無垢な瞳、裏側を見る〆

…ん？まぁ、緊張はしているな。いくらリハーサルとはいえ、この瞬間は未だに慣れないさ。
（普段は主に裏方で作業していることが多く、たまに舞台に立つとはいえリハーサル前や本番前のど独特な緊張感や雰囲気は慣れないとどこか張りつめた表情をしていたようで同じ舞台に立つ演者に声をかけられれば苦笑交じりに肩を竦めながら答えて、そうこうしていればやがてリハーサルは始まり、多少シーンや台詞などは端折りつつも本番さながらと言った様子で演者一人一人それぞれ真剣に舞台に立って台詞に合わせて役を演じており、その中に己も含まれており先程相手に対応していた態度とは打って変わって与えられた役をしっかりと演じきっていて）

…………。

(リハーサルが始まってから、言葉が出なかった。舞台に立っている演者たちは、まるで本番のように一人一人演じており、自身も彼らの演技に引き込まれ、目を見開いて固まってしまっていた。これって本当にリハーサル？と、途中でそう思うほどであったが、何よりも一番驚いたのは、先程自身と話していた裏方の彼が、演者たちと共に舞台に立っていたことだった。
そういえば…彼は先程、『“主に”裏方をしている』と言っていたが、演者はやっていないとは言っていなかったっけ……と、先程の会話を思い出しつつ、先程話していた時とはまるで別人のような彼の演技に、完全に目を奪われていた)

（練習は本番のように、本番は練習のようにたかがリハーサルと言え舞台に立って居る演者や裏方を含め誰一人として手を抜くことはなく、勿論己もその一人であり劇を見ていればそこそこ登場頻度や台詞の量等多くポジション的にも重要な役であろうことは分かるだろう。やがて物語はクライマックスへと向かってゆくが“よし、そこまで！皆、本番の時も気を抜かずしっかり役を演じきってくれ！”と観客席の最前列の真ん中でリハーサルを見ていた座長が切りのいいタイミングで立ち上がりながらぱんぱんと両手を打って止めるような動作をしたのち舞台上にいる全ての人物に向かってよく通る声で声をかければ、そのすべての人物は各々気合のこもった返事を返していて）

(ついにクライマックス……というところで、座長の声が聞こえ、上の空だった自分は現実に引き戻される。よほど夢中になっていたために、“あ、そっかこれリハーサルだっけ！？”とここでようやく思い出す。本番だと間違えてしまうほど、演技も演出も目を見張るものだったのだ。一座の人たちってすごい、と感動してしまう。
“それにしても……あの人も出演してたんだ……さっきとはまるで別人だったな……。演技と裏方も両方こなせるって、すごいな……”
拍手したい衝動を堪えつつ、尊敬の眼差しを舞台に立っている彼に向けていた)

お待たせしました。本番はちゃんと端折らず最後までやるので楽しみにしていてくださいね。
（各々座長気合のこもった返事を返せば、先程の真剣な雰囲気は何処へやら一変して和気藹々とした様子に変わり裏方演者関係なく話しており、己は舞台に上がらずすぐ傍まで寄ってきた座長の存在に気付き座長に近づくと舞台の際ぎりぎりまで移動しその場にしゃがみ込むと座長と会話を交わしてからしゃがみ込んだ体勢から立ち上がるとそのまま身軽に観客席へと軽くジャンプをし降り立つと、己の行動を軽く注意をする座長の言葉に慣れたような様子で受け流しつつ座っている相手の傍へと向かってから舞台上に立っていたときと打って変わって先程相手と話していた態度のまま述べて）

！！は、はい！！あのあの……！！凄かったです！リハーサルなのに本番かと思っちゃいました！！本番もすっごく楽しみです！
(リハーサルが終わったあともしばらく余韻に浸っていると、彼が舞台からおりてこちらへ近づいてきた。本番は最後までやるので楽しみにして欲しいと言われれば、力強く頷き、月並みの表現ではあるが凄かったと感想を告げ、目を輝かせながら本番も楽しみだと伝えて)

ありがとうございます。皆様の貴重な時間を頂いているのですから生半可なものを見せるわけにはいきませんからね。…おや、もうこんな時間ですか。申し訳ありません、そろそろ本番に向けて最終の打ち合わせやチェック等がありますので開演時間の少し前になったらお越しください。
（己の言葉に力強く頷き、月並みの言葉だが目を輝かせながら言われたの言葉にふっと嬉しさや誇らしさが感じられるような綻んだ表情を浮かべながらお礼を述べると己のみならず皆が思っている事を述べるが役としてつけていた左手首にしてある腕時計に視線をやるとほどよい時間になっており、丁寧に一礼をしたのち己が案内するのはここまでと受け取れる台詞を述べて）

は、はい！じゃあまた後で見に行きます！お世話になりました！失礼します！
(そろそろ時間らしく、開演時間の少し前になったら来て欲しいと言われれば、深々と頭を下げて軽く挨拶をし、一度外へ出ていこうとする。リハーサルがアレなら、本番はもっと凄いだろうなと、期待で足取りを軽くさせながら)

いえ、此方こそ最後までお見送りできずに申し訳ございません。それでは失礼します。
（本来であれば入り口まで送り、相手が去るまで見届けるところだがその時間すら惜しいようで深々と頭を下げて挨拶をする相手に申し訳なさそうな声色と表情を浮かべながら謝ると外に出ようとする相手を引き留めることなく舞台裏に居るであろう皆の元へと向かって歩き出して）

【相談すいません、ここからはどうしましょうか？】

（/無難なのは旅一座が来てから悪徳な商人や貴族等弱者を苦しめる者達を中心した窃盗が起き、その犯人確保のため貴Cが所属する騎士団が調査兼護衛に当たることになり、何件目かの盗みの最中に騎士団に踏み込まれ両者邂逅を果たしてー。というのはどうでしょう？）

【異議なしです。度々提案して頂いて申し訳ありません……こちらから再開した方がよろしいでしょうか？】

（/お気になさらずに、あれこれ展開を考えるのは好きなので！そうしてくださると助かります。ちなみに義賊として活動しているときは素顔を隠すため各々で作った自作の仮面をつけており、完全に顔を覆った物・顔半分覆ったもの等統一感はない。ということでお願いします。）

【そう言っていただけると安心します！了解しました。また何かありましたら相談致します！一度背後失礼しますね】

(旅一座の演劇を楽しんだ日からしばらく経ったある日、自身が所属する騎士団は、とある事件に頭を悩ませていた。仮面をつけた謎の集団による窃盗事件が、立て続けにおきていたのだ。ターゲットになっていたのは貴族や商人……それも、「権力をたてに立場の弱いものを苦しめている」とか、「実は犯罪組織と裏で繋がっている」とか……黒い噂が絶えない者ばかりだった。
だが、相手が誰であろうと、窃盗は褒められた行為ではない。騎士団は犯人を捕まえるべく、ターゲットになりうる貴族や商人の護衛・調査にあたった。
自身が所属する小隊の担当は、とある商人の屋敷だった。その商人には、安物を騙して高い値段で売りつけているという噂があった。
屋敷付近で待機していると、怪しい者が屋敷へ侵入したという報告が。自身は小隊長や同期の騎士たちと共に屋敷へ入り、犯人たちが入ったと思われる、不振な物音のする部屋へ踏み込んだ。)

っ？！
（旅一座での公演を続けながらも本業である義賊としての役目もこっそりと周囲に気付かぬように続けていたが、その件について騎士団が調査兼護衛という目的で動いているという情報もつかんていたため、いずれ邂逅するかもしれないという気持ちのままその日の夜も義賊として弱者を苦しめるとある商人の屋敷にへと手慣れたように集団で侵入し、事前の下調べて貴金属などの宝飾品や現金等がある部屋へと向かい金庫を開ける奴が上手い奴に金庫を開けさせていれば、唐突に部屋に踏み込んできた人物達に集団が各々作業していた手を止め一斉に視線をやれば、紛れもなく騎士団の連中でありその中でも目立つ桃色の髪をした相手の姿が目にとまり、一瞬声をあげそうになるが何とか堪え金庫を開け終わった奴と金庫の中身を袋に入れていたが即座にアイコンタクトと集団の間で伝わるハンドサインで皆に指示をし、各々持てる分だけ金目の物を袋などに詰めた状態で窓から逃走をするものと隣の部屋へと逃げ込むものと瞬時に二手に分かれ逃走をしはじめて）

…….！！待て！！

(“二手に別れたぞ！！”、“他の騎士たちに応援の要請を！！”
二手に別れて逃走を図る犯人集団を見て、騎士たちは慌てた様子で口々に声を上げるが、すぐさま、外に出て追う者と隣の部屋へ向かうもの、そして、近くで護衛中の騎士たちへ応援を要請するものの三手に別れて動き出す。
“お前は窓から奴らを追え”と先輩騎士から指示を受けた自身は、自分の姿を見て相手が動揺したということも露知らず、2、3名の同期と共に、外へ出た犯人たちを追いかけ始めた)

（仮面付けていて良かった。と顔全体を覆うような形で黒一色に塗りアクセントとして水色に近い青色の雫型は左目の下、右目の下には金色の三日月が控え目に描かれた仮面をつけ、目立つ銀髪を隠す様に頭まですっぽり隠れる黒いフード付きのローブを身に纏い仮面をつける際に邪魔にならないように前髪を撫でつけており己達が二手に別れたのをみて慌ててはいるが、直ぐに対応するように三手に別れて己達を追い始めて、隣の部屋に逃げた者達を率いるのはこの集団のリーダーであり、窓から外に出た者達を率いるのは己と指示を出すものがきちんと別れた状態で追いかけてくる騎士団達を振り切るため細い裏路地等を駆使して己と一緒に逃げるメンバーを率いる様に最前列の位置で逃走し続けて）

……ッ、狭い道ばっかり……ってん！？あれ！？もしかしてはぐれた！？

(同期たちと共に必死に追いかけるが、先程から細い路地裏などの狭い道ばかり逃げ込まれ、見失いそうになってしまう。こちらを振り切るための策だろうか？どうやら行き当たりばったりの指示で動くこちらと違い、犯人の中に相当のキレものがいるらしい。おまけに連携もこちらよりも取れているように思える。
そんな中、ふと気づくと、犯人を追いかけているのが自分だけということに気づく。どうやら、他の同期たちと途中ではぐれてしまったらしい。焦りはしたものの、取り乱したら自分まで犯人を逃してしまう。それだけは避けねば、と、切羽詰まった様子で走り続けた)

…っ、俺の事は気にせず先に行ってくれ。大丈夫、少し足が攣っただけだ。
（集団と言えどそこまで人数はおらず、二手に別れればさらに少なくなり狭い道等余裕で通ることができちらちらとちゃんとメンバーがついてきているかどうか流し目で確認していたが唐突に足が攣り思わずその場にしゃがみ込み、突然己がしゃがみ込んだのを見てメンバーが驚いたように声をかけてきたので、ズボンやローブが汚れることも厭わずにその場に座り込み背中を建物の壁へと預けつつ、己の事を気に掛けてその場に留まっているメンバーに一座が劇を公演している場所へ戻って建物を片付ける準備をしろという意味合いで述べると後ろ髪を引かれる思いでメンバーはその場を去ってゆき、一人残った己はすぐに逃げれるように足が攣った個所を中心にマッサージをし始めて）

……？

(ふと、前方を走っていた犯人たちの様子が変わったことに気づく。突然、最前列を走っていた一人がしゃがみこみ、建物に背を預けて座り込んだのだ。仲間はそれを気にかけていた様子を見せていたが、すぐにその場を去っていく。
負傷でもしたのだろうか？そんな心配が頭によぎる。騎士としての任務中にこんなことを考えている場合ではないのはわかっているが……)

……あの！！大丈夫！？

(それでもほうってはおくことができず、相手に駆け寄ると共に相手を心配するような言葉をなげかけた)