くないなと思いつつ、自分と比べて相手は顔色ひとつ変わっていないため凄いなと思う。 )

そう？自分ではやっぱ分かんないもんだな…了解。

（ 希望を聞くと台所へと向かい、日本酒を取るとリビングに戻る。そのまま相手のグラスと自分のに注げばふとほんのり赤くなっている彼の頬が目について、可愛いだなんて思ってしまうと日本酒の瓶を置いて色付いた頬に口付けを落としてから席に座り一応注意を ）

さっきのより度数と癖強いから気をつけて。

悠介くんの写真どれもかっこいいよ。
...ん、ありがとう。
あ...たしかに。これは強いな。

( 自分のスマホに送られてきた彼の画像を保存すると、それを満足そうに眺めて。グラスに注がれた日本酒。先程のものと違い炭酸の泡は見えず、グラスに口元を近付ける。その瞬間に先程とは違う日本酒の香りというか、アルコール度数がいかにも強そうな香りがして。僅かに液体を口内に流し込むと味を確かめる。強いアルコールの中にも日本酒の味わいを感じると、先程よりは飲みにくいのだが｢思っていたより美味しい｣と呟き。)

……ありがとう。
そう、普通の酒より度数強いくせに飲みやすくてすぐ全身に回るから厄介で、結構失敗談も多く聞く酒なんだよな…美味しいって思えてもらえたなら良かった。

（ 相手のスマホに送られたであろう自分の写真、眺める彼を見ていると少し恥ずかしくなってしまうが何を言うでもなく気にしない事にすると礼をひとつ言う。自分も日本酒に口を付け、相手が呟いた言葉が耳に届けば目を細め、なんなら自分も派手に失敗した事があるのだがそれを潜めて語れば微笑んで ）

眠たくなったりしたら気にせずに直ぐ言って、動けないとかあれば寝室まで運ぶし。

うん、ゆっくり飲んでるし。今のところは大丈夫。
悠介くんは、一番好きなお酒って何？

( なるほど確かに。度数の割に飲みやすいというのは納得だ。少しずつ無理をせず飲むことにしようと心に決めて。今はまだ大丈夫そうだが、おそらくこのお酒を飲み進めるうちにいつも通り眠気がくるんだろうなと苦笑し。再びお酒に口をつけ、ふとお酒に詳しい相手が一番好きなお酒はなになのか気になり。)

一番ならやっぱウイスキーかな、どの酒も好きなんだけどその中でも飛び抜けて香り高く個性的な所が好きで…銘柄事に全然味が違うのも面白い。…独特の香りが苦手とか高い度数のせいで敬遠される事多いけど。

（ 聞かれた質問には悩む事無く答える。色んな酒を飲んで来たがウイスキーに勝る物は無く、一人で飲む時は必ず傍にいる程で家には常備している。語り出せば止まることが無い深い沼に落ちている為になるべく簡単に話せば、苦手な人が多い事も事実なので苦笑いしながらそれも話して手に持っているグラスを箸に変えると肉じゃがを口に運び ）

へぇ、今日は無理だけど。今度一緒に飲むときはウイスキーにしよっか。

( 彼の話を聞くと余程ウイスキーが好きなのだということが伝わってくる。確かにこれまで自ら飲もうとはしてこなかったが、彼がいるなら飲んでみてもいいかなという気になり提案を。今あるグラスのものを半分程飲んだところで、海が自分の足元に擦り寄ってきたため、頭を撫でる。 )

悠介くんと、海とでこんな風に暮らせたら幸せだろうな。